変身願望ブルゥス   作:アルファるふぁ/保利滝良

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年が明けそうですね
その前にクリスマスでしょうか
両方とも私には関係無いですな
いつも通り、全力で読者の皆様に作品をお届けします



プレリュードオブペイン

距離二メートル以下 互いの拳が届く長さ

清仁の青い異形が左肘を曲げる 拳は握り、視線は相手の顔面へ そして狙いを定める

橙色の異形が右肘を曲げる 拳は握り、視線は清仁の方へ 狙いは既に定めた

匙で下から掬い上げるような軌道を描いて、拳が振るわれた とても強烈なアッパーカットだった

《ぐっ》

何か、堅いものが割れるような音がした 何が割れたかは言うまでもない

清仁の顎は、敵の拳によって叩き割られたのである

橙色の怪人の橙色の拳には刺が付いていたし、そのパンチは素人のそれとは一線を画していた こうなるのも至極当然だ

下顎を殴り壊された青い怪人は、拳を振る前に吹っ飛ばされた アッパーで打ち上げられた怪物は、数メートル空中を飛んで、放物線を描いてコンクリートの床に落っこちた

全く柔らかくない屋上の床は、容赦なく清仁の背中を痛め付けた

一発KOなどされている余裕はない スポーティーなボクシングと違って、これは起きなければトドメを刺されるのだから

腹筋と腰とを限界まで使い、背中を持ち上げる 左手で足場を押して、膝を伸ばして立ち上がる

その頃には、オレンジ怪人は拳を握り締めていた 足で建物の天辺の地面を踏みしめ、両肘共に曲げている

ただ、肘の角度からして右手から拳を振ろうとしているのは確かだった

反射的に、清仁は平手を伸ばした 敵の拳は掌の付け根辺りで弾かれる

しかしあまりの威力に、その重い拳を逸らし切ることはできなかった 肩から卵を踏み潰したような音が鳴った その音が聞こえると、左肩の感覚が無くなった

平手を使っていない方の腕で、オレンジ色の面を殴り付ける

殴られた方はよろめいたが、顔が砕かれたりはしていない 多分、向こうの方がパンチ力が圧倒的に上だ

二、三歩後退した橙色の異形は、拳を握って何かしらの構えをとった 清仁には詳しくはわからないがボクシングの型だろう

それを視認すると、清仁の肩と顎からぶしゅっとした感覚が起こった

『普通の』人間の出血にあたる現象だろう しかし半透明でややとろみのある体液は、真っ赤な血潮とは程遠い

粉砕された傷口からじゃばじゃばと溢れ出す体液 青い怪人には泣きっ面に蜂 しかしそれは相手にとって好機

腹部へと、とてつもない勢いの拳が迫る

文字通り突き刺さる拳 腹部から液体が流れ出す

が、タダではやられない 清仁は相手の襟元にあたる部分を左手で掴んだ

右手を限界まで握り締め、肘を限界まで後ろに引き、腕に限界まで力を込めた

その右ストレートは、見事に橙色の異形の顔に叩き込まれた その勢いに、命中した箇所は浅く窪む

が、叩き割る程の威力ではない 技術も、攻撃力も、清仁よりオレンジの怪人が勝っていた あまりにも埋めがたい差だった

大きく後ろに反らせた頭を真っ直ぐに伸ばし、橙色の異形は拳を握った

《ぐっ》

瞬きより早く、清仁の視界一杯にトゲトゲの拳が広がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ハハ・・・どーだ、俺はまだ行けるぞ!黒井の野郎、見てろ、ライトの日本一・・・も一回・・・取ってやるぜ・・・ハハ・・・》

オレンジの異形は肩で息をしていた

予想より手こずった

まさか、ただの高校生が自分をここまで追い詰めるとは思っていなかったのである

彼の想像以上に、青い異形は強かった

一撃で終わるはずが、反撃を何回も貰った

だが、勝った

敵は己の体液にまみれ、身体中には醜くヒビが巡っている

後は爆発して遺体ごとこの世からオサラバと言うわけだ

さあ、早く消し飛んでくれ

こんな場所で騒ぎを起こしたらどうなるかわかりきっている

騒ぎが広がらない内に退散したい

だが、青い異形は健在だった

膝立ちのまま、体液を垂れ流している

《・・・ハァ?》

おかしい、怪人は死んだら爆散してしまうはずだ

それはほぼ鉄則だ

では、死んでいないのか?

なら、トドメを刺さなくてはならない

とっとと息の根を止めよう

橙色の怪人は、早足に青い怪人へと歩み寄る

 

 

 

 

その時、清仁の体が膨れ上がった

 

 

 




書いてて思うんですよ
痛ぇなこりゃ
書いてて思うんですよ
主人公チート?

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