ゴールデン*ラビットガールズ!   作:ルヴァンシュ

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 ついにPart.2、開幕です。


※告知事項※

・10/22 痛恨の誤字。美紀ちゃん→みーくんに修正。

・何かあれば書きます。


Part.2 チェンバー・オブ・シークレッツ
かぞく


【第家話】

 

 

かぞく

 

 

[001] プリベット通りについて

 

 ――プリベット通り。

 

 

 イギリスのサレー州にあるリトル・ウィンジング地区。そこにプリベット通りはある。

 

 そこに住むのは根性曲がりのマグルばかり。特に、無駄に綺麗にカットされた生垣が特徴の『ダーズリー家』は、中でも最もマグルマグルしている者共である。だが、由紀、胡桃、悠里、美紀は彼等の家に居候するわけではない。

 

 彼女たちが居候するのは、そのダーズリー家から二筋離れた場所にある『フィッグ家』――プリベット通り一の変わり者、《アラベラ・ドーリーン・フィッグ》の住む"猫屋敷"である。

 

 

[002] くるまにのって

 

「ダンブルドアから頼まれたのさ」

 

 

 フィッグは、キングズ・クロス駅からの帰り道、車の中でそう言った。因みに、運転しているのは《エルファイアス・ドージ》。ダンブルドアの崇拝者で、ダンブルドア否定派からは"ドジのドージ"と呼ばれている。

 

 

「あんた達を預かってくれってね。どうもあんた達、身寄りがないらしいじゃないか。ホグワーツに迷い込んで、成り行きで入学したとか――ダンブルドアは気に掛けていたそうだよ」

 

「……心当たりがないような気がするんですけど、気の所為でしょうか」

 

 

 美紀の言葉に頷く由紀、胡桃、悠里。

 

 

「そりゃそうさ。あの人が表立ってそんな事を言う筈ないからね。秘密主義なんだよ、ダンブルドアは」

 

 

 フィッグは猫を撫でながら言う。猫は気持ちよさそうに、ゴロゴロと音を立てた。

 

 

「「「「…………」」」」

 

「……そう警戒しなくていいよ。あたしゃ別にあんた達に害を加える気は無いんだから」

 

「ある意味お前さんの家が、その子達にとっては害そのものになるかもしれんがの」

 

「お黙りドージ!! 黙って運転しな!!」

 

「偉そうに……」

 

 

 ぶつくさ言いながら、ドージはまた沈黙した。

 

 

「……ねえ」

 

 

 由紀が口を開いた。

 

 

「なんだい?」

 

「えっと……その猫ちゃん、可愛いね。フィッグさんのペット?」

 

「そうさ、こいつはあたしのペットだ。そうじゃなかったら何だってんだい?」

 

「え、えっと……」

 

 

 フィッグは猫を撫でた。

 

 

「ミスター・チブルスさ。あたしの可愛いペットだ。こいつはあたしの猫の中でも一番利口でね。あたしの言いつけを破った事がないんだ」

 

「へぇ、そうなんだ……猫の中でも? 猫ちゃんを沢山飼ってるの?」

 

「ああ、沢山飼ってるよ。あたしの仕事なのさ。家中あちこちに居る」

 

「へぇ……」

 

 

 由紀はミスター・チブルスを見た。撫でられて気持ちよさそうにウトウトしている。

 

 

「私も触っていい?」

 

「ああ、いいとも」

 

「ありがとう!」

 

 

 由紀はチブルスに触れた。フワフワとした毛のお陰で、触れるととても暖かい。由紀はゆっくりと手を動かした。

 

 

「……ニャー……」

 

 

 慣れない人に撫でられたせいか、一瞬体をびくりとさせたが、その後はさっきまでと同じように、満足気に舟を漕いだ。

 

 

「えへへ……ココアちゃんじゃないけど、ぎゅーってしてもふもふしたくなるね」

 

「流石にそれはやめろよ? 寝てるんだから」

 

 

 胡桃が苦笑する。

 

 

「冗談だよ冗談。もう、胡桃ちゃんってばすぐ本気にする〜。そんなんじゃいいお嫁さんになれないよ?」

 

「何でそこでお嫁さんなんだよ!?」

 

「あれ、将来の夢お嫁さんって言ってなかったっけ」

 

「言ったけども! それをここで絡めてくるか普通!?」

 

