黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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にじふぁん→アットノベルス→ハーメルンにやってきた(知る人ぞ知る)ブリッジことbridgeです。

アットノベルスにて投稿していた黒子のバスケ~もう1つのキセキ~をこちらにも投稿することに致しました。

お時間があればお立ち寄り下さい。

それではどうぞ!




全中大会編
第1Q~誓い~


 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

 

 

試合終了のブザーが鳴り響く。

 

それと同時に観客の歓声が沸いた。

 

コート上では中央に選手達が集まり整列を始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

――キセキの世代……。

 

 

 

 

 

 

 

バスケットに興味がある者ならその名を知らぬ者はいない。

 

10年に1人の逸材と称された者が5人同時に存在していたことからその名が付けられた。

 

彼らはバスケにおいて名門と呼ばれる帝光中学校に集まり、そこで中学バスケにおけるあらゆるタイトルを総なめにし、後に全中三連覇という偉業まで果たすことになる。

 

如何なる猛者も、この5人の前では凡人へと輝きを落としてしまう。

 

現在、このコートで行われた試合は圧勝という言葉すら生温い試合結果であった。

 

彼らは整列を終えると、淡々とベンチへと下がっていく。勝利による歓喜はなく、言うなれば、勝利という当たり前の作業でもしたかのよう様相である。

 

ベンチで荷物をまとめると、彼らはそのままコートから去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「すっげぇ…」

 

「これが、キセキの世代ですか…」

 

この試合を観戦していた2人から驚嘆と驚愕の声があがる。試合が終わっても尚、席から立ち上がれずにいた。

 

 

――神城 空

 

――綾瀬 大地

 

 

彼ら2人は今話題のキセキの世代の試合を見るためにこの会場に来ていた。キセキの世代の事は、雑誌や噂などではよく話を聞いていたが、実際にその姿を目にすることはなかった。全中大会が行われるのをきっかけにキセキの世代の試合を観戦しにやってきた。

 

「あの6番…、あんな型破りなバスケは見た事ねぇよ」

 

「それを言ったらあんな長距離からの3Pなんてありえません。ハーフラインから撃ってましたよ?」

 

「あのC(センター)の奴だって、とんでもない守備範囲だったぜ?」

 

「あの8番の選手は、相手のプレーを相手以上のキレとスピードでやり返していました。彼のセンスは計り知れませんね」

 

「そして、その4人を巧みに従える4番。底が知れねぇ」

 

空と大地は各々感想を言い合っていた。

 

「そういえば、あの15番もすごかったよな」

 

「15番? …試合に出てましたか?」

 

空がふと漏らした感想に大地が首を傾げた。

 

「いや、出てたろ。第2Qで途中交代で入ってきて、パスを中継したりスティールを連発してたぜ?」

 

「……すみません、印象に全く残っていません」

 

大地は両腕を胸の前で組んで何とか思い出そうと試みたが思い出すことは出来なかった。そんな大地を空が呆れ顔で見ていた。

 

「試合に出た奴のことくらい覚えておけよ…、まぁ、試合中でも時折姿を見失うくらい影薄い奴だったけどな」

 

空がケラケラ笑いながら両手を後頭部に組み、背もたれに寄りかかりながら天井を見上げた。

 

「…」

 

「…」

 

ひとしきり感想を言い合うと、2人はおもむろに口を閉じた。暫しの間黙っていると、空が口を開いた。

 

「なあ、大地」

 

「なんでしょう?」

 

大地は空の問いかけに首を向けながら返事をする。

 

「仮に、だけどさ、もし、俺らがあのキセキの世代と試合をしてたら、どうなってたかな?」

 

「…聞かずとも分かるでしょう? まず間違いなく、大敗していましたよ」

 

「だよな~」

 

空は思ったとおりの回答に苦笑いをする。空は両手両足を広げながらグッと伸ばして前かがみに座りなおした。

 

「…でもさ、たとえ結果がそうであっても、……戦ってみたかったな」

 

