東方紅緑譚   作:萃夢想天

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本日は話題の映画、「バケモノの子」を友人と
観てきましたが…………泣けますねアレ(´;ω;`)

まぁそれはそれで置いといて、
しばらく投稿が出来なくて済みませんでした。
新しいパソコンが扱いにくくてなんとも……


これからしっかりとマスターして、
書き始めたいと思います。それでは、どうぞ!


第十伍話「紅き夜、星降る昼の決闘」

紅魔館のヴワル大図書館前で、唐突に始まった魔理沙と紅夜の弾幕ごっこ。

まずは箒に飛び乗って距離を取った魔理沙が先に仕掛けた。

 

 

「先手必勝! 行くぜ、魔符【ミルキーウェイ】‼」

 

白黒の魔法使いがスペルカードを宣告し、そのカードに記憶された彼女の技が放たれた。

彼女を中心として、大小共に色とりどりの星型の弾幕が六列に並んで射出されていく。

しかも、その星の弾幕の列は徐々に動いて回転している。

 

 

「初手から随分と鮮やかな弾幕を。ならば僕も、裂符【サウザンドリッパー】‼」

 

「うおっ⁉」

 

その弾幕を見た紅夜も、負けじとスペルカードを宣言し、技を発動させた。

魔理沙はその性格上後手に回るのが嫌いではあるが、実力未知数の相手に無策で突っ込むほど

能天気でアホ丸出しな人物では無かった。故に彼女はまず少年のスペルを観察し始める。

 

 

(アイツ、手に持ったナイフを空中に放って……………げっ!こっちに飛んでくる!)

 

 

紅夜が手にズラリと並べていたナイフを全て空中にバラ撒いたが、その直後ナイフが

急に魔理沙に向かって方向を転換して勢いよく飛んできた。

いきなりのことで少しひるんだ彼女だったが、それでもこの幻想郷において彼女は

弾幕ごっこでは大妖怪も凌ぐ力量を有している、つまり、この程度の弾幕は見慣れているのだ。

 

 

「へっ、少しは出来るみたいだな!だがまだまだこれからだぜ!」

 

「それはこちらのセリフです。フランお嬢様のお気に入りとやらの実力、見極めさせてもらう‼」

 

 

二人は自分の放つ弾幕で相手の弾幕を上手く相殺していく、しかし弾くだけではなく相手にも

自らの攻撃を届かせようと必死で隙を突こうするが、一向に糸口が見出せない。

星型の弾幕が紅夜の動きを封じれば、鋭いナイフが魔理沙の身体に突き刺さろうと飛来する。

幾度も飛び交う弾幕に、少し離れた所で二人の弾幕ごっこを見物している文が驚きと興奮を隠せず

夢中でシャッターを切ろうとしていた時、それは起こった。

魔理沙が何度目かの紅夜の弾幕を回避しようとした瞬間、魔理沙の帽子のつばにナイフが

僅かにかすり、魔理沙は慌てて距離を取ろうとするが、その一瞬の停止を紅夜は見逃さなかった。

 

「そこだ、切り裂け‼」

 

「うわっヤベェ‼」

 

 

紅夜が放った三本のナイフをすんでのところで回避した魔理沙だったが、その内心は穏やか

では無く、それどころか最近まともに弾幕ごっこをしていなかった彼女は焦ってすらいた。

だが彼女は先程の弾幕で勘を取り戻したのか、一呼吸おいて冷静になって状況を再確認した。

 

 

(さっきの弾幕は何だ………?途中からアイツはナイフを投げていなかった、なのにアタシが

ナイフを避けた回数は、どう考えても多くなってたよな…………ナイフが反射していた、か?

咲夜みたいに………ん?咲夜、か。そういえばアイツ最初に『十六夜』って言ってなかったか?

_______________________________まさか‼‼)

 

 

魔理沙がある事に気付き、再び先程の弾幕へと目を向ける。

すると、やはり彼女の予想通りの結果がそこにあった。

 

(やっぱりそうだ、間違いない。アイツがさっき投げたナイフが何処にも刺さって無いぜ!

