「流れが急過ぎて着いてけねぇよダァホ」と言われました。
………そこまで言わなくても(´;ω;`)
でも、確かに滅茶苦茶でしたね(特に妖夢が)
これからは気を引き締めて行かなければ‼‼
そんな決意を新たに、どうぞ!
第十参話「紅き夜、始まる『異変』」
常に濃霧の立ち込める湖、その中心に佇むは紅魔の館。
今日も今日とて、その異様な外観にも、独特の雰囲気にも変わりはない。
いつものように昇る太陽の光も、風に流れゆく白い雲も、
透き通るような青色の空も、それを反射したかの如き群青の水面も。
だが、その青一色の空に黒い影が舞い踊る。
「あーやや…………今日も暖かいだけで、いいネタは芽吹いてませんねぇ」
凄まじい速度で空を飛ぶ影は、ぶっきらぼうに呟く。
正確には、速過ぎて姿が肉眼では捕らえにくい為、影のように見えるのだが。
「はぁ……最近は『異変』もありませんしねぇ。ホントどうしましょう?」
まさに、お手上げだと言いたげな表情をしている彼女は『
日光を浴びても光を返す艶やかな黒のショートヘア。
全体的に白を基調とした学生服のシャツのような上着に、部分的な秋色のライン。
細くも決してか弱くはない脚には、何故か黒のニーソックスが自己主張しており、
その足は紅葉したもみじのように真っ赤な一本歯下駄を履いている。
彼女は今日も普段通り、幻想郷中の空を飛び回っていた。
何故なら、彼女の本職は『ブン屋』。今で言う新聞記者であるからだ。
自らの足で情報をかき集め、新聞に書き上げ、それをまた自分の足で配りに行く。
それが彼女の
しかし、ここの所は全くと言っていいほど、いいネタが無いのだ。
普段の彼女ならネタもでっち上げで誤魔化す事もあるのだが、今日は気乗りしなかった。
その為、何かしら記事になりそうな出来事が何処かにないものかと飛んでいたのだ。
そんな彼女は少し悩んだ後で、頭の中にある事を思い浮かべた。
「そうだ!今の時間帯なら、咲夜さんの美味しい紅茶が飲めるかもしれませんね!」
そう結論付けると、彼女は眼前の紅魔館へと降り立った。
「さ~てと、紅魔館とうちゃーく…………って、あやや?」
紅魔館の門前に降り立った文だったが、どこかおかしい事に気付く。
そびえたつ真紅の館は変わりない、だが門の前にいつも立って(寝て)いる人物が見当たらない。
その事に気付いた文は、早速腰から取り出したネタ帳に面白おかしく仮の見出しを書き込む。
「『紅魔館の門番、遂にお役御免か⁉』…………うぅ~ん、イマイチですね」
そう呟いて、書いた文字に横線を引いた。
その直後だった。
「何がイマイチなんですか、鴉天狗のブン屋さん?」
館の扉が音を立てて開き、中から一人の少年が現れた。
突然声を掛けられた文は驚くが、もっと驚くことがあった。
(紅魔館に、『男』がいる……? しかも、人間じゃないですか)
そう、紅魔館には使用人の妖精メイドを含めても、全員女性しかいないはず。
なのに、目の前の燕尾服の少年は紛れも無く男であり人間だった。
自分が知らない間に雇ったのだろうか、そう考えた彼女はひとまず返答に応えた。
「いや~、今しがた書いたネタがですね?あまり良い出来ではなかったので……」
「なるほど、そういう事でしたか」
「ええ、そういう事でして。…………ところで、貴方は一体?」
文は即座に質問を返して、立場を逆転させようとした。
自分の知らない相手からは、きっと自分の知らない情報を引き出せると思って
すぐさまペンとネタ帳を構えて書き込む用意をしようとしたのだが、
「ふむ………『紅魔館の門番、遂にお役御免か⁉』、ですか。面白いネタですね」
「‼⁉」
質問をしようと思っていた相手の手にネタ帳が握られていた。しかも、中を読まれている。
一体いつの間に奪われたのだろうか、いや、奪われたのなら
とにかく取り返さねばと少年を睨みつけた時、彼がおどけた口調で話しだした。
「あぁ、すみません。昔の癖でつい………」
「…………………」
「そんな怖い顔をしないでください。ホラ、
「えっ⁉」
少年が自分の腰を指差すと、そこには奪われたはずのネタ帳が戻っていた。
全く理解が出来ない状況に、文の中の何かが『危険だ』と叫んでいた。
だが同時に、別の部分が『絶好のネタだ』とも叫んでいるような気もした。
結局、自分の心の声に従って(?)再び少年に声をかけようとした。
「ご安心を、僕からは手出しはしませんので」
「…………そうですか、それは何よりですね」
「そうですね、それでは僕はこの辺で」
そう言って少年はこちらに背を向けて、館の方へと戻っていった。
驚くほど拍子抜けだと気を抜いた文は、その場でしばらく立ち尽くしていたが、
やがて冷静さを取り戻すと、ネタ帳にペンを走らせ始めた。
