インフィニット・ストラトス ~神に抗った少年と少女の物語~   作:ぬっく~

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22話

「な、何が起きたんだ!!?」

 

一夏はいきなりのことにパニックを起こす。

ラウラを救った瞬間、目の前にあった……いや、この世界その物が全て一瞬にして消えたのだ。

あるのは、真っ白な世界が広がっていた。

 

「      」

 

「!? ッ!」

 

それは、一瞬のことだった。

一夏は背後に一瞬だが、誰かが近付いてきたことに反応した。それと同時に無意識だが、雪片弐型でガードする。

その反応は正解だった。

 

「は、春名!?」

 

「あれ? 何で反応出来たのかしら?」

 

一夏の首元の近くには、春名の《エイヴィヒカイト》の主力武器である名のない剣があったのだ。

 

「どうしたんだ!? なんで―――」

 

「物わかりの悪い男ねぇ~」

 

明らかにその笑みは、春名のものとは違うとしか言えない程にそいつはそこにいた。

今までに見せた事のない笑み、その笑みは殺人鬼がするような笑みとしか言えない。

 

「お前は誰だ!!」

 

「うん? それを素直に答えるとでも思う?」

 

そいつは、再び一夏に襲いかかる。

一夏はラウラとの試合での蓄積ダメージが残っており、白式のシールドエネルギーもシャルルからもらった分しか残っていなかった。その為、腕の部分展開しか出来ていない。

いくら一夏と言えど、タダでは済まないことぐらい理解できる。

 

「ちょこまかと、うざいわね」

 

そいつは、ISの操縦になれていないのか。単純な攻撃しか出来ていない、そのため一夏は何とか凌ぐことができる。

 

「あぁ! うざったいわね」

 

だが、一夏と言えど時間が経つに連れて限界に近づいていた。

ISのシールドエネルギーの自然回復を待ってくれるような相手ではなが、今なら多少だが完全展開ができる。

だが、そいつは―――

 

Fahr' hin,Waihalls lenchtende Welt(さらばヴァルハラ 光輝に満ちた世界)

 Zarfall'in Staub(聳え立つその城も) deine stolze Burg( 微塵となって砕けるがいい)

 Leb' wohl, prangende Gotterpracht(さらば 栄華を誇る神々の栄光)

 End' in Wonne, du ewig Geschlecht(神々の一族も 歓びのうちに滅ぶがいい)

 Briah(創造)――

 Niflheimr Fenriswolf(死世界・凶獣変生)

 

そいつの姿が一瞬にして消え、一夏は腹にそいつの剣をまとも受けてしまった。

 

「ガッ!?」

 

三度、一夏はバウンスし、ボロ雑巾のように打ちのめされる。

速度を極限まで高める能力だが、それ以外のステータスが極限まで下がるとデメリットのおかげで一夏は助かったが、生身での一撃は相当効いてしまった。

 

「ちっ! まだ生きているのかよ―――」

 

そいつは再び攻撃態勢に入ると、一夏は白式を起動させる。

完全展開なった白式でそいつの一撃を防ぐが、二撃、三撃と防ぐことは出来ない。

 

「いい加減に終われよ!!」

 

「くっ!」

 

一夏はそいつの攻撃を僅かにずらし、腕を捕まえる。

 

「うおおおおおお!!」

 

一瞬でいい。それが一夏の考えた作戦だった。

目では追うことは出来ない。けれど、そいつが消えた訳ではない。

必ず実体ある。なら、捕まえればいい。だから、一夏は捨て身に出た。

そして、その勝機が訪れる。

 

「な!?」

 

一閃。

一夏の一太刀がそいつに当たる。

 

「――――――――――――!」

 

だが、一撃で倒せなかったことが、一夏の一番痛手だった。

この能力にはまだ、隠された力があったからだ。

そして、それを呼び出してしまった。

 

Voruber, ach, voruber!(ああ 私は願う どうか遠くへ) geh, wilder knochenmann!( 死神よどうか遠くへ行ってほしい)

 Ich bin noch jung,(私はまだ老いていない) geh, Lieber! Und(まだ生に溢れているのだから) ruhre mich nicht an.(どうかお願い 触らないで)

 Gib deine Hand, du schon und zart(美しく繊細な者よ 恐れることはない) Gebild!(手を伸ばせ) Bin Freund( 我は汝の友であり) und komme nicht zu strafen.( 奪うために来たのではないのだから)

 Sei guten Muts! Ich bin nicht wild,(ああ 恐れるな怖がるな 誰も汝を傷つけない) sollst sanft in meinen( 我が腕の中で愛しい者よ) Armen schlafent!. (永劫安らかに眠るがいい)

 Briah(創造)――

 Niflheimr Fenriswolf(死世界・凶獣変生)

 

そいつは白く変色し、言葉にならない叫びがその場を支配した。


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