携帯ぶっ壊れたのでまた止まりますorz
原作で色々情報が増えるにつれ、この二次創作上の滅亡フラグがたちましたね
日本人には馴染みの薄い問題だが、世界では確かにあった問題。それは食料問題、そして水資源問題だ。
前世では幸いにも直面する機会がなかったのだが、今世では三歳にして今まさに直面していた。……ん、もう四歳になるのか? 身長も伸びたが、迷宮都市のシステム的にはまだ三歳だ。ダンジョン内にいる間は外の時間が動かないからね。
さて、現在俺たちはトライアルダンジョンの第二層に来ている。
第一層のボス、対コボルト戦で無限レベル上げを敢行していた俺たち。食料切れまではまだなんとかなった。スキルで『悪食』が生えてきたおかげか、なんとかなっていた。
しかし、飲み水まで切れた時、話が変わってきた。コボルトの生肉の血でなんとかならないかと検討もしたのだが、あまりの不味さにギブアップした。
悪食さんでもどうにもならないものはある。
という訳で第二層にいる。
先程から猛烈な飢餓感と渇き、そこからくる目眩や疲労感が俺たちを襲っている。
なんでこんな事にと考えたりもするが、よく考えなくても自業自得だった。無限レベルアップできるのが悪いんや……。
と、今にもぶっ倒れそうなのだが、ゴブリンやコウモリなんかには俺達の状況など関係なく普通に襲ってくる。
まぁ倒れそうとはいえ、第二層の雑魚ではレベル23まであがったミユミさんと、現レベルは不明だが同じぐらいのレベルの俺の敵ではない。相手の攻撃はこちらのHPを削ることもできないのだ。
「食料と水って、一年は保つ予定だったんだよな……?」
ゴブリンに集られながら歩を進めながら俺が喋る。唇のひび割れが痛い。
「だから、ダンナさんが急に来たからですよ。一人なら保ってました。ああ、水……水が欲しい……」
若干ギスギスしながらのやり取りだ。もう俺は何回か同じ事を聞いている。分かってはいても納得できるような精神状態じゃなかった。
ああ確かに水が欲しい。ゴブリンをぶっ殺して血でも啜ってやりたい衝動にかられるが、それをやると吐いて更に水分が出ていくので却下する。
「ギャア!」
叫び声が聞こえたので現実に目を向けると、ミユミさんがゴブリンに噛み付いていた。ミユミさん躊躇わないとかまじパネェ。
当然イート&リバースした。コボルトでも無理なのにゴブリンがいけるわけがなかった。
「あ、おにぎり」
そのバーサーカーミユミに噛みつかれたゴブリンが魔化した所におにぎりのカードがドロップした。トライアルダンジョンで初おにぎりだ。
「おにぎりぃぃぃよぉーこーせー!!」
「ちょ、あぶっ、汚ぇ! せめて口元ゲロを拭いてから来い! 分かった、分かったから!」
ヒロイン力が息してないぞ。いや、それは元からか。惨殺されてるとかそういう表現が正しそうだ。
おにぎりを無声によるマテリアライズで実体化させ、半分に割った後、恐る恐る片方を差し出す。もうなんなの、虎に餌をやるような気分なんですけど。
「ガゥガゥ、ぐるるる」
「おすわり」
「くーん」
言っといてなんだが、お前それで良いのか。
おにぎりを片方渡して、俺もおにぎりを食う。美味しくはないが、この腹と背中がくっつきそうな状態では凄いご馳走のように思える。
ふぅっと生き返ったような心地を味わっていると、脳が動き始めた。
「あ、ミユミさん待っ……!」
「ぐええええ、おろろろろろ!」
そうだよね遅かったねごめんね。
ゴブリン肉を食ったあとはしばらくゴブリン肉の味しかしない、そういう話があったなぁと、今更ながらに思い出したが、間違いなく手遅れだった。
俺は美味しくおにぎりを頂き、その後に殺したゴブリンからドロップしたポーションを飲んで少し復活できた。やったね。
◇◆◇
第二層は、第一層程ではないがやはり浅く、あっさりとボス部屋に着いた。コボルト戦とは違い、洞窟のままでただの広場になっているだけだが雰囲気からして違う。あるいはそういう雰囲気を出す魔法でもかかっているのかもしれない。
躊躇う理由もないので広場へと足を踏み出す。すると地面に二つ魔法陣が浮かび上がり、オークが二体出現した。槍持ちと斧持ちのオークだ。後ろを見れば、同時に広場への入り口はなくなり、ただの壁になっていた。
……これ、どういう原理で壁が出てきてるんだろう。ダンジョンのアレやコレやを考えても仕方ないとは思うものの、やはり不思議だ。機会があれば次は後ろ向きに入ってみよう。
前に向き直れば、オークはその場でまごついていた。こっちの戦闘準備を待っていてくれたのだろうか。ごめんなさいねと気合をいれる。
「よし、来い!」
「ブ、ブヒ」
オークはハーフエルフを背負った3歳児を前に戸惑っている!