「コレは………‼ コレは当たりですよ‼」
そう意気込んだ文は、疾風を纏って飛び立った。
天狗のブン屋さんを追い払った後、僕は館内に戻った。
そのままロビーを通って、パチュリーさんに呼び出された場所である大図書館へ向かう。
その道中で仕事をサボっている妖精メイド達に軽く注意をしていると、ちょうど反対側の
通路から、赤い長髪の女性がやって来るのが見えた為、妖精達を持ち場へ戻らせた。
「やぁ、こあさん。パチュリーさんからのお迎え?」
「あっ!カル_____じゃなくて、『
「うん、僕も行こうとしてたんだ。さぁ行こう」
「ハイ!」
僕の予想通り、僕の到着が遅いのを気にしたパチュリーさんが呼んだのであろう小悪魔、
もとい、こあさんと一緒に大図書館への道のりを歩いて行く。
小悪魔という名ではあるが、彼女自身はとても優しく大らかで、打ち解ける内に段々と
笑顔を見せる回数が増えてきたが、本当は天使なのではないかと思えるほど、ソレは眩しかった。
彼女との会話に花を咲かせていると、目的地である大図書館に着いた。
巨大な扉を開くと、初めて来た時と変わらず圧倒的な量の魔導書が出迎えてくれた。
中央に向かって歩を進めると、既にみんな集まってしまっていた。
椅子に座って魔導書を読み耽っているパチュリーさんに、そのすぐそばで立っている美鈴さん。
そして二人の前に見えるのが、この館の主人のレミリア様とその従者たる僕の姉の十六夜 咲夜。
そして、純白のナイトキャップを被った金髪のサイドポニーの小柄な少女。
何やら言い争っている声が聞こえたため、しばらく本棚の裏にこあさんと隠れることにした。
静かに息を潜めて、聞き耳を立てる。
「あのねフラン、いくら従者がいた所でそれを従えるのは、主人のカリスマが最も重要なのよ」
「そんなの知ってるもん‼ 私だってカリスマはあるから大丈夫だもん‼」
「………いいこと、フラン? カリスマとは、いわば『溢れ出る力量』なのよ。……………咲夜」
「ハイ、お嬢様」
「紅茶のおかわりを持ってきなさ「既にこちらに」………上出来よ。分かった、フラン?」
「うぅ~~~‼‼ そんなの、私だって………こ、紅夜‼」
どうやら言い争いの原因は、またくだらない意地の張り合いのようだが、それでも僕の主人が
呼んでいるのに応えないわけにはいかないので、能力を使って瞬時に移動する。
「お呼びでしょうか、フラン『お嬢様』」
「えっと、えっと…………お菓子! お菓子を持って来なさい!」
呼び出されたと思ったら、今度はお菓子の催促。
おそらく自分にも紅茶を持って来い、と言わなかったのは多分姉と同じでは差の違いが
分からないから、敢えて被らない物を選んだのだろう。……………だとしてもお菓子とは。
しかし、それでも僕の主人の命令である以上、どんな内容であれ果たさなければならない。
僕は右手を身体より前に突き出して手のひらを上に向けて広げる。
同時に能力を発動させて、一瞬のうちにバスケットに入ったクッキーを出現させる。
「こちらでよろしいですか、お嬢様」
「わぁ……美味しそう!____________ふ、ふふん!どうかしら、お姉様?」
ドヤァァという擬音が飛び出そうなほど勝ち誇ったお顔をなされるフランお嬢様。
対して姉のレミリア様は先程と変わらず紅茶のカップを持って悠然と構えているが、少し手が
震えており、眉も時折ヒクヒクと上下しているようにも見える。
「くっ…………さ、咲夜!私にも何か持って「マフィンでございます」来て…………流石ね」
「ぐぅ~~‼‼」
「はいはい、そこまでにして」
二人の、と言うより四人の不毛なやり取りに割って入った来たパチュリーさん。
正直なところ、今中断してくれなかったら多分延々と続いていたに違いない。
心の中で感謝していると、レミリア様が落ち着きを取り戻したのか、座っていた大きめの
椅子から立ち上がって、僕ら全員を視界に収めて語りだす。
「………とにかく、やっと全員揃ったわ。これでようやく始められるのね」
紅い輝きを放つ眼を煌々と輝かせて嬉しそうに言ったレミリア様。
つられて僕とフランお嬢様以外の全員がコクリと頷いた。
レミリア様はそれを見て、満足げに微笑んで続ける。
「かつて我々は、この幻想郷の空を真紅に染め上げ、吸血鬼の闊歩できる世界にしようとした。
しかし、その野望はあと僅かで潰えてしまった。原因は幾つかある、だが今回は全く違う」
美鈴さんが左の手のひらに、右の拳を力強く押しつけて気合を入れる。
こあさんも、両側頭部の小さな羽をパタパタさせている。正直可愛い。
パチュリーさんは気だるそうにしているが、彼女の持っている魔導書がここ最近ずっと調整を
繰り返して術式のパワーを底上げしていた最高位の物だと、僕は知っている。
