東方紅緑譚   作:萃夢想天

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どうも皆様、最終章を書く前に後日談を書くことを
すっかり忘れてしまっていた萃夢想天です。

この話はそれほど長く書くつもりはありません。
先の章で縁のとった行動についての補填と、その後を少しだけ
書き加える程度の、いわばおまけ要素です。


それでは、どうぞ!





幕間「緑の日影道、幻想の中で」

 

 ~【影遊異変】より、数週間後~

 

 

 

 幻想郷の何処かにあるとされる、妖怪の賢者が住まう館。知る人からは「八雲邸」と呼ばれる

 その場所で、先日の異変の後始末に追われていた館の主人とその従者が、押し寄せる仕事から

 ようやく解放され、陽が昇りだした淡い蒼空を見上げながらまったりとくつろいでいた。

 

 

 「こうまで連日各所に赴いての事後処理が続くと、流石の私も過労で倒れてしまうやも」

 

 「不老不死のスキマ妖怪が何を仰いますか。まだお仕事は残っていますよ、紫様」

 

 

 九つの金毛を揺らしながら、主人の戯言に付き合おうともせず事務的に口を開く式神の藍に、

 屋内にいるので愛用している日傘を手に持たず、代わりに扇子を開いて陽に翳している紫。

 ここのところ、先の異変に伴う影響が幻想郷の各地に表れていたことを把握している彼女らは

 異変の元凶である彼ら(・・)と同様に、各方面への謝罪や説明の為の奔走を余儀なくされていた。

 

 

 「残っているのは地獄からの死者についての問い合わせでしょう?」

 

 「分かっていらっしゃるなら疾く遂行なさいませ。面倒なのはお察ししますが」

 

 「本当に面倒なのよね………藍、代わりにやっておいて頂戴」

 

 「丁重にお断りいたします。既に妖怪の山の神々たちへの対応に追われていますので」

 

 

 けちー、と扇子を口元で隠しつつ呟く主君に軽い苛立ちを覚えたものの、すぐさま平静を装い

 表情を無に近づけた藍。だが実際、こうしてくつろぐという無為な時間を過ごす余裕すらも

 許されなかった数日間のことを考えると、この主君といえど仕方ないかと息を吐いて諦観する。

 

 ふと、藍はこれまで疑問に思いながらも、余裕が無かった為に聞きそびれていた「ある事」を

 思い出して、関わりの深い主人ならば分かるのではと推測し、さっそく尋ねることにした。

 

 

 「そういえば紫様、縁の事についてですが」

 

 「あら? どうしたの、急に」

 

 「いえ、先の異変の最中に元凶として動いていた彼の行動に、少々疑問が」

 

 「へぇ?」

 

 

 解決に関わった者たちから【影遊異変】と名付けられた数週間前の異変。その当事者にして

 元凶である、八雲 縁の行いは、異変解決後の数週間の間に本人の口から洗い浚い語られた。

 それによって、第三者視点からでは不明瞭だった彼や本当の黒幕であった影アソビの思惑も、

 そのほとんどが周知されている。無論、彼への聴取に同席していた藍がそれを知らないはずは

 ないのだが、明晰な頭脳を有する彼女をしての「疑問」に、紫の興味が引きつけられた。

 

 

 「本人から聞けばいいじゃない。もうあの子は今までとは違うのだし」

 

 「機械と化した身体を捨て人間として蘇ったという意味では確かに今までとは異なりますね。

  聞こうとも思いましたが、彼は今頃アレ(・・)を連れて復興作業の援助に言っていますので」

 

 「だったら帰るのを待って聞けばいいでしょう。わざわざ彼の留守を狙って私から間接的に聞く

  なんてするより、余程正確な答えを聞けるのよ? まさか、まだあの子が嫌いなのかしら?」

 

 「言い方に語弊が感じられます! それではまるで私が、彼との直接的な接触を望んで拒んで

  いるようではないですか! 勘違いも程々にして頂きたい! 私は、別に、何とも……」

 

 

