東方紅緑譚   作:萃夢想天

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いや皆さん、熱くなってきましたねぇホント。
…………だからなんだよって思いましたね?自分もです。

二日に一回とは何だったのだろう……。

忙しかったのならまだ良かったですけれども、
何も無かったのが現実なんですよ……。


あと、パソコンのバグの原因が分かりました‼
機体のスペックで遅れを取るとは……おのれガOダム‼


ええすみません、ちょっと壊れかけましたね。
お待たせしてホントすみません、それでは、どうぞ!


第十弐話「緑の道、交わす剣先と交わる思い」

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの…………」

 

「どうした、魂魄 妖夢」

 

「い、いえ!その………えっと……」

 

「やはり、こういうのは慣れないか?」

 

「ハイ……と言うか、初めてで……」

 

「そうか、私も同じだ………あまり動かないでくれ」

 

「は、ハイ‼ ……あぅ」

 

「………キツイな、密着すると……更にアツい」

 

「あっ……当たって、ます………」

 

「済まない。だが、離れると出てしまう」

 

「ご、ごめんなさい‼ なら私が動きますから!」

 

「その必要は無い。……………だいたい」

 

 

 

「何故君と私が、同じ布団で寝なければならない」

 

 

 

「それは、幽々子様のご命令ですし………」

「だが、布団はまだあるのだろう?何の意味があるのだ?」

 

 

八雲 縁は、ある意味危機に陥っていた。

その部分だけを聞けば、確実に誤解を生むであろう会話をしている二人だったが

そもそも一体何故こんなおかしな事になったのか。

 

同じ、布団で、添い寝などと。

 

縁からすれば、彼女の吐息が首筋に当たる感覚に悩まされ、

妖夢からすれば、彼の鼓動が耳元で躍動して眠気を吹き飛ばす。

互いに避けようとすればするほど、体が当たってしまう程の距離感。

 

 

 

事の原因は、二日と7時間ほど前の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、縁は伝えられた命令に驚いた。

この白玉楼に、二週間も滞在するなどと。だがそれよりも

紫が自分の外泊を許可したことの方に驚いていた。

しかし、妖夢もまた自らの主人の突然の言動に驚いていた。

 

 

「幽々子様‼ いきなり何を言い出すんです⁉」

 

「え~、いいじゃない妖夢。たった二週間よぉ?」

 

「だって、そんな、だってこの人は……」

 

「全く妖夢も幽々子も………いいこと、縁?」

 

「ハイ、何でしょうか紫様?」

 

「絶対に、絶対に、手を出しては駄目よ、良いわね?」

 

「…………?承知いたしました」

 

大きなため息をついた紫は、スキマを開いて中に入る。

それを見送る三人だったが、最後に紫は幽々子にか細い声で話しかけた。

 

 

「手を出しては駄目なのは、貴女もよ?」

「……釘、刺されちゃったわね」

 

そのまま紫は呆れ顔でスキマの奥へと消えてしまった。

スキマが閉じて静寂に包まれるが、幽々子は妖夢に仕事に

戻るように伝えてから、縁を連れて奥の部屋へと向かって行った。

妖夢はその後ろ姿を見つめていたが、その心中は穏やかでは無かった。

 

 

(幽々子様は一体何を……大体、何なんですかあの人‼ あの怪しさ満点の布掛といい……)

 

彼女は一人、既に見えない彼に対抗心を燃やしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、当の縁は幽々子の自室に来ていた。

紫と別れてすぐに彼女に呼ばれて、その後を着いて行った先にあった部屋に

通され、互いに用意されたいた座布団に腰を下した。

しばらく二人は黙っていたが、幽々子が先に切り出した。

 

 

「ねぇ、此処からの景色って素敵だと思わない?」

 

「……確かに、見事な枯山水に手入れされた庭木。綺麗だと思う」

 

「…………そう、その返答は本心?それともわざとなのかしら?」

 

「それは、どういう意味でしょうか?」

 

「あら?もしかして……紫に口止めされてるの?」

 

「口止め?一体何の事ですか、幽々子様」

 

「……………おかしいのよ、だって貴方の体から_______」

 

 

 

 

 

 

 

「_______『西行妖』の妖力を感じるんだもの」

 

 

 

 

 

 

「西行妖………?あの巨大な桜の木のことですか」

 

「そうよ。この白玉楼と共にあり続ける妖木………それがあの桜なのよ」

 

「………その西行妖の妖力が、私の肉体から? 何かの間違いでは?」

 

「間違いでは無いわ、さぁ答えて頂戴。……縁、貴方は何者なの?」

 

 

縁はその問いに応える事が出来なかった。

紫に口止めされている訳では無く、ただ答えられなかったのだ。

自分は主人に連れて来られてこの世界に来た、それだけのはずなのに

自分の中にこの世界の力が混じる事など、本来は有り得ない。

 

なのになぜ__________自分は安心したのか?

