ゴッドイーター アンソロジーノベル~the memory of love~   作:鷹師

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プロローグ

西暦2050年ごろ人類は突如現れたあらゆるものを捕食する細胞「オラクル細胞」の怪物「アラガミ」によって滅亡の危機に瀕していた。人類は反撃のために「神機」と呼ばれる生物兵器を開発したがそれを扱えるものは少なく、その少数の神機使いは「ゴッドイーター」と呼ばれた。

そして西暦2075年現在、神機を開発したフェンリルと呼ばれる企業は世界的に支部を展開、アラガミから人々を防衛するシェルターを建設するなど世界に無くてはならない存在となった。島国である旧日本と呼ばれた場所にあるフェンリル極東支部は、強力なアラガミの頻出地帯として有名であるがそれに対抗するため優秀な神機使いを派遣しているので危険性はあるがその中でも比較的安全な場所であった。ロシア支部から転属してきた少女アリサもその優秀な神機使いの一人である。

 

 

「アリサ君、ロシア支部が君を呼んでいるんだ。行ってきてくれるかい?」

アリサの前にいる不思議な風体の眼鏡をかけた何を考えているのかわからない男。この男、サカキ博士はこう見えてアラガミ研究者兼極東支部の支部長である。

「え?ロシア支部が?」

アリサは思わず聞き返していた。支部長部屋に呼びつけられたときに何かあるとは思っていたがまさかロシアに飛べとは。

「そうなんだ、新種のアラガミが発生したとかでね。クレイドルの君をじきじきにご指名なんだよ」

クレイドルはフェンリル極東支部の独立支援部隊で、名付け親はここにいるサカキ博士。「人と人との繋がりを育むクレイドル(ゆりかご)」となることを願って命名された。私アリサもそこに所属している。

「新種のアラガミというのも実に興味深い、極東はフライアのメンバーもいることだし是非私からもお願いするよ。頼まれてくれるかい?」

フライアというのはフェンリルの直属で動いていた超巨大都市……いわば移動要塞でありそこで起きたクーデター以来フライアに所属していた人たちは極東支部にいる。しかしサカキ博士、新種のアラガミと聞くと本当に嬉しそうな顔をするな~。

「了解です。フライア件からもう1年ですからね。ここはお任せします」

「感謝するよアリサ君。いってらっしゃい」

そんな会話を思い出しながら私はロシアへと向かう航空機の座席に身をゆだねた。今乗っているのはフェンリル特製のジェット機「ファルコム」なんでも昔飛んでいたオスプレイという機体を改造したので滑走路は必要なく、空中でアラガミに遭遇してもいいようにアラガミの目をくらます閃光弾を装備し、スナイパーの神機使いも雇ってるらしい。同僚のコウタが自慢げに教えてくれたけれども本人は乗ったことがない、羨ましがっていたので写真でも撮ってあげようか。

「まもなく離陸いたします。シートベルトを着用ください」

アナウンスが流れ、周りの乗客がシートベルトをつけ始める。私も周りの人に合わせてシートベルトを締め、窓から外を眺めた。アラガミの侵入を防ぐため周りを高い防壁に囲まれた飛行場の中をゆっくりと機体が動き出し、格納庫から天井がない離陸所へ移動する。移動し終わるとアナウンスでカウントダウンが始まり、0を告げると同時に離陸し始め機体が徐々に上昇を始めた。高い防壁よりも高く上昇すると太陽の光が機体に差し込んだ。広がっているのは荒れ果てた荒野と廃墟となった建物の数々、そこを歩き回るアラガミ。そして……

「あっ……!」

バンダナをまいて全身明るい服を着ている人物がファルコムに向かって親指を立てている、あれはコウタだ。見送りも兼ねて飛行場の防衛をしてくれているのだ。その隣では金髪で英国紳士のような服装のハンマー使いエミールが小型の虫型アラガミ「ドレッドパイク」に向かってハンマーを振るっているがいつものように盛大に空降っている。そのアラガミを横から串刺しにしてこっちに笑顔を向けてくる帽子をかぶったスカートの少女スピア使いのエリナもいる。そして遠くでは大きな虎のような姿の大型アラガミ「ヴァジュラ」と戦闘中のフェンリルのメンバーも見える。

見えないだろうが思わず機内で手を振りみんなを応援する。彼らがいれば極東は大丈夫、昔の私なら絶対そんなことを思えなかったけれども今は信頼できる仲間がいる。ここに来られて、彼らに出会えて本当によかった。私は仲間たちに感謝しつつ窓から顔を離した。みんなありがとう、いってきます。たくさんの想いが胸にこみ上げ、思わず背もたれに体を預けて短く息を吐き出す。

ロシアに戻るのは久しぶりだ。確か前に戻ったのは3年前だったかな?初めて……恋をした瞬間でした。


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