 紫としては藍からの問いに答える事に否やはない。ないのだが、ここ数日の仕事漬けに対しての

 鬱憤を晴らすちょうどいい玩具になると考え、あえて答えない体を装ってはぐらかしていた。

 そして藍もそんなことは分かっていて、そのうえで主人の言い分の方が正論であるということも

 正しく理解している。しかし、面と向かって話すことを想像すると、途端に言葉尻が細り出す。

 

 分析が得意な彼女は、自己分析に関しても同じで、誰より冷静に物事を俯瞰できる知性を持つ。

 なので、何故自分が彼と直面することを無意識的に忌避しているのかは、予想がついていた。

 

 

 「ただ、ほんの少しばかり、彼への接し方に不安がある事は認めます」

 

 「接し方? あぁ、そういえば貴女、最初の頃は随分と手厳しかったものね」

 

 「お止め下さい………あの時は得体の知れなかった彼を傍に置かれる紫様を案じて………」

 

 「ふぅん? まぁ、そういうことにしておいてあげるわ。それで、疑問とは何かしら?」

 

 

 いかにも愉悦を感じているように目尻を弓なりに持ち上げる紫。藍の言い分は尤もであると

 感じてはいるが、そこには彼女の言葉とは違った感情も影響しているのだと確信していた。

 その点を突いてさらに取り乱す従者の反応を楽しもうかと企むも、いい加減手を引かないと

 機嫌を損ねる頃合いだろうと予測した意地の悪い彼女は、率直に最初の問いに立ち戻る。

 

 主人の物言いに引っかかるものがある藍だが、ここで自分から蒸し返すと恥をかく事になるのは

 間違いなく自分の方であると察した為、溜息を一つ吐き出してから大人しく話を元に戻した。

 

 

 「こちらが捉え切れていなかった間の縁の行動は、彼自身の口から全て話させました。

  それらをまとめてみて、改めて気になった点が幾つか見受けられたものですから」

 

 「そういうことね。私もあの子の真意を丸ごと全部聞いているわけではないから、ある程度は

  私の想像というか推測が混じることになるけれど、それでもいいなら答えてあげましょう」

 

 「それで構いません」

 

 

 ここから、【影遊異変】の語られなかった裏の動きを、彼女らの推測とともに追っていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「当初、私は縁が紫様を裏切っただと事態を単純に考えていたのですが、実際はもっと以前に

  縁に目をつけていた影アソビ………封印が解けかかっていた妖怪の仕業だったのですよね?」

 

 「ええ、そうよ。縁がもう一人の少年、吸血鬼の従者の弟を外の世界からこちら側へと招いた

  際に降り立った場所が、ちょうどアソビが封印されていた場所の近くだったのが原因なの」

 

 「そしてアソビが各地で人妖問わず影を奪い、ついに縁と接触してこの幻想郷の狭間に着いた

  途端に彼に干渉を開始。干渉を弾こうとした彼を上回る速度で侵食し、主導権を奪った、と」

 

 「主導権を奪ったというより、能力によって影アソビが奪ってきた影の残滓に、縁の中にあった

  人間としての部分が引っ張られたのでしょうね。だからこそ、道具だったあの子は悩んだ」

 

 「兎角、縁という器を得たアソビは活動を活発化。幻想郷各地の妖怪に妖精、挙句に神の人柱を

  飲み込み勢力を拡大していき、次いで冥界の幽々子様までも取り込もうとしたのだとか」

 

 「幽々子は冥界の管理を務めているから、恐らくアソビの被害者である奪われた影たちを正しい

  形で死なせてあげられるのでは、と考えたのでしょう。次点で庭師の妖夢、正確には彼女の

  持っている亡霊の迷いを断ち切るあの刀が、目的だったのだと思うわ」

 

 「縁の反応を掴んで紫様と白玉楼へ乗り込んだ時に、両名が無事に居たことでアソビによって

  彼女らと敵対しないのだと確信できて安心していましたが、そういう事でしたか」

 

 「優しいあの子らしいわね。あの時はこっちが急いでいるのにやたらと話に誘ってくるから、

  まさか洗脳でもされたのかと、一周回って疑ったけれどね。その心配もなかったのだけど」

 

