「そんじゃあ行ってくる」
リアスとルーシィの変わりに虹の実を捕りに行くと告げた翌日、夏は必要な道具と道中食べる食事などをリュックに入れて見送りをしてくれている4人に告げた
「夏、私も一緒に・・・」
「ためだ。お前にはまだ早い」
一緒に行くと告げようとした黒歌に夏がストップをかけた
「夕方までには戻る。宴会の準備して待っててくれ。メインは虹の実だけどな」
黒歌に告げると、夏は虹の実捕獲の為、行動を開始した
「ふぅ~~結構歩いたな。一息入れるか」
匂いを頼りに夏は森の中を歩いていき、一息入れるために岩に腰掛けて木の枝を集め火をつけて、道中捕獲した『ヘビガエル』と『ベーコンの葉』を焼きはじめる
「(ここまでの道中、動物や猛獣を見なかったな。皆、虹の実の香りにあてられて食べに行ってるってことか)焼けたな、頂ま・・・」
肉も焼けたので食べようとしたら、木々の間から女性とトロルコングが現れた
「・・・二度あることは三度あるっていうが・・・本当見たいだな」
3度目の同じパターンに夏が呆れていると、トロルコングが持っていた巨岩を女性に向け投げる。女性は手のひらから何かを飛ばして岩を壊して行く
「・・・強いなあの人。でも、限界そうだな」
夏は焼いた肉を食べながら戦いを見ていたが女性が限界だと感じ、近くに落ちた巨岩の破片をトロルコングに向け投げた
「人間の子供!?何故このような場所に・・危ない!!」
小石を投げられたことによってトロルコングの標的が女性から夏に変わり、女性はナツがこの森に居たことに驚いた
「まったく、飯の邪魔しやがって」
振り下ろされた両腕を躱し、更に追撃の腕払いをしゃがんで躱すと、夏は鍛えた脚力でトロルコングの頭上まで跳びあがり
「大人しく寝てろ。火竜の煌炎!!」
両手を組んだ状態で炎を纏わせ、脳天に思いっ切り振り下ろした
「っ!?」
悲鳴を上げることなくトロルコングは気を失ったが、意識を失う前に舌で夏を舐めた
「汚ねぇ!?」
体を舐められた夏は急いでバッグから持ってきた『貯水ナマコ』で舐められた体を洗い流した
「脳天に攻撃したから暫くは大丈夫だろうけど、念には念を入れてノッキングしておくか」
夏はノッキングガン(自作)を取り出し、気絶しているトロルコングをノッキングさせた
「さて、一汗かいたことだし飯の続きと行くか。貴方も一緒にどうですか?」
夏は食事の続きをするために石に腰掛け、驚きの顔をしている女性に声をかけた
「あ、え、はい」
「ん、ヘビガエルうめぇ~~~!!」
焼いたヘビガエルを口に入れ、歓喜の声を上げる夏。女性はそんな夏をただ見ているだけだ
「見てないでアンタも食べなよ。遠慮してないでさ」
「・・・では、頂ます。・・・・っ!おいしい」
「それはよかった。食べながらだけど自己紹介と行きますか。俺は夏、龍宮夏だ」
「私はグレイフィア・ルキフグスと申します。夏様はお強いですね、あの猛獣を一撃で倒すなんて」
「強いって言いますけどグレイフィアさんの方が俺よりよっぽど強いだろう?強者のプレッシャー?って言うのを凄く感じるぜ。トロルコングを一撃で倒せたのはグレイフィアさんが弱らせていてくれたおかげですよ」
「そう言っていただけると嬉しいです。この森に入ってからというもの猛獣達との連戦で休む暇もなかったものでしたので」
「(休む暇なく戦ってたってどんだけの数の猛獣と戦ったんだこの人!?)」
「夏様はこの森に住んでいらっしゃるのですか?」
「はい」
「昨日この森で二人の女の子を見かけませんでしたか?」
「女の子・・・もしかして、リアスとルーシィの事ですか?」
「二人を見たのですね!?それで二人は何処に!?」
グレイフィアの質問に夏が答えると、グレイフィアは血相を変えて夏に詰め寄った
「お、俺の家です。二人とも元気何で安心してください」
「そうですか、安心しました」
二人が無事だと知るとグレイフィアは一安心したのかホッとした表情をする
「夏様、二人を保護して頂きありがとうございます。それでお二人を連れて帰りたいのでご自宅まで案内していただけますか」
「いや、それがその今はちょ~~と難しいんですよ」
「難しいと言いますと?」
「実はですね・・・」
夏はグレイフィアにリアスからの依頼内容を話した
「っと、言う訳なんです」
「そうですか。お嬢様にも困ったものです」
夏の話を聞いたグレイフィアはため息を吐く
「・・・夏様、その食材の捕獲に渡しも同行してもよろしいでしょうか?」
「俺としてはグレイフィアさんのような実力者に付いてきてもらえれば嬉しいですが、理由を聞いてもいいですか?」
