インフィニット・ストラトス ~神に抗った少年と少女の物語~   作:ぬっく~

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2話

私は誰なのか、思い出せない。

思い出そうとすると何故か頭痛が起こる。

担当医の先生の指示に従って色んなことをやらされるが、特別なことをされたわけではない。

私が知っている言語は日本と一般的な日常会話程度の英語しか喋られない。

検査が終わると担当医はこの部屋から出ていく。

今現在この部屋に居るのは二人の軍人と私だけ。

窓も無く時計も無い。

あるのはベッドのみ。

 

(これか、どうなるのだろう……)

 

私はこの先のことを考えるが、特に思い付かなかった。

 

 

 

 

一方、病院の隣にある軍施設の会議室ではあることが話されていた。

 

「その結果は本当なのかね?」

 

「はい。最新鋭の計測機による結果なので、間違いありません」

 

スクリーンに写し出されていたのは、記憶喪失の少女と何かのグラフだった。

 

「しかし……この者が」

 

「最初は我々も目を疑いましたか、事実です」

 

「IS適正……オーバーSランク」

 

「あの織斑千冬選手の適正を遥かに上回る結果をあの者がだしました……」

 

「それに運が良いのか、あの者は記憶喪失。我々のいい駒になるではないか」

 

会議室では軍の最高責任者、以下数名の軍人が赤髪の少女の処遇をきめていたが……それらが全て水の泡となることは誰も予想していなかった。

 

 

 

 

千冬は考えていた。

あの赤髪の少女のことについてだ。

意識が戻ったことを聞き、何故あの場に居たのかを問い詰める予定だったが、赤髪の少女は記憶を失っていたのだ。

たが、一つ。

赤髪の少女が覚えていることがあった。

それは、私の弟……織斑一夏の名前だけだった。

 

(あの少女と一夏に何か関係があるのか?)

 

一夏の話によれば、あの日が初めてであり、特に接点とかはない。

誘拐の仲間ではないかと考えたが、矛盾が生じる。

誘拐を殺したのはあの赤髪の少女。

自ら手を下したのかは、解らないがあの場に居たのは一夏と赤髪の少女、誘拐犯のみ、

よって誘拐犯の仲間と言う説は考えにくい。

 

(束も知らないか……)

 

ISを個人で持てるのは企業所属か国家代表及び候補生のみとされる。

しかし、赤髪の少女には国籍どころか、身分を証明するものが無かった。

 

(このまま行けば、軍の忠実な僕となってしまうだろう)

 

千冬はある賭けに出ることにした。

 

 

 

 

私はただ寝ることしか、できなかった。

両腕はベッドと一緒に手錠がされており、足も同じく手錠がはめられている。

 

(暇だな……)

 

どれぐらいの時間が過ぎたのか……時計の無い為、解らない。

そんな時だった。

突如、部屋に誰かが入って来たのだ。

 

「すまないが、席を外してもらえないだろうか」

 

監視していた二人に席を外すようにと少しばかり無理を言って頼む女性。

多少の話し合いのち、女性を残して部屋を出て行った。

 

「あの……」

 

「ああ、すまない。私は織斑千冬だ」

 

「はぁ……」

 

千冬は監視員が座っていた椅子を私のいるベットまで持って来て座る。

 

「君には今から二つの選択肢が与えられる。一つはこのままドイツ軍に所属されるか」

 

千冬は人差し指を立てる。

 

「私と共に来るかだ」

 

「え?」

 

私は解らなかった。

身元の解らない私を引き取ろうというのだ。

 

「もちろん、多少の制約が付けられるが、なんとかなるだろう」

 

「え? あの……それは」

 

「強制はしない。君の人生だ、好きに決めるがいい。で、返事は?」

 

「私は……」

 

 

    ◇

 

 

「ここが、日本……」

 

私は後者を選んだ。

千冬姉さんはドイツに借りがあるということで、ドイツに残った。

私の戸籍とかの身分は千冬姉さんの悪友が用意してくれたそうだ。

 

「おい。先に行くなよ、春名」

 

「ん? あ~ごめんね、一夏」

 

同い年だけど、戸籍上は私の兄、織斑一夏が旅行バックを片手に私の後ろから歩いて来る。

そして、私の新しい名前は織斑春名。

ここから、私の新たな物語の始まりだった。


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