東方紅緑譚   作:萃夢想天

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前回は眠気と疲れに勝てずに早めに切り上げて
しまったことが、今でも悔しくて仕方がありません。

ですので、今日は例え睡眠時間を0にしてでも
書き上げる所存でございます‼(だから閲覧数が増えないの)


それでは紅き夜編最終幕、どうぞ!



第弐十弐話「紅き夜、宴も闌、大団円」

「えっと、その……………記者をからかうなんて、悪い人ですねぇ!」

 

月が空高く昇り、沈みかけていた太陽が逆方向へと昇って行くという不可思議な

異変を解決したその当日の夜、現場に居合わせた鴉天狗の射命丸 文は異変の元凶と

言われていた少年が目を覚ましたので、早速独占取材を試みたところが今の現状だ。

聞きたいことが山ほどあった文だったが、最近売れ行きの落ち込んできた自分の

発行する新聞を盛り上げるのに最も読者の食いつきそうな話題を選択したつもり

だったのだが、とんだ悪手を引き当ててしまったようだった。

 

 

「___________________すみません」

 

「え? あの、紅夜さん?」

「忘れてください。何でもありません。き、気の迷いか何かです」

 

 

すると夜空の暗闇の中でもひと際映える銀色の髪の少年が、顔を自分の赤紅色の

瞳よりもさらに真っ赤にしながら、急にテラスの向こうへと向けてしまった。

まるで恥ずかしがりの乙女のような反応に、文は冷や汗を垂れ流した。

 

(あっれぇ……………この反応、もしかして無意識に言葉にしてたってヤツですか?

な~んだそうか、無意識なら仕方な_____________くないでしょどう考えても‼)

 

 

自分の頭の中で、先程の彼の言葉がグルグルと渦巻いていく。

『好きな女性の好みは?』 『貴女です』

どう考えても彼が自分に対してそういう感情を抱いているようにしか聞こえない。

文はその事実を胸に押し留めながら、一先ず自分のブン帖に自分の名を書いた。

 

「あ、あの紅夜さん? その……………さっきの話ですが」

 

「すみません射命丸さん、急用が出来ましたので失礼させていただきます‼」

 

「え? あ、ちょっと⁉」

 

 

文が先程の話を蒸し返そうとした途端、顔を伏せながら少年が能力を使用して

目の前から忽然と姿を消し、その場にはもう彼の毛一本も残ってはいなかった。

急に態度を一変させた少年に面喰いながら、文は逃げられたと僅かに悔しんだ。

 

 

(あの態度………………いやでも、ほとんど初対面よ?

それなのに何でそういう事になるの? しかも相手は人間だし、私は天狗だし。

でも、もし本当にそうなのだとしたら________________使えるわ‼)

 

 

闇夜に溶け込む黒いショートヘアーを春風になびかせて、文はニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーーーーーーん……………どうにも書けませんねぇ」

 

 

幻想郷に未曽有の現象を引き起こした、いわゆる【暒夜異変】について

独占取材を行った文は後日黙々と記事を書き上げていたのだが、どうしてもあの

少年の事を書こうとすると筆が止まり、その一切合切を書けなくなってしまっていた。

どうしたものかと思った文は何か別の事を書こうとも考えたが、折角異変の真っただ中

まで行きながら他の出来事をネタにでもしたら、それこそ同じ天狗の記者仲間達から

笑いものにされてしまてしまうことが、目に見えて浮かんでくるようだった。

 

 

「駄目ですねぇ。気晴らしに予備のネタ収集にでも行きますか」

 

 

そう意気込んだ彼女は記事を書き上げる手を止め、いつものように腰の巾着に

ネタを書き込むためのブン帖をしまい込んで快晴の青空へと飛び立った。

 

 

「さぁ~てさて、今日はどこに行きましょうかね___________ん?」

 

 

文が空へと飛び立ってしばらくゆっくりと飛行しながら考えていると、

彼女の人間とはかけ離れた天狗の目が、見慣れたある物の無残な姿を捉えた。

 

