東方紅緑譚   作:萃夢想天

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どうも、萃夢想天です。


近頃やる事が一気に増えてきました。
なのでもしかすると、この東方の小説と
もう一作の仮面ライダーの小説を、

一日ごと順番に更新していく事に
なるかもしれません。

ですが、この小説は最後まで
完結させるつもりです! それでは、どうぞ!


第四話『紅き夜に咲いた、狩人の追憶』

 

____________姉さんがいる‼⁉

 

 

 

僕の目の前に、姉さんがいる?

ありえない。姉さんは死んだんだ。

 

突然現れた姉さんそっくりの女性のせいで、

僕の頭の中は一瞬にして、自問自答の螺旋階段状態になった。

 

 

『………十六夜 咲夜という者の事を聞け』

 

 

 

あの時、(えにし)はそう言っていた。

 

では、今僕の目の前で話しているメイド服の女性が、

まさしくその人なのか。

 

 

__________まるで、姉さんの生き写しだ。

 

 

 

僕は、どうしても姉さんとメイド服の女性を

重ねてしまい、わずかに涙が零れそうになった。

それだけ似ているのだ、彼女は。

 

 

「ご、誤解なんだ慧音さん‼ 俺達はだた____」

「言い訳無用‼‼ さぁ、さっさと持ち場に戻るんだ‼」

 

「へいッ‼」

 

女性の威圧感に気圧されてか、すぐさま元来た道を走り去っていく男達。

なんだかとても申し訳無い気分になったが、仕方ないと割り切った。

僕は本来なら、任務で人を『消す』ことすら多々あるのだから。

今更どうという事も無いはずなのだが………まだ取り乱してるのだろうか?

 

まずは冷静になることが先決だと判断し、ゆっくり深呼吸をする。

すると、先程怒鳴っていた『慧音』という女性が声をかけてきた。

 

 

「全く………。すまなかったな、僕。……あまり見かけない顔だな」

 

「え……あ、ハイ。ついさっき____」

 

僕が元々此処に来た経緯を説明しようとした時、

メイド服の女性が話に割り込んできた。

 

 

「それでは、私はこれで」

 

「あぁ、世話になった。ありがとう」

 

「私がお世話するのは、『お嬢様』の暮らしだけよ。もう二度目は無いからね」

 

「心配するな。その二度目が無いよう、徹底的に叩きこんでおくから」

 

「……………それは、教育的に?それとも、物理的に?」

 

「両方だ」

 

「………とにかく、お(いとま)させてもらうわ。それじゃ」

 

そう言って彼女は静かに立ち去ってしまった。

と同時に、僕も冷静さを取り戻して、一人残った慧音さん?に声をかけた。

 

「あの……」

 

「あ、あぁすまない。まずは君の事からだったな。私の名は___」

 

「『上白沢慧音』さん、ですね?」

 

「おや?まだ私は名乗っていないが……?」

 

「それを含めて、貴女にお話ししたい事が幾つかあります。ですから、その……」

 

「……そうだな。此処で立ち話も難だ、私の家に来るといい。日が沈む前には家まで送ろう」

 

「………僕に家はありません…。家族も………」

 

僕は声のトーンを下げ、顔を俯かせて話す。

まずは彼女の家に言って話す事が何より先決だ。

そして、大体の女性は「家庭的問題」を抱える子供には弱い。

僕が過去の『任務』を通じて学んだ事の一つだ。

 

 

「………そうか、分かった。今夜は私の家に泊まるといい。寝床も食事もある」

「いいんですか、僕なんかを……」

 

「何、教育者として、困っている子供は見捨てられんのさ。職業柄な」

 

___________よし、かかった。

 

 

 

内心で当初の目的の最初の難関をクリアしたことに喜びつつ、

顔を上げ、声を先程とは反対に弾ませて言った。

 

 

「ありがとうございます‼ 本当に助かります……」

 

 

 

 

 

__________貴女のヌルさにね。

 

 

 

 

 

慧音さんに連れられて辿り着いた彼女の家は、

中々大きな家だが決して派手ではなく、寧ろ質素なものだった。

 

日も沈み切り、辺りが暗くなった頃、慧音さんが

僕に夕食の支度が出来たと告げてきた。

 

 

「さぁ、今日は色々あったろう。遠慮無く食べていいぞ!」

 

「ハイ、頂きます……」

 

「そうだ、確か君は私に話したい事があると言っていなかったか?」

 

「ええ、言いました。ですが、その……食べた後でも良いですか?」

「ああ勿論だ。では私も頂こう」

 

 

こうして僕は久しぶりにマトモな食事にありついたのだった。

あの地下施設では、パンの欠片がご馳走だったから。

 

「……………ご馳走様でした」

 

「…………おお、凄い食欲だな。作った身として、こんな綺麗に

平らげられるとなんだか嬉しくなってくるな」

 

「美味しかったですよ」

 

「それは良かった。……さて、それでは、腹もふくれたし……」

 

「ええ。お話ししましょう。聞きたい事もありますから」

 

 

 

_______教師説明中

 

 

 

「………なるほど、山に入って遭難したところに謎の青年が現れ、

君をこの『幻想郷』へと導き、この人里まで案内してくれた……と」

 

「ええ、そんなところです。しかし、まさか本当に別世界だったとは……」

 

「正確には、『別の』世界では無いけどな。だが、概ねそんな解釈でもいいだろう」

 