「あ、そっか! 胡桃ちゃんの結婚相手はショベルだから、喋らないんだね!」

 

「てめえ喧嘩売ってんのか!?」

 

「ショベルが喋らない……ショベルなのに……ぷぷぷ」

 

「上手くねえんだよ! つーかどんだけ使い古したネタなんだよそれ!」

 

「ぷぷぷ、胡桃ちゃんってば元気いいね〜、何か良いことでもありました?」

 

「唐突なパロネタ止めろ! しかも似てねえし!」

 

「もう、二人とも? あんまり騒ぐと、チブルスちゃんが起きちゃうわよ?」

 

 

 騒ぐ二人を嗜める悠里。このポジションが板についている。

 

 

「あっ、そうだった」

 

「悪いな……っていうかもともと由紀が……」

 

「チブルスちゃん? ミスター・チブルスって言っただろ? 雄だよ、ちゃん付けは止めな」

 

「いやそこ突っ込みますか!?」

 

 

 不満そうにフィッグが言う。

 

 

「すみません、じゃあチブルスくんで良いでしょうか?」

 

「そういう問題!? チブルスくんって何か変じゃね!?」

 

「まあいいだろう」

 

「良いんだ!?」

 

「ちょっと胡桃先輩! 静かにしてあげてください! チブルスくんが起きてしまいます!」

 

 

 美紀も混じる。

 

 

「私!? 私が悪いのか!?」

 

「もう、胡桃ちゃんってばいけないんだー」

 

「由紀てめえショベルの錆にしてやろうか!!」

 

「ぷぷぷ、胡桃ちゃんってば暴れん坊さん……ねえ、その振り上げたショベルは何? あの、ちょっとそれ下ろして、ごめん! 謝るから! 謝るから!!」

 

「問答無用じゃーい!!」

 

「ひゃあああっ!!?」

 

「ええい、静かにせんかお前ら!! 運転に集中出来んのじゃ!!」

 

「「すみませんでした」」

 

 

 立ち上がっていた二人は座席に座った。

 

 え? ここは車の中じゃないのか、って? ここがどこかお忘れだろうか。ここは何でもありの魔法界。見かけによらず内部が広い車なんてザラである。マグル基準で物事を考えるのはマグルを知る上で大切なことではあるが、あまりマグル脳にならないようにしよう。

 

 

「……随分元気じゃないかい。ダンブルドアからの報告じゃあ、暗い連中かと思ったけど、どうやら杞憂だったみたいだね」

 

 

 騒がしい四人を見て、フィッグは呟いた。手の中では、ミスター・チブルスが不機嫌そうに鳴いた。眠りを妨げられ、怒っているのだ。

 

 

「ダンブルドア先生、私達の何を見ていたんですか……?」

 

「ダンブルドアはご多忙でいらっしゃる。ちょこっと記述が間違っておっても、仕方のない事じゃろう」

 

「ちょこっと……?」

 

 

 ドージが口を挟む。その言い分には少々疑問が残るが……。

 

 まあそんなこんなで、後部座席で散々はしゃいでいるうちに、車はプリベット通りに突入していた。そして、ある一軒家の前で停車した。

 

 

「着いたぞ」

 

 

 ドージが言った。

 

 

[003] ねこのいえ

 

 フィッグ家は、外側から見れば何の変哲もないただの一軒家であった。レタスのような匂いが漂っているが、それを除けばどこにでもある普通の二階建ての家。

 

 

「さあ、お入り」

 

「おじゃまします」

 

「お邪魔します」

 

「お邪魔しまーす」

 

「お邪魔しまーす!」

 

 

 車から降りた四人は、フィッグ家へ上がった。後からドージがトランクを一つずつ抱え、上がってくる。重そうだ。

 

 家に上がり、案内されるがままにリビングへ向かった。そこで彼女たちは、衝撃的な光景を目の当たりにする事となった。

 

 

「ニャー」「ニャー!」「ニャー」「ニャァ!」「ニィィ」「ニ"ャー!」「ニャーォ」「ニャァ!」「ニャー」「ニャー!」「ニャー」「ニ"ャァ!」「ニ"ャッ」「ニャー!」「ニャオーン」「ニ"ッ!」「にゃあん」「にゃにゃあん!」「ニャオーン」「ニャオーン!」「ニャー」「にゃー!」「ニャー」「ニャァア!」「「「ニャー!!」」」

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

 リビングは、まるでフワフワの絨毯を引いているが如き有様であった。大量の猫が闊歩し、鳴き、眠り、蠢く。まさに猫のカーペットと呼ぶべきそれは、四人の想像を遥かに超えたものであった。なんというもふもふ天国!

