東方紅緑譚   作:萃夢想天

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楽しみに待っていてくれた方々、この回を読む前に
一言だけよろしいでしょうか?




ふざけんなよこのクソ低スぺPCが‼‼‼‼‼‼



二時間半の4376文字がパァとか、舐めてんのかって
話ですよねホント………萎えるどころじゃないですよ。


長くなって申し訳ありません、ではどうぞ‼


第八話「紅き夜、魔女と小悪魔」

 

 

____________そこに、美鈴(もんばん)が立っていた。

 

 

 

 

 

身に纏っていた若草色の衣装は、所々が破けて埃まみれになっている。

頭に被っていた中華帽も、頭部から橋に墜落した衝撃によって原型はもはや無い。

そして何より、その髪よりも赤い血が顔を伝って顎から滴っていた。

 

 

「_____(ハイ)‼‼‼」

 

 

 

 

そのボロボロの姿を視認した直後、彼の身体は吹き飛んだ。

美鈴が目にも止まらぬ速さで繰り出した『発勁』という技によって。

この打撃法は、本来ならば一瞬で通り過ぎる力の『波』を

広く長く浸透させる事で、岩をも砕く拳を生み出す業である。

それをモロに、ゼロ距離で喰らわせた。

 

美鈴は全身から立ち上らせていた紅い『気』の放出を止め、構えを解いた。

その後、紫色の長髪の女性のもとへ歩み寄っていった。

 

 

「申し訳ありません、パチュリー様。ご覧の通り、屋敷内への侵入を許してしまい…」

 

「……それはいいけど。あなた、そこまでして大丈夫なの?」

 

「ええ、まあ。傷は浅くはありませんが、気を練ればコレくらい」

 

「違うわよ。あなたじゃなくて、アッチの方……人間でしょ?アレ」

 

「…………ああ‼‼ て、手加減するの……忘れてました…」

 

「………どうするのよ」

 

「……どうしましょう」

 

 

気まずい沈黙が僅かに流れた後、パチュリーは小悪魔が

異常に震えている事に気付いた。元々怖がりな性質の彼女だが

これほどまでに過剰な反応を見せたのは初めてだった。

 

 

「どうしたの、『小悪魔』?そんなに震えて」

「い、いえ…。美鈴さんのあんな怖い顔初めて見て……それで」

 

「ああ、分かるわ。あんなに本気の顔、今まで見たことがないもの」

「ええ⁉そんな、冗談もいいとこですよパチュリー様‼ 私、いつも本気ですって‼」

 

「……その言葉、咲夜に聞かれない事を祈るべきね。………しかしまぁ」

 

 

小悪魔の異常の原因もハッキリして、いつもの雰囲気に戻ってきた為

改めて周囲の状況を確認してため息をつくパチュリー。

 

 

「随分と派手に散らかったわね…。小悪魔、仕事よ」

 

「え?あ、ハイ。散らばった本の整理ですね」

 

そう言って小悪魔と呼ばれた赤髪の少女は、せっせと周囲に

落ちている様々な魔導書を拾い集めていった。

その間、パチュリーは改めて美鈴の姿を確認した。

明らかに戦闘をしてきたと言わんばかりの風体に、パチュリーは疑問を投げかけた。

 

「……それよりも美鈴。あなた、相当手こずったみたいね」

「え?やっぱりそう見えますか?……参ったなぁ」

 

「あの人間、私にはそんなに強そうには見えなかったわ」

 

「見ただけで分かる強さなんて、たかが知れてますよ。……アレは『違う』」

 

「………ふぅん。ま、どうでもいいからあなたも片付け手伝って」

 

 

そう言って自分は適当なスペースに腰を掛け、

手に取った魔導書を読み始めた。

美鈴は小悪魔と少し離れた場所の本を拾おうとしていた。

 

 

その時_______

 

 

「キャアァァッ‼‼‼」

 

 

小悪魔の悲鳴が聞こえた。

美鈴とパチュリーはすぐさま悲鳴の聞こえた場所へ向かった。

そこで二人が見たのは、先程まで息があるかも分からなかった少年が

ジャックナイフで小悪魔を人質に取っているまさにその瞬間だった。

 

 

「そんな‼まだあれほど動けるだなんて…」

 

「……小悪魔、あなたって娘は……」

 

「パ、パチュリー様……助けてください…」

 

ビクビクと生まれたての小鹿のように震える小悪魔。

その様子にパチュリーは呆れ、美鈴はただ茫然とした。

少年は息も荒く、気を抜けば倒れてしまいそうになるほど

憔悴していた。だが、それでもなお歯を食いしばり、立つ。

 

