東方紅緑譚   作:萃夢想天

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いやぁ~~やっとこっちのゴタゴタが片付きました。

………と言ってもまだ半分ですがね(´;ω;`)


さて、昨日投稿予定だったこの回も一日遅れてしまい
ましたので、もう一つの「仮面ライダー」の方も
投稿が一日ズレてしまうかもしれません……。


ともかく、久しぶりの東方紅緑譚をどうぞ!


第六話「紅き夜、やがて来る嵐の足音」

 

_______________辿り着いた。

 

僕は今、真夜中の森の中を駆けていた。

何故こんな時間に、そんな場所にいるのか?

何の理由も無くこんな場所に来るほど、僕はバカじゃない。

 

僕が此処まで来た理由は、たった一つ。

 

 

『紅魔館』に行くためだ。

 

 

僕はそもそも、今夜は人里の慧音さんの家で一泊した翌朝、

里の人々にこの『幻想郷』の事について更なる情報を得る為、

聞き込みをしようと思っていたのだ。

 

 

慧音さんから、『あの話』を聞くまでは。

 

 

そこから僕の行動は早かった。

まず寝静まった慧音さんの家を音を立てずに抜け出し、通路を駆ける途中、

古書店だろうか?目的の場所の具体的な地図があるはずだと睨んで探ると、

案の定見つけたので、暫く拝借することにして店を出てすぐ、

里の出入り口で見張りをしている門番の隙を突いて、外に出た。

 

この程度の警備ならば、僕の『造られた力(ていどののうりょく)』は必要無かった。

 

そして、地図に従ってこの暗い森を常人の数倍の速度で駆けてきたのだ。

勿論息切れなんて起こしてはいない。僕はそんなヤワな身体には『造られて』いない。

 

 

「_________着いた」

 

 

森を進んだ先にポッカリと開けた空間に付き当たった。

目を凝らすと、僅かに霧を(たた)えている湖のような場所が見えた。

この地図に記されていた『霧の湖』とやらに間違いないだろう。

 

 

そして、その中央付近にそびえ建つ『紅い館』

 

 

今は明かりが付いている為、その全容の一部しか見受けられないが、

そこが目的地だと僕にはハッキリと理解できた。

 

今が『吸血鬼の時間(まよなか) 』だからだろうか。

 

 

 

「………此処まで漂ってくるよ……。誤魔化す事の出来ない『血の匂い』が……」

 

 

 

__________此処に、彼女がいる。

 

 

僕がこの『幻想郷』に連れて来られる事になった原因。

(えにし)が言っていた『姉さん』を探すために。

僕が失った五年間、僕の捨てた『それ以前の時間』。

 

その答えが、この館に。

 

 

 

もう僕の中に迷いは無かった。

 

 

さぁ、行こう。

 

誰でもない、僕の為に。

 

 

今日が輝き、明日が色づくあの日々へ。

 

 

 

 

「待ってて、姉さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中の霧の湖に架かる石橋を駆ける影。

 

音も無く、確実に忍び寄る。

 

霧で曇った視界が晴れ、館と同じ色合いの鉄門扉が見えてきた。

 

そして、

 

 

「…………………」

 

 

名も無き狩人は、無音歩走(スニークング・ラン)を止めた。

 

此処は橋の上。一切の死角が存在しない場所。

 

自分のような『暗殺者』が最も苦手とする戦いの場。

 

その数十メートル先に見える紅い鉄門扉。

 

 

 

そこに__________

 

 

 

 

「______待っていましたよ、『死兆星』さん」

 

 

 

 

 

 

 

____________眠れる龍(もんばん)が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「………これはこれは、寝ずの番……ですか。ご苦労様です」

 

「いえいえ、(ここ)を守るのが私の使命であり仕事ですから」

 

「そうですか、殊勝なお心掛けで……。ですが、色々と大変では?」

 

「ええ、本当に………。毎日毎日怒られてばかりでして……」

 

「立派にお仕事を為されているのに、ですか?」

 

「い、いやぁ……まぁ、何と言うか。そんなところです……」

 

 

何だか人の良さそうな門番だ。

だが決して油断できる相手では無い。

 

僅かに橋の上をそよぐ風になびく、赤い長髪。

両耳の辺りからは、髪を三つ編みにして深緑色のリボンでそれぞれ束ねている。

白い下地の上に若草色の中華風のドレスを身に纏っている。

脚部に入った大胆なソリットは魅惑的な雰囲気と共に、表面には見られない彼女の

鍛え抜かれた脚の筋肉がいつでも此方を狩り取れる、と主張しているようだった。

 

そして頭に被った中華帽に、輝く「龍」の文字が刻まれた星型のエンブレム。

 

 

 

彼女こそ、この紅魔館の『門番』。

 

 

「……と、世間話はこの辺りで…。私は『紅 美鈴(ホン メイリン)』と申します」

 

「ご丁寧にどうも。しかし生憎、僕には名前の持ち合わせが無く、お返事はまた」

 

「いえ、要りませんよ。貴方の『名』も、貴方のもたらす『災厄』も」

 

「………何やら、別の方と間違われているようですね。どうしたものか………」

 

「シラを切っても無駄ですよ。言いましたよね?『死兆星』さん、と」

 

 

彼女の方から話をふっかけてきたくせに、此方の話は聞く耳持たず。

なんと横暴な人だろうか、到底許せそうにありませんね……。

 

なんて、茶番は置いておき、本題に入ろう。

 

