「あの、なんで私は拉致られたんでしょうか」
「あー良い天気だなー……」
心の中は土砂降りの雨どころか槍が降っているが……胃が痛い。まぁダンジョン転送施設内なので実際にいい天気なのかも不明だけどね!
「外は曇りだよ」
さらりと心を読むんじゃない。ダンマス、まじ自重しろ。
「心を読んでる訳じゃないよ、こういうのはコツがあってね」
自重しろ!
「あっはっは」
「あはは……」
「ねー、ダンマスはどうして私を拉致ったんですか。あと、その子誰ですか? 隠し子ですか、チクりますよ」
こうして和気あいあいと、ダンジョン転送施設の総合ロビーを抜けて、施設の端っこの方にあるトライアルダンジョンの入り口を目指して俺達は歩いていく。
いやもう超逃げたい。前世でバンジージャンプさせられる直前に味わったような気分だ。いや、それ以上か。叶うことならとっくに逃げてる分、こっちの方が酷い。
さっきからさ、足が勝手に動いてるのよね。不思議なダンマスパワーだと思うんだけど、何をされてるのか分からないのが凄い怖い。
周りからは自主的にダンジョンに向かう子供に見えてるのだろうなぁ……。
「違うんですー! 無理矢理ダンジョンに連れていかれそうになってるんですー! この人誘拐犯ですよー!」
と叫んでみたところで、皆無反応。これ認識阻害だよね!? もう本当勘弁してほしい。ドナドナされる羊よりなお酷い気分だ。
「なるほど、ケンスケくんから発信する分には認識阻害も効果があるんだね」
「あ、はい」
急に真面目に検証されると、凄い反応に困るんですけど。
「ケンスケ……? ふふん、なるほど。私は分かっちゃいましたよ。その子、三人目の日本人ですね! ほーら図星でしょう、そうでしょう!」
……さて、どうしよう。そろそろスルーするのが気持ち的に厳しくなってきた。
ダンマスを挟んだ逆側にいる子供……ほぼ間違いなく原作キャラのミユミさんだと思う。ミユミさんなら今は十歳のはずだけど、ハーフエルフだからか五歳ぐらいにしか見えない。
ここで俺がミユミさんを知ってたら、ダンマスにした話と矛盾しちゃうんだよね。だからスルーしようとしたわけだけど……多分ダンマスは、俺がミユミさんを知ってる事に気付いてるんだよなぁ、何も言ってこないけど。
だから実はスルーする理由はとっくになくなってたりする。理由はないんだけど……。一回こうしようって決めると、その行動を変えるのにはちょっとした勇気がいるよね。あとは、そう、なんかミユミさんからスルーしたくなるようなオーラを感じる。
「今、なんかディスられたような気が……」
「ハーフエルフさんのウザキャラオーラがやばくて、関わるのに躊躇いを覚えてました」
「うぇぇえ!? 真正面からディスられましたよ! ひどい、ひどいです!」
あ、しまった、つい本音が。ちょっと言い過ぎたかもしれない。
「いきなり連れてこられて、こんな扱い受けて、あんまりですよぅ、うえーん、ちらっちらっ」
あ、大丈夫だ。指の間からチラチラこっちを見てやがる。自分で言ってるし。あざといキャラを目指してるのかもしれないが、受ける印象はコメディアンだ。
扱いに困ったのでダンマスを見上げたら、すいっと目を逸らされた。おい。
仕方ないので俺が話をしよう。
「ええっと……なんで着いてきたんですか?」
「連れてこられたんです!」
あ、そうなんですか。俺からだといつの間にか居たようにしか見えなかったので。
「買い物してたらいきなり小脇に抱えられたんですよ! もう、一体なんだって言うんですか!」
何でしょうね。俺はダンジョン行くらしいよ。
二人でじとっとダンマスを見てたら、流石に根負けしたのか口を開いた。
「見かけたからつい……」
「「ひどい!」」
なんだその衝動買いみたいな理由は。
「ははは、トライアルダンジョンに行く予定でな、そこにミユミがいたもんだから丁度いいと思って。準備は出来たんだろ?」
「ちょっ、トライアルダンジョンに行くってもしかしてその子も行くんですか!? どうみても三歳ぐらいですよ!?」
「その子『が』だな。元々一人で行かせる予定だったから」
あ、ミユミさんが愕然としてる。児童虐待の現場に出くわしたようなもんだからなぁ。確かミユミさんにとってダンマスは恩人なんだっけ? そりゃあショックだわ。
んん? もしかしてミユミさんを味方につければダンジョン行きを避けられるのでは? ものは試し、最後まで足掻いてやろう。
「ぼくケンスケ・メイソン、さんさいです。だんじょんにいきたくないのに、おにいさんにつれてかれそうなの、くすん」
「あ、大丈夫ですね」
「なんでや!」
足掻いたら溺れたでござる。こんないたいけな三歳児に皆厳しすぎるだろう。この街では唯一ゴブタロウさんだけが癒やし……あ、あかん。ダンマス信奉者だからダンマスが決定したなら全力で支持するな。この街に味方なんておらんかったんや。
「ほらディスられたりもしましたし、ちょっとは痛い目を見た方が良いんじゃないかと思いまして」
「児童虐待!」
ちょっとした子供のお茶目じゃないか。こう広い心で流しましょうよ。
「それに、ケンスケくんは、ちょっと普通じゃあないですよね」
「いた、転生者だけど、それだって普通の……」
「なんで私がハーフエルフだって分かったんですか?」
……え?
