ゴッドイーター アンソロジーノベル~the memory of love~ 作:鷹師
副支部長が退室した後、一応みんなで自己紹介をしようという流れになった。
久しぶりのロシア支部での初めての部隊長という大任、ちゃんとみんなをまとめられるのだろうか。
とりあえず私から自己紹介しようと口を開きかけたとき、劉と呼ばれた男が片腕を高々と上げた。
「とりあえず私から自己紹介するアルよ~私の名前は劉大成(りゅうたいせい)アル。美人の隊長さんよろしくアル~」
気の抜けるようなゆるーい挨拶とともに劉大成は右腕を前に突き出し拳を作り、左手でその拳を包み込み頭を下げた。
私が不思議そうな顔をしていると劉は自分の国の挨拶だと教えてくれた。
気を取り直して挨拶しないと。
「ありがとうございます、劉さん。私はアリサといいます、初めてでちょっと自信ないですが、よろしくお願いしますね」
「部隊を預かる部隊長がそんなんじゃ先が思いやられる……」
その言葉は深く胸へと食い込んだ。声の主はイワン、副支部長のご子息だ。
「イワン!そんな言い方はないだろう?誰にだって始めてはある!隊長をサポートするのが俺たちの仕事でもあるだろ!」
私を擁護してくれるタカシの反論にフンと鼻を鳴らし、イワンは再び辛辣な言葉を投げかける。
「早くも隊長に媚を売るか、相変わらず人によって態度をコロコロと変える奴だ。まるで犬だな。そうやって父にも取り入ったのだろう?」
「貴様ッ……!」
「言い返せないのか?図星だものな、吠えるなら誰にでもできるぞ駄犬」
挑発的なイワンの言動に、タカシは拳を握り締めわなわなと震えている。今にも殴りかかりそうだ。
これでは部隊がバラバラになってしまう……何とかしなくては……
そのとき、館内放送のブザーが鳴り響いた。私を含め全員がハッとなってスピーカーに注意を向ける。
「北西部雪原地帯にアラガミの反応を確認。独立遊撃部隊クルイローの出撃を要請、目標は中型種の模様。繰り返す…」
幸か不幸かアラガミの襲来で出動要請が出たようだ。気を引き締めて号令をかける。
「クルイロー出動します!ケンカはひとまず置いておくようにしてください!」
「了解、準備してきます」
タカシは納得がいかない様子で唇をかみ締めながら退室した。
「任務に私情は厳禁だ。任務での失敗は許されない」
続いてイワンがブーツをコツコツを鳴らしながら退室。こちらもやはり不機嫌な様子だ。そして…
「私は始めての実戦アル~楽しみアルね~」
実はこの人が一番厄介なんじゃと思いつつ準備をお願いしますと言いため息をついた。
各員が準備を整え現地へと到着。崖の上に陣取りオペレーターの確認を待つ。
「解析完了、中型種『コンゴウ』です。他小型種4匹のコクーンメイデンを確認。お気をつけて皆さん」
「了解、ミッションを開始します」
まずは素早く頭で作戦を立てる。コンゴウは聴覚に優れた力の強い厄介なサル型のアラガミ、コクーンメイデンは
その場で遠距離攻撃を行うアイアンメイデンのようなアラガミだ。コンゴウを相手にしている最中にコクーン
メイデンの攻撃を避けるのは至難の業、ここはコンゴウを引き離しコクーンメイデンを優先的に撃破が得策。
「遠距離攻撃で私がコンゴウの気を引きます。そのうちにコクーンメイデンを掃討してください」
「了解、撃破次第援護に向かう」
イワンが頷く、私情の色は一切ないようだ。
敵の位置情報は全て把握してあるのでそれぞれの担当を伝える。
「コンタクト次第合図します。それまでここで待機、いいですね?」
「「了解」」
「了解アルー♪」
劉以外全員の顔が引き締まりいよいよミッションが始まる。
少し雲行きが怪しい、雪が降る可能性があるので早く仕留めよう。
私は神機を握り締め崖を降りた。