てことはつまり、アイツも咲夜と同じ『時を操る』程度の能力を持ってるって事かよ‼)

 

 

魔理沙が目の前の光景を元に結論付ける。

それは今相対している少年が、どういう訳かこの紅魔館のメイド長であり、自分の顔見知りの

十六夜 咲夜と何やら関係があるようだということ。それも、血縁関係(・・・・)レベルの深い関係が。

敵の程度の能力が割れてしまえば、対策を練る事はさほど難しいことなどではない。

ましてそれが、その能力が既に存在しているのならばなおさらだ。

魔理沙は再び自分の方へと向かってくるナイフを回避し、先程よりも接近して弾幕を放った。

 

 

「悪いな、お前の能力は見切ったぜ。まさか咲夜と同じとは思わなかったけど、好都合‼」

 

接近した魔理沙は発動しているスペル、魔符【ミルキーウェイ】を解除して

新たなスペルカードを紅夜の眼前で宣言した。

 

 

「コイツでどうだ、魔空【アステロイドベルト】‼」

 

先程のように列を成さず、全方位へと拡散されていく大小さまざまな星型の弾幕。

遠方からならともかく、この近距離ならば確実に落とせると魔理沙は確信していた。

______________相手が『時を止める能力』だったのならば。

 

 

「へへ、この勝負もらった『ドスッ‼』……………ぜ?」

 

 

魔理沙は自分の背中に、妙な感覚を受けていた。

まるで飛んできたナイフが(・・・・・・・・・)突き刺さっているような(・・・・・・・・・・・)、そんな感覚。

自分の背の違和感に気付いた直後、目の前の少年が手を顔に当てて不気味に笑い始めた。

 

 

「フ………ハハ、ハハハハハハハ‼‼ いい表情だ、その唖然とした顔、まさに傑作だ魔法使い‼

"お前の能力は見切った"?"この勝負もらった"⁉ 何を世迷言をほざいているのやら………。

おおかた、僕の名前と弾幕を見て姉さんと被ったのでしょうが、能力が同じだなどと言った

素敵なジョークをおっしゃれるとは、随分余裕ですねぇ魔法使いの魔理沙さん?」

 

 

早口で捲し立てながら魔理沙を軽く貶す紅夜。

その姿を見ながら彼の言葉を聞いた魔理沙は、二つの事実に愕然とする。

 

 

「お、前………姉さんって、まさか咲夜か⁉ それに能力が違うって、だってナイフが………」

 

「そうですね、まずは順番にお答え致しましょう。では一つ目の質問、十六夜 咲夜が僕の姉で

あるのかどうか、これは躊躇いなくYesです。僕は姉さんの弟、十六夜 紅夜。それ以上でも

それ以下でもない、ただの吸血鬼に仕える人間ですよ」

 

紅夜が少し口の端を緩めながら魔理沙に答える。

そのまま紅夜はよろめく魔理沙に背を向けてゆっくりと歩き出して距離を置く。

 

「そして二つ目、貴女はおそらく僕の能力を姉さんの『時を操る』程度の能力だと勘違い

なさっているようですが、これについては全くのNoです。姉さんのような人間を遥かに

超越した能力が相応しいのは、やはり姉さんのような人間だけであって僕では無い。

僕の程度の能力については、次のスペルでお分かりになると思いますよ‼」

 

「何だ⁉ ヤツめ、何するつもりだ!」

 

 

紅夜が再び魔理沙の方へと身体を向けて、腕を振り上げスペルカードを宣言した。

 

 

「ご覧あれ、裂降【パニッシュメントアーチ】‼」

 

紅夜がスペルを唱えた瞬間、それまで近くにあったナイフが消えてなくなった。

魔理沙は驚いて辺りを見回すが、一本残らずナイフが姿を消してしまっていた。

まさかと思って背中にも手を回したが、突き刺さってたはずのナイフも無くなっている。

消えたナイフを探して周囲を見ている魔理沙の後方で、カメラを構えていた文が叫ぶ。

 

「魔理沙さん、上です!」

 

「何っ‼」

 

 

文の言葉に反応した魔理沙が頭上を見上げると、そこには無数のナイフが真下に切っ先を

向けながらさながらアーチのように廊下の半分を埋め尽くしていた。

その光景を目にした魔理沙は再び驚きながらも、心中で確信していた。

 

 

(確かに、時間停止や早送りじゃこんな事は出来ないよな…………でもだとしたら

コイツの能力は一体何なんだ?ナイフが規則正しく左右一列に真っすぐに並んで……くそ、

まだ足りない。コイツについて何もかもが足りないぜ………てかヤバい避けないと!)