いや、来いよ。戦闘始めようよ。俺のこの気合どうしてくれるんだ。
気持ちは分かるよ? 俺3歳だし、背中には俺より大きいミユミさん背負ってるし。
首がカクンカクンと揺れていて、死体のようなハーフエルフを背負った三歳児。どういう状況だ。と俺もツッコミたいもん。
なんだろう。元々ダンジョンに行きたくはなかったし、ダンジョン探索の動画とか特番とかほとんど見てないけど、今の俺の状況がおかしいことだけは分かる。
友情、努力、勝利が王道だとすれば、怠惰、嘔吐、自爆みたいな。一つとして対義語になってないが、酷いというニュアンスだけは伝わると思う。
ちなみにミユミさんをおぶらずに、降ろして戦えば良いじゃないかという話もあるだろうが、降ろそうとすればミユミさんの腕で首が絞まるのだ。力の差なのか外せないし。仕方なくミユミさんを背負ったまま第二層を突っ切ってきたのだった。
俺がこのまま戦うつもりだと分かったのか、オークものろのろと戦闘態勢に入る。おい、もっと気合入れろよ! 悲しくなるだろ!
――Action Skill《 獣の咆哮 》――
――《 単独行動 》により威圧効果をレジスト――
ん?
思わぬ効果が出てきた。スキルを調べた時には単独行動にこんな効果はなかったんだが。ギフトだと色々違うのだろうか。
獣の咆哮が効いてないと見るや、オークが身体を緊張させたのが見て取れた。一筋縄ではいかないと気付いて本気になったようだ。そして槍持ちと斧持ちが一緒に襲いかかってくる。
最初は槍持ちから接敵した。連携するなら斧持ちが前のがいいと思うんだが、オークには連携する気がないのだろう。相手が連携しないのは俺にとっては都合が良い。有り難く各個撃破しよう。
「ほっ」
まずは軽くジャンプして槍の上に飛び乗る。
いきなり槍の重量が増したオークが、バランスを崩したまま驚愕の目で俺を見る。あと俺もびっくりしてる。冒険者の身体能力って凄いわ。
調子にのってそのままムーンサルトでオークの顔面を打ち抜く。
槍が足場だったのであまり力がのらなかったが、カッコイイので、まぁよし!