 「それまで無差別に影を奪っていたアソビとは異なり、縁はあのアソビの被害者である死した

  者らの影を救済できる可能性のあるものの影を狙って動いていた。という推測が成り立つなら

  守矢の戦神は分からなくもないのですが、低級の神族や妖精の影を奪う意図が不明瞭です」

 

 「低級の神族狩りは単純に自身の力の底上げと、平和的解決が出来なかった場合の戦闘を想定

  して、より多くの勢力から狙われるよう仕向けたのでしょう。あるいはその頃からもう既に

  影アソビに暴走の兆しが出始めていたから、何でもいいから影を奪わざるを得なかったか」

 

 「では妖精、というよりあの氷精は?」

 

 「業腹だけど、あの時はまだ体の大部分が機械だった彼にとって天敵と呼べる力を持っていた

  あの妖精を押さえておきたかったのかしらね」

 

 「そう言えば命蓮寺の面々と関わる直前に遭遇して、弾幕ごっこで敗れていましたね」

 

 「さらに言えば萃香は私の失言で彼の側に着くし………でも一言も無しってのは酷い話だわ」

 

 「日頃の態度を思えば妥当な判断だったかと」

 

 「私の式たちがみんな反抗期になっちゃった。紫ってば、悲しくて涙が出ちゃう」

 

 「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の行動の振り返っていた藍はここにきて、ふと、謎に満ちた行動があった事を思い出す。

 

 

 「紫様、縁は何故アソビに侵されたうえで、わざわざ人里へと向かったのでしょうか?

いえ、より正確に言えば、里の柱と呼べる稗田の当主と半人半妖(ワーハクタク)の二人の元へ向かったのかと」

 

 「これも予想になるけれど、あの子は万が一の為の切り札を用意しておきたかったのよ」

 

 「切り札、ですか」

 

 

 時に飄々と、時にふざけた態度をみせていた紫は、瞼を細めながら己の考えを口にする。

 

 

 「里の歴史の編纂者である稗田阿求と、能力によって歴史を紡ぐも壊すも自由自在な里の

  守護者を自負する上白沢慧音。この二人が力を合わせれば、歴史の改変など思うがまま」

 

 「………つまり縁は、『自分の策が破綻した場合の保険』として、二人に接触したと?」

 

 「十中八九そうでしょう。実際、里の中での影アソビの暴走が予想外だったにも関わらず、

 里の人間たちの避難があまりにも早かったもの。命蓮寺の尼僧がしきりに警告を発していたと

 しても迅速すぎる。であれば、里で発言力の高い両者が予め展開を読んでいたとしか」

 

 「あの二人は縁と接触した折に、彼から直接、今後の展開を聞いていたということですか?」

 

 「可能性の話よ、あくまでね。それでも可能性は高いでしょうけど」

 

 

 口元を隠していた扇子をひらひらと扇ぎつつ、妖怪の賢者とその式は権謀術数を語らう。

 

 

 「総合的に見ても、どうも完全な合理的判断で動いていたとは考えにくいですね」

 

 「そうかしら?」

 

 「はい。保険の用意は妥当ですが、その他の行動が少々突飛と言いますか……」

 

 「その辺りは偶発的なものだったか、あるいは彼とアソビの意識が混濁していた影響か」

 

 「意識の混濁、ですか。なるほど、あの様子ではその線も考慮に及びますね」

 

 

 対外的な事後処理は勿論の事、内々での処理においても記録を残さなければならない以上、

 不明瞭な部分は少しでも削減しなくては意味が無い。記録に記載する内容は当然ながらに

 整合性や資料として納得のいく記述がされている必要がある。意見は多いほど良いのだ。

 

 こうして、やおら紫と藍が八雲邸縁側にて語らっていると、境界の空間の一部分だけが歪み、

 その奥からたった今まで彼女らが話題に挙げていた人物が、音も無く姿を現した。

 

 やや煤けたような緑色の逆立った短髪に、青と緑の中間のような色味の和柄の着物を羽織り、

 達筆で『縁』と書かれた紙で顔のほとんどを隠す、痩身気味でも背が高く血色の良い青年。

 

 

 「お帰りなさい、縁」

 

 「ただいま帰りました、紫様」

 

