ゴールデン*ラビットガールズ!   作:ルヴァンシュ

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 Part.1 最終話です。


※告知事項※

・1万字以上。長いので暇な時にどうぞ。

・他、何かあれば書きます。


一年目最後の宴

【第55話】

 

 

一年目最後の宴

 

 

[185]

 

 ――新鮮な一年が、ついにその幕を降ろす。知らぬ世界に放り込まれた24人の少女達――右も左も分からぬまま、右往左往した一年が――。

 だが、まだ戦いは終わりではない。一年を通した最後の戦いが、獅子、鷹、穴熊、蛇の子に待ち構えているのだ。

 

 ダンブルドアは正気ではない。

 

 

[186]

 

 ――学年度末パーティー。

 

 その名の通り、ホグワーツの年度末に行われる一大イベント。そこで行われる寮対抗杯の表彰式は、その一年の締めくくりとなるためか、凄まじい盛り上がりを見せる。

 

「また一年が過ぎた!」

 

 登壇したダンブルドアが、朗らかに言った。

 

「一同、ごちそうにかぶりつく前に、老いぼれのたわごとをお聞き願おう。なんという一年だったろう。きみたちの頭も以前に比べて少しなにかが詰まっていればよいのじゃが……新学期を迎える前にきみたちの頭がきれいさっぱり空っぽになる夏休みがやってくる」

 

 ダンブルドアは淡々と言う。

 

「これではここで寮対抗杯の表彰を行うことになっとる。点数は次のとおりじゃ。

〈magic〉

 四位 ハッフルパフ 三五六点。

 三位 レイブンクロー 四二六点。

 二位 スリザリン 四七〇点。

 そしてグリフィンドール 四七二点。

〈magic〉」

 

 グリフィンドールのテーブルから嵐のような歓声が上がった。

 本来であれば一位になるのはスリザリンの筈であったのが、直前になってまさかの50点を失うというとんでもないハプニングが起きてしまった。その後、何とか点数を元に戻そうと寮生全員が奮闘したものの、あと2点、届かなかった。スリザリンのテーブルは、暗い。

 

「よし、よし、〈magic〉グリフィンドール〈magic〉。よくやった。しかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」

 

 と、ダンブルドアは続けた。

 

「「「「…………」」」」

 

 ――もういい。

 

 穂乃花、アリス、カレン、忍は嫌な予感がした。そしてその予感は、残念なことに的中することとなる。

 

「えへん」

 

 ダンブルドアが咳払いをした。

 

「駆け込みの点数をいくつか与えよう。えーと、そうそう……まず最初は、〈magic〉ミス・シノブ・オオミヤ〈magic〉」

 

 忍の顔が青ざめた。まるで贋作の金髪をみているような表情。

 

 

「この何年間か、ホグワーツで見ることのできなかったような最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに五〇点を与える」

 

 

「――――」

 

 グリフィンドールのテーブルから天井を吹き飛ばしかねない程の歓声が上がる。だが、当の本人は。

 

「……どうしましょう、貰っても何も嬉しくないどころか、妙な罪悪感を感じるのですが」

「うん……あの人もうちょっと考えてほしいよね……」

 

 ダンブルドアは淡々と続ける。

 

 

「駆け込次に……〈magic〉ミス・アリス・カータレット〈magic〉に……火に囲まれながら、冷静な論理を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに五〇点を与える」

 

 

 アリスは腕に顔を埋めた。多分他の寮を直視出来ないのだろう、と穂乃花は思った。しかしながら穂乃花にとっても他人事ではないのであった。

 

「もうやだ……この後のパーティーまともに楽しめる気がしないんだけど……」

「酷い仕打ちデスよね……」

 

 歓声は上がったが、明らかに一回目より少ない。ただでさえ勝利していたというのに、そこからさらに100点も増えたのだ。素直に喜