「え~と、ここで間違いないようね。朱乃、着いたわよ」
夏が黒ずくめの集団から母娘を助けてから数日後、助けられた母娘、姫島朱璃と朱乃は夏の家に遊びに来ていた
「・・・・」
「もう、朱乃ったら。押さないのならお母さんが押すわよ」
「だ、だめ!わ、私が鳴らすの」
朱乃がチャイムを押そうとしていたのだが、恥ずかしいのか、指を近づけては遠ざけるといった行動を続けており、見かねた朱璃が代わりに押すと言うと朱乃は自分が押すと言う
「っ!」
覚悟を決め、朱乃はチャイムを鳴らす。すると、
「姫島朱璃様と朱乃様ですね?ようこそ龍宮家。私はメイドのグレイフィアと申します」
扉が開き、グレイフィアが二人を出迎えた
「どうぞお入りください。中で夏様がお待ちになっています」
「お邪魔します」
「お、お邪魔します」
朱璃は普通に朱乃は少し緊張して家の中に入った。二人が入ると、グレイフィアも続いて入り、扉を閉めた
「兄様、これもう食べてもいいですか?お腹がすきすぎて我慢が出来ません」
「お前はもう少し我慢っていうものを覚えろ!!」
「無理です。目の前に美味しそうなお菓子が並んでいるのを見て我慢できる甘党はいません」
「黒歌!見てないで白音を抑えるのを手伝え」
「私はスィーツサンゴを食べるのに忙しいから無理にゃ。う~んこのポリポリした食感最高だにゃ」
「お前も何喰ってんだ!?」
「ふしゃ――!」
「ちょ!?何か力強くなってる!?えぇい、このわたがしの木からとってきた綿菓子をやるから落ち着け」
「(むしゃむしゃ)ふわふわして美味しいです」
「はぁ~~。おぉ、朱乃、いらっしゃい」
似たもの姉妹に呆れていると朱乃が来ていることに気づき挨拶をする
「それじゃあ、互いに自己紹介から行くか。俺は知ってるから、ん」
「んにゃ~~黒歌って言うにゃ(ポリポリ)」
「妹の白音です(むしゃむしゃ)」
「二人とも自己紹介の時ぐらい、菓子食べるのやめろ」
「「無理だにゃ/です」」
「この姉妹は」
呆れて何も言えないのか夏は頭を抱えていると
「ふふふ、夏君のお友達って面白いね」
「友達って言うか義理の家族だけどな」
「初めまして姫島朱乃です」
二人の行動のお蔭か朱乃の緊張もほぐれたのか笑みを浮かべて挨拶をした
「所で堕天使と人間のハーフって本当かにゃ?」
「おい、黒歌、そんなど直球で聞かなくてもいいだろう!?」
遠慮なく朱乃に聞いた黒歌に夏が注意するが
「どんな時もド直球の夏に言われたくないにゃ」
「んだと!?・・・っな!?動けねぇ!?」
黒歌の言葉が頭に来たのか夏は、黒歌の頭を叩こうと手を上げるが、ぴたりと動けなくなった
「どういう事だ?」
「にゅふふ、驚いたかにゃ?夏が食材を捕りに行ってる間、私も必死に戦い方を模索してたんだにゃ。そして、仙術や魔術、闘気とは違う力を会得したにゃ。その名も触覚にゃ!髪の毛から伸縮自在の細い触覚出して操ることが出来るにゃ。今はまだ50本までしか操れないけど、その内、髪の毛全部から触覚を出して操れるようになるにゃ」
「(え~~トリコのサニーの能力を黒歌が使えるようになるってどんだけ。・・・まてよ?原作でも黒歌は仙術、妖術、魔術の達人、それに加えて触覚の力も加わったら・・・最強クラスになるんじゃねぇか?)」
夏は黒歌が知らずの内に強化されていたことに内心おどろいた
「それで、どうなんだにゃ?」
夏との話を終え、黒歌は朱乃にもう一度尋ねる
「貴方の言うとおり堕天使の血が私には流れているわ」
朱乃は正直に黒歌の質問に答えた
「半分でも人間の血が入ってるのが羨ましいにゃ」
「え?」
「だって、私と白音は生粋の妖怪だからにゃ。まぁ、夏は私達が妖怪だと知っても普通に接してくれるし、グレイフィアさんやリアスと言った悪魔にも同様に接してるにゃ」
「そこが兄様の良い所」
「だから、出自で悩むのは止めるにゃ。悩むだけ無駄だからにゃ」
「黒歌、白音、どうして朱乃が悩んでるって解ったんだ?」
今だ、黒歌の触覚に捉えられ動けない夏が聞くと
「「女の勘にゃ/です」」
「勘って・・・・女って怖え~~~」
勘で解ったことを聞くと夏は小声で女と言う生き物の未知の力に戦慄する
「さて話も終えたことだし、皆で夏の取ってきたお菓子を食べるにゃ」
「待ちくたびれました」
「ふふ、二人は先に食べてたじゃないですか」
「食べるのはいいが、先に俺の拘束を解け」
「心の底からあんなに楽しそうに笑うあの子を見るのはずいぶん久しぶりだわ」
椅子に座りグレイフィアの入れたお茶を飲みながら夏達の事を見ていた朱璃
「お茶のお替りはいかがですか朱璃様?」
「頂きます。えっと、グレイフィアさんでしたね」
「はい」
「貴方は朱乃事をどう思いますか?」
「それは一人のメイドとしてですか?それとも悪魔としてですか?」
朱璃の問いにどちらなのかをグレイフィアは尋ねた
「どちらもです」
「では、悪魔として先に言わせてもらいます。種の為、将来性のある子を放置しておけないところですが、夏様がそれをお許しにならないでしょうし、私も行う気もありません。メイドとしては夏様達に新しいお友達が出来たことをうれしく思います。夏様達には友達と呼べる子が少ないですから」
「何故ですか?」
朱璃がグレイフィアに尋ねると
「夏様は冥界にあるとある森で育ちました。そこは強力な猛獣たちが住まう森、夏様は生きるために毎日のように猛獣達と命のやり取りをしていたのです」
「あの歳で」
朱璃は夏の歩んできた道が壮大だったことを聞くと何も言えなくなった
「ですので、人間界に連れて来て良かったと思っています。年相応に遊ぶことのできるここに」
グレイフィアは普段よりも優しい笑みを浮かべて夏達を見る
「そうですね、ここでなら朱乃の出生も持って生まれた力も関係なしに一人に女の子としていられる。朱乃ためにまた来てもいいですか?」
「勿論どうぞ、夏様達の為にもなりますので」
子供組が呑気に遊んでいる中、大人組は最愛の娘、使える主人の為に今出来る事を最大の事をやっていたのだった