東方紅緑譚   作:萃夢想天

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ようやく軌道に乗ったような気がします。



明日は「仮面ライダーディケイド」を
更新しようと思っていますが、
時間が有れば、こちらも更新したいです。

それでは、どうぞ!


第参話「名も無き狩人、瀟洒な真相」

「 __________私の主、『八雲 紫』様にだ」

 

 

 

 少年は、どこか誇らしげに呟いた。

 

『八雲 紫』……。少なくとも僕には聞き覚えの無い名であった。

だが、その人物が何者であれ、只者では無いのは確かだろう。

何せ、『全てを(つな)ぐ程度の能力』とやらを持つこの少年が

主、と敬う相手だ。並の人間であるはずがない。

 

 

「だが、お前には紫様の事を聞くよりも先に

  しなければならない事がある。そうだろう?」

 

「…………そうだね、分かったよ。でもその前に、いいかい?」

 

「………何だ?」

 

僕の目の前に突然現れて、僕の何もかもを変えてしまったこの少年。

彼はどうやら僕の事をそれなりに知っているようだが、僕は知らない。

だが僕は今まで他人に興味を持ったことは一度も無かった。……姉さん以外は。

でも僕にとってそれが普通だったんだ。僕は『狩人(ハンター)』にならねばならなかったから。

故に、僕の口から出た言葉は、ある意味で初めての言葉だった。

 

 

 

「君の名を、教えてくれないかな?」

 

「……私の?」

 

「そう、君の。君は僕を知っているようだが、僕は何一つ知らないんだ。

少しくらいのサービスは有って然るべきじゃないかな?」

 

「…………。」

 

指を顎に添えて、少し悩むようなポーズを取った後、

彼はようやくその名を口にした。

 

 

「_______『八雲 (えにし)』だ」

 

「縁……。顔の布に書いてある通りなんですね、名前」

 

「紫様から頂いた大切な名だ。私が私たる証明でもある」

 

「そうですか…。ではこれからは、縁と呼ばせてもらいますよ?」

 

「ああ、構わない。では、私は戻る」

 

 

そう言って、彼は腕をスッと横薙ぎに振るった。

すると、空間に裂け目が生まれて、縁はそこへ入っていってしまった。

彼が裂け目に消えてすぐに、彼を飲み込んだ裂け目も消えた。

 

 

「………ホントに神出鬼没だね、恐ろしい能力だよ」

 

そう独りごちた僕は、今から行うべき事を再確認して

隠れていた茂みから出た。

柵の手前にある門の見張りがこちらに気付き、

長槍を手に取って、警戒しつつこちらへ近づいてきた。

 

 

「子供……?こんな所に一人で何をしていた⁉」

 

予想通り、上手く釣れた。

後はいつもの『任務』のように_______

 

 

 

 

______________演じるだけだ。

 

 

 

「あ、あの……僕は、僕は______うぅ」

 

 

頭を押さえて地面に倒れる。

突然苦しみだした子供に見張りの男はどうしていいか分からず、

ひとまず門を開けて中へ戻り、他の男達を呼んできて里へと運び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(………よし、中への潜入は問題無い。後は『寺子屋の慧音』という人に会えば……)

 

 

三人の男に担がれながら人里へ入り込んだが、どうも男達は

あらぬ誤解をしているらしい。

やれ「妖怪に襲われたんだ」だの、「よく無事だったな」だのと、

中へ入れたは良いが、身動きが取れない状況に置かれてしまった。

 

(マズイな………なんとかして寺子屋に行かないと……)

 

当初の目的である『上白沢 慧音に会うこと』が、難しくなってしまった。

このまま行くと、里の医療施設かそれに近い場所に連れていかれるかもしれない。

そうなれば、幻想郷(このせかい)について何も知らない僕にとって由々しき事態になる。

 

(そうなる前に脱出を……。一瞬の隙さえあれば僕の"この力"で……)

 

 

担がれ運ばれる中で、脱出するタイミングをうかがっていた時に、

人里の大通りを走っている男達と、その上にいる僕の後ろから

物凄い声量の怒鳴り声が聞こえてきた。

 

 

 

 

「お前達‼‼ 外の警備をすっぽかして、一体何処へ行くつもりだ‼‼‼」

 

 

 

蚕の紡ぎ出すどんな生糸よりも艶やかで、どんな絹糸よりも煌びやかに流れる

青みがかった銀髪に、ショートとロングのどちらの部分にも入った水色のメッシュ。

履いている下駄のような靴と大きく豊満な胸元、更には帽子の上にも結わえられた赤いリボン。

やや青系統の深みのある色合いをした、独特の切り抜きが施されたドレス。

そしてチャームポイントだろうか、古風で質素な寺院を思わせる形をした帽子のような物は

全力疾走による風圧で吹き飛ばないように、左手でガッチリと掴まれている。

 

 

「ヒイッッ‼ け、慧音先生だぁ‼」

 

「何か怒ってるぞ‼何でだ⁉」

 

「な、なんか『外の警備がどうたら……』って……」

 

 

 

 

「「「………………………あ」」」

 

 

どうやら僕を何処かへ運ぶために、里の警備を放棄してきたらしい。

仮にも大の男が三人もそろって何たる様だろうか。

だが、これは僕にとっては都合が良い結果をもたらしたようだ。

探していたターゲットが自ら接近してきてくれるとは、願っても無いことだ。

 

 

「ヤバい、警備の事忘れてた‼」

 

「馬鹿野郎‼ 何で非番のヤツを呼ばなかったんだ‼」

 

「仕方ないだろ‼元はと言えばこの小僧が_____」

 

 

 

なんだか話があらぬ『方向』へすすんでいるようだ………。

 

 

(少しだけ、『逸らして』おこうかな………………ん?)

 

 

 

僕が行動を起こそうとしていた瞬間、僕を担いでいる男達の前へ

誰かが歩いて向かって来る。里の住民達は後ろから追って来る修羅の如き形相の女性に

怯えて、道を開けているというのにだ。

 

男達は後ろの慧音という人にしか意識を向けていない。このままだと_________

 

 

(___________ぶつかる‼)

 

 

 

 

 

 

______________『カチッ』

 

 

 

 

 

 

 

(………………え?)

 

 

 

突然の事で、今何が起こったのか全く分からなった。

 

 

 

何故、慧音の前を走っていた男達の前に慧音がいる?

何故、担がれていたはずの僕が地面に寝そべっている?

何故、何故僕の前に_______________

 

 

 

 

 

「ん?おぉ、そうか、君が『止めて』くれたのか」

 

「……えぇ、パチュリー様用の喘息の薬を貰った帰りだったのよ。

ぶつかった拍子に、ついでに買ったお嬢様の替えのマグカップを壊されてはたまらなかったもの」

 

 

「そうか。まぁ何にせよ助かったよ_________『紅魔館のメイド長(いざよいさくや)』」

 

 

 

 

 

 

 

______________姉さんがいる‼⁉

 

 

 

 




姉と弟、遂に邂逅……。

割と自然な流れで接触できたと自分では
思いますが……どうだったでしょうか。


次回、東方紅緑譚


第四話 「紅き夜に咲いた、狩人の追憶」

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