東方紅緑譚   作:萃夢想天

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どうも皆様、一週間夏風邪とレスリングしていた萃夢想天です。
ヤツは強敵だった。しかし、奴には配慮と気遣いと優しさが足りなかった。
まさかここまで風が長引くとは思っていませんでした、いやマジで。

二週に渡って投稿できずに本当に申し訳ありません。
今回からは真面目に投稿し(ていけたらいいなと思い)ます!


それでは、どうぞ!





第伍十伍話「禁忌の妹、博麗神社参拝」

 

 

 

 

その日の幻想郷も、いつもと変わらずに安穏としていて平和な時間が流れていた。

春を過ぎ初夏を迎えんとする草花は若々しい緑に萌え、空には一縷の雲と青空が描かれている。

冬の残滓ともいうべき早朝の寒さと静けさが消えた真昼時、幻想郷の住人は活気づいていた。

 

人々が集い暮らす土地、【人里】に於いてもそれは例外ではない。

 

商人や呉服屋、大工に子供、多くの人間が伸び伸びと生きられるこの時間を享受している。

里の大通りを往く誰しもが顔に笑顔を浮かべる中、ただ一人だけ深刻な表情をする者がいた。

その人物を知る人里の誰もが彼女(・・)を見て声をかけようとするも、鬼気迫る表情を見て断念する。

周囲の視線に気を配る余裕も無く、人里を人が出せる最高限度の速さで駆ける長身の女性。

 

その人物とは、聖 白蓮であった。

 

彼女は普段浮かべている聖母の如き笑みではなく、まさしく危機が身近に迫っているかのような

焦燥を湛えた表情を顔一面に浮かび上がらせ、一心不乱に脚を、腕を動かして走っていた。

 

「急がなければ………‼」

 

 

額に大粒の汗が浮かび、頬を伝って流れ落ちることも構わずに聖は走り続ける。

そして彼女は決して短くはない人里の通りをわずか数分で走り抜け、重い門扉をこじ開けた。

人里を囲む塀や木の柵の向こう側は人の領域ではなく、恐れるべき魑魅魍魎の領域なのだが、

聖はその事実に臆することも怯むことも無く、先程と変わらぬ速度で再び駆け出した。

 

人の暮らす集落からわずかにでも離れれば、そこは人の足が踏み込むことのない獣の縄張り。

しかし聖はその土地をみだりに踏み荒らす愚行を犯さずに、空を飛行して目的地へと向かう。

走っている時の三倍ほどの速度で空を駆ける彼女の眼は、ただ一点へと向けられていた。

 

 

「ここから真っ直ぐ、そう遠くない距離に…………いる‼」

 

 

深い色合いをした金色の瞳を見開き、彼女は一目散に空を高速で飛行する。

 

そもそも命蓮寺で住職をしている彼女がなぜこんな事をしているのか、

それは今から数日前に彼女の身の回りで起きた、とある事件が発端だった。

 

今日と同じように平和な昼下がり、数日前の彼女は朝早くから命蓮寺から人里へ赴いていた。

その理由は、彼女が信仰する仏教の教えを里の人々に説いて宗教勧誘するためであった。

彼女が幻想郷の一員として受け入れられて以降、名立たる宗教の一派として苛烈な信仰合戦に

身を投じなければならなくなってしまい、仕方なく信者を獲得するために活動し始めたのだ。

そして今日もいつもと変わらぬ説法を、共回りとして追従してきた雲居 一倫と雲山の二人と

終えた苦労を労い合いながら、本拠地である命蓮寺へ帰宅した。

しかし普段と変わらぬ日常であるはずのその日は、寺内で異変が起こっていたのだ。

 

幻想郷に腰を落ち着けてから門下生として加入してきた幽谷 響子が境内で倒れていて、

その響子を守ろうと謎の『影』に立ち向かっていた同門の村紗 水蜜を発見した。

彼女らの介抱を一倫と雲山に任せ、自身は命蓮寺に現れたその『影』と少しの間対峙し、

駆けつけた命蓮寺の住人たちにその場を任せて、自らは忽然と消えた謎の『影』を追った。

門下生である響子の"影"、即ち精神を文字通りに奪っていった『影』の正体に気づいた聖は、

これ以上被害が拡大しないようにと近くにある里の人々に危険を知らせて回っていたのだ。

つい先ほど粗方の居住者に概ねの事情を告げてきたので、あとは事の元凶を断つのみとなった

ために彼女は自身が感じたことのない強い妖気の塊を探し出そうと里を飛び出した。

 