「普通は人間の子供か、エルフの子供、わざわざハーフだなんて分かるものでもありません。日本でも外国人とのハーフを見た時に、ハーフかどうかなんてパッと見では分からないようなもので」
あ。
「そうですね……確証を持って言えるわけですから、ケンスケくんはきっと私のことを知っているんでしょう。その上でハーフエルフさんって呼ぶということは……」
「ということは……」
「あなた原作知識持ちのチート転生者ですね!!」
「ぶふぅううううううう!」
「なーんて……え、ちょ。動揺しすぎじゃ……え、マジですか? 本気と書いてマジなんですか!?」
バレたあああああああああ! 早いよ! 初対面だよ! チートはないけどビンゴだよ!
「二次創作で溢れてた俺TUEEEとか、不遇キャラ救済系ですか!? なろうでは二次創作が検索不可になって、オリジナル小説の商業化の流れができて過疎ってきてた二次創作小説みたいなっ!」
それだとミユミさんが不遇キャラになりますよ。間違ってはないけど。
「原作知識といえば、原作知識が知られると不味いんだって言いながら、知識をひけらかして、ダチョウ倶楽部ばりに積極的に関わっていくかまちょ型主人公って多かったですよね」
おいコラ。色々な方面に喧嘩を売るな! めっちゃ耳が痛い気もしたけど、俺の場合不可抗力だわ!
まだ流星騎士団も出来てない時間軸だから、ダンマスも1000層超えてないはずなんだよ。1000層がゴールかもって思って頑張ってる人に、1200層にいっても目的達成できてないですよなんて言えるか!
「俺とかミユミの事を知ってるから何かあるんだろうとは思ってたけど、原作知識チートって……こんな事もあるんだな。さすがの俺もビビったわ。え? 何? まさかそっちの世界じゃあゲームか何かになってんの? 不思議なダンジョン的な」
ダンマスが何か聞いてきてる。チートは無いですよ。
「いえ、きっとアニメですよ。『トマトちゃんダンジョン探検記』みたいな名前の」
「「それはない」」
「ムキー! なんでそこはハモるんですかー!」
それって初っ端から回想回をいれまくらんと、トマトってあだ名の理由が意味不明すぎるだろ。
あと視聴者がウザさに耐えきれなくなってチャンネル変えるわ。
「じゃあ実際のところメディアは何なんですか!?」
……なんだろう。聞かれる内容がなんかおかしい気がする。ダンマスまで興味津々な感じだし。
「web小説です」
「web小説!? 結構マイナーなんですね」
「小説家になろうってサイトで」
「お、なろうなら知ってますよ。前世の部活で流行って私も投稿してたんですよ」
「(* ´∀`*)さんが書いてました」
「今なんて発音しました!?」
照れるぜって読むらしいよ。商業化したら二ツ樹五輪って名前で出すらしいけど、俺は本出る前に死んじゃったから見てないよ! カバー裏? なんの事か分からないですね。
「むむむ、この世界の作品がドマイナーなのは理解しました」
おい(* ´∀`*)先生に土下座して謝れ! 顔文字に♯がついちゃうだろ! 本当にすいません!