 

 

「……えーっと、これはー……」

 

「あ、あらまあ……」

 

 

 困惑する胡桃、悠里。

 

 

「わあ!! 猫ちゃんがいっぱいだー!! あはは、わーい!!」

 

 

 一方、由紀は猫の海に飛び込んだ。抱こうと試みるも大量の猫の波に押し流され、踏まれ、引っ掻かれ、戻ってきた時にはボロボロであった。

 

 

「……うん、楽しい!」

 

「マゾかお前は」

 

「全く、だらしないですね由紀先輩は! 見てて下さい、私が手本をお見せしましょう」

 

「えっ、お前もそっち側なのか」

 

 

 美紀は猫の海に飛び込んだ。すると、飛び込んだ美紀を中心とした円を描くように、大量の猫たちが端の方に退避した。それは宛ら、蛇が猫の群れに飛び込んだかの如き忌避。速攻で心が折れた美紀は戻ってきた。

 

 

「なんで……なんでっ……」

 

「……美紀ちゃんドンマイ」

 

 

 悠里が美紀の肩に手を置いた。

 

 

「どうだい? あたしの自慢の猫たちは」

 

 

 フィッグがリビングのソファに座りながら言った。引っ掻かれもせず、ましてや逃げられもせず、ただひたすらに猫たちが擦り寄ってくる。まさに理想形。

 

 

「可愛いだろう?」

 

「いや、可愛い、ですけど……」

 

 

 胡桃は苦笑い。

 

 

「ちょっと、その……大すぎませんか?」

 

 

 悠里も苦笑い。

 

 

「何言ってんだい。これくらいで根をあげてるようじゃ、この家では住めないよ」

 

「「え"!?」」

 

「「え!?」」

 

 

 固まる二人と喜ぶ二人。フィッグは四人を二階に案内した。

 

 二階には三つ部屋があった。一つは物置部屋。一つは四人の部屋。そしてもう一つは――。

 

 

「ニャー」「ニャー!」「ニャー」「ニャァ!」「ニィィ」「ニ"ャー!」「ニャーォ」「ニャァ!」「ニャー」「ニャー!」「ニャー」「ニ"ャァ!」「ニ"ャッ」「ニャー!」「ニャオーン」「ニ"ッ!」「にゃあん」「「にゃにゃあん!」」「ニャオーン」「ニャオーン!」「ニャー」「にゃー!」「ニャー」「ニャァア!」「「「ニャー!!」」」「ニャー」「ニャー!」「ニャー」「ニャァ!」「ニィィ」「ニ"ャー!」「ニャーォ」「ニャァ!」「ニャー」「「ニャー!」」「ニャー」「ニ"ャァ!」「ニ"ャッ」「ニャー!」「ニャオーン」「ニ"ッ!」「にゃあん」「にゃにゃあん!」「ニャオーン」「ニャオーン!」「ニャー」「にゃー!」「ニャー」「ニャァア!」「「「ニャー!!」」」

 

「「――」」

 

 

 そう、「ニャー」「ニャー!」先ほどの約3倍「ニャー」「ニャァ!」「ニィィ」「ニ"ャー!」「ニャーォ」ほどの「ニャァ!」「ニャー」「ニャー!」猫が「ニャー」「ニ"ャァ!」「ニ"ャッ」その部屋の中「ニャー!」「ニャオーン」「ニ"ッ!」で「にゃあん」「にゃにゃあん!」蠢いて「ニャオーン」「ニャオーン!」「ニャー」「にゃー!」「ニャー」「ニャァア!」いた「「「ニャー!!」」」のだ!