 

「……………⁉」

 

 

人里から飛び立ってから数分と経たぬ内に、彼女の強化された知覚能力が強い妖気を捉えた。

しかし近付くにつれてその強大な妖気の塊が、すぐ近くに二つあるのだと発覚して驚く。

幻想郷の強者たち、弾幕ごっこのトップスぺランカー達と幾度も対峙してきた彼女だからこそ

分かった圧倒的な力。彼我の距離が縮まる度に理解させられる、凶暴なまでの力量。

数日前に自分が相対した時よりもさらに巨大に、強大になっているのではと焦りの色を浮かべる。

それでも彼女は決して臆することなく、自分が貫く信条と守る理念の為に、空を高速で駆けた。

 

そしてついに、彼女は力の塊がいるであろう場所まで到達し、速度そのままに大地に降り立つ。

 

 

「ようやく見つけました‼ さぁ、今すぐ響子ちゃんの影を返しな……………あら?」

 

 

恐らく不気味で醜悪な、あの『影』が待ち受けているであろうと覚悟していた聖の視線の先に

いたのは、彼女と全く面識のない、金髪の幼子と薄紫髪の少女と緑髪の女性だった。

 

困惑する聖をよそに、三人組の中で一番前を歩いていた金髪の幼子が無邪気に語り掛ける。

 

 

「あなた、だぁれ?」

 

あまりにも場違いな質問に対して、聖は苦笑いを浮かべると共に自らの失態に気付いた。

 

 

__________住職説明中

 

 

 

「なるほどねぇ、事情は分かったわ」

 

「ご理解いただけて何よりです」

 

 

聖との邂逅から数分後、彼女と出会ったフラン、鈴仙、幽香の三人組は話を聞き終えて

互いが敵ではないことを確認し、改めて自分たちの状況を話し合い始める。

 

 

「しかしまぁ、あの妖怪寺の住職がこんなところで何をしているのかと思えば、

他人の"影"を奪うアソビ妖怪ねぇ。私には関係の無いことだけど、大変そうね」

 

「えぇ、とても。きれいなお花畑を切り盛りする大妖怪さんには関係ありませんが、

あの妖怪はとても危険ですので、一応あなたも注意するようにしてください」

 

「…………そうね。それで、私たちは今から博麗神社に向かうのだけれど、あなたは?」

 

「あら、それは奇遇ですね! 実は私も博麗の巫女に今回の事をお話に行こうかと」

「ひじりも霊夢のところに行くの? それなら一緒に行きましょ‼」

 

聖と幽香の大人組が敵意を垣間見えさせつつも会話する中に、フランが笑顔で割り込む。

その屈託の無い笑顔を見れば誰もがそこに邪念が介在する余地などないことが窺い知れる。

幼い彼女の笑みを受けて、その場の誰もが彼女の提案を無下にする気など無くなっていた。

満場一致で立ち上がり、三人組から四人組になった一行はその足先を改めて目的地へ向ける。

 

 

「では、ご一緒させていただきましょうか。よろしくお願いします」

 

「私は構わないわ。あなたはどうかしら、ウサギさん?」

 

「へ? あ、私は別に問題無いです!」

 

「よーし! しゅっぱーつ‼」

 

 

念のためにと幽香に異議を唱えるか否かを聞かれた鈴仙は即座に肯定の意思を見せ従い、

聖が同行することを提案した当人であるフランは、威勢よく出発の音頭を取った。

 

種族も歩幅も立場も違う四人が集い、同じ場所を目指して共に歩みを進める。

もしもフランの姉のレミリアがこの光景を目にすれば、こんな運命を知っていれば、

495年もの時間を自身の妹から奪おうとしただろうか。答えは誰にも分からない。

 

