東方紅緑譚   作:萃夢想天

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二週間ぶりにパソコンに触れました。
これだけ間が空いてしまうとは思ってませんでしたよ。
元々無かった文才がさらに落ちていると思えてなりません……………

まあ嘆いていても始まらないでしょう。
それにこれからはおそらくですが毎週キチンと投稿できるはずなので。


それでは、どうぞ!





第参十七話「紅き夜、祈り支えて」

 

土下座、という体勢は皆様もご存知の事でしょう。

 

読んで字の如く、土に下りて座る、つまりは謝罪の意を込めた体勢。

この体勢は日本が発祥であるかのように思われがちですが、実は違うんです。

 

時は古代ローマ時代。

人間が服を着て社会を成し、建築物に芸術性を見出し始めて久しい時代。

いわゆる奴隷と称される家畜扱いの人間が人口の三分の一を占めていた古代ローマにおいて

土下座という謝罪の体勢は確立されたと言い伝えられています。

とある商人から買った奴隷が飼い主の命令に背いて処分されたそうですが、

それだけでは怒りが治まらなかったのか、飼い主は商人の元へ抗議に行きました。

商人に事の次第を語った飼い主は、『土に頭をこすりつけて私と神に謝罪せよ』と横暴な口調で

命じ、商人はその言葉に渋々従ったそうです。

 

これこそが土下座という一つの文化の誕生秘話。

日本でこの文化が生まれたのは、室町時代後期の武士同士の争いが元だとか。

ですがまあ、それはそれとして____________

 

 

「あ、あの、紅夜さん?」

 

 

だから何だよ、とでも仰るつもりですか。

ええ、その通りです。だから何だよって話です。

店に来店した瞬間に見事な五点投地を決め込んだ僕を射命丸さんが慌てながら見つめていますが、

そんなことですら気に病む必要が無くなるほど切羽詰まっているんです。

僕は今、土下座しています。

朝も日が高いうちから、人目もはばからず。

来店して間もない、『鈴奈庵』という古本屋の入り口で。

 

 

「え、あの、ちょっと?」

 

 

僕の土下座を見るに見かねて、一緒にこの店に来た阿求さんと親しげに談話していた

小柄な少女が声をかけようとしてくるが、僕は一向に顔を上げない。

というか上げられない。上げられるわけが無い。

 

「ねえってば! 店先で土下座はやめてったら‼」

 

 

そうして顔を伏していると少女が恥と怒りを混同させたような表情で怒鳴る。

確かに土下座している僕でも、表の方が騒がしくなってきているのが分かった。

少女の言葉を聞き入れて土下座を止めて話を切り出そうかと迷う。

しばらく土下座のまま考え込み、結論を出した僕はゆっくりと立ち上がった。

 

 

「もう! あなた一体何なのよ‼」

 

「まあまあ、まずはお話を聞いてみましょうよ」

 

「…………と言うか阿求、この不気味な人は誰なの⁉」

 

「私のお客様で今一番幻想郷で話題の人物よ」

 

「え、そうなの?」

 

 

立ち上がって広がった僕の視界に映り込んだのは、僕を見つめる小柄な少女とS(しょう)女。

膝元に着いた埃を手で払うように軽く落として、改めて眼前の本を抱えた少女を見やる。

 

老舗の和菓子職人が編み出した誰もを魅了する飴細工の如くツヤのある栗色のツインテールに、

そこにあるのが不自然であるにも関わらず、絶妙によく似合っている可愛らしい鈴の髪留め。

着物は長い振袖で、濃紅色と薄桃色の市松模様がよく映えている。

生き生きと陽を浴びて育つ若葉を彷彿(ほうふつ)とさせる若草色のスカートを履きこなし、

濃白色のフリル付きエプロンをそれらの上に着て分厚い古ぼけた本を小脇に抱えている。

 

こちらを上目遣いで覗き込んでくる少女に対して、まずは名前を名乗る。

 

 

「どうでしょうか。それと遅ればせながら、僕は十六夜 紅夜と申します」

 

「あ、ご丁寧にどうも。私は本居(もとおり) 小鈴(こすず)です」

「本居さん、ですか。先程はその、取り乱してしまって申し訳ない」

 

 