フランお嬢様は、ただ嬉しそうに異形の翼をはためかせている。
そして姉さんは___________ただレミリア様を見つめているだけだった。
「前回の、いわゆる『紅霧異変』は中途半端な結果に終わってしまったが、今度はそうは
いかない。前回とは圧倒的に違う点が二つあるからだ。一つ目は我が妹、フランの介入」
そう言ってレミリア様がフランお嬢様を見つめる。お嬢様も力強く見つめ返してる。
「そして二つ目……………我が紅魔館に、『十六夜 紅夜』がやって来たことだ‼」
僕の名が呼ばれ、みんなが一斉に僕を見つめる。
だが、姉さんだけは、他のみんなとは明らかに違う目線だった。
ここまで口上を述べたレミリア様が、ひと際大きな声で語る。
「もう我々は止められない。あの『博麗の巫女』にだろうと、負けはしない!」
レミリア様が右手を振り上げて、高らかに告げた。
「我々は今度こそ、この幻想郷を吸血鬼の栄える夜の世界に塗り替える‼‼」
___________________少し前、博麗神社 境内_____________________
幻想郷の結界の境目に存在する神社、その名を『博麗神社』。
本来神社などは神や、それに属する聖なるものを祀る建物なのだが、ここにはそれが無い。
それどころか、今この神社で暮らしている巫女には、信仰心など欠片も無い。
そんなんでいいのかと言ってしまいそうなほど、明らかに神司職に向いてない少女は今日も
これと言ってする事が無いため、縁側で淹れたての緑茶を啜っていた。
すると、神社に続く参道の少し上に影が落ちる。
その影は神社の境内で速度を落として、巫女を見つけて声を掛けた。
「いよっす、『霊夢』。暇だから来てやったぜ、感謝しろよ」
「誰も頼んでないから。感謝してほしかったら、賽銭でも入れてみなさいよ『魔理沙』」
「悪いな、只今絶賛金欠中だぜ。持ち合わせがあったら払ってやるぜ」
「期待もしないし、待ってもいないから。………ん?」
二人が互いにケンカを売るような会話をしていると、霊夢と呼ばれた少女が空から
やって来る何かに気が付く。魔理沙と呼ばれた少女も、遅れて気付いた。
「よぉ文。どしたよ、今日はえらくスピード出してたな」
「新聞なら取らないわよ」
まさに文の知る普段通りの彼女らのセリフを捨て置き、文は興奮気味に
二人に食って掛かり、大声で要件を伝えた。
「霊夢さん魔理沙さん‼ 大変です、異変ですよ!」
「は?異変?」
「突然何なのよ文。いきなり押しかけてきて異変持ち込むとか………滅されたいの?」
魔理沙には白い目で見られ、霊夢には凄まじくドスの効いた声で脅される文。
まさかの切り返しに、若干涙目になりながら弁解しようと試みる。
「ちょ、あの、待って! 唐突だったのは謝りますから、とにかく一大事なんです!」
文の本気ぶりに何かを感じたのか、先に魔理沙が尋ねる。
「んで、何がどうしたんだよ。異変がどうって言ってたけど」
「そうなんです、実はですね………」
_______少女説明中
「ふーん、紅魔館に謎の男ねぇ」
「ね!ね⁉ 魔理沙さんは気になりますよね⁉」
「ああ、まぁ少しな。霊夢はどうだよ……………霊夢?」
「………………やってくれたわね、レミリア」
文が見てきたことを魔理沙がまとめていると、霊夢が縁側で空を見上げて呟く。
魔理沙と文もつられて空を見上げて驚愕する。
「うおぉ‼ 何だこりゃ⁉」
「あやや……………月が、月が
「その上、この『紅い霧』。…………ったく、私の日常を何だと思ってるのかしら」
幻想郷全域に及ぶ紅い霧。
そこまでは今までと変わりはなかったが、もう一つ違う点があった。
____________月が、東へ昇っている。
通常ならば有り得ない事態だが、霊夢は冷静に反応する。
魔理沙も最初は驚いたが、今は好戦的な笑みを浮かべている。
「最近『弾幕ごっこ』はご無沙汰だったからな! 腕がなるぜ‼」
「あやや、お二人とも。行くのならば同行しますよ‼ てかさせてください」
「どうせ断っても来るんでしょ、好きにしなさいよ。…………さて、と」
「全く、何でこうも大人しく出来ない連中ばかりなのかしらね」
「フフフ…………さぁ、今度こそ敗北の『運命』を辿るがいいわ」
「異変解決も、楽じゃないのよ」
「苦しみもがき、ひれ伏すがいい」
「叩きのめしてやるわ、レミリア!」
「打ち破ってくれるわ、博麗 霊夢‼」
今、異変が始まった。
しっかり書けました。
あと、部屋の掃除を半年ぶりにしました。
クッソ汚かったです。それだけです。
こちらをメインでしぼって書くべきか迷ってます。
ご意見ご感想、お待ちしております。
それでは次回、東方紅緑譚
第十四話「紅き夜、モノクロの流星」