「ちょっと、コレ………………私の新聞じゃないの‼ なんで、川に流されて………」

 

妖怪の山の中腹から流れている川の岸に、自分が先日発行したばかりの新刊が

捨てられて水に浸かりボロクズのようになってしまっているのを発見した。

急いでその新聞を掬い上げると、風に煽られて散り散りになってしまった。

何故自分の新聞がこんなところにあるのかと焦燥に駆られていると、背後の

沢沿いの山道から哨戒中の天狗とおぼしき二人組が何やら話しながらやってきた。

 

『ねぇ聞いた? 鴉天狗の文さん。またガセネタ書いて大天狗様怒らせたって』

 

『聞いた聞いた。しかも、それが里の人間達に知られて大騒ぎだったんだとさ』

『え? なんで人間達に知られて大騒ぎになんてなるのよ?』

 

『だってその記事、人間の山の立ち入り区域を拡張するって書いてあったのよ』

 

『は? 何それ? 私達の山を荒らさせる口実をわざわざこっちから作ったような

ものじゃない。前から人間に肩入れし過ぎだと思ってたけど、ここまで来ると』

 

『もう竹林の医者のところでも、治せないかも』

 

『ははは、そうなったら文字通りにお手上げだよね』

 

 

山道を下りながら二人組が本人がいない事をいい事に、好き放題に話し続ける。

文は岸でもはや読むことも叶わなくなった記事を握りしめながら小さく呻く。

だからか、だから自分の新聞が川に捨てられていたのか。

理不尽な暴挙への怒りを瞳に込めながら、気晴らしに外へ出た事を思い出した

文はフゥと軽く息を吐いて歩哨中の天狗達に見せつけるように再び飛び立った。

 

 

「あ~あ、なんか一気に冷めちゃったな……………」

 

 

妖怪の山から逃げるようにして遠くの空へと飛び立った彼女は、

また次の場所を目星をつけようとしていた。

すると背後から物凄い風切り音を立てながら、見慣れた白黒の帽子がやってきた。

 

「おぉーっす、どうしたよ文? こんなところで浮かんでやがって」

 

「あ、魔理沙さん。いえ、色々ありましてね…………あなたこそ何を?」

 

「んお? アタシか? アリスが今日ブラウニ作ってくれるって昨日の宴会で

約束してくれたからよ、それを受け取るついでに早苗んとこで茶菓子貰おうと」

 

「厚かましさもここまでくると……………まあご自由にどうぞ」

 

「お前に戒められる謂れはねぇぜ。ん? なんで手が濡れてんだ?」

 

「ッ‼ な、何でもありませんってば。それより早くアリスさんのとこへ

行かなくてもいいんですか? 折角の洋菓子が冷めちゃいませんかね?」

 

「それもそうだな! んじゃまた新聞出来たら家に置いてってくれよ‼」

 

「えっ? 魔理沙さん、読んでくれてるんですか⁉」

 

現れた魔理沙がそのまま箒の出力を上げて進行しようとした時に言った言葉が

気になった文は、先程の事もあってか、期待を込めた眼差しで魔理沙に聞いた。

だが、魔理沙は帽子のつばを押さえながら悪戯っぽく笑って呟いた。

 

 

「んにゃ、あの新聞は並の薪なんかよりも良い火苗になるんだよ! じゃな‼」

「ひ、ひなえ……………………」

 

 

無邪気に放たれた言葉が、文の心をさらに深くえぐっていった。

そのまま彼方へと消えていった魔理沙の星型の噴煙を見つめながら肩を落とし、

もう気晴らしどころではないと考え、文はフラフラと自宅への帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもよりも倍以上の時間をかけて自宅のすぐ近くまで飛んできた文は、

普段は見せない暗めな表情を前面に浮かべながらもなんとか自分を奮い立たせようとした。

すると、自宅の前に見慣れない人影があるのを目視した。

音も無く静かにその人物のそばに降り立って、やっとその正体を把握した。

 