 

 

 

 

「ふぅん……本当に知らなさそうね、ならいいわ」

 

「……申し訳ありませんでした、幽々子様」

 

「謝る必要なんて___________あ」

 

 

不意に声を上げた幽々子。

未だ頭を下げている縁に扇子を向けて話す。

 

 

 

「ねぇ縁、貴方は……強いのよね?」

 

「…………まだ『こちら』では戦っておりませんので、何とも」

 

「あら♪だったら、うちの妖夢と戦ってみない?」

 

「魂魄 妖夢と、ですか……………私は構いませんが」

 

 

唐突な提案に驚く縁だったが、彼よりも更に驚いていた者がいた。

 

 

 

「だそうよ妖夢、良かったじゃない♪」

 

「みょん‼⁉ ゆ、幽々子様‼ いつから気付いてっ……」

 

「縁が『西行妖………?』って言った辺りからかしら?」

「始めからじゃないですか‼」

 

 

 

盗み聞きしていた事を見抜かれていた妖夢は、

慌てながらも戸を開けて中に入って来た。

妖夢はバツが悪そうな顔で縁の方を向くのだが、彼は顔を布で隠している為

その心境を表情から慮ることが出来なかったのだ。

だが彼女は、そんな縁の態度が気に障った。

 

 

「……とにかく、私はこんな得体の知れない男と剣を交えるなんて出来ません」

 

「あら、酷い事言うわね妖夢。そんなに気に入らないの?」

 

「ハイ、はっきり言って気に入りません」

 

「んふふ♪嫌われちゃったわねぇ縁」

 

「………何故私を嫌うのだ、魂魄 妖夢」

 

「何故?何故ですって?」

 

 

妖夢が興奮気味に立ち上がって縁に怒鳴る。

その様子を幽々子はただ見守っていた。

縁は妖夢が突然怒鳴った理由を理解できず、黙っていた。

その沈黙が、逆に妖夢の怒りを更に燃え上がらせてしまった。

 

 

「だって貴方___________刀を粗末にしてますから‼」

 

「刀?あぁ、これの事か」

 

 

そう言って縁は腰に下げていた刀をそっと左手で撫でる。

一見するだけだは分からないが、よくよく見ると、確かに傷だらけの上に

柄や鍔の部分も、錆びたり欠けたりしていた。

妖夢は幼い頃から剣と共に生きてきた生涯を送ってきた為か、

そういった事に関する目利きは、かなり精練されていた。

故に、どうしても剣をないがしろにする行為が許せないのだった。

 

 

「一目見た時から気付いていました。その刀は、愚かな主人を嘆いていると」

 

「愚かな主人……か。確かに私は、この刀の手入れはしていないな」

 

「やはり………貴方のような人が刀を堂々と帯刀する事自体がそもそもの______」

 

「は~い妖夢、そこまでよぉ。とにかく、縁が気に入らないのよね?」

 

「ハイ、全く以て」

 

「なら丁度良いじゃない」

 

幽々子は満足げにうなづくと、扇子を開いて縁を示す。

次に妖夢に扇子の和紙の部分を向けて、パンッと勢いよく閉じた。

 

「縁は言いつけ通り、二週間此処で過ごさないといけない。

だけど妖夢は縁が気に入らないから、すぐにでも追い出したい………

だったら、お互いの事情を掛けて剣で勝負すればいいじゃない」

 

うふふ、と笑いながらに幽々子が出した提案。

つまりは、剣を用いての一対一の真剣勝負でお互いの言い分を通そう、

という事だった。この提案を聞くや否や、妖夢はやる気に満ちた表情で

縁の方へと向き直り、感情を剥き出しにして言い放った。

 

 

 

「そういう事なら受けて立ちましょう! さあ、今すぐ戦いましょう!」

 

「……幽々子様、この場合は勝者のみが事を通せるという事でしょうか」

 

「そういう事になるわねぇ。さあ、早く早く」

 

「………仕方が無い、いいだろう。相手をしてやる」

 

 

 

こうして縁と妖夢の、思わぬ形での再戦が約束された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___________そして、その日の夕方。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢との剣を用いての決闘。

互いに距離を取り、間合いを作る。

 

 

「……いいですか、私の勝ちで貴方は此処を立ち去る事になりますからね」

 

「もう勝った後の事しか頭にないのか、それではまだまだだな『半人前』」

 

「ッ‼‼ 良いでしょう、手加減無しで__________行きますッ‼」

 

 

 

先に動いたのは、縁の挑発に乗った妖夢だった。

彼女は背中に背負った長刀『楼観剣』を一息で抜き、その勢いをそのままに

縁に斬りかかった。だが、縁はそれを軽く避ける。

次いで妖夢は斬りつけた楼観剣をすぐさま峰と刃を反転させて斬り上げた。

しかしその攻撃も、縁は難なく避け続けた。

 

 

「くッ‼ 中々やるようですが、避けるだけでは勝てませんね‼」

 

「………………………」

 

「……まただんまりですか、いい加減に………」

 

剣での勝負であるにも関わらず、一向に剣を抜かない縁に激怒する妖夢。

その怒りが、今彼女の振るう楼観剣に上乗せされて、更に速度を上げる。

 

 

 

「___________しろッ‼‼‼」

 

 

 

 

