「こんにちは、お昼のニュースのお時間です」
清仁は大衆食堂の一席で、肉の乗った丼を掻き込んでいた
白飯に醤油系のタレが絡んで最高に旨い
副菜の漬け物をかじりつつ、ニュースキャスターの顔を睨んだ
他の席の客にも、ちらほらと店の一角に置かれたテレビを見詰める者もいた
「続いてのニュースです アイドルグループlucky☆7が、活動の無期限中止を発表しました メンバーの大木ゆうさんが、行方不明になったことが原因とみられ・・・」
やはりと言うべきか、怪人が世間に与えた影響は少なくないらしい
清仁が殺した怪人が死んだことで、彼らの実生活に関わった人間にも大事を翻している
テレビの画面には、アイドルグループのファンの人間が写っていた
インタビューを受けている際の映像だろう
すすり泣いて、既にこの世から消えた美少女が発見されることを信じている旨の発言をした
清仁は店員に追加注文をした
「続いてのニュースです ・・・県の県知事、松井京二氏の行方不明に関して、・・・県は年末前に、臨時の県知事選挙を行うことを発表しました」
いつかに戦った男の名前が聞こえる
県の名前は、自分が味噌汁を啜る音で遮られて聞こえなかった
だがあの名前は未だに忘れていない
清仁の行いが、彼の故郷に甚大な被害を与えていた
県知事が突然いなくなれば当然その県は一時的な麻痺を起こす
年末前に選挙を起こすなら、その間はトップがいない状態で県庁や各市役所がなんとか回していくしかない
果たして、それはどれくらいの混乱を招くか
「続いてのニュースです 国内中で頻繁に起こる連続失踪について、警視庁は各都道府県ごとの今年の失踪者数を纏めたデータを発表しました」
ニュースキャスターの一言に続いて、各都道府県ごとに纏められた何かのグラフが表示される
失踪者等という表現が適切でないことを清仁は知っている
怪人となり、互いを殺し合う欲求のもと戦い、そして相手によって殺された者達のグラフだ
思った通りグラフは満遍なく高い数値を出していた
特に松井が県知事をやっていた県は特に上の方の順位を持っていた
皮肉な言い方だが清仁の功績だ
清仁が、あそこの県の異形と化した人々を全て倒したからだ
グラフが消え、警察の高官と思わしき人物の記者会見が写し出される
その様子を清仁は見なかった
どんな捜査方針を建てたとしても、事件の元凶が怪人が云々などという突拍子もない答えに行き着く可能性は遠い
増してや、普段は人と全く同じ性質をした怪人達を、どうやって探し出すというのか
「お昼のニュースを終わります」
ニュースキャスターの締めの一言と共に、清仁は箸を置いた
レジで財布を取り出して、会計を済ませ、店を出る
だが、無償に店に戻りたくなった
ニュースを見たかったのだ
世間の動きが、怪人達の行く末が、少し気になっていた