「こ、紅夜さん⁉ どうしてここに‼」

 

「あ、射命丸さん。留守のようでしたので、待たせてもらいました」

 

その人物は先日の異変の元凶、十六夜 紅夜その人だった。

ただ文の質問には答えてはいない、一体何故彼はここにいるのか。

文はもう一度同じ質問をしてみた。

 

 

「そ、それはともかく。何でここにいるのかと聞いてるんです‼」

 

「え? あぁ、先日は取材の途中で宴会を抜けてしまったので…………それともう一つ。

実はコレを読んで気付いたことがあったので、その事で文さんを訪ねたんですよ」

 

「………?」

 

 

紅夜の言葉の真意を理解しかねていると、彼は懐から一枚の紙を取り出した。

文が近付いてその紙を覗き込んで、そして顔色を一変させた。

その紙とは_______________彼女の先日の新刊だった。

 

 

「こ、これがどうかしたんですか?」

 

「いえ、この部分。ここの文面が少々不自然だと思いまして」

 

「………………またそれですか」

 

「どうしたんですか?」

 

「__________もう、うんざりなんです‼」

 

 

紅夜が紙をよく見せようとした途端、文は大声で怒鳴った。

妖怪の声帯だからだろうか、周囲の木々まで震えるほどの怒号だった。

あまりの声量に驚いた紅夜だったが、文はお構いなしにまくし立てた。

 

 

「いい加減にしてくださいよ! 私の書きたいこと書いちゃいけないんですか⁉

別に良いじゃないですか、何のしがらみも無い真っ白な紙の上くらいでは

自由にさせてくださいよ‼ 私は、私は新聞が大好きなのに…………………………」

 

「射命丸さん……………」

 

 

目元に透明な滴を湛えながら、それでも感情をぶつけ続ける文を

紅夜は言い返すでもなくただ彼女の叫びを聞き逃すまいと耳を傾けていた。

しばらく叫び続けた文はようやく静まり、そして状況を再確認して戸惑った。

自分を訪ねてきた人に向かっていきなり怒号を浴びせてしまった、いくら

さっきまで嫌なことが相次いでいたにしても、完全に八つ当たりになっている。

そう半ば自暴自棄気味に落ち込んだ文だが、とにかく彼に謝ろうと思い立った

直後に、なんと彼が先に深々と頭を下げてきていて驚きの声を上げた。

 

 

「すみません、射命丸さん。僕は貴女の気持ちも考えずにこんな事を……」

 

「い、いえ! 違うんですよ‼ その、あの、えっと‼」

 

「本当にごめんなさい。そうですよね、いくら些細な誤字だからと言っても(・・・・・・・・・・)

射命丸さんだってそんな事に囚われずに書きたいことを書きたいはずなんですよね。

僕が浅はかでした、また後日お詫びに参りますので……………それでは」

 

「_____________え? 誤字?」

 

 

先程の事をどう説明したものかと悩んでいた文の鼓膜に、この場面に

似つかわしくないほど軽い言葉が響いてきて、思わず聞き返してしまった。

すると文の言葉が聞こえた紅夜は、申し訳なさそうな表情で呟いた。

 

「えぇ。ここの文脈がいささか不自然だったので気になったんです。

何度も読んでいるうちに、これが誤字であることに気付いたのでそれを

直接知らせに行こうと……………他人にあまり知られたくない事だと思って」

 

「あ、ああ………………ああああああああ‼‼」

 

 

紅夜の呟きを聞き終わるが早いか、文は彼の持っていた新聞を音の速度で

ひったくり、彼が指さしていた部分をよく読んでみると確かに誤字があった。

文は自分の間違いに羞恥の念を覚えつつ、先程彼に対して取った態度を

思い返して愕然とした。

冷静に思い返せば、彼は他の者とは違い『不自然だと思った』と言っただけで

書いてあることを真っ向から否定していたわけでは無かった事に今更気付いた。

自分の失態をわざわざ気を遣って誰にも知られないように直接指摘しに来た人に

対して、自分が取った態度がいかに愚かでいかに軽蔑されるべきものか。

もう文は、紅夜に対して顔を向けることが出来なかった。

両手で顔を覆って下を向き、いまだにうなり続けている。

 