その姿を見た美鈴は、橋の上での闘いから感じていた違和感を

やっと確信出来た。そしてそれを、当の本人に聞いてみた。

 

「……一つ、聞いてみてもいいですか?」

 

「………美鈴?あなた何を_____」

 

「すみません、少し気になることがありまして……いいですか?」

「……………」

 

「…では。貴方は何故、私の『気』による勁が効かないんですか?」

 

沈黙が流れる。

彼は少し考える素振りを見せた後に、口を開いた。

 

 

「……別に効いていない訳ではありません。『慣れている』だけですよ」

 

「…『慣れている』?勁による攻撃にですか?」

 

「……いいえ、『命の殺り奪り』にですよ」

 

 

そう言った彼の表情には、何もなかった。

思考も、感情も、何もかも削げ落ちかのような顔。

彼の一瞬見せたソレに、美鈴は言いようのない『何か』を感じた。

 

 

 

だが、この時に既に終わっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「_______水符『プリンセスウンディネ』」

 

 

 

 

 

魔女(パチュリー)が、呪文(スペルカード)を唱える事が。

 

 

 

「ちょ、パチュリーさm(ピチューン‼)」

 

「何ッ‼⁉ クソッ‼」

 

「小悪魔ぁぁぁ‼‼⁉」

 

 

 

主からの無慈悲な一撃を嘆く使い魔の悲鳴。

人質の楯を容赦なく貫く攻撃に驚いた狩人。

目の前で散って逝った友を想い叫んだ門番。

 

三者三様のリアクションを見せる中、パチュリーは呟く。

 

「さて、それで?この状況には慣れているのかしら?」

 

「…………今のが、『弾幕』ですか…」

 

「あら、知らなかったの?そうよ、今のが弾幕ごっこで使う『スペルカード』よ」

「…………………」

 

 

狩人は悔しそうに唇を噛みしめた。

初めて見た弾幕の威力にも、躊躇の無い味方への攻撃にも驚き

判断を誤った事を悔やんだが、彼が最も悔やんだのはそこでは無かった。

 

 

(クソ………もう『時間』が、保たない‼)

 

 

少年の焦りを感じ取ったのか、美鈴は再び構えた。

パチュリーもまた、いつでも呪文を唱えられるように準備を始めた。

人質がいなくなり先程の弾幕を一部喰らった彼も、臨戦態勢を取った。

しかし、立っているのもやっとな状態の彼にはもはや、

闘えるだけの力は残っていなかった。

 

美鈴が近付き、右拳を滑り込ませて息を軽く吸い込んだ。

『発勁』はいつでも打てる。左手で彼の肩をつかみ、逃がさぬよう引き寄せる。

 

 

狩人は気が付くと、自分の口から言葉が漏らしていた。

 

 

 

「_____________なら」

 

「…………?」

 

 

 

うまく聞き取れないため、彼の口元へ耳を近付ける美鈴。

既に息も絶え絶えな状態だが、漏れ出す言葉には力がこもっていた。

 

 

 

 

「………もし、貴女の目的が……『館の防衛』だけ、なら……ば、どうか………どうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうか__________『姉さん』だけは……」

 

 

 

 

 

少年の左目からは、一滴の涙が零れ落ちる。

彼の『覚悟』を、その全身で感じ取った美鈴は、拳を打ち込んだ。

 

 

「………分かりました。_______フッ‼‼」

 

 

ズドンッッ‼‼‼‼

 

 

 

 

再びゼロ距離で発勁を喰らった少年。

美鈴に覆いかぶさる形で倒れ、抱きかかえられる。

そしてそのまま少年を抱えて図書館を後にしようとする彼女を

パチュリーはあることに気付いて呼び止めた。

 

「……何処に連れていくつもり?」

 

「………かなり負傷しているようなので、咲夜さんの所へ行って看てもらおうかと」

 

「止めておきなさい。あなたも、気付いたんでしょう?」

 

「…………………ハイ」

 

「いいから戻ってらっしゃい」

 

「ですが、負傷しているのは本当で_______」

 

「分かってるけど、もう『来ちゃった』から」

 

「『来ちゃった』?」

 

 

少年の驚くほどに軽くなった体を抱えていた美鈴が振り向くと、

図書館の先程まで自分達がいた場所に、大量のコウモリが羽ばたいている。

そしてしばらくすると、それが集まって一つの影を生み出した。

 

 