 

 

紅夜のスペルに若干気圧されてしまった魔理沙は、上から降り注いでくるナイフを見て

身の危険を察知して箒に乗って後方へとダッシュで後退していく。

落下してくるナイフを避けながら、魔理沙は打開策を頭の中で練っていた。

必死になって逃げながら考え続けるが、イマイチいい案が浮かばない。

そんな魔理沙を追うように、紅夜の発動したスペルはナイフを上から降り注がせ続ける。

 

 

「さぁどうしました?威勢が良かったのは最初だけなんですか?

ほら、早く弾幕を放って相殺しなさい。早く次のスペルを発動させなさい。

早く僕のスペルをブレイクしてみなさい。さぁ、Halley(はやく)Halley(はやく)Halley(はやく)‼‼」

 

「く、クソ……言いたい放題言ってくれやがって、見てろよ!」

 

 

感情が振り切れたように叫ぶ紅夜の言葉に挑発された魔理沙は、乗っている箒の方向を

即座に反転させて一気に加速し始める。そのまま紅夜に向かって一直線に突き進んでいく。

そのまま魔理沙は右手のミニ八卦炉を起動して出力を上げ始めた。

 

 

Halley(はやく)ってんなら、急いでやるよ…………行くぜ最速のぉ‼」

 

眩く輝く星々が、魔理沙の乗る箒の刷毛の部分から放出されていく。

それが勢いを増していくにつれ、魔理沙の箒の速度もグングンと上昇していく。

そしてあと数mというところで、目の前に無数のナイフが突然現れた。

 

 

「降り止まない鋼の雨に、血飛沫を上げろ魔法使い‼‼」

 

「しゃらくせぇ‼ まとめて吹き飛べ、魔符【スターダストレヴァリエ】‼‼」

 

 

魔理沙が新たなスペルカードを宣言した。

そのスペルは、魔理沙の持つスペルの中でもかなり上位のものである為、彼女は並大抵の

相手には使う事のない、いわばとっておきの技なのだった。

煌びやかな光を纏って最大速度で箒ごと相手へと突貫していく、それがこのスペルである。

自らを弾幕として放つスペルは数有れど、彼女のコレは他のどのスペルよりも速く、(はや)い。

両手を上げて隙を見せている紅夜へと突っ込む魔理沙に、無数のナイフが襲いかかる。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉ‼‼‼」

 

それでも彼女は被弾の痛みも意に介さず、ただ眼前の敵を見据えて突き進んでいく。

魔理沙は声を荒げながら、最速の弾幕を両手を上げて高笑いしている紅夜に叩き込む。

あとほんの少しで届く、ようやく当たる、魔理沙は視界を埋める光の中で小さく笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____________お疲れ様、これで本が強奪される事は防げたわ」

 

「はぁ………はぁ……………ハイ、お心遣い感謝します………」

 

 

僕の後ろで大きな音を立てて大図書館の扉が開き、中からパチュリーさんの声が聞こえた。

先程の弾幕ごっこですっかり乱れてしまった呼吸と服装を正しながら、彼女の言葉に応える。

汗ばんだ前髪を掻き上げ、少しバックアップな髪型になってしまうこともいとわずに

同じように汗で肌に吸い付くシャツのボタンを開けて、身体と燕尾服の間の空気を換気する。

 

「あら、オールバックと言ったかしら、その髪型。中々似合ってるじゃない」

 

「ハ、ハハ…………褒め言葉、なんですよね?」

 

「バカにしているように聞こえる?少し野生っぽさが加わって、違って見えてくるわ」

 

パチュリーさんが僕の髪型を見て、笑うでもなく無表情で観察してきた。

個人的には嬉しいような感じもするけど、やっぱり不愛想な言い方をされると不安になる。

ゆっくりと立ち上がって、背中についた埃を払って深呼吸をする。

 

 

「____________グッ、ゴホッ! ゴボッ‼ゲ………ァア‼」

 

大きく息を吸い込んだ途端、胸の奥から何かが噴き出すような感覚に襲われる。

実際僕は、口や鼻から多量の血を放出してしまっている。

自分の意志で止めることも、抑えることもできない___________あの頃からの発作。

大怪我を負った獣のようなうめき声を上げながら廊下に膝から崩れ落ちてしまう。

 

「ガッ!…………ゴ、バァ‼」

 

「…………やっぱり、そうだったのね」

 

 

