インフィニット・ストラトス ~神に抗った少年と少女の物語~   作:ぬっく~

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23話

それは、もう戦いではなかった。

獣の様に暴れ回る白い機体。一夏はギリギリの所で耐え切っていたが、既に限界だった。雪片で一撃一撃を流し、その場を凌ぐ。

 

「はぁはぁ、はぁ。くっ!」

 

「――――――」

 

目では追うことの出来ない速度と叫びが一夏に襲う。

しかし、唯一だがハイパーセンサーにのみそれを感知することができたのが幸いだった。

 

(なんとかしなければ…………)

 

相手は容赦なく、一夏を襲う。

だが、一夏にはこの盤面をひっくり返す方法がない。

このまま行けば…………一夏は確実に死ぬ。

 

(白式…………少しの間だけでいい、耐えてくれ!)

 

一夏はふと、白式に呼び掛ける。

今、この場に立てているは白式のお陰であり、一夏もそれはわかっていた。

だから、責めてお礼ぐらいは言い残しす。

それが、一つの奇跡を生むきっかけとなった。

 

 

 

 

「――――――」

 

「ぐっ!」

 

白式のシールドエネルギーが遂に底を着き、一夏の身体は宙を舞った。

その時、一夏は思った。ここまでかと。

目の前には、大きく手を振りかざそうとする白いIS。無防備になった一夏にはもう防ぐことは出来ない。

 

「ち、くしょ……」

 

一夏は悔しかった。

誰一人として救えず、義妹すら救えない。

ゆっくりと進むその一撃に一夏はそっと目を閉じる。

 

"なら、力を望む?"

 

奇跡は一夏を見捨てなかった。

 

「っ…………」

 

いつになっても痛みが来なかった。一夏はそっと目を開けるとそこには白い砂浜が広がっていた。

先ほどいた、白い空間とは違い、ここには塩の匂い、緩やかに流れる波をはっきりと感じさせる。

 

(ここは……どこだ…………?)

 

幻想的な空間。どこまでも続く浅瀬の世界に、一夏はいた。

誰かの呼び声が聞こえる。

けれど、身体全体が鉛のように重く、思うように動けない。

 

(夢なのか……? 俺は、もう……)

 

そしてまた、誰かの声が聞こえる。

 

「あの子を救わないの?」

 

その声は懐かしく、どこか温もりに満ちている。

そうだ。俺は……春名を救うために。

 

「なら、起きなくちゃね」

 

ああ、なんて残酷な声だろう。

そんな声を聞かされたら―――。

 

「起きない訳にはいかないよなあ!」

 

俺は、全身を縛る鎖を引き千切る。

そうだ、俺は―――。

 

 

 

 

「――――――!?」

 

勝ちが確定していたこの場で、そいつは起き上がる。

しかも、目では追うことの出来ない速さの一撃を―――一夏は掴んだのだ。

一閃。一夏は雪片は振り下ろす。

逃げることの出来ない白い機体はもろに受ける。

 

「どう……なっている…のよ」

 

そして、一夏の白式が輝き今まであったフォルムが変わる。

白式が第二形態へと行こうしたのだ。

 

「ふざける……なぁ!!」

 

そいつは、剣を振り下ろすが―――。

 

「終わりだ」

 

今の一夏にはそれは止まって見えた。

半歩身体をずらし、零落白夜を最大出力で振り抜く。

春名のISは強制的に停止し、解除される。

 

「おっと」

 

強制的に解除されたことにより、春名は放り出される。

一夏は春名をキャッチし、そこからは先程まで感じていたどす黒い気が全く感じ、いつもの春名だと直ぐに分かった。

 

「あれ……一夏? 私は……」

 

「何も覚えていないのか?」

 

いままでの戦闘は何も覚えていなかった。

地上に降りると、一夏はISを解除する。

 

「そうだ! 私……」

 

その時、春名は背にゾッとする悪意を感じる。

バッと上を見上げ、一夏は突き飛ばす。

 

「なっ、何を―――するん……だよ」

 

一夏は春名のいきなりの行動に怒るが、再び春名を目にした時に言葉を失う。

先程まで一夏と春名のいた所には無数の槍が突き刺さっていたのだ。

そして、春名の身体にも同じ槍が貫かれていた。

 

「春名!!」

 

一夏はすぐにその槍を引き抜こうと触れようとするが。

 

「触っては……駄目。これは―――」

 

一夏は春名の忠告を聞かずに槍に触れ。

 

「熱っつ!?」

 

触れることの出来ない温度で、一夏は自分の焼けた手を見る。

 

「本当に役に立たないゴミねぇ。まあ、ここまで侵食出来ただけいいとするわ」

 

上から誰かの声が聞こえる。

そして、一夏は直ぐに何なのか分かる。そこから発される気は今ままで戦っていたそいつと同じだったのだから。

しかし、それよりももっと嫌な気だった。

 

「ゴミだと……お前はなんだ!」

 

「下等生物に名乗る名はないけど……いいわ。ここまで生き残った褒美をあげないといけないわね」

 

そいつは―――。

 

「アテナ。そこのゴミの造り主よ」

 

緑色の長髪。真っ白なローマ風の衣装を着た女性がいた。


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