 

「この際、僕が何者かはどうでもいい。それよりも大事な事が」

 

「おや、意外と素直ですね。分かりますよ、『今のは本当』ですね」

 

「…………僕は確かめたい事があって、此処まで来ました」

 

「そうですか。ですが、それなら本来は館の所有者____『お嬢様』に了承を

得てから来ていただくのですが?有りませんよね?こんな時間に来る時点で」

 

「ええ、了承なら大丈夫です。直接行って貰ってきますよ、今からね」

 

「話通じてませんね。分かりやすく『帰れ』と言わなきゃダメですかね?」

 

 

言葉の端々に怒気を滲ませながら、拳を構える美鈴。

やれやれ……と悪態をつくかのような素振りで、僕は彼女に向き直る。

その態度が更に彼女の機嫌を悪くしてしまったのだろうか。

足を開いて、拳だけでなく体全体で美鈴は『構えた』。

 

「いいですよ、言葉がダメなら『こっち』で語りましょう」

 

「……せっかちな人ですねぇ。そういうの、『死に急ぐ』って言うんでしたっけ?」

 

「ご安心を。ちゃんと歩いて帰れる程度には加減出来ますから」

 

今まさに僕に掴みかからんとする勢いの美鈴。

僕はそれをさらに煽って、間合いを詰めようとする彼女の意識を、

僕の『手』から言葉を発する口へと移す。

 

 

「大した自信ですね。自惚(うぬぼ)れでなければいいですが……」

 

「………今からお見せします_________よっ‼」

 

 

 

ほんの僅かな重心の移動。

ほんの少しの歩幅の進行。

ほんの小さな、彼の油断。

 

 

たったそれだけが、その音速の打突を生み出した。

 

 

いわゆる、『甲勁突』という一つの技。

 

しかし、鍛え抜かれて無駄の無くなったこの一撃はもはや、

 

 

(ワザ)』と呼ぶに相応しいほどに、美しく鮮やかに決まった。

 

 

 

 

勝負はほんの一瞬で終わった。

 

美鈴のスラリと伸びる長い脚での蹴り。それを避けたまでは良かった。

しかし、その蹴りが『右足』なのに対し、彼女の『右側』に避けたのが

最悪の選択だった。それだけだったのだ。

 

「____⁉」

 

自分の喉元に向けて蹴りを放ち、そして避けたはずの右足が、無い。

一瞬前までそこにあったはずのものの消失に戸惑う______時間すら与えず。

 

 

(ハイ)‼‼」

 

「ごッッ__________」

 

 

喉を狙って放った右足を瞬間的に地面へ蹴り降ろし、

身体の重心を、前方へと曲げた右足へと移す。

そして自身の右側『だった位置』にいる彼の方向へ、

左足を小さな弧を描くようにずらし、 止める。

 

後は上半身をネジのように、左足の向いた方向へ。

 

 

右手を握り締めた左拳に添えて、押し込む。

左肘を、振り向き様、彼の腹部へと。

 

 

 

全身の筋力+回転の斥力+人体急所への正確な打突

 

 

 

手応えはあった。

 

これで片付いた。

 

美鈴はゆっくりと息を吐き、姿勢を元に戻す。

背後を振り返れば、腹部の鈍痛に崩れ落ちる少年の姿が_______

 

 

 

 

 

 

「_______いない⁉」

 

 

 

 

勝負はほんの一瞬で終わった。

 

 

 

だが、終わったのはあくまで『勝負』。

 

 

 

ここから始まったのは、ただの____

 

 

 

 

 

「ここですよ」

 

 

 

 

 

___________『殺し合い』だった。

 

 

 

 

左肩を掴まれ、いつの間にか背後にいた少年の左足の薙ぎで

膝を曲げられる。カクン、とブレた上半身に合わせて歪む重心。

左後方に倒れる身体を、肩を引っ張られて不自然な体勢になる。

 

 

彼の左手で、自分の左肩を、掴まれている。

 

そして彼の『右手』は今、肩を掴んでいる左手に向けて急速に進んでいる。

 

 

つまり_________

 

 

 

 

「喝ッッ‼‼」

 

 

 

急に後ろへ倒され、受け身を取れない体勢にされ、

そのうえで真逆の方向に打突をくらったのだ。

美鈴の左肩は当然、ゴキッ、と嫌な音を立てて砕ける。

 

「うぐッ‼‼」

 

 

肩を砕かれながら、身体をねじりそこから飛び退く。

美鈴は困惑していた。理解が出来なかった。

 

背後を取られたからではない。

 

似たような勁による攻撃をくらったからでもない。

 

 

手応えはあった。だが、彼は沈んでいない。

 

 

 

「さて、ウォームアップはここまでだ」

 

「………手加減してたのは、お互い様ですか……」

 

「全力を出さないと、墓石の下で後悔することになるぞ?」

 

「そのようですね……。さぁ、かかって来なさい‼」

 

 

 

 

 

 

 

両者、譲れぬものの為。

 

命の駆け引きが、再び始まる。

 

 

 




紅魔の門番、ここにあり!って感じですかね?


さぁ、いよいよ第一章が佳境に差し掛かりました。
次の回を書くのが今からもう楽しみです‼‼

そして、第壱話から先にかなりの誤字脱字があったので
幾つか修正をしましたので、ご了承ください。

遅れましたが、感想をお待ちしております‼



次回、東方紅緑譚


第七話「華人小娘、今私は此処にいる」

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