軽く頭を下げた僕に対して、本居 小鈴__________本居さんが慌てふためく。

そのままの体勢で横にいる阿求さんをチラッと覗くと、歪んだ笑顔でこちらを見ていた。

 

 

「いや、だからその、まずは落ち着いてください!」

 

「はぁ……………そうですね」

 

「あのー、紅夜さん。私は何が何だかさっぱりなんですが………………」

 

 

サディスティックな少女から即座に目を逸らすとすぐ後ろにいる射命丸さんに自然と目がいく。

彼女は僕が土下座を敢行した時からずっとオロオロしっぱなしで、正直愛らしかった。

邪悪な人間の歪んだ笑みを見た後だと、彼女の苦笑いが天使の笑みに見えてくる。

まあそれでも、こと笑顔に関してはこあさんの方が一段上だと言わざるを得ないけど。

 

 

「それもそうでしたね………………ではそこから話しましょう」

 

 

困惑する射命丸さんと本居さんに対して呟き、ゆっくりと振り返る。

そこには僕の言葉を予期していたように微笑む阿求さんの姿があった。

阿求さんは本居さんにお店の奥の間を使わせてくれと頼んで、僕らも同行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、つまりお店に無断で侵入してこの周辺の地理を記載した地図を奪って、

それを不慮の事故で血塗れにしちゃったから土下座をした、ってことね?」

 

「ええ、まあ。有体に言ってしまえば」

 

「紅魔館の執事になる前にそんな事があったんですか」

 

感心したように射命丸さんが呟き、本居さんが話の要点をまとめてため息をつく。

彼女の横には、淹れたての煎茶を上品そうに飲んでいる阿求さんがいる。

そう、僕がこの店の事を知っていた理由は幻想郷についた初日の出来事が原因だ。

あの日、八雲 (えにし)と名乗る青年にこの土地に連れてこられてから数時間、

死んだとばかり思っていた姉さんと再会し、彼女の住む場所も知った少し後での事。

僕は厚意で泊めてもらっていた上白沢さんの自宅を抜け出て、この店に侵入したのだ。

理由は、この周辺の地理と目的の場所へのルートを知りたかったから、それだけだ。

無論、事が済めば無断でここから拝借した地図も返すつもりだった。

しかし、その目的の場所に行く"前"と行った"後"では全く状況が変わってしまった。

別に後悔はしてない。むしろ生まれて初めて『自分』というものを持てて幸せなくらいだ。

だけどそこでいつか返そうと懐にしまっていた地図を自分の血で、やらかしてしまった。

今やかつての地図は無く、ただ乾き切った血で紙一面を染め上げた別の物になっている。

 

改めて三人の前に僕が持っている血図(誤字ではない)を掲げて見せる。

射命丸さんはわずかに驚きの表情を見せるが、後の二人はそれほど動じていない。

それなりの大きさの紙を埋め尽くすほどの血だというのに、何故動じないのかと思った。

争いとは無縁であるはずの里の住人なのに。もしやこの程度の流血は日常茶飯事なのか?

 

 

「まあ、そうなっちゃった物は仕方ないよ。気にしないで」

 

「気にしないでって……………よろしいんですか?」

 

「んー、確かに店の物勝手に持ち出すのは良くないけど、役に立ったでしょ?」

 

「え、ええ。確かにこの血図のおかげで今の僕があるようなものですし」

 

「…………なんか地図の言い方がおかしかった気がするけど、それならいいよ!」

 

人里の人間の底知れない部分に冷や汗をかいていると、本居さんが笑顔で応えてくれた。

屈託の無い明るい笑顔だったが、里の人間で、なおかつ隣の阿求さんの友人だという事実を

加味すると何故だか彼女の笑顔までもが歪んで見えてくる気がした。

人知れず戦慄する僕のそばで人一倍熱心に話を聞いていた射命丸さんが、唐突に口を開いた。

 

 

「それにしても、一体どうしてこれほどの血で汚れたんですかね。

私としてはそちらの方に興味が沸いてしまうのですが………………?」

 

「い、いえ…………それについてはご遠慮願いたいです」

 

「あ、そ、そうですよね! ごめんなさい‼」

 

「「えっ?」」

 

 