四人はそのまま歩を進め、博麗神社を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、着いた…………あぁ~疲れた」

 

まさしく心の奥底から意図せずまろびでたかのような声で鈴仙は疲労を訴えて腰を下ろす。

永遠亭の薬売りとして日々、里や方々を駆け巡っている彼女ですらこうなってしまうのだ、

四人の中で一番体格的にも経験的にも未成熟なフランはというと、生ける屍状態であった。

虚ろな瞳で視線をさまよわせながら、生気を失った表情で目の前の目的地を見つめている。

 

フラン一行は太陽の畑出立から実に三時間ほどかけて、博麗神社へと到着した。

 

 

「飛べばすぐだったんだけど、もうフランは飛ぶ体力も無かったんでしょうね」

 

「ええ。こんなにやつれてしまって…………後で活性化の魔法をかけてあげましょう」

 

「好きにすればいいけど、この子吸血鬼だから逆効果になったりしないの?」

 

「…………ものは試し、と言いますよね?」

 

「……………それこそ、好きにすればいいけど」

 

 

くたびれ果てた鈴仙とフランを身長差的に上から見つめつつ、美女二人が語らう。

そうしていると、目の前の博麗神社の裏から見知った少女が顔をのぞかせてきた。

 

 

「ちょっと、何? アンタら一体何の集まりよ?」

 

本堂の裏手から顔をのぞかせたのは、神を祀る神聖な場において不可欠な巫女の少女。

 

日本の情緒あふれる和を連想させる水墨画で描かれたように、淡い色合いな漆の黒髪。

その女性の命とも言われる部分を適当な長さで切り揃え、少し残った長い部分は顔の両側に

一総束ねてまとめ、赤い髪飾りで単一の黒の中に鮮やかな彩りを付け加えている。

幻想郷で(数は少ないが)彼女をよく思っていない一部の低俗な妖怪などから揶揄される

【紅白巫女】の名の通りに、赤と白で少々フリルをあしらった巫女装束に身を包む。

しかしその胸元には若干くたびれた黄色のリボンがアクセントがあり、彼女の後頭部には

猫の耳が生えていると見紛うほど巨大で赤いフリル付きの可愛らしいリボンがある。

 

幻想郷の誰もが知る彼女こそ、"楽園の素敵な巫女"こと【博麗 霊夢】である。

 

いきなりやって来たフラン一行を発見した彼女はそれこそ意外な組み合わせの四人を

見て目を皿にするようにして驚き、とりあえず話だけは聞こうと現れたのだった。

だが四人の中で明らかにこの場にいるのがおかしい人物がいることに気付き、叫んだ。

 

 

「アンタ、フランよね? なんでこんなところにこんな奴らと一緒に来てんのよ⁉」

 

 

霊夢が気付いた異常とは、吸血鬼であるフランが夕方に外へ出ていることだった。

しかも彼女は本来、姉のレミリアによって紅魔館の地下に幽閉されているはずなのに、

何故紅魔館の面子ではなく編成理由も不明な連中とここへ来たのか、それも異常であった。

「こんな奴らとは随分な言い方じゃない、霊夢?」

 

「そうですよ霊夢。宗教家たるもの、鳥居をくぐって来た相手をぞんざいに扱っては」

 

 

驚愕のあまりに言葉を荒げた霊夢を糾弾するが如く、幽香と聖は小言を漏らす。

そんな二人の説教に近い長台詞は聞きたくないとばかりに、霊夢が一括する。

 

「ええいやかましい! 理由は後で聞くからとにかくフランを中に入れなさい!」

 

いつの間にか右手に握っていた彼女愛用のお祓い棒をブンブン振り回しながら命令し、

ここで立っていてもどうしようもないと結論付けた幽香と聖はそれに無言で応じた。

疲れ切ったせいか無言で彼女らのやり取りを見ていた鈴仙とフランをそれぞれ抱き上げ、

霊夢に案内されてようやく博麗神社に、本当の意味で辿り着くことができたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________住職説明中

 

 

「ふーん、ふぁるふぉろれ(なるほどね)ー」

 