「…そう……ですね」

 

神城空と綾瀬大地は中学時代にキセキの世代と戦うことはなかった。その理由は志半ばで敗れ去ったからでもなければ病気や怪我をした訳でもなく…。

 

「…来年、キセキの世代は高校に進学しちまう。だから、再来年だ。再来年、俺達の手で、キセキの世代を倒そうぜ!」

 

空は立ち上がり、大地にへと目を向け、右手を差し出す。

 

「ええ、もちろんです。私達の手で彼らを倒しましょう!」

 

大地も立ち上がり、ニコリと笑いながら右手を差し出す。

 

2人は固くを手を握り、打倒キセキの世代を誓い合った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

季節は春になり、桜が舞い散る季節となった。

 

静岡県某所のとある公園にて…。

 

 

 

 

――ダム、ダム…。

 

 

 

 

空がゆっくり右手でドリブルをしながら機会をうかがい、大地が両手を広げてディフェンスをしている。

 

 

 

 

――ダム…、ダム…、ダムッ!

 

 

 

 

空が一気に加速をし。高速のドライブで大地の横を抜ける。

 

「甘いですよ!」

 

大地はそのドライブに即座に対応し、遅れることなく空についていく。

 

「っ! なら!」

 

空はターンアラウンドで回りながら大地の右へとドリブルし、そこでボールを掴んでジャンプショットを放った。

 

「っ! まだまだぁ!」

 

大地は、一瞬遅れるもそれに反応し、ブロックするために懸命に腕を伸ばす。だが、ボールはそのままリングへと向かっていく。

 

 

 

 

 

――ガン!

 

 

 

 

 

ボールはリングに弾かれ、こぼれたボールを距離が近かった大地がキャッチする。

 

「ふぅ、ギリギリ追いつきました…」

 

その光景を見て空は額に手を当てて項垂れる。

 

「ちくしょう、触られたか…」

 

大地は伸ばした手はかすかにボールに触れていた。そのため、リングに嫌われた。

 

「それでは、次は私のオフェンスですよ」

 

大地は笑みを浮かべながら構える。

 

先のキセキの世代の試合を観戦してから数ヶ月が経ち、空と大地は星南中学の3年生に進級した。

 

学校が終わると、2人は近くの公園にやってきて、1ON1を繰り広げていた。

 

大地がオフェンスへと周る。攻守を入れ替えた1ON1が始まろうとしたその時…。

 

「おーーーい!」

 

公園の入り口から大声が聞こえてきた。2人がその方向へと視線を向けると、1人の男が2人の下へ駆け寄っていった。

 

「ハァ…、ハァ…、やっと見つけたぜ…」

 

男は2人の傍まで駆けていくと、両手で膝を手に付き、呼吸を荒げた。

 

「おー、田仲じゃん、そんなに慌ててどうしたよ?」

 

「ふ、2人に…、大切な話があって…スーーー、ハーーー」

 

田仲と呼ばれた男はゆっくりと呼吸を整えていく。

 

「なあ、2人とも――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――バスケ部に戻って来る気はないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…」」

 

その言葉に空と大地は表情を曇らせながら沈黙する。

 

「あの時のことは今でも申し訳なかったって思ってる。今まで何もしてこなかった俺がこんなことを言うのは虫がいい話だというのは分かってる。それでも! 俺は、また2人とバスケがしたい!」

 

田仲は感情を露わにしながら心の内の想いを訴える。

 

「…別に、あの時のことはお前を責めちゃいねぇよ」

 

「私も同様です。仮に何かしてたとしても、結果は変わらなかったでしょうし」

 

田仲の訴えに空と大地は苦笑いしながら答える。

 

「あの先輩達は卒業していないんだから、もう気にする必要ないだろ!? だから、中学最後の全中大会に出ようぜ!」

 

「「…」」

 

2人は再び沈黙する。

 

神城空と綾瀬大地がキセキの世代と戦うことができなかったのは、志半ばで敗れ去った訳でもなければ怪我や病気の不運に見舞われたわけでもなく――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――とあることが原因で、上級生とトラブルを起こしたことが起因している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