「お嬢様たちを早く連れて帰りたいのも理由の一つですが。一番の理由はあんな猛獣たちのいる所に子供一人に行かせたくないからです」
「解りました。それじゃあ、同行と捕獲の手伝いをお願いします」
グレイフィアの話を聞いた夏は頭を下げてお願いをした
「はい」
夏の言葉にグレイフィアは笑みを浮かべて了承した
「夏様、一つ聞いてもいいでしょうか?」
「どうぞ」
「トロルコングでしたか?あの猛獣が真っ先に実を食べると言う事はないのですか?」
トロルコングの住処に向かう道中、グレイフィアが夏に疑問に思っていたことを聞いた
「それは無いです。トロルコングは肉食で動物の肉しか食べないんですよ。普通ならそんな場所に動物が進んで近づきません。それでも、近づく動物達は後を絶ちません」
「何でですか?」
「反射運動ですよ。生き物は自分に何かを投げつけられると反射的に避けるものでしょう?食欲も同じ、実の香りを嗅いだ動物は反射的に『食べたい』と言う食欲に支配されるんです。そうだ、俺からも質問良いですか?」
「私に答えられる範囲でしたら」
「グレイフィアさんって結婚してるんですか?」
「・・・・プレイべートですのでお答えできません。」
「してないんですね。もったいないなぁ~~すっげ~~美人なのに。俺だったら何度断られてもプロポーズすると思うな~~」
グレイフィアの反応を見てしてないと解った夏は、自身の思ったこと正直に口にした
「(結婚してないか。原作なら結婚してるのに、どうなってるんだ一体?)」
夏は数年前に自分が転生した世界が生前読んでいた『ハイスクールD×D』の世界だと解った。昨日会った、リアス、そして原作ではいなかった人物がいたので試に聞いてみたのだ
「(・・・馬鹿な俺があれこれ考えても答えは出ないから考えるのやめよう)」
生前から難しいことを考えるのが苦手だった夏は考えるのを止めた
「それよりさっき倒したトロルコングはあのままにしていて大丈夫なのですか?」
「麻痺させたので半日は動きませんから大丈夫ですよ。問題はここからです」
「ここから?」
「グレイフィアさんが相手したトロルコングは下っ端。気絶する前に舌で俺を舐めたでしょう?洗い流したから問題ないですけど、そういった小細工をするのを止めた奴らが一番怖い」
渓谷を向けるとそこには、何十頭ものトロルコングがいた
「こ、これは」
「さ~~て、食事前の運動といきますか」
驚いているグレイフィアを余所に、夏は背負っていた荷物をおろし肩を回す
「準備はいいですかグレイフィアさん?あの中を突っ切りますよ」
「この状況で何で笑っていられるのですか?」
ナツが笑みを浮かべていることに気づいたグレイフィアは夏に尋ねる
「あっちは俺達みたいな生物を一握りで潰せる猛獣。それが何十頭もいる。誰がどう見ても絶望的な状況。だけど、こんな状況だからこそ燃えて来るんですよ!」
夏の瞳には闘士が宿っており、体から炎が噴き出した
「行くぜ!!」
そして、夏は崖から飛び降りてトロルコングの群れに突撃していく。夏の事に気づいたトロルコング達は一斉に夏に襲いかかって行く。夏は焦らずに一匹一匹の動作を見て攻撃を躱し、一匹ずつ確実にノッキングしていく
「(あの歳で、ここまで動けるだなんて。一体どんな生活を彼は送っていたのですか)」
グレイフィアは幼い夏がここまで動けることに驚き、動けずにいたが、トロルコングの殺気に気づき急いでその場を離れると魔法で攻撃していく
「(やはりこの程度ではだめですね)」
一発でトロルコングを倒せなかったのを見てグレイフィアは残念がる。この森に入ってからというもの連戦続きで碌に魔力の回復が出来ていなかったからだ。夏と出会い、食事と休憩を取って回復させたが、全開まで回復できなかった
「(ここは回避に専念した方が良いですね)」
グレイフィアは攻撃はせず、回避することに戦術を変えトロルコングの攻撃を避けていくが、数分もせずに周りを囲まれてしまった。逃げ場がないことを知ったグレイフィアは空に飛んで逃げようと、羽を広げて飛びあがった所をトロルコングに掴まってしまった
「あぁあああああ!?」
ゴリラ以上の握力でリンゴを握りつぶすように力を強めていくトロルコング、その力にグレイフィアは悲鳴を上げるが、途中で力が弱まりグレイフィアは解放された。少しの間だけとはいえ握られたグレイフィアは動く力はなく地面に落ちていくが、そこを夏がグレイフィアを受け止めた
「大丈夫ですかグレイフィアさん!?」