これだけ動けるというのは確かに気持ちいい。普通は1レベルずつ上がるからそこまで実感は無いだろうが、俺の場合レベルが上がってから思いっきり体を動かすのは初めてだ。スーパーマンになったような気分というのはこの事だろう。
だから、勢いあまって背中から落ちたのは許してほしい。
「げほぉ!」
すまん。本当にすまん。調子に乗るもんじゃないな。
ミユミさんを病院送りにしてしまったのではないかと肝が冷えるが、そんな事を気にしている場合じゃなかった。倒れた俺に斧が振り下ろされてきている。
「おおっ!」
必死に転がって回避する。すると首に回っていた腕がスルリと抜けてミユミさんが取り残された。
「あ」
がつんと斧がミユミさんに当たった。
すまん。まじですまん。
幸い斧はHPの壁に阻まれて刺さってはいないようだが、衝撃はあったのかミユミさんは「おおおおおお……」と呻きながら転がっている。
オークがこいつ幼女を置き去りにして自分だけ逃げやがったといった風に責めるように見てくる。ちゃうねん。
と、その時、背中に冷水でもぶっかけられたように一気に鳥肌が立った。
空気が一気に重くなり、呼吸が自然と浅くなる。一体何が……と戦慄してみたものの、視線の先ではミユミさんがゆらりと立ち上がり、更に強烈な殺気を放っていた。
「だ〜んなぁ〜さぁ〜んん〜」
分かっていた。分かりたくはなかったけど分かっていた。殺気なんて気のせいだという事にしたかったんだ。
おいコラ槍オーク、一瞬起き上がろうとしたのを俺は見たぞ、死んだふりに移行するんじゃない。
斧オークは……魔化しはじめてる。え、殺気でショック死とかそういう事かな? この殺気ってスキルだったりするんですかね。
とりあえず俺がやらねばならないことは明確だ。
「逃げるんだよぉー!」
「まぁ〜てぇ〜っ!」
ミユミさんを降ろして自由になった手で、銃を抜き放ち槍オークを撃つ。
[ ボストライアルの攻略により、Lv2以下の挑戦者のみレベルアップボーナスを獲得 ]
という、意味のないボーナスのついたクリア表示を横目に、入り口と逆側に出てきた扉を勢い良く開け放ち、ダンジョンから抜ける為のワープゲートを……。
「無いんですけどっ! ワープゲート無いんですけど! ダンマスかっ、ダンマスの仕業かああああ!」
原作では階段横にあるはずのワープゲートはそこにはなく、仕方なしに階段を一気に駆け下りた。
◆◇◆
「し、しぬ……」
「そりゃ……ハァ……死にそうなほど、ふぅ、ヘバッてたのに、あれだけ、動けば……」
第三層を駆け抜け、ボス部屋前まで来てようやく力尽きたようで、ミユミさんは床に大の字になって転がっている。
俺ももうヘトヘトで体が熱い、というか熱いのに汗が出てない、駄目だ、本気でやばい。
腰をかけるのに丁度いい宝箱があったので、座り込んで息を整えようとするがうまくいかない。……宝箱?
「「宝箱だっ!」」
そういえば宝箱あったねここ! 現金なもので疲れとか一気に吹き飛んだ気がする。ミユミさんも跳ね起きてきたし。
ここの宝箱の中身がほとんどゴミなのは知っているが、それはそれとしてテンションのあがるイベントだ。
2つある宝箱のうち片方にミユミさんが駆け寄り、俺は腰をかけていた宝箱から降りる。
「「せーのっ」」
示し合わせをした訳でもないが、日本人同士だからだろうか、空気を読んで同時に宝箱をあけた。
「えっと、スターターパック?」
俺の宝箱に入っていたのは迷宮都市で売られているカードゲームだった。
ダンジョン攻略には確実に関係ないが、このカードゲームは前から気になってたので、当たりと言えば当たりの部類なんだろう。
ミユミさんの方は……。
「おおっ! 豚鼻ですよ豚鼻、可愛い! どうです旦那さん似合いますか!?」
「アッハイ」
豚鼻のつけ鼻のようだ。どう見てもハズレだ。
ミユミさんは嬉しそうにしているが、どこら辺が可愛いのか分からないし、あと似合って嬉しいのか?
本人は「うっひょー」とか「きゃは」とは言いながら喜んでるようなので、落ち着くまで数歩離れて待とう。
「え、ダンナさん何で離れるんですか」
「喜びの舞が踊れるように場所を開けたんだよ」
「なるほどっ!」
同じパーティーだと思われたら恥ずかしいからだよ。
ムエタイ選手のように踊る豚鼻ハーフエルフを見ながら、俺は必死に言葉を飲み込んだ。
「そういえばそれゴム紐とかついてないけど、どうやって鼻についてるんだ?」
「そうなんですっ! これ鼻につけたら、中が動いて勝手に鼻にフィットしたんですよ! マジックアイテムですよこれ!」
まじか。なんて無駄機能だ。
「ダンナさんも着けてみ……って、あれ? ふぬ! ぬぬぬ、え、うそ、とれないんですけど……」
こうしてここに豚鼻エルフが誕生した。もうなんていうか、ミユミさんすげぇな。
あとで細々修正します
悪食があればゴブリン肉が食えるなら、ツナはあそこまで恐れられてない。
あいつは悪食がなくてもゴブリン肉を食えてるはず。