 

(__________アレ? でも、ちょっと待って)

 

 

だがしばらく羞恥に喘いだ文は、ふとあることに気付いたのだった。

何故そんな一新聞の些細な誤字を、わざわざ紅魔館から足を運んで伝えに来たのか。

彼は異変の際にも、宴会の席でも、紅魔館の主の妹の執事だと言っていたのに。

しかも、普通に流し読みすれば気付かずに読み過ごしてしまうような新聞の

隅の方にあったこんな小さな誤字を、見つけた上で誰にも言わずにここまで。

あんな小さな間違い、よほど読み込んでいなければ気付きもしないだろう。

現に自分ですら、こうして今それが原因で羞恥に悶えているのだから。

 

 

(執筆者(わたし)よりも新聞を熟読しているなんて、そんな事…………)

 

 

有り得るはずがない、だって自分の新聞は誰も読んでくれないから。

記事を面白くしようと考え、記事に起こした努力を読まずに捨てられる新聞だから。

上司に、同僚に、果ては他種族で格下であるはずの人間にまで馬鹿にされる新聞だから。

そんな新聞を熟読し、あまつさえ自分に間違いを指摘しに来るなんてそんな事は……。

 

 

(…………本当に、私の事が好き、だから?)

 

 

それ以外に有り得ない。だがその考え自体がおかしいと思う。

何故なら彼とは初対面に近しい上に、会話も取材の時以上はしていないのに。

なのに、何故?

もしも、仮に彼のあの言葉が本当だったとして、いつからだろうか。

初めて会った時は紅魔館の門前、しかも自分は相手にひたすら警戒していた。

異変の最中は常に彼という存在に何かしらの危機感を感じていたのだ。

ならばその態度は相手である彼にも伝わってはいるはずだ。

初対面の相手に警戒されて、気分が良くなる者がいるのだろうか。

だが昨日の宴会の取材の際は驚くほど間近まで彼に接近し、彼と会話をしていた。

これっぽっちも警戒心など無く、それこそ自分が不自然に感じるほどにまで。

彼に対する評価が、自分の中で変わったのか。今まさに変わりつつあるのか。

今の自分の心理状況では、何一つ理解し、推察することなど出来なかった。

しかし、文はここまで考えてふと思い返した。

彼が自分を好きだったとして、そう考えることに全く抵抗を感じない。

むしろ、自分から進んでそう考えることを望んでいるかのような…………。

 

 

「射命丸さん。射命丸さん、大丈夫ですか?」

 

「はいっ⁉」

 

自分が深い思考の先である一つの結論に達しようとしたその時、

自分の耳元から今まさに考えていた彼の良く通る声が響いてきた。

突然過ぎることに驚き、文は伏せていた顔を上げて彼の顔を見つめてしまった。

その瞬間、トクンッと心臓の辺りが弾むように高鳴った。

胸の高鳴りが聞こえた直後、頬が紅潮し、目は潤みながら見開かれた。

鼻での呼吸が出来ず、苦しくなって口から粗く大きめの呼吸を繰り返した。

急に胸の奥が締め付けられるように痛みだしたが、彼の顔を見つめると治まった。

それを繰り返し続けた文は、もう紅夜から目線が外せなくなっていた。

 

 

「あの、射命丸さん?」

 

「いえ、大丈夫、です…………このくらい、私、妖怪ですから!」

 

「でも、顔が真っ赤になってますし、息も苦しそうに見えますが」

 

「かっ、顔は見ちゃ駄目です‼」

 