「あ、ありがとう・・ございます・・・夏様」
「(これは拙いな)ボスは一体何処に居るんだ?」
グレイフィアの容態を見た夏は危ない状況だと知り、群れのボスを探そうとするが、そんなことはお構いなしにトロルコング達が襲いかかる
「くそ!」
夏はグレイフィアを抱えたまま、猛襲を避けていくが、体がまだできていない夏ではグレイフィアを抱えたまま長時間動くことは出来ず、息づかいがだんだんと粗くなっていく
「夏様、私の事はいいですので早く虹の実を」
「そんなこと出来ませんよ。やべ!?」
グレイフィアを抱え猛襲を避けることに集中していて上からの攻撃に気づくのが遅れた夏は片腕でトロルコングの振り下ろした4本の腕を受け止め、苦痛の表情をする
「ぐぅっ!?(腕が)」
魔力で強化しているとはいえ、かなりの衝撃が腕に走る。動かない夏を見て好機だと知ったトロルコングは何回も腕を振り下ろす
「こ・・の・・あんまり、調子に、乗るなよ、ゴリラが!!」
夏の怒号と共に体から炎が吹き出したのを見たトロルコングはびっくりして動きを止めた
「火竜の鉤爪!!」
夏は跳びあがり、オーバーヘッドキックの要領でトロルコングの顎を蹴り、撃沈させた
「次はどいつ・・・ん?」
怒りの表情の夏は次に潰すトロルコングを探そうと見回すと、トロルコング達が後ずさっているのに気づいた
「(後ずさってる、何でだ?俺の威嚇じゃまだトロルコング達をビビらせるのに至ってないって言うのに・・・まぁ、いいや)っとなると、木の近くにいるあいつがボスだな」
夏は木の近くに佇んでいる白いトロルコングを見て群れのボスだと判断する
「(もうひと踏ん張りってところだな)」
夏はグレイフィアを抱えたまま、トロルコング達が開けた道を通って、崖の上まで辿りつく
「決着をつけようぜ、頭トロル」
群れのボスと対峙した夏は、グレイフィアを少し離れた場所に置くと、今出来る最大の威嚇をしながら話す
『カァアアアア』
その威嚇に対し、頭トロルも威嚇を始める。無言で行われた両者の威嚇は、夏の勝利で終わった
「ぷはぁ~~~疲れた」
長時間行っていた威嚇勝負が終わると、夏は仰向けになって倒れた
「お疲れ様です、夏様。威嚇だけで従わせるなんて凄いですね」
歩ける程度まで回復したグレイフィアは夏に近づき労いの言葉を言う
「偶然ですよ、偶然。倒すことは出来ても、今の俺じゃあ威嚇だけで勝てませんから。さてと・・」
夏は立ち上がると、目的である虹の実をとるために木に登り、実っている実を二つもぎ取った
「虹の実捕獲完了。早く帰って黒歌達と食べたいぜ」
虹の実から漂う匂いを嗅いだ夏は涎を垂らしながら言う
「これがかつて先代の魔王たちがこの森から持ち帰ったという食べ物」
「帰りましょうかグレイフィアさん。リアス達が首を長くして待ってるでしょうからね」
夏とグレイフィアはトロルコング達に見送られながら巣から離れ、4人が待っている場所に戻って行く
「帰ってきました!!」
交替しながら外で夏の帰りを待っていた黒歌達は白音の声を聞くと我先とばかりに家から飛び出て夏を出迎えた
「あれ?ねぇリアス、あの人って」
「グレイフィア!?何であなたがここに!?って言うか何で夏と一緒なの!?」
夏の隣を歩いている人物に心当たりがあったルーシィとリアスは傷を負っていたグレイフィアに驚き、駆け寄る
「リアスお嬢様、ルーシー様、随分と探しましたよ。お二人へのお説教は後で奥様達にしてもらいます。帰りましょう」
「待ってグレイフィア」
夏から虹の実を渡された虹の実を二人に見せると、グレイフィアは転移魔法を発動する
「私のお願いを聞いてくれてありがとう夏」
「別に。ただ単に虹の実を食べたかったから取りに行っただけだぜ俺は」
「ふふ、そう言う事にしておくわね。お礼はお父様とお母様と話し合ってから送るけど。その前に・・」
夏の返答を聞いて微笑んだリアスはルーシィと一緒に夏を挟み込むと夏の頬にキスをした
『な!?』
キスしたことに黒歌、白音の二人が驚きの声を上げ、夏は口を何回もパクパクさせる
「これは私とルーシィ、二人からのお礼よ」
「うぅう~~恥ずかしい」
「もう、ルーシィったらうぶなんだから。それじゃあ帰りましょうグレイフィア」
「はい。それでは夏様、またお会いしましょう」
夏に一礼すると、グレイフィアはリアスとルーシィを連れて転移魔法で帰って行った
「・・・・」
そしてその場には頬を膨らませた黒歌と白音、放心状態の夏が残された
因みにこの小説のグレイフィアさんは独身です