血塗れの紙きれを見て僕の事を追及してきた射命丸さんがばつが悪そうに顔を伏せる。

すると目の前で血を見ても平然としていた二人が今度は驚いたように腰を少し浮かせた。

本居さんが驚くのは正直おかしくは無いが、阿求さんもとなると不思議でならない。

 

 

「あの、お二人ともどうかしましたか?」

 

「だ、だって今……………」

 

「……………鴉天狗が自ら手を引くなんて、そんなのありえない」

 

「やっぱり阿求もそう思うよね⁉」

 

「小鈴もそう思う? だとしたらやっぱり、あの記事は本当だったのね」

 

「あの記事って何?」

 

「この間届いた花菓子念報って新聞の記事にね「そこまでです阿求さん」……………失礼」

 

 

本居さんと阿求さんの二人の意見がシンクロした直後に、先程も聞いた覚えのある

『花菓子念報』なる射命丸さんの発行するものとは別の新聞の名が飛び出してきた。

瞬間、射命丸さんの表情が一転して恐ろしげなものに変化して阿求さんを黙らせる。

煽った本人も悪いと感じたのか、軽く謝罪してそのまま湯呑を傾けて中身を飲み込む。

たった一瞬で話し合いの空気を沈黙させた、射命丸さんこそこの場で一番ヤバいのかも。

そんな事を不謹慎ながら考えていると、店先の方から本居さんを呼ぶ声が聞こえた。

 

 

「もしかして本を貸したお客さんからの返品かな………………ゴメン、ちょっと」

 

「ええ、お気遣いなく」

 

「阿求、後お願いね」

 

「と言っても特に用事なんて無いわけだし………………歴書を頂いてお(いとま)するわ」

 

「それならそれでいいよ。あ、はいはい。今行きまーす!」

 

 

本居さんはお客さんの呼び出しに応えて足早に僕らの前から立ち去って行った。

残された僕らは阿求さんの言う通りやる事は歴書の回収しか無い為、

阿求さんの言葉に従って彼女の指定した重みのある分厚い書物を何点か風呂敷に詰める。

生まれて初めて風呂敷なんてものを扱ったけれど、案外手こずることは無かった。

自分の器用さに自分で驚きながら作業を終えた僕らはその足で案内された奥の間を出て

本が無数に陳列されている店の方へと向かった。

そこでは本居さんと誰かが言い争っているような大きな声が飛び交っていた。

頭巾のようなもので頭部を顔以外しっかりと覆っている、修道女を思わせる出で立ちの女性が

本居さんに対して鬼気迫る表情で必死に何かを訴えかけているのが見える。

純粋に気になった僕らは本居さんの後ろから二人の話し合いに割り込んだ。

 

 

「だから、急いでほしいのよ! 早くしないと響子が………………響子が危ないの‼」

 

「そんなこと言われても……………私だってどこに何があるのか完全に把握してるわけじゃ」

 

「だったら私も協力するから! とにかく急いでるの、早く‼」

 

「あの、どうかなさいましたか?」

 

「あ、紅夜さん」

 

随分と切羽詰まっているような女性の言葉を区切るように話しかける。

相手の女性は僕の突然の介入に困惑していたようだが、本居さんが僕の名前を口にした

直後から眼の色を変えて食って掛かるように一歩踏み出してきた。

 

 

「紅夜って、あなたまさかこの間の【異変】の首謀者の⁉」

 

「……………その言い方はあまり好きではありませんが、そうですね」

 

「どうしてここに……………って、いまはそれどころじゃ‼」

 

「何か探し物ですか? ここに用事と言うのなら、何らかの本ですかね?」

 

「そ、それはそうだけど。でもあなたには関係ないから‼」

 

「………………どこに何の本があるか、でしたね本居さん?」

 

「え、うん。私だって阿求じゃないからどこに何があるかまでは

完全に覚えきれるわけじゃないから。それに返品の時に本の位置がごちゃごちゃに

なっちゃう事だってあるから………………」

 

「そう、ですか…………でも、無いわけじゃ無いんですよね⁉」

 

 