純白のナイトキャップに、真逆の色合いした赤いリボン。

ややピンクがかった白色の独特のデザインのドレスに、その腰には

頭部のものよりも何倍もの大きさのリボンを着飾っている。

血よりも紅い眼に、ウェーブに近い質感をした水色のショートヘア。

そしてその背には、一対の黒く大きな_________コウモリのような翼。

 

 

 

彼女こそ、この紅魔館の『当主(ヴァンパイア)』。

自称、『串刺し侯爵(ヴラド・ツェペシュ)』の末裔。

 

 

_________永遠に紅い幼き月『レミリア・スカーレット』が現れた。

 

 

 

 

突然現れた主人の登場に慌てる美鈴。

そちらに一瞥をくれた後で、レミリアはパチュリーの元へ

歩み寄って気軽に話しかけていた。

 

 

「ご機嫌いかがかしら、パチェ?」

 

「…別に。あなたこそ、ご機嫌そうねレミィ」

 

 

互いを愛称で呼び合う二人。

元々はこの館の主人のレミリアが言った、

ここへ一緒に住んで暮らしたい、という提案にパチュリーが乗っただけだが、

友情と言う面で見れば、かなりソレは強い部類だと思われる。

でなければ、魔女と吸血鬼が共に暮らすなどありえない。

 

「フフ、まあね。………丁度いいわ、美鈴。あなたも聞きなさい」

 

「え?で、ですがお嬢様‼ この子の身体は本当に______」

 

「大丈夫よ、死にはしないわ。全て『運命』通りになっているから」

 

「…………分かりました」

 

 

レミリアのほぼ強制の命令に、渋々といった感じで従う美鈴。

そして復活したての小悪魔に紅茶を手配させて、レミリアは

手を顔の前で組み、いかにもな雰囲気を作り出してから話し始めた。

 

 

「いいかしら? その人間はね、実は____________」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「__________咲夜の『弟』なのよ‼」

 

 

 

目を僅かに細め、ニヤリと笑みを浮かべて語るレミリア。

 

 

「やっぱりそうだったのね」

 

「_________え?」

 

「よく見ると、目の釣り上がり具合とか咲夜さんに似てますもんね」

 

「え?ちょ、ちょっと‼」

 

「どうしたのよレミィ、さっきから」

 

「な、なんで二人とも驚かないの……?」

 

 

自信満々に語った衝撃の真実が、実は周知の事実だった。

そんなような気分をレミリアは味わっていた。

 

「何でって、本人がそれっぽい事言ってたからね」

 

「嘘⁉ 本当なのそれ⁉」

 

「ハイ。私達も聞きましたし、確かに言ってました」

 

「そ、そうなの………」

 

 

少ししおれているレミリアを、美鈴は暖かい目で見つめて

パチュリーは特に変わりないいつもと同じ目で見ていた。

二人の微妙な反応と視線を感じて、慌てて冷静さを取り戻そうとするレミリア。

 

 

「と、とにかく‼ この事は咲夜に知らせてはダメよ」

 

「え⁉ 何故ですかお嬢様‼ だってこの子は咲夜さんの……」

 

「だからこそ、よ。……それに忘れたかしら?」

「え………?」

 

「ウチは『実力至上主義』なのよ。何かを為すのならまずは……」

 

「まずは?」

 

 

言葉を区切ったレミリアを急かすように復唱するパチュリー。

だが美鈴はその主の言わんとする言葉の意味に気付いたようだった。

 

 

「まさ、か…………」

 

「そのまさかよ、美鈴」

 

「……そういう事。本気なの?レミィ」

 

「ええ、勿論よ。これは私の決定、誰にも覆す事は出来ない。それが『運命』」

 

 

今度こそ本当に浮かび上がるカリスマ。

彼女にのみ見える先の出来事に、僅かな何かを感じる二人。

それを意にも介さず、自らの思い描く未来に色を付け始めるレミリア。

心の底から愉しそうに微笑み、口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この人間、我が紅魔館の『執事長』として、これから生きてもらうわ」

 

 






ハイ、如何だったでしょうか。

明日投稿予定だったディケイドの方は、
コチラとの進行具合の折り合いを付けるため、
取り止めにすることにしました。

個人の都合で申し訳ありません。



そして、今日の狩人のあるセリフ。

自分の好きなあるアニメの、あるキャラのセリフの
引用であることに気付いた方はいらっしゃるでしょうか?
まぁ、カッコイイ最期でしたよ。それだけです。



次回、東方紅緑譚


第九話「紅き夜、月夜に誓う血の忠誠」

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