「……………随分呑気ね、霊夢」

 

「んん? ふぁいふぁ(なにが)?」

 

「…………まぁ、好きにしたら?」

 

ふひひふうほあいも(すきにするもなにも)あはひほはっへへほ(あたしのかってでしょ)?」

 

「分かったから物を食べながら話すのはやめなさい」

 

 

ひとまず霊夢の案内に従いフランと鈴仙を床の間に寝かせてきた聖と幽香の二人は、

戻ってきて座敷にある卓袱台でひとしきりお菓子をつまんでいる霊夢と話していた。

聖と幽香がそれぞれ自分たちの状況とここへ来た目的を霊夢に話し、一段落着いた

ところで、話している最中ずっと気にしていたらしく、聖が霊夢に尋ねた。

 

 

「あの、ところで霊夢? さっきから食べているそれは何なのですか?」

 

「んふー、ん? コレ? コレはクッキーっていう紅茶に合うお菓子よ。

この間の異変解決の宴会で紅魔館に行ったときに出されたのを貰ってきたの」

 

「クッキー、ですか? なんだか黄土を一度濡らして固めて乾かしたような」

 

「それ以上味が落ちるようなこと言ったら叩き出すわよ、この生臭坊主」

 

「なまぐっ⁉ い、いえ。幻想郷ではあまり見ない食べ物だったので興味がわいて」

 

「でしょうね。あ、言っとくけどやらないわよ」

 

「多少空腹でもあなたからご飯をねだろうなんて思っていません。

それにしても、もうすぐ夕飯時なのにいいんですか? お菓子なんて食べて」

 

「あーもーうるさいわねー。私のご飯事情にまで首突っ込むんじゃないわよ」

 

 

自身のつまむお菓子の話題から自分の食卓事情にまで発展しかけ、これ以上は

説教が始まると"巫女の勘"で察知した霊夢は聖の言葉を問答無用で遮った。

まだ何か言いたげな聖とは目を合わせないように目線を外しつつ、やって来た

もう一人の珍客の方へと視線を向け、浮かんだ疑問を即座に投げかける。

 

 

「んで、アンタは一体どういう風の吹き回しよ、幽香」

 

「さっき言った通りよ。あのフランって子の執事に文句を言いに来ただけ」

 

 

何故【太陽の畑】に住まう大妖怪として(悪い意味で)有名人の彼女が幻想郷の

端の端ともいえるこんな場所までわざわざ来たのかという霊夢からの問いに対し、

幽香はぶっきらぼうな口調でありのままを答える。

その回答を聞いた霊夢は淹れたお茶を一口啜って息を吐き、話を続けた。

 

 

「ふーん。ま、私には関係ないか。でも幽香直々とは、恐ろしい限りだわ」

 

「どういう意味かしら?」

 

「深い意味は無い。にしても、あの紅夜が行方知れずねぇ……………」

 

「知っているんですか? その少年の事」

 

 

残り少なくなったクッキーを右手でつまみながら大妖怪の威圧に臆することなく

のんびりとくつろぐ霊夢の肝の据わり具合に感心しつつ、聖が彼女の言葉に

疑問を覚えて問いかける。

 

 

「知ってるも何も、この前の異変の首謀者として決着つけに行ったし」

 

「そういうことでしたか。ではその後少年には会っていないのですか?」

 

「会うわけないじゃない。アンタらが連れてきたフランの執事やってんのよ?

そんな奴と頻繁に会えるわけないし、こっちから会いに行く用事も無かったし」

 

「なるほど、ですが一つ訂正が。私が合流した時はあの子は二人と一緒でした」

 

「私が向日葵畑で会った時はあのウサギさんと一緒にいたわね」

 

「…………何が何だかさっぱりだわ」

 

 

聖と幽香の補足を聞いて考えることを放棄しようと、クッキーをかじりながら

背中を畳に当てるようにして仰向けになる。そこで霊夢は、視線の先で寝息を立てている

フランの柔らかな寝顔を逆さまの状態で見つめ、わずかに笑みを浮かべた。

しかしすぐに表情を真面目なものへと一変させて話を本筋に戻す。

 