 

 流麗な表情から一転、花が咲くような笑みと共に出迎える紫に、名を呼ばれた彼もまた

 今までの彼を知る者からは想像だにつかない、人らしい柔和な笑みを浮かべ言葉を返す。

 

 

 「ただいま、藍」

 

 「………ああ。おかえり縁」

 

 

 先程まで主と会話していた藍も、縁からの帰宅を告げる挨拶に対して、普段の堅苦しさの抜けた

 優しげな声色で決まり文句を返す。我知らず彼女の顔は、慈母の暖かさを醸し出していた。

 藍がこのような表情を見せる相手は、彼女自身の式神である(ちぇん)しか存在しなかった為に、

いつの間にか怪しげな微笑に戻っていた紫が、見慣れぬ様子の己が式に悪戯っぽく問う。

 

 

「あらあら。何時ぞやまで敵意を剥き出しに吠え立てていた、白面九尾の式神は何処かしら?」

 

「……………御戯れが過ぎます、紫様」

 

「御免なさいね藍。だって貴女たちの仲、すっかり変わってしまっているものだから」

 

 

 淑女然とした装いで童女の様に愛らしく笑う主の言葉に、毒気を抜かれた様に静々と答える。

 

 

 「もう既に御答えしたではありませんか………わざわざ彼の前で言い直させるなど人が悪い」

 

 「うふふ。狼狽える貴女を見るのも随分久しいものだからつい、ね。許して頂戴」

 

 「私が居ない間、歓談していたのか。水を差すような真似をしてしまったか?」

 

 「変に誤解するな。はぁ、むしろお前が帰ってこなければ、まだ玩弄されていただろう」

 

 「だって縁が私を置いてあちこちへ行ってしまうんですもの。無聊の慰めは必要でしょう?」

 

 

 やれやれ、と溜め息を吐く藍に対し、沸き起こる感情のままに縁は苦笑を浮かべた。

彼が帰宅したという事は、各地への謝罪や事情説明が一先ず終わったであろうと推察した紫。

今は道具ではなく人として己に仕える、忠臣にして想い人へ存分に甘えるべく足取り軽く近付く。

 

彼女の白魚の様な細くすらりとした指が縁の頬へ触れる寸前、彼の足元の影が瞬時に膨れ上がり

破裂したかと思えば、まるでその手を触れさせまいとでもいうように小さな人影が躍り出る。

否。それは実体の無い影などではなく、確かに肉体を持つ実体として、二人の間に立っていた。

 

 

『_________________________________』

 

 

艶も潤いもないのっぺりとした黒の長髪に、相対するように白く、死人の様に蒼褪めた肌を晒す。

ただぼうぼうと伸び盛る黒の毛先は縁の足元にある影と一部繋がっており、現れた存在が常ならむ

モノである事を言外に見せつける。縁を庇い立ちふさがる少女は、薄開きの瞳で紫を見上げた。

 

紫が伸ばす手を触れさせぬとばかりに姿を現したその存在に対し、縁は気さくに声をかける。

 

 

「どうしたんだ、遊不(ゆず)?」

 

 

病的に青白い肌にあどけなさの残る顔立ちの少女【御影(みかげ) 遊不】は、振り返り縁を見やった。

虹彩すらも塗り潰すほどに黒々とした瞳は、やや不安げに形を歪ませながらもひたすらに彼を

見続ける。何処までも一途に向けられる視線から放たれる思いは、言葉よりも如実に感じられた。

 

この少女こそ、先の【影遊異変】の元凶である影アソビに囚われていた、幼子の魂の残滓である。

 

縁以外の者には知られていない、影アソビそのものと、アソビに囚われた魂たちの最期。

焼き付けられた魂の記憶の欠片でしかないモノが寄せ集まったのが、遊不という少女の正体。

彼の主である紫をはじめ、異変解決の際に影アソビと直接対峙した者達は少女がどういった存在か

薄々勘付いてはいる。しかし、縁が監視の任を自ら申し出た事。並びに、自分たちでは助ける事の

出来なかった者達の名残という背景があったからこそ、あえて黙認するという措置が取られた。

 

 