苦しみに悶えながら血を滝のように流し続ける僕を、パチュリーさんが見下ろす。

息をすることさえ困難な僕を助けるでもなく、ただ淡々とありのままの事実を呟く。

 

 

「紅夜、あなたは____________もうすぐ死ぬわ」

 

「ア…………ア、ガ…………ゲホッ!」

 

「そうね、自分の事は自分が一番良く理解出来てるわよね」

 

 

手にした魔導書のページをパラパラとめくりながら、僕にいつも通りの

感情の見えないような冷たい目線を送ってくる。

僕は下を向いているが、それでも分かる。

 

 

「この事は、誰かに話したの?…………咲夜とかに」

 

「ハ………ァ、ハァ……い、いえ゛」

 

「そう………いつまで隠すつもり?死ぬまで?」

 

僕はパチュリーさんの問いかけに無言で頷く。

口から血を垂れ流しながら、少しずつ身体に力を込めていく。

既に燕尾服は血みどろになっていて、下のシャツにまで浸透している。

パチュリーさんがさらに話を続ける。

 

 

「私にあなたを否定することも、止めることも出来ない。_______けれども」

 

「…………パチュ、リーさん……?」

 

 

魔導書を左脇に挟みながら、パチュリーさんが僕を優しく抱擁する。

彼女の埃っぽく、それでいてやはり女性特有の暖かい感触が僕を包み込んでくれる。

僕の血まみれの頬に右手を添えながら、赤子を抱く母親のように諭す。

 

 

「けれども、あなたを肯定することは出来る。認めるわ紅夜…………あなたは強い」

 

「…………ありがとう、ござい、ます………ゲホッ」

 

 

添えた手で優しく頬を撫でてくれるパチュリーさんに、僕はただただ感謝の言葉を吐き出す。

痛みが引いてきて、やっと口と鼻から流れる血が止まってきたというのに今度は目からも

流れてきた。とても熱くて、手では拭えそうにない。

 

 

「また、血が………お手が、汚れます。パチュリーさん………」

 

「構わないわ、熱いだけの透明な血…………目からこんなに溢れてる。

こんなしょっぱい血なら、誰も飲まないだろうから………たくさん出しなさい」

 

「………………うぅ………」

 

 

僕は、顔を上げることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だーーっ、くそ‼」

 

 

紅魔館の門前で、白黒の魔法使いが悔しそうに大声で叫ぶ。

その後ろにはカメラを未だに両手で構えている文が付いてきている。

そんな二人の背中を門の塀に寄り掛かった美鈴が嬉しそうに見送る。

 

「いや~しかしまさか魔理沙さんが負けr「負けてないぜ!」……認めましょうよ」

 

「認める?何を! アタシは認めねぇぜ、リベンジだ!次はアタシが絶対勝ぁーつ‼」

 

 

勢いをヒートアップさせていく魔理沙の熱気に、おお、熱い熱いと顔を背けながら

ひとまず今回の潜入(?)の結果を自分のブン帖に書き込んでいく。

 

「『魔法使い、紅魔の新参者に大敗‼ 紅い霧を止めるのは果たして⁉』」

 

「勝手なこと記事にしてんじゃねぇ!また薪代わりに新聞火にくべるぞ!」

 

「あなたなんて事してるんですか⁉やめてくれませんかそういうの‼」

 

 

辺り散らす魔理沙の暴言に乗せられた文もまたヒートアップしていく。

だがだんだん落ち着いてきたのか、魔理沙が帽子を深く被り直して呟く。

 

 

「……まぁでも、収穫はあったぜ。これで次は必ず勝てる」

 

「おや、何かありましたか?あの少年が咲夜さんの実の弟さんという重大なネタ以外に?」

 

「ああ、 アイツの程度の能力だ。あの最後の瞬間………やっと分かったんだぜ」

 

「おお!ホントですか、してその能力とは!」

 

 

文が即座にペンを握って手帖に書き込む準備を済ませる。

その様子を横目で流しながら、口元をニヤリと上げながら続ける。

 

 

 

 

 

「アイツは多分______________『方向』を操れる」

 

 

 

 

 




いやぁ、どうだったでしょうか。
この東方を書く時が一番手が進みます。

今回もまた自分の好きなアニメのセリフを
少しだけ引用させていただきました。
カッコいいんですよね、吸血鬼。


それでは、次回 東方紅緑譚


第十六話「紅き夜、相対す紅白の巫女」

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