東方紅緑譚   作:萃夢想天

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一日一回投稿とは何だったのか……。

まさか書き終えた直後に再起動して消えるとは(´;ω;`)


それと、「仮面ライダーディケイド」の小説も
書かせていただく事に相成りました。

想像力って、怖いです。


ともあれ、今後とも萃夢想天の描く
「東方紅緑譚」を是非、お楽しみください。


第弐話「名も無き狩人、幻想の地を歩む」

____________見た事の無い世界だった。

 

 

 

そよ風になびく木々も、のどかで心安らぐ風景も。

葉に降り注ぐ木漏れ日も、小鳥の陽気なさえずりも。

 

別に、全く見た事が無い訳じゃない。

あの暗く狭かった僕の居場所(ちかしせつ)でも、『任務』の為に

外へ出たことなら何度かあった。

 

 

 

____________それでも此処は、段違いだ。

 

 

 

「目が、覚めたか」

 

いつの間にか意識を失っていた僕が、現状を把握し始めた時

低くくぐもった、あの少年の声が背後から聞こえた。

 

「ええ、たった今。……それよりも、此処は……」

 

「丁度いい、歩きながら説明しよう」

 

 

少年は起き上がろうとする僕を後ろから

支えながら、話し始めた。

 

 

「まず、我々が今いるこの森だが、此処はある土地のほんの一部分でしかない。」

 

「ある土地……?」

 

「そう、その土地の名こそが『幻想郷』だ」

 

「『幻想郷』……。確かさっき、と言っていいか分かりませんが、言ってましたね」

 

少年が先導して、歩き始める。

それに従って僕もまた立ち上がり、ついていく。

 

目の前の少年によって此処に連れて来られる直前に

そのような名前を聞いていたような気がした。

分からない事だらけだった僕だが、まずは肝心な部分から

聞いてみることにした。

 

「一体、何処なんです?」

 

「何処でもない……。だが強いて言うなら、日本と言えば日本だな」

 

「日本……?アレ?確か…僕の居た地下施設は……」

 

「……極圏に近い無人島の地下だ。おかげで探すのに手間が掛かった」

 

「ハハ………その、申し訳ない……」

 

「気にするな。現にこうして連れて来れた」

 

 

……………話がだいぶ逸れてきているような気がする。

 

そう思った時、またしても彼が『先回り』してきた。

 

 

「確かに、逸れてしまったな。話を戻そう」

 

__________また人の思考を……。

 

 

 

「そうだな、まずはお前の疑問に答えよう」

 

「……それはつまり、君が何故______」

 

「自分の思考を読めるのか、だな。正確に言えば、『読んでいる』のではない」

 

 

 

 

「_______『(つな)いでいる』のだ」

 

 

「……『結いでいる』……?」

 

「そうだ。それが私の、『全てを結ぐ程度の能力』だ」

 

 

何だか随分大層な名前だが、「程度の」が付いているせいか

とてつもなく迫力が無くなっている気がする……。

「全てを……。では、まさか」

 

「そうだ。思考は、お前の意識と私の意識を結げていた。

攻撃に関しても、私の身体の表面と別の空間を結ぎ、躱していた」

 

「……なるほど。そういうことですか」

 

 

改めて聞けば、恐ろしい能力だった。

これほどまでに有用性、汎用性、共に凄まじいものは無いだろう。

 

 

果たして彼に、僕の『造られた力(ていどののうりょく)』で勝ち目があるだろうか…。

 

「まず無理だ、今のお前ではな」

 

「……また読んで__________いえ、結ぎましたね?」

 

「ああ。兎に角、今は勝ち目云々は置いておこう」

 

「何故です?」

 

「………そろそろ着くからだ、『人里』にな」

 

「『人里』?」

 

 

そう言えば、歩いて暫く経ったが僕は未だに

何処に向かって歩いているのか聞いていなかった。

『人里』……名前から察するに、人の住む里だろう。

かなり安直過ぎる気もするが、何せ情報が足りないのだ。

 

「……お前の欲しがっているその情報も、向こうに着けば手に入る。」

 

「僕が欲しがっている?一体何の情報をですか?」

 

「………着けば分かる」

 

 

自分の素性よりも先に能力を明かした少年にしては、

随分歯切れが悪く感じた。

 

 

「______着いたぞ。此処が『人里』だ」

 

彼の後に付いて行くこと十数分。

急に開けた場所に出た。

先端が鋭く尖った丸太の柵が、見渡す限り続いている。

パッと見ただけでも2km以上はあるように思える。

そして歩いてすぐの所に、柵の手前に門があり、

またその奥には高台も見えた。物見(やぐら)だろうか……。

 

「此処が人里ですか……。随分広大で狭そうな場所ですね」

 

「………………否定はしない。が、今はそれよりも大事な事がある」

 

 

門の前に立つ見張りのような人達から隠れるように

茂みの奥に入っていく僕達。

先程よりも更に低く小さな声で話しかけてきた。

 

「私が案内出来るのはここまでだ。後は道に迷ったフリでもして中へ入れ」

 

「いきなりとんだ無茶振りですね。大体、何で僕がそこまでしなくては……」

 

「無茶でも何でもやってもらう。それがお前の為にもなる」

 

「確証は?」

 

 

確かに彼には興味を持ったことは認めるが、そもそも僕が何故

そんな事をしなくてはならないのだろうか?

今更になって、少年の真意を問い質したくなったが

彼の次の言葉によって、その機会は失われた。

 

 

 

「お前の姉の行方………。その真相、知りたくはないか?」

 

 

 

___________僕の姉の行方?その真相?

 

 

 

突然会話に引き出された『姉さん』の事で

僕の頭の中はごちゃ混ぜになったかのように混乱した。

 

 

何で姉さんが今話題に挙がる!?

何で姉さんの事をお前が知っている⁉

何でお前が____________

 

 

 

 

「…………僕の姉さんは、死んだんだ。もういない」

 

 

 

そうだ。どれだけ取り乱そうが、何をしようが、

もう姉さんは帰って来ないんだ。

 

 

帰って、来ないんだ。

 

 

「どちらにせよ、言ったはずだ。『着けば分かる』とな…。いいか、一度しか言わないから

よく聞け。まず中に入ったら『上白沢 慧音』という女性に会いに行け。里の者に聞けば問題はない」

 

「………誰なんです?その『上白沢 慧音』という人は?」

 

「この人里にある寺子屋の教師をしている、面倒見の良い女性だ。

里の事は彼女が一番熟知していることだろう」

 

「それと僕に何の関係が?」

 

「………『十六夜 咲夜』という者の事を聞け」

 

 

__________?

 

 

何だ?今一瞬、身体が熱くなったような………?

 

 

 

「兎に角、『上白沢 慧音』に会え。その後は好きに動けばいい。

………これで全て伝えた。私はこの事をご報告するために一度戻る」

 

「……待ってくれ、報告? 一体誰に?」

 

 

 

 

「__________私の主、『八雲 紫』様にだ」




報告を忘れていましたが、第零話の
一部を友人からの指摘で修正致しました。


「二年前、」⇒「五年前、」


いよいよって感じがしてきました!
早く二人を活躍させてやりたいです!!




それでは 次回、東方紅緑譚


第参話 「名も無き狩人、瀟洒なる真相」

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