ついに彼の懐に入り込んだ妖夢は、構えと同じ角度で剣を握り突き出す。

もしこの斜め下からの突きを避けられたとしても、その時は上段に上げ切った剣で

相手を袈裟斬りにする事が出来る________下段天上、一点逆閃の構えが決まった。

 

確実に自分の間合いに入れたことに喜びの表情が漏れる妖夢だったが、

縁の一切刀に触れようとしない戦い方に疑問を抱いた。

その部分が、やはり彼女が『半人前』たる箇所なのだろうか。

目の前に敵がいるにも関わらず、妖夢は明らかに、油断した。

 

ドシュッ‼

 

自分の剣が、相手の肉を斬る感触が伝わって来る。

だが、剣は縁の体を切り裂いてなどいなかった。ただ彼が自らの手で

妖夢の楼観剣を握って動かせないように固定しただけだった。

 

 

「なっ‼ 剣を素手で……⁉」

 

「……魂魄 妖夢、お前は何故、剣での勝負にこだわる?」

 

「いきなり何を‼」

 

「…………剣士だからか?それしか生き方を知らないからか?」

 

「ッ‼‼ 五月蠅い‼‼ それが何だ‼ 私には剣さえあれば、剣さえ‼」

 

「……そうか、分かった。____________お前は駄目だ」

 

「何ッ⁉」

 

 

縁は楼観剣を素手で握って動きを封じた後、空いた右手で自らの腰の剣に触れる。

やっと剣を抜く気になったか、と妖夢が少し怒りを抑えて迎え撃つ準備をした時、

縁は細々と彼女に呟いた。

 

 

 

「いい加減にするのは、お前の方だ」

 

「なっ、何を世迷言を‼」

 

「……お前は剣を、自分の持つ強さと勘違いしているようだが、それは違う。

剣は、ただの『道具』だ。お前に力を与えたり、思いに応えるような事はしない」

 

「____________さい」

 

「剣を毎日振るっていて、剣がお前に合わせて形を変えたか?それとも、お前の強さを

求める心の奥底の願望を満たすような成果を独りでに生み出したか?そんな事は有り得ない」

 

「_________るさい」

 

「剣は、武器だ。いくら思い入れがあろうともな。お前は自分の持つ考えに、

自分の今見えている世界に縛られている。だから成長出来ない。強く、なれない」

 

「うるさいッッ‼‼‼」

 

 

 

剣を受け止めている左手から血を流しながら語った縁に怒鳴った妖夢。

だが彼女の表情は先程とは一転して曇り、今にも泣きだしそうなほど歪んでいた。

妖夢は、視認出来ない彼の視線を感じ取っていた。

冷たい目線。だが決して冷え切っているのではなく、その奥底には燃え盛る熱い

『感情』を感じ取れた。なぜだかそんな気がした。

 

縁は空いている右手で自分の腰に下げている刀の柄に手を添え、

ゆっくりと鞘から抜き払って妖夢に向けて刃を突き出す。

 

 

 

「見ろ、この刀を。手入れをしなければこのように段々と錆びて、やがて折れる。

だがそれは人間も同じだ。自分の切れ味がいくら他人を凌駕していたとしても、

鍛え続けなければ、その才も錆び尽き、折れて無くなるだろう」

 

「………………………………」

 

「今のお前と同じだ。だが、まだ錆びきってはいない。

研ぎ直せば、再び君本来の切れ味を取り戻せるだろう」

 

「………………取り戻せる……?」

 

「そうだ、だからこの戦いも君自身を磨く砥石にしろ。ただ自分の欲を表し、

満たすだけの『手段』へと成り下がる事を避けろ。…………話が長くなったが、

私が言いたいことは要するに___________」

 

 

 

 

 

「___________剣は『斬る』為の『道具』だ」

 

 

 

 

 

縁の話に聞き入って剣を握る手に力が入らなくなった妖夢に

彼はその右手の剣を、下手(したて)から一気に突き立てた。

 

 

「あっ______________」

 

 

 

彼の剣が腹部に突き刺さるのを目視した妖夢は、彼と言葉を交わした影響か、

それともまた別の要因があったのか。彼女は意識を手放してしまった。

 

力なく倒れ掛かる彼女を片手で支える縁。

縁側で二人の勝負を見ていた幽々子は、何も言わずに二人を部屋に上げた。

ただ、意識を失っている妖夢の前髪をそっと撫でて、笑みを浮かべる。

その後、幽々子の晩御飯をねだる声を聞いて妖夢は目を覚ましたと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________時は戻って、現在。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、ロクに戦えなかった私の為にもう一戦受けてくださったんですよね」

 

「ああ、だが決着は尽かずに引き分け。なのにどうしてこうなった?」

 

「あ、はは…………でも、縁さんのおかげで、何か迷いを断ち切れたような気がします」

「そうか。それは良かったな、『妖夢』」

 

「‼_______________ハイッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は結局、翌朝まで一睡も出来なかったと言う。

 

 

 






ホントグッダグダですみません。
時間も何もあったもんじゃねぇ(泣)


また書き足りない部分は他で補います



それでは次回、東方紅緑譚



第十参話「紅き夜、始まる『異変』」

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