紅夜に指摘されて、文は慌てて放した手でまた顔を覆い隠した。

だがすぐに胸の奥が苦しくなって、彼の顔を指の隙間から見つめると楽になる。

文の視線に気付いた紅夜が顔を覗き込もうとすると、一気に顔が熱くなった。

自分は何かの病気にでも罹ってしまったのではないか、だとすれば原因はまず

間違いなく目の前の彼だろうが、何故彼から目を逸らすと苦しくなるのか。

 

「やっぱりどこか具合でも悪いんじゃ、射命丸さん! しっかり‼」

 

「__________________ッ‼」

 

 

文の態度の不自然さに違和感を感じた紅夜が、文の肩に手を置いた。

そのまま文を軽く揺すり、意識の有無を確かめようとしたが文は答えない。

何故なら紅夜のこの行為ですら、今の文には苦痛と安らぎの渦中にあるからだ。

 

 

(や、やめてください! そんなに揺すったら、顔が、見られちゃう‼)

 

 

頑なに顔を見せようとしない文を、さらに気遣う紅夜だったが

本格的に何かがおかしい事に気付き、肩から手を放して揺するのを止めた。

息を荒げながらも何事かと指を少し開けて彼を見つめようとした文だったが、

また見つめたら今度はどうなってしまうのか分からなかったから。

そのまましばらく顔を伏せたままでいた文だったが、いくら待っていても

彼の自分を気に掛ける言葉も、何も起こることが無かった。

 

 

(……………ど、どうしましょう。もう、限界ぃ………!)

 

 

文はただひたすらに自分の内の葛藤と戦っていた。

霞がかかったような思考の中で、文は自分の状況の把握に努めた。

だが、ソレも長くは続かなかった。

 

 

(も、もうダメです、紅夜さんの慰めが欲しい!

もう限界なんです、紅夜さんの慈しみが欲しい!

これ以上は耐えられません、声だけでも聞かせてぇ‼)

 

 

高鳴りが外部にまで聞こえるのではないかと思えるほどバクバクと

鼓動を刻んでいる胸の痛みに耐えきれなくなった文は、顔を上げて空を見上げた。

 

「紅夜さん‼ _________________アレ?」

 

 

だが文が見上げた先には、晴れ晴れとした青空があるだけだった。

銀髪の爽やかな少年はもう、影も形も無くどこかへと消えていた。

文は目の前の光景を見て、彼が能力を使用してまたしても瞬間的に移動したと

結論付けたが、よく見ると彼のいた場所に何やら紙切れのような物があるのに気付いた。

胸の痛みに苦しみながらも近付いてそれを手に取ると、彼からの伝言が記されていた。

 

 

『どうやら僕の言葉のせいで、射命丸さんの体調に何らかの変化を

及ぼしてしまったようですので、後日お詫びを持って改めて訪問させて頂きます。

そして先日の取材の件ですが……………あの言葉に、やっぱり嘘偽りは無かったようです。

今日も射命丸さんのご帰宅を待っている間ずっと、胸が張り裂けそうになっていました。

いきなり押し掛け、その上ご気分まで害してしまい、申し訳ありませんでした』

 

「紅夜さん……………」

 

 

紙切れに書かれていた紅夜の伝言を読み終えた文の胸には、もう痛みは奔らなかった。

それどころか、少し前まで滞留していた新聞を貶された怒りなども、綺麗に消えていた。

もう彼女は、何にも臆することも、怯えることもなくなるだろう。

爽やかな春風と共に、彼女の心にも銀色の風が吹き抜けていった。

 

 

 

 

幻想 ~新・紅魔異変~ _________完

 

 




と言う訳で、第一章はこれにて完結‼
もうゴールしたような気分に包まれております。

ですがその、ええはい分かってます。
完ッ全に文やの感情のギアを誤作動させ過ぎました。
書き終えた今頃になって反省と後悔に苛まれております。

ですが次回から、いよいよ彼が動き出します。
謎に包まれた彼の正体が、明らかになる⁉


それでは次回、東方紅緑譚


第二十弐話「緑の道、未知への道標」

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