ゴッドイーター アンソロジーノベル~the memory of love~   作:鷹師

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第二章 結成

声が聞こえる。

男の人と女の人の声。

私を呼んでいるみたい……

突然の大きな音、そして悲鳴。

あたりに広がる錆びた鉄のような臭い、そして飛び散る赤。

何かがこっちに近づいてくる。いや、来ないで……

黒い塊に差し込んでいた光が遮られる。

目の前にあるのは恐ろしい年老いた男の顔。

しかしそれはとても大きく、その口にはお父さんとお母さんだったものが……

「いやあぁぁぁ!!!!」

気がつくと視界には黒い化け物ではなく、灰色の天井があった。背中、いや体中にびっしょりと汗をかいている。

 

 

「夢……か……」

ここ最近見なかった悪夢、小さいころの記憶。

両親とのかくれんぼ中に起きたあの出来事は忘れたくても忘れられない。

ちょっと前まではアラガミへの復讐心でいっぱいだったけれども、ある人が私を助け出して変えてくれた。仲間が

いるって気づかせてくれた。

それからはぜんぜん見なかったのに、やっぱり寂しいのかな?

「アリサ?大丈夫?」

コンコンとドアを叩く音の後にタカシの声が聞こえる。

「大丈夫です。ちょっと悪い夢を見ただけだから」

「そっか、悲鳴が聞こえたからびっくりしちゃったよ。もうすぐミーティングの時間だね、先に行って待ってるよ」

声だけでも心配されているのがわかる。迷惑をかけるわけにはいかない。

「うん、ありがとう。すぐ行きますね」

できるだけ明るい声で答え、遠ざかる足音を聞いてから私はベッドから起き上がった。

 

身支度を手早く終えて、ロビーに到着。

全体的に灰色な空間の中心に、大きめの丸いテーブルとそれを囲むように何かの毛皮でできた湾曲したソファー

が4つ置いてある。

奥のソファーは上官用のソファーであり、少し他のとつくりが違うようだ。右にはタカシ、左にはまるでドレスのように上下が分かれていない奇妙な緑色の服を着た男がまるでおまんじゅうのような奇妙な帽子をかぶって座っている。見かけは同い年かそれより下と言ったところか。奥の上官用のソファーに座るわけにはいかないので

 

手前のソファーに腰掛け、ほぼ無意識にタカシを見ると彼は人差し指を立てそれを鼻の前に持っていった。そして視線を左の男へと移すのでつられて私もそちらを見る。

立っていた時には帽子で顔が見えなかったがこの男、目を瞑っているではないか。さらに口の横から一筋のよだれが……

呆れながらも待つこと5分。副支部長がロビーに入ると同時に左の彼が目を覚まし、いよいよミーティングが始まった。

上官用のソファーに腰掛け副支部長が口を開く。

「諸君、朝からご苦労。早速だが本題に入る、近年ロシア支部では強力なアラガミが活発に行動しており、より多くの優秀なゴッドイーターが求められている。そこで、優秀な新人を育成するためにここに新たな部隊を結成することとなった。諸君らはそれに参加してもらうことになる。部隊名は「クルイロー」人類の先駆けになる「翼」に君たちはなるのだ。それでは構成員を紹介する。まずは部隊長、アリサ」

いきなり隊長になるなんて思ってもみなかったので、名前を呼ばれたことに戸惑いつつも返事をする。さらに副支部長の話は続く。

「次、部隊員タカシ。部隊員劉」

緊張気味に返事をするタカシ。そしてその向かいの劉とよばれた彼はゆらりと返事をする。

「そして最後に部隊員イワン。入れ」

すると扉が開き一人の男が入ってくる、顔つきはどこか幼さを残しているがどこか厳しさを感じる。服装も支給されているコートをかっちりと着こなしている感じだ。しかしこの髪型どこかで……

しかし次の副支部長の一言で私のこのもやもやはすぐに消え去った。

「私の息子だ。タカシは知っているだろう?これによりクルイローは結成する。今日は解散」

これが私が始めて部隊長を務めた部隊だった


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