「……………………………………」

 

 

とはいえ、縁を道具として扱う意味が消失し、命として愛せる現状を謳歌せんとしている紫に

とっては、遊不という『少女』の存在は別の意味で容認できるものではなくなりつつある。

 

 

『___________、_____________!』

「ん? ああ、良いだろう。総ての仕事を片付けたら、幻想郷の各地をゆっくり見て回ろうか」

 

 

なにせこの遊不、縁の影の中に常在しているので、真の意味で縁と二人きりになる事が出来ない。

おまけに少女としての人格が強く表れている影響か、やたらと彼にくっつきかまってほしがるので

紫が縁に必要以上に近付く事すら嫌がり、触れようものなら今のように直接阻まれる始末である。

 

 

「紫様、如何なされました?」

 

「………いえ、別に。苛立ってなどいないから」

 

 

ただ不定形で黒一色の影の状態であればまだいくらか精神衛生上の余裕は保たれたというのに、

今でこそボリュームある黒髪に隠れているが一糸纏わぬ丸裸。蝋燭を思わせる肌色にさえ目を

つむれば、数年の間に花開くであろうほど可憐な童女の姿で、子犬が母犬に全身を使って甘える

ようにぴったりとくっついているのだ。これには妖怪の賢者も怒髪天秒読みに成らざるを得ない。

 

そしてなによりも紫の神経を逆撫でするのは、遊不の声が縁にしか届いていない事にあった。

 

少女が口を動かす度、唯一それを声として認識可能な縁は、様々な反応を示しているのだが。

紫からしてみれば、想い人に散々迷惑をかけた輩が小娘になってしきりにせっついているように

しか見えない。取り入ろうという意思があろうがなかろうが、目の上のたん瘤に違いなかった。

 

 

「ねぇ縁? 方々を回ってきて疲れたでしょう、しばらく此処で疲れを癒していきなさいな」

 

 

こめかみに浮き上がりかける青筋を表情筋で、ひくつく口元を扇子でそれぞれ隠した紫は、縁に

八雲邸でくつろぐようにと命令としてではなく、あくまで提案するように語りかける。

かつては道具として盲目的に従順だったけれど、今は己の意思と心を有する人間となった。

それでも八雲 縁の性質上、自身を主と仰ぎ奉る忠誠に些かの陰りも無し。策は完璧であった。

 

だが、現実は違った。

 

 

「有難い申し出ではありますが、生に限りあるこの身に尽くせる事は速やかに行いたいのです」

 

「そう、ね。人の寿命には限りがあるものね。後悔をしないよう尽くすのは良いことよ」

 

「はい。ですので、今度はこの遊不に紫様の治める幻想郷の今をみせてやろうと思いまして」

 

「えっ………」

 

 

妖怪の賢者、目論見が脆く崩れ去った瞬間である。

 

ちなみに紫の背後に立つ藍は、淡々と人らしくなっている縁にいい意味で振り回される主の姿に

絶賛笑いを堪えている真っ最中だった。この場の誰よりも縁の変化に柔軟に適応できているのは、

ともすれば藍なのかもしれない。無論、彼女自身にそんな自覚は毛頭ないが。

 

自然と表情に現れる微笑みに気付く事もないまま、いよいよ物理的に影の少女を排除しようとして

扇子をぴしゃりと閉じた紫を取り押さえるべく、先程より少しだけ軽くなった溜め息を一つ溢す。

 

 

「ふっ…………まったく、随分と賑やかになったものだ」

 

 

境界の狭間にて、束の間の平穏を喧騒の中に感じ入る長閑な日和であった。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか!

これ書くの二度目なんです(小声)
二時間以上ぶっ続けで書いてると何故かPCが重くなった挙句に
勝手にWi-Fi切断するのホントになんなの? キレそう。


というわけで、強引な説明パートと化してしまいましたが、
書きたいものを書けたので筆者としては満足です!
これで本編で出したいキャラクターは総て出すことができました!


さて、それでは皆様。
いよいよ本当に、拙作も最終章へ突入します。

長くも短かった二人の主人公の探し求めた答えが、
見つかる事を祈っていただけると幸いです。



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