「ふ、しかし、しかしですよ! 商業化からアニメ化の流れもあるはずです!」
「あ、商業化はする話になってましたね。商業化前に俺は死んだのでその後の事は分からないですけど」
「しゃあおらっ! やっぱりこの可愛くてキュートなトマトちゃんが主人公なんだから当然ですね!」
「一瞬前の可愛くない喜び方を鑑みよう!? っていうかミユミさん主人公じゃないし!」
「え゛」
ピシリと固まるミユミさん。そんなにショックか。つーか勢いあまってめっちゃ喋っちゃってるけど大丈夫か、俺。
「え、そんな……宇宙の法則が乱れるじゃないですか」
「そんなにショックか!?」
「だって、プリティでキュートな元日本人で、合法ロリ的なハーフエルフですよ!? 前世じゃ大好きな先輩があんな死に方して、こっちの両親も亡くなって、そのショックを乗り越えてこれから冒険者に鮮烈デビュー(予定)だというのに、私が主人公じゃなければ誰が主人公だって言うんですか!」
「ええっと……」
あなた十歳だし非合法ですやんとか、プリティでキュートな日本人枠は原作じゃ男の娘にとられてますよとかツッコミは色々あるけど……これは……言えないよな。
うん……ん? 本当に言えないのか? 言ったら、ツナがはやく迷宮都市にきちゃったりして原作の流れが変わったりするかもしれないけど、そもそも俺はダンジョンに潜る気がないから主人公グループに関わる気もないし……良いのか?
というか原作知識を黙ってるのって、ダンマスが絶望する可能性があるってのだけが問題で、それ以外は別に良いんじゃないか? 変に原作踏襲しようとしなくても。
お? なんか気持ちが軽くなってきたぞ。いいやいいや、言っちゃえー。
「ツナです」
「まさかの魚!? 私、魚類に負けるんですか!?」
「いやいや、そうじゃなく、渡辺綱さんですよ」
「……うぇ? あ、あぁ、金太郎が友達にいる?」
「いや、サラダ系が友達にいる方です」
「……………………………………」
おお、めっちゃ驚いてる。そりゃあまぁそうか。原作でもグラサン姿になったり暴走してたもんな。って
「ぐすっ……ううううう、うー……せんぱいぃ……」
泣いたああああああああああ!!
あかん言ったらあかんかった! 誰だ言っちゃえーとか言った奴!? 俺だーーー!!!
さっきまで興味深そうに聞いていたダンマスは、今、ポンッと少しの煙を出して消えた。逃げたあああああああ!!
薄情者! 小さな娘が泣いてるというのに、俺にぶん投げやがって、くそっ。ダンマスパワーでかかっていた認識阻害も切れたようで、周りの冒険者がなんだなんだと見てきている。ぐぅぅ。
「ほ、ほらミユミさん移動しよう。めっちゃ見られてる! あ、大丈夫です、ダンマスが子供泣かせて逃げただけなんで気にしないでくださーい!」
とにかくミユミさんを引っ張っていく。ダンマスが〜って言葉には認識阻害がかかった。くそぅ。
「せ゛〜ん゛〜ば〜い゛〜ズビー」
「人の服で鼻をかむなあああああああ!」
「ケンスケ?」
……ツッコミをいれた瞬間に聞き覚えのある声が聞こえた。よりによってこのタイミングでと思わざるをえない。
「ミッシェルさ「ママ」…………ママ」
いや、うん、ここは素直に呼ぼう。ママと呼べば普段のロリ母なら狂喜乱舞してそうな気がするが、今はニコリともしてないもん。
「女の子泣かせたの……?」
あかん。死んだ。
短いのとおまたせしたので申し訳ないです
ミユミさんのウザさが再現できてないのと
うちのミユミさんが暴走したのと
ユキたんの出ない二次創作に意味があるのかと自問自答してました。
小説買いました。ユキたんprpr
覆面買ってYMKオフやろう。
東京なら場所の用意はある(真顔
【挿絵表示】
ユキたん可愛いよユキたん
男の娘本とふた○り本とドS本とドM本をください!
正当な男女物?知らないですね