変身願望ブルゥス   作:アルファるふぁ/保利滝良

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味わうモノ

 

ビルの屋上へ駆け上がる影

片方は黒 もう片方は縞模様をしていた

二つの人影は、ほぼ同時に屋上の広場へと降り立つ

ストライプの異形が左手を握った 開いた手、禍々しく伸びた鉤爪が生えていた

黒い怪人が、爪を振りかぶる敵に身構えた

数歩進んで爪を振り下ろすストライプ

真上からの振り下ろし、黒は半身を後ろにやってかわす 右から左への素早いブロー、屈んで避ける 斜め下からの打ち上げ、後ろに倒れるようにして回避する

渾身の攻撃を次々と空振りにしたシマシマ怪人は、距離を取るように後退りした

黒い異形も、倒れたそのままバク転で姿勢を直す 着地した足の下で、アスファルトが少し割れた

黒は跳んだ 朝日の中に飛び込んだ

太陽を背にし、敵に向かって片足を伸ばす 敵を目で追ったら縞模様は、太陽光線に目を焼くことになる

一瞬の失明 それは飛び蹴りの直撃に充分であった

縞模様の腹部にめり込む踵 質量に抗えず、ストライプの怪人は転げた

黒い怪人が着地する アスファルトにヒビが入る

爪を振り上げて、ストライプの異形は立ち上がる いよいよ本気を出したか、素早い動作で黒に肉薄する

振るわれた爪が、外骨格を削った 半透明の液体が傷痕からこぼれ落ちる

このまま削り殺してやろうとストライプの怪人がまた爪を振り下ろした 黒い異形は腕でそれを受けとめた

ブロークンサンダーに使う器官が切断された やはり、半透明の液体が溢れる

黒い怪人は傷にも構わず、ストライプの顔面に拳を叩き付けた 衝撃で吹き飛ぶ異形 アスファルトにぶつかり跳ね飛ぶ異形

またも起き上がることになったストライプが見たのは、先程斬ってやった敵の器官が、蠢くように生えた光景であった

ブロークンサンダーの器官を再生させた清仁は、刺々しく生まれ変わったそれを敵に向けた 器官がバチバチと音を立て、放電を始める

六本目の指で指差すように、縞模様の敵へ向けられた器官 放電がさらに大きくなった瞬間、それは敵へ放たれた

ブロークンサンダーの飛び道具版としてシューティングサンダーと名付けたこの技は、難敵の県知事を一撃のもと葬った技だ

一介のサラリーマンに耐えられるわけもない

頭部を何かが通り抜け、縞模様の異形は屋上から転落した

空中で、炎の華が咲いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旨いラーメンが食えた

来て早々戦いができた

ここはなんて良い場所だろう

さすが日本の首都だ

清仁がいたあそことはわけが違う

惜しむらくは住めなかったことか

こんな豊かな地で、豊かな場所で生まれていれば

豊かに暮らせていれば

どうしようもないことを無視して、清仁は歩き出す

もう警察や消防が来た

旅に戻ろう

 

 


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