「外の世界から忘れ去られた歴史や物、伝承や伝説が流れ着く土地……」

 

「故にこの世界には、外の世界の人間達の信じなくなった存在、

『魔法』や『妖怪』、『死神』や『吸血鬼』なんかも此処では存在できるという訳だ」

 

「『吸血鬼』だと‼‼⁉」

 

 

不意に耳に入って来たのは、「最も忌み嫌う存在」の名だった。

 

僕から『人間としての人生』を奪い、

僕からたった一人の『大切な人(ねえさん)』を奪った奴らが……。

 

この『幻想郷』で、忘れ去られてのうのうと生きているだと‼⁉

 

 

「……どうしたんだ急に…………。『吸血鬼』がどうかしたのか?」

 

気付けば僕は立ち上がり、荒っぽい呼吸で

肩を震わせつつ、顔をこれでもかと歪ませていた。

 

 

「………失礼、なんでもありませんよ。お気になさらず」

 

「……そうか?まぁ、私が詮索すべき事ではないか」

 

「助かります……」

 

「さて、外の世界の話はまた明日だ!今日はもう遅い、もう寝ようか」

 

「ハイ……。あ、そうだ。最後に一つ良いですか?」

 

「なんだ?」

 

先程までの話ではずっと伏せていた事を、

やはりどうしても聞きたくなってしまった。

聞かなければ、眠れないと思ったからだ。

 

 

「………『十六夜 咲夜』という方をご存知ですか?」

 

「咲夜?それなら君も見たはずだな。ほら、夕方の。

メイド服とやらを着ていた、銀髪の若い娘だ」

 

「今何処にいるか分かりますか?」

 

「それは分かるが、何故だ?」

 

「それは……」

 

 

逆に慧音さんに聞き返されてしまった。

だが、ともかくあの姉さんそっくりの女性が僕の探すべき

『十六夜 咲夜』であることは確定した。

後は適当にごまかしておけばいい。

 

「ど、どうしてもお礼がいいたくて!それで……」

 

「ああ、あの時の礼か。……気持ちは分かるが、止めておくんだ」

 

「何故です?」

 

「アイツはな……普通の人間とは、少し違うんだ。働いてる場所が…」

 

「……………何処なんです?」

 

 

 

この後僕は、一番聞きたくない真相を知った。

 

 

 

 

 

「_________『紅魔館』。吸血鬼の住む館だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________少年が慧音の家に辿り付く少し前__________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、咲夜さん。お帰りなさい」

 

「あら『美鈴』。珍しく起きていたのね」

 

「アハハ……手厳しいですねぇ、本当」

 

「別に私は厳しくないわよ?……怠け者以外には、ね」

 

「………………」

 

 

咲夜と呼ばれた女性と、中々棘のある会話をしている

中華風の衣装に身を包んだこの女性の名は、『紅 美鈴(ホン メイリン)

 

彼女の後ろにそびえ立つ『紅魔館』の門番であり、

かなりの拳法の達人でもある。

 

「あ、そう言えばですね!『お嬢様』がお呼びでしたよ」

 

「本当に?おかしいわね……まだお目覚めの時間じゃないはずよ?」

 

「なんでも早く目が覚めたとかで。濃い目のお紅茶を出すようにと」

 

「ええ、分かったわ」

 

「しかし、大変ですよね咲夜さんは。かと言って咲夜さんの

代わりが務まるような人もいませんしねぇ……」

 

「せめて門番がもう少し働いてくれたら……ねぇ?」

 

「い、いやぁ………。しかし、咲夜さんも欲しいと思ったことは

ありませんか?家事やら掃除やらに追いやられてばかりで」

 

「そうね、多少はあるかもしれないわね」

 

 

「いや~、咲夜さんに妹さんか『弟』さんでもいれば良かったのに」

 

 

 

美鈴の何気ない一言に言葉を返そうとした時、

咲夜の頭に電流が流れるかのような衝撃が走った。

 

 

 

 

 

『_______ホントに行っちゃうの?』

 

『でも!………でも…』

 

(頭が、割れそう……‼ 何なのコレ……一体誰なの⁉)

 

 

 

 

 

 

『______嫌だよ、寂しいよ。行かないで、_________』

 

 

 

 

 

「________くやさん?咲夜さんってば!」

 

「ッ‼‼」

 

 

耳元で名を呼ばれ、意識が引き戻される。

美鈴が呼んでくれなければ、倒れていただろう。

何故か、そんな確信があった。

 

 

「一体どうしたんですか咲夜さん?」

 

「何でもないわ………ただの立ち眩みよ」

「…………なら、いいんですが」

 

美鈴は渋々といった表情で下がった。

こんなところでフラついてる場合では無い、と

咲夜はいつものように、自分を押し殺して『紅魔館』へと戻っていく。

 

そんな彼女を心配そうに見つめた後、

美鈴は門の壁に寄りかかりながら呟いた。

 

 

「……昨日見えた"死兆星"があんなに近くまで……。

それも真っ直ぐ此処に向かっている。コレは………」

 

 

 

_________何か良くないものが、近くまでやって来ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





いぃやぁ……長ぇ………。

執筆に二時間半とか冗談だろう⁉

まぁゴネてもしょうがないですね。
それよりも、いかがだったでしょうか。

次はいよいよもう一人の彼が動き出します。


次回、東方紅緑譚


第伍話「緑の道、境界との密会」

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