 

 

「「わーい!!!」」

 

 

 由紀と美紀は猫の群れに飛び込んだ。全ての猫が由紀のもとへと向かい、美紀のもとには一匹もいない。猫に埋もれ、喜び3と苦しみ7の悲鳴をあげる由紀と、手を広げたポーズのまま固まっている美紀。胡桃と悠里には、どちらも等しく哀れなものに見えた。

 

 

 

[004] かぞく

 

 

「ここがあんた達の部屋だよ」

 

 

 フィッグに案内されたのは、隣の部屋。四人は部屋に入った。

 

 部屋の中は、至って普通の内装であった。先ほどまでおかしなものを見せられてきた胡桃と悠里にとっては、まさに清涼剤のように感じられた。

 

 ドージが荷物を部屋へと運んでくる。フィッグは荷物の整理をするように四人に告げると、一階へと降りていった。手続きやら何やら、やる事は多いのだ。

 

 

「……ようやく静かになったな」

 

 

 胡桃が言う。

 

 

「それにしてもびっくりしたわね……あの猫の量……流石、魔法使いのお家、といったところかしら」

 

 

 悠里が言う。

 

 

「魔法使いの家だからってこれは無いだろ……もうちょっと無かったのか他に……由紀、美紀、大丈夫か?」

 

 

 胡桃と悠里は二人を見た

 

 

「え、えへへ……だ、だいじょーぶ……」

 

「いやどう見ても大丈夫じゃなさそうなんだが……」

 

 

 猫に揉みくちゃにされ、ボロボロの由紀。服は彼方此方が破れ、ところどころ引っ掻き傷が出来ている。

 

 

「はは……ええ……大丈夫ですよ……ははは」

 

「気をしっかり持って美紀ちゃん」

 

 

 猫に徹底的に避けられ、精神的にボロボロの美紀。物理的には引っ掻かれさえしなかったが、その心には確かに傷跡ができた。

 

 

「いやー、ここ凄いね! 驚きの連続だよ!」

 

「ええ……ここまで嫌われるとは驚きです……」

 

「魔法使いのお家って凄い! まるで猫ちゃんの国みたい!」

 

「まるで国際指名手配犯みたいですね私……」

 

「こんな変な家他にないよ!」

 

「こんな苦しみ他にありませんでしたよ……」

 

「おい誰か美紀を癒してやれよ」

 

「無理よ、傷が深すぎるわ」

 

 

 負のオーラを纏う美紀。案外ダンブルドアは的を射ていたのかもしれなかった。

 

 

「それにしても」

 

 

 トランクを開けながら悠里が言う。

 

 

「学校以外の場所で過ごすなんて、何時ぶりかしらね」

 

「ああ、そう言えばそうだな……ホグワーツも、一応学校だしな」

 

 

 胡桃がショベルをベッドの横に立て掛けながら言う。

 

 

「学園生活部……って言っても寮生活が当たり前な訳だし、もうこの名前要らないかしらね。ふふっ」

 

「えっ!?」

 

 由紀がとんでもないとでも言うかのような顔をする。

 

 

「それは違うよ!! 学園生活部の活動は寮生活とは一線を画すものなんだよ! これをなくすなんてとんでもない!! 例えば! ……例えば……」

 

 

 考え込む由紀。胡桃が微笑む。

 

 

「……ま、別になくさなくてもいいんじゃね? 部活禁止って訳でもないし」

 

「部活禁止っていうか、部活自体無いけどね」

 

「……私も」

 

 

 隅の方で三角座りしている美紀が言う。

 

 

「……なくさなくていいと思います。この名前には、先輩方の思い出が、沢山詰まってると思いますから……楽しかった事も、辛かった事も」

 

「……そ、そうね」

 

 

 冗談で言ったつもりが、思いの外食いついてきた事に戸惑いを隠せない悠里。

 

 

「大丈夫よ、ええ。部活をなくすには、色々手続きが必要だもの――部員もまだ居るし、廃部にするには尚早よね」

 

「部員と言えばさ!」

 

 

 由紀が言う。

 

 

「新入部員とかって来るのかな!? ほら、夏休み終わったら新入生が入ってくるでしょ? 新入生勧誘する!?」

 

「いやそれはしなくてもいいだろ」

 

「でもさ、このまま部員が四人のままで卒業しちゃうと、学園生活部廃部になっちゃうよ? そんなの嫌じゃない?」

 

「んー……まあそれもそうなんだが……」

 

「新学期と言えばさー!」

 

「コロコロ話題を変えるな!!」

 

「胡桃ちゃん、クィディッチとか出ないの?」

 

「え? ……んー」

 

 

 胡桃は腕を組んだ。

 

 クィディッチの選手になれるのは二年生から。一年生の段階でクィディッチ選手となった穂乃花が同学年に居るが、あれは特例中の特例である。

 

 

「胡桃先輩、運動神経いいですもんね。エントリーしてみては如何です?」

 

「そうは言うけどな……空中競技と陸上競技には天と地ほどの差があるんだぞ? つーか実際天と地だし……」

 

「ハッフルパフの私としては、あまりグリフィンドールチームが強くなる事は歓迎しないけれど……でも、胡桃なら上手く出来るんじゃない?」

 

「そうかねー……まあ、考えてみるだけ考えてみるよ」

 

 

 四人はその後も、そんな他愛のない話をしながら荷物を片付けた。部屋にはベッドが四つあり、どこのベッドで寝るか揉めたりした。

 

 

「……なんか新鮮ね」

 

 

 悠里か言った。

 

 

「さっき言ったけど……私達、学校以外の場所で過ごすなんてこと無かったじゃない」

 

「……そうだな」

 

 

 ベッドに寝そべり、胡桃が言う。

 

 

「普通なら家族と家で過ごすもんだよな、休みの日ってさ」

 

 

 胡桃が想起するのは、嘗ての記憶。あの未曾有の大災害――人災か――の影響か、家の中には誰もおらず、荒れ果てていた――。

 

 

「家族ですか……懐かしい響きですね」

 

 

 ベッドの上で体育座りしながら美紀が言う。

 

 

「本当だよねー。学園生活部って楽しいけど、お父さんやお母さんに会えないのがちょっと寂しいよね」

 

 

 ベッドの上で転がりながら由紀が言う。

 

 

「でもさ、私達四人、もう家族みたいなものじゃない? だって、ずっと一緒に居るんだよ? これを家族と言わずして何と言おうか!」

 

「ふふ、確かに、それもそうね」

 

「それにフィッグお婆ちゃん! あの人も家族みたいなものじゃない? これから一緒に住むんだしさ!」

 

「ははは、それは違いない」

 

「あと、猫ちゃん達も家族だよ!」

 

「…………」

 

「んー? どうしたのみーくん? 顔色悪いよ? あ、猫ちゃんから避けられてること気にしてるの? あはは、もー美紀ちゃんってばデリケートだな〜! でもなんで猫ちゃんたちみーくんを避けるんだろうね? 私の方には怖いほど来るのにね? おかしいなー。もしかしてみーくん、体臭キツいんじゃない? 猫ちゃんって鼻が敏感だから、ちょっとした匂いでも反応しちゃうからな〜。みーくんお風呂ちゃんと入った?」

 

「おい、その辺でやめてさしあげろ。美紀がゾンビみたいな顔になってる」

 

「え!? あ、もしかしてみーくん図星!? お風呂入ってなかったの!? そういえば昨日みーくんがお風呂に入ってた姿を見てなかったような……」

 

「 由 紀 先 輩 」

 

「はいっ!?」

 

 

 地獄から響いてくるかのような禍々しい声。思わず敬語になる。

 

 

「な、何でしょうか」

 

「ちょっと来てください」

 

「は、はいっ」

 

 

 美紀は由紀を連れて部屋を出て行った。声だけが聞こえてくる。胡桃と悠里はそれを覗いた。

 

 

「ちょっ、みーくん?」

 

「今日一日そこから出ないで下さい」

 

「ちょっ、みーく」

 

「あと、みーくんじゃありません。美紀です!」

 

 

 美紀は由紀を猫部屋に放り込むと、ドアを閉めた。

 

 

「ま、待ってよ美紀ちゃん!! ごめん!! なんかよく分からないけど謝るから!! う、うわっ!?」

 

 

 ドア越しに声が聞こえてくる。次第にその声は悲鳴に変わっていったが、美紀はそれを放置し、部屋に戻った。そして、不貞寝した。

 

 

「……図らずも自分もダメージを負ったのね」

 

「由紀には猫が寄ってくるってことが、本当にはっきりしちまったからな」

 

 

 果たして大きな傷を負ったのはどちらなのか、それは分からない。美紀が嫌われる理由も、分からない。彼女が風呂に入ったかどうかも、分からない。

 

 胡桃と悠里は二人のことを考えないようにして、荷物の整理を続けるのであった。

 

 因みに、由紀は一時間後に救出された。

 




 始まりましたPart.2【チェンバー・オブ・シークレット】!! あっ、Part.1もたまに更新します、はい(しろめ)
 始まりましたっていう割にはかなり前から投稿されていたんですが……それはそれとして。

 ……今回少し行間を開けてみましたが、果たして読みやすいのでしょうか……。

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