事の発端は今より2年前、2人が中学校に入学し、バスケ部へと入部したことから始まる。

 

入部直後、新入生の実力を量るという名目で新入生と上級生と紅白戦を行うことになった。通常であれば、新入生が上級生に勝利することは困難なのであるが、空と大地が率いる新入生は上級生を完膚なきまでに叩きのめしてしまう。

 

ミニバスで腕を鳴らしていた2人を相手に上級生はまったく相手にすることができなかった。…しかし、これがいけなかった。

 

プライドを傷つけられた上級生は空と大地は目の敵にし、執拗なまでに嫌がらせを始めた。

 

部活動の時間では、ボールには一切触らせず、練習にもまったくと言っていいほど参加させず、やらせるのは雑用など、マネージャー等が行うようなことばかり。他の1年生は練習に参加しているのにも関わらずである。

 

2人にとって最大の不幸は、前年度までに在籍していたバスケ部の顧問は他校へ赴任してしまい、代わりに付いた顧問がバスケ未経験者であったため、練習等は部員に一任してしまっていたことだ。

 

そのことにより、上級生を諌める者が皆無になってしまい、もともと、素行があまりよくない上級生であったため、バスケ部はその上級生のやりたい放題になってしまった。

 

空と大地もしばらくは耐えていたが、上級生がやってることバスケットではなく、ただのボール遊びであったことと、仮にこの事態をどうにかしても、上級生とは上手くやれるはずもなければ、これからも嫌がらせを続けられることは明白なので2人はバスケ部を辞めた。

 

以来、2人は学校を終わると近くのバスケットゴールが設置してある公園に行って1ON1に明け暮れたり、近くの高校等のバスケ部を尋ねて練習に参加させてもらったり等しながら日々を過ごしていた。

 

「でもさ、いくらあいつらがいなくなったっていっても、また来るんじゃないか?」

 

空が1つの懸念を抱いた。例え卒業しても、OBとして彼らが母校のバスケ部を尋ねてくることは充分考えられる。

 

「大丈夫。例え先輩達がやってきてもあの人達に邪魔はさせないから」

 

「「…」」

 

田仲は決意の表情で2人に告げる。その表情を見て2人は再び思案する。

 

「…とは言ってもなぁ、キセキの世代は卒業していないから、全中大会ってのにもいまいち魅力を感じないんだよなぁ」

 

「…」

 

空と大地はキセキの世代とは学年が1つ下なので、彼らは皆、各々違う高校へと進学している。

 

その回答を聞いて田仲は悲痛な表情を浮かべながら俯く。

 

「でも、ま、…高校に進学したらキセキの世代と戦うつもりだし、あいつらと戦う手土産に、全中大会優勝を掲げていくのも悪くないかな」

 

「ふふっ、そうですね」

 

空と大地は向き合いながらニヤッと笑みを浮かべる。その言葉を聞いて田仲は顔をガバッと上げる。

 

「じゃ、じゃあ…」

 

「ああ。試合もしてみたいし、俺達、バスケ部に復帰するよ」

 

その言葉を聞いて田仲は目に涙を浮かべながら微笑んだ。

 

「恩にきる! それじゃあ2人とも、さっそく今からでもバスケ部に来てくれよ!」

 

田仲は空と大地を引っ張りながら学校へと向かっていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ※ ※ ※

 

 

この年、高校バスケット界ではキセキの世代と、帝光中学校で幻と謳われたシックスマン、そして、キセキの世代と同等の資質を持ったキセキならざるキセキによる壮絶なドラマが繰り広げられた。

 

そんな影で起こった、空と大地による、もう1つのキセキが今、始まった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




作者はバスケ素人なので、矛盾や勘違いがあればご指摘をお願いしますm(_ _)m

時間を置いて修正を加えながら投稿を続ける予定です。

感想、アドバイス等あればよろしくお願いします。

それではまた!


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