 

「…………ま、何はともあれさ。聖、アンタの話とフランの現状を合わせて考えると、

どうにも近いうちに良くないことが起こりそうな気がしてきたわ」

 

「それは、"博麗の巫女としての勘"、ですか?」

 

「……………まぁ、ね」

 

「そうですか。ではやはり、一刻も早い対応が求められるでしょう。

どうか力を貸してはもらえませんか? 異変解決者として、博麗の巫女として」

 

「言われなくてもその『影写しのアソビ』ってのが出たら退治してやるわ」

 

「心強い言葉です」

 

「…………協力するなんて、一言も言ってないわよ?」

 

「あら、私も力を貸してほしいと言っただけで、手を組んでくれとは言ってませんが?」

 

「……………この生臭坊主め、根に持つなんて住職らしくないっての」

 

「祀るべき神も無いまま巫女をやっているより、よっぽど信心家よ?」

 

 

互いに薄い笑顔の下に見え隠れする怒りの感情を確信しつつ会話を終える。

すると横で始終を見ていた幽香が立ち上がり、そのまま歩いて外へ出ていった。

急に立ち去ろうとする彼女の行動が理解できず、残された二人は頭に疑問符を浮かべた。

靴を履いて神社の境内まで歩いた幽香はそこで立ち止まり、振り返ってようやく語った。

 

 

「私は元々、今日一日だけ同伴するって約束だったから帰るだけよ。

それと霊夢、フランが目覚めたら伝えておいてほしいことがあるのだけれど」

 

「…………何よ」

 

「あの子に、『待ってるから、いつでもいらっしゃい』と伝えておいて」

「アンタがそこまで気に掛けるなんて、明日は雨の代わりに花でも降るの?」

 

「それは素敵ね。でも、別に理由なんてないわ。ただ、気に入っただけよ」

 

「気に入った、ねぇ」

 

「ええ、それじゃ」

 

 

日頃から常に差している愛用の日傘を差し、それをクルクルと回しながら参道に姿を消す

幽香の後ろ姿を見つめ、霊夢はただただ彼女の珍しい行動に驚いていた。

そうしていると今度は聖も立ち上がって靴を履き、同じように出て行ってしまった。

アンタまでどうしたの、と霊夢が声をかけると、聖は真面目な顔つきで返答した。

 

 

「あなたの勘は外れない。ならば、早急に手を打つ必要があります。これから私は

命蓮寺へ戻って皆にこれからどうするべきかを問い、打開策を練ろうかと」

 

「あらそう、頑張ってね」

「……………霊夢、先程の件ですが、協力はできませんか?」

 

「してもしなくても、お互い好きに動くから一緒でしょうに」

 

「…………それもそうですね。それでは、お邪魔しました」

 

 

最後に聖は再び手を結ぶ話を持ち掛けたものの、霊夢はそれを手の動作で軽くあしらう。

あからさまな拒否の意を受けた聖は残念そうな表情を浮かべ、そのまま空へ浮き上がった。

来た時とは違って飛んで帰るのか、と小さく呟いた霊夢を残して聖は彼方へと消えていく。

 

 

「_____________あ」

 

 

そして改めて自分の置かれた状況に気付いた霊夢は、若干の怒りを含んでため息をつく。

 

 

「フランとあのウサギ、私が面倒見るの…………?」

 

 

しかしその問いかけに答えてくれるものは、霊夢の近くにはいなかった。

 

 

こうしてフランの、愛しい執事を探す冒険の一日目が終わりを告げる。

彼女の二回目の紅魔館外で明かす夜は、寝床を模索する霊夢のいる博麗神社となった。

 

 

 







いかがだったでしょうか?
久々の投稿かつ風邪からの病み上がりなので、短めにさせていただきました。
いえ、決して思いつかなかったわけじゃないんです。本当なんです。

しかし金曜日の夜に書き始めてなんで土曜の真夜中なんですかねぇ。
本当に自分の計画性と継続力の無さには頭が痛くなるばかりです。


それでは次回、東方紅緑譚


第五十伍話「禁忌の妹、温和な日常」

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