変身願望ブルゥス   作:アルファるふぁ/保利滝良

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現在の清仁の殺害スコア
・・・・・・六人
男性四人、女性二人



探り合う者達

 

「ぁんだ、こりゃ」

家のポストに、一通の手紙があった

受け取り人には志田清仁

差出人は、松井京二

「誰だコイツ」

ファミリーネームが違うので、親戚筋ではないはずだ

家族の知り合い、学校関係、近所の人々

どれの記憶にも当てはまらない

細長い穴から引き抜いた封筒をその場で乱暴に開封する

家族宛のものならともかくとして、自分宛のものなら好きに扱ってもいいのだ

「めんどくせえな」

チラリと目を通すと、拝啓から敬具まで通しで書かれた長い文がズラリと並んでいた

前略も中略も後略もないという容赦のなさだ

活字離れしていないタイプの清仁でなければ、めんどくさいの一言で済ませれないだろう

「うん・・・うん?」

いかにも不機嫌ですと言うような三白眼を細めながら読み進めると、大体の内容が見えてきた

話があるので今度の土曜の正午に貴方の家の近くのバイキングレストランで会いましょう

というお誘いだ

清仁は便箋を折り畳まずに数十に引き裂くと、ゴミ箱に放り込んだ

普通に怪しい

何もかもが怪しい

だが清仁は、誘いに乗ることにした

意味不明だからこそ、何かがあると踏んだ

踏んだものは地雷か小銭かわからなかったが、何もないはずはない

喜んで飛び込むことにしよう

 

 

 

 

 

約束の日

私服となった清仁は、自転車を漕ぎつつ周りを見渡した

安全確認というよりは、いや安全確認である

だがベクトルが違う

曲がり角から唐突に来る自動車ではなく、松井京二とやらの手先が己を監視しているか探している

今のところは見えない

杞憂かと思うと、引き締められた顔面が途端に弛緩する

だが、近くの電信柱に目を向けた瞬間、顔は再び険しい表情を形作った

「成程」

何もかもを納得したとき、目的地に辿り着いた

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」

「あ、いいえ、連れがいるはずなんですが・・・」

従業員を片手で制すると、清仁は店舗を見回した

流石食べ放題の店だ、田舎の辺境でも昼時ともなれば席が一つ残らず埋まっている

見渡す限りの人と椅子とテーブルが、清仁の視界を支配する

「いた」

だが、目当ての人間はすぐに見つかった

ズカズカと歩み寄ると、清仁はスーツ姿の成人男性の目の前に立った

「やあ、君が志田清仁君だね」

「はじめましてと言うべきか、松井京二」

にこやかに話しかけてきた男の顔を見下ろしながら、清仁は吐き捨てるように言った

「いや、名前の後に県知事と付けるべきか?」

清仁が全く見ず知らずの松井をすぐに見付けられた理由

電信柱に、県のPRに勤しむ松井京二県知事の画像があったからだ

松井が清仁の住所や名前を知り得た理由も何となく見えた

県知事なら、県の市役所に理由を付けて周辺住民の情報を一部抜けるだろう

問題は、松井がどうやって清仁のことを知り得たのかだが、それもわかった

「清仁君、最近の若者は礼儀がなっていないとよく言われるないかい?」

「今から殺し合いをする人間に敬語を使う余裕なぞあるか」

お互いが怪人なら、その存在も認識し合える

あとはそれを辿るなりしてストーキングすれば一発だ

大概それは、死闘に直結するのだが

「さっさと始めようぜ」

 


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