本居さんが弁明してもなお、修道女風の女性は食い下がり続ける。

熱意に負けたのかそれとも元からその気だったのか、本居さんがため息を一つついて

手近な本棚の一番端から背表紙の題名を読み上げ始めた。

依頼した女性もまた彼女にならって手近な本棚を詮索し始める。

しかしこれだけ膨大な量の本の中から特定の本のみを探し出すのは骨が折れることだろう。

______________僕が手伝わなければ、の話だけど。

 

 

「本居さん、彼女が探している本の題名は?」

 

「え? えっと、『奇才 又兵衛の(わらべ)遊び』という本ですけど?」

 

「………"きょうこさん"という人が危険だと言うのに、パッとしない感じですが」

 

「だから何‼ あなたには関係ないって「待ってください、今出しますから」……………え?」

 

 

女性の怒号を受けながらも、本居さんから聞いた本の題名を記憶する。

そのまま自分の視界内にある全ての古書の『方向を入れ替えて』眼前に並べる。

瞬時に僕の足元へ本が現れて僕以外の人は驚きを隠せないでいるが、作業を続行する。

足元に移動させた古書を数冊まとめて本居さんの眼前に移動させて表紙を読ませる。

急な出来事に先程以上に驚いているようだが、彼女は僕の意図を察してくれたようだ。

 

 

「…………違う、これも違う。ここは全部違うわ、次」

 

「では、こちらの棚の本を出しますね」

 

「うん_________って! いきなり目の前に出されるとやっぱりびっくりするわ!」

 

「ああ、申し訳ない。ですが、早い方がいいらしいですからね」

 

「それもそっか。えっと……………違う、ここも違う。次お願い」

 

これほどの量の本棚を彼女一人で順番に探していくのはいくら何でも大変だろう。

だから彼女はその場から動かず、僕の程度の能力を応用した即席の閲覧ブースを

整えて作業の最適化及び最効率化を図った。今回はそれが功を奏したようだ。

そうしてどんどん本を彼女の前に転送していき、十数分が経った頃。

 

 

「___________あ、あった‼ これだよこの本‼」

 

「本当に⁉」

 

 

本居さんの眼前に転送した一冊が当たりだったらしく、それを手に取る。

彼女の歓声に即座に反応した修道女風の女性はすぐさま駆け寄った。

作業の間中ずっと傍観していた阿求さんは先程と同じくその場に立ち尽くし、

射命丸さんはカメラを片手に僕らの作業風景を新聞の記事にするのか一心不乱に撮っていた。

目的の本を入手した女性は振り返って僕を真っ直ぐに見つめ、頭を下げてきた。

 

 

「あの、あなたのおかげで求めていた手がかりが見つかりました‼

本当に助かりました、ありがとうございます‼

それと…………さっきは関係ないとか不躾に怒鳴ってしまってすみませんでした」

 

「ああ、いえ。お役に立てたようで何よりです」

 

「私としても貴方の能力を使う場面が見たかったから、一石二鳥だったわ」

 

「ええ、同感です。紅夜さん、今回の件をまた記事にさせてもらってもいいですか?」

 

「僕なんかでよければ、構いませんよ」

 

「やった‼ ありがとうございます‼」

 

「いえいえ」

 

カメラのレンズを向けながら僕に取材のアポを取る射命丸さんの問いかけに応じる。

僕個人に注目してくれるのは名誉なことだし、何より射命丸さんの役に立てると思うと

嬉しくてたまらなくなってしまう。だからなのか、考えるよりも先に快諾してしまった。

当の射命丸さんも新しい記事のネタを得たからか、飛び跳ねん勢いで喜んでいる。

そんな彼女を見つめていると胸の奥の辺りがくすぶるような感覚に見舞われる。

やはりこれは、でも彼女からの脈は無いわけで、だとしてもこれはやるせない。

自分の中に生まれる諦めの悪さに半分呆れていると、先程の女性が声をかけてきた。

 

 

「そう言えば名前を言ってなかったわ。私は『雲居 一輪』、この人里からみて南側にある

命蓮寺という寺で尼僧をしています。今度ぜひ立ち寄ってみてください、今回の御礼として

精一杯のおもてなしをさせてもらうよう頼んでおきますから‼」

 

「いえいえ、僕は勝手に首を突っ込んだだけでして。

お礼をしていただけるような人間では無いですし、そもそも普段は紅魔館で吸血鬼の

下僕として日夜過ごしておりますので、そちらに行く機会はそうそう無いかと……………」

 

「そうなの………………まあでも、もし来ることがあったらって事でいいわ。

その時はさっきも言ったように、御礼のもてなしをさせてもらうから。

今は急いでいてそれが出来なくて本当に心苦しいのだけど」

 

「…………先程もおっしゃっていた"きょうこさん"という方の事で何かしら

切迫した状況なのですね。大丈夫ですよ、僕の事はお気にせず」

 

「……………本当に助かったわ、ありがとう。

あ、小鈴ちゃん! この本借りていくわね‼」

 

「へ? あ、ちょ_____________もう行っちゃった」

 

 

修道女風の女性、名を雲居さんと言うらしい彼女は颯爽と店を飛び出して行った。

慌てて貸本証書を手渡そうとしていた本居さんが追いかけようとするが既に姿は無い。

もしかしたら彼女も妖怪か、それに類する何かだったのかもしれないと一人ごちてみる。

だがすぐに店内から聞こえてきた本居さんの小さな悲鳴で意識が戻された。

何事かと思って彼女の方を振り向くと、そこにあったのは僕が転送した大量の古書の中心で

片付けに戸惑っているしおれたツインテールの小柄な彼女の姿があった。

流石の僕でも自分のやったことには責任を持つ。

彼女からの罵声が飛んでこないうちに能力を発動させてすぐに本を本棚へと移動させた。

 

 

「改めて見ても便利な能力よね。小鈴のなんて本を読むだけだからね」

 

「いいじゃない、誰も読めない文章を読めるんだから。

でも確かにこれは便利だよね……………紅夜さんだっけ、うちで働かない?」

 

「大変恐縮なのですが、僕のいるべき場所は血よりも紅いあの館ですので」

 

「そっか。流石に吸血鬼相手に歯向かうわけにもいかないし、止めとくわ」

 

「賢明なご判断に感謝します」

 

「止めてよそういうの。なんか照れくさくなっちゃう」

 

頬に手を当てて首を数回左右に振って恥じらいをアピールしているようだが、

彼女の首の動きに合わせて動き回っているツインテールが気になって仕方ない。

そんな事を考えていると、今まで黙っていた射命丸さんが不機嫌そうにつぶやいた。

 

 

「あの、阿求さん。もうすべき事は終わりましたよね?

だったら早く行きましょうよ。そうしましょうよ、ね?」

 

「……………それもそうですね。

そういうことだから小鈴、また編纂の日になったら寄るわね」

 

「ん、分かった。それじゃーね。

それと紅夜さん、またのご来店お待ちしてまーす!」

 

「あ、えっと、ハイ。分かりました」

 

 

何やら阿求さんに半ば迫るようにして話を切り上げさせた射命丸さんが先頭立って

店から出ていき、僕と阿求さんがその後に続くようにして店から足を踏み出して出る。

去り際に本居さんから歓迎の言葉をもらったが、お咎めなしということでいいのだろうか。

それならばそれでいいかと結論付けて、僕は先に出て行った射命丸さんを追うようにして

通りの方へと歩み出た。

 

「さて、それでは約束通りにこの後は私にお付き合い願いますよ」

「ええ、承知しております」

 

「…………とにかくいきましょう」

 

 

僕の後から出てきた阿求さんが口火を切って、次の予定を確認した。

するといまだ不機嫌そうな射命丸さんが乗り気なのか僕らをせかし始める。

一体どうしたのだろうか。理由がさっぱり分からない。

もしかして先程からよく出る『花菓子念報』なる新聞の事と何か関係があるのか、

などと答えの出ない自問自答をしながら、僕ら三人は一路、阿求さんの家へと向かった。

 

 

 






いかがだったでしょうか、 それとお詫びと訂正をば。


前回の次回予告を変更しました。
理由は単純に今回で予定していた場所まで到達することが出来なかった。
要するに私の力不足が原因です本当にすみませんでした。
前にも一度やってもう二度としないと誓ったはずだったのになぁ。
意志と実行力と根気が弱々しくて本当に申し訳ない限りです。


それでは次回、東方紅緑譚


第参十七話「紅き夜、想い伝えて」

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