東方紅緑譚   作:萃夢想天

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更新が遅れると言ったか、アレは嘘だ(半分)


という訳で、来週までかなり忙しくなる為、
この投稿で暫くはストップします。

楽しみにしてくださる方々には申し訳ないです……。


必ず帰ってきますので、どうかお待ちを!

それでは、どうぞ!


第伍話「緑の道、境界との密会」

 

 

_________『名も無き狩人』を人里まで案内した後

 

 

 

 

 

『八雲 (えにし)』は、そこにいた。

 

そこは、『幻想郷』の何処にも存在しない場所と言われている、

まさに魔境と呼べるような、そんな場所にいたのだった。

何故そんな場所に縁はいるのか?

 

 

その理由は単純且つ、明瞭なものだった。

 

 

 

「…………あら、お帰りなさい縁。早かったのね」

 

「……只今戻りました、『紫様』」

 

 

そこには、彼の仕えるべき主人がいるからだ。

 

 

 

名は、『八雲 紫』

 

出生や生い立ちは一切不明とされる『スキマ妖怪』 という種族で、

『境界を操る程度の能力』を持っている。

 

分かりやすく言ってしまえば、ほとんど何でもありのチート能力である。

物事や事象の境界線を曖昧(あいまい)にしたりして、

現実世界への様々な干渉が可能になったりするのだ。

 

現に、彼女達の住まうこの場所もその能力によって

空間と次元の『境界』を弄った結果生まれた隠れ家なのだ。

 

その場所には本来、彼女の能力による『スキマ』という

出入り口のような裂け目を通らなければ入れない場所なのだが、

縁は自らの『全てを(つな)ぐ程度の能力』を使い、

この場所までやってきたのだった。

 

 

「ご命令通り『十六夜 咲夜』の弟_______『十六夜 紅夜(こうや)』を此方へ」

 

「ご苦労様。調子はどうだったかしら?」

 

「ハイ、特に問題は無いかと思われます」

 

 

主人の命令通りに事を進め、報告をする縁。

その報告に満足げに微笑み、扇子を広げ仰いだ。

 

 

「いいわ、充分よ。下がりなさい」

 

「……………失礼します」

 

 

一礼してから部屋を出ていく縁。

その後ろ姿を、未だ絶やさぬ笑顔で見つめる紫。

 

そこに、一つの影が生じる。

 

 

 

「……………また覗き見?随分良い趣味を持ったわね、『藍』?」

 

「…………………申し訳ありません、紫様」

 

 

影が、ゆっくりとその姿を現す。

 

金色に輝き、艶までも感じさせる九本の尾。

頭部に被った黄色い呪符を張り付けた特徴的な頭巾。

青色よりも濃い『藍色』の不思議な雰囲気の服装をした女性が

紫の背後から音も無く現れたのだった。

 

「またあの男にやらせたのですか、紫様」

 

「ええ、いけないかしら?お気に入りの道具(あのこ)を使っては」

 

「そう言う訳では………。ですが、あんな素性も知れぬ者を____」

 

「貴女は知らなくても、私が知っているから問題は無いわ」

 

「………………………」

 

 

 

藍と呼ばれた女性は、眉間にしわを寄せて

縁の出て行った襖の方を忌々しそうに睨んだ。

 

そして、紫に失礼しますと一言だけ言い残して

現れた時のように音も無く去っていった。

 

 

 

「_________知らなくていいわ、私以外は誰も………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____おい、貴様」

 

 

縁が八雲家の縁側の廊下を歩いていると、背後から凄まじい

殺気を帯びた声で呼び止められた。

 

 

「………何か、用か?」

 

「貴様自身に興味は無い。一度だけ聞く、紫様に何をした」

 

「__________どういう意味だ?」

 

 

突然呼び止められたと思った矢先、自分の主への何かしらの

敵意を意味させるような疑問を投げかけられた。

縁は全く身に覚えが無いため、即座に否定した。

 

 

「私は紫様にお使いいただく為に存在している『道具』…。反抗など___」

 

「黙れ下衆(ゲス)め。貴様が来てから三週間、紫様のご様子が一変したんだ」

 

「………それを私のせいと?」

 

「そう考えるほか、あるまい」

 

 

敵意を剥き出しにして食って掛かる藍。

その様子を廊下の角には、彼女の式神である『(チェン)』が隠れて

二人の成り行きを見ようとしていた。

 

 

「少なくとも、私は存じません……『藍様』」

 

「ッッ‼‼」

 

 

自らが愛情を以って育てた式神の橙と同じ呼び方をされ、

元々頭に上っていた血が、更に頭に流れていった。

 

 

「貴様如きに呼ばれる筋合いは______」

 

「やめなさい、藍。そこまでよ」

 

「紫様⁉」

 

 

そこに件の紫がやって来た。

先程まで浮かべていた笑みは既に消えており、

代わりにそれこそ『鬼』のような形相をしていた。

 

つまり、怒っているのだ。『妖怪の賢者(やくもゆかり)』が。

 

 

 

「いい加減になさい。縁、顔を上げなさい」

 

「………紫さグゥッ‼‼」

 

「‼⁉」

 

 

藍に向かって頭を下げていた縁に顔を上げさせた紫だったが、

縁が言われた通りにした直後、『スキマ』を使ってその顔を踏みつけた。

 

 

「………縁、貴方は一体誰の所有物か、理解しているわね?」

 

「り、理解しております……紫様………」

 

「なら、何故今藍に頭を下げていたの?」

 

「それは…………」

 

主人に対する忠義を疑われていた、などと今の紫に口走れば

収集が付かなくなるかもしれないと藍は思い、橙は怯えていた。

しかし、縁は黙っていた。

 

 

「いい?貴方は私の物なのよ、軽々しく私以外に頭を下げないでほしいわ」

 

「申し訳、ありませ、ん………紫様」

 

「それと、様付けもダメよ。貴方が敬うべき相手も私だけ……いい?」

 

「承知いたし、ました…………」

 

「分かればいいわ……。藍、貴女も良いわね?」

 

「ハ、ハイ!承知致しました……」

 

 

藍の返事にようやく怒りが収まったのか、紫は『スキマ』をしまい

悠然と元来た道を戻っていこうとした。

しかし、ふと歩みを止めて振り向き、縁に告げた。

 

 

「丁度いいわ……縁、あの少年が『目的地』に辿り着いたら、貴方は

白玉楼(はくぎょくろう)』へと向かいなさい。藍、貴女は縁の付き添いをなさい」

 

「付き添い、ですか……?」

 

「あら、不満?」

 

「い、いえ……かしこまりました」

 

「ご命令とあらば、何処へでも」

 

「良い返事よ、縁。藍に場所を聞いてから一緒に行きなさい」

 

「「ハイ」」

 

 

 

藍は、顔を隠し続けるこの少年に嫌悪を

縁は、特に感情も無く命令通りの行動を

 

それぞれ胸の内に秘めながら、移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『_______へぇ~。それじゃ、やっと見つけたのね紫』

 

「ええ……本当に長かったわ。今でも信じられないもの」

 

『信じ続けてきた相手が信じられないの?随分荒んだのね~紫も』

 

「違うわよ。ただ………彼とまた過ごせるなんて、その……夢みたいで…」

 

『可愛いわよ紫。それよりも、その彼に早く会わせてよ~』

 

「明日、そっちへ向かわせるから大丈夫よ」

 

『ウフフ、楽しみねぇ~。妖夢に赤飯炊かせとこうかしら?』

 

「恥ずかしいから止めてちょうだい」

 

『あら残念……。そうだ、ねぇ紫?』

 

「何かしら?」

 

『その子、強いのよね?確か剣も使えるとか……』

 

「……妖夢と張り合わせる気?」

 

『だって、きになるじゃなぁ~い』

 

 

 

 

 

 

 

 

『_________紫が1300年以上も探し続けた人だもの』




( :罪:)<ゆっかりーーん!!!!


という訳で、八雲一家勢揃い(?)です。

藍様が酷いことになってますが、僕は大好きですww


次回は再び狩人のターンです!
…………もう名前出ちゃいましたが。



次回、東方紅緑譚


第六話「紅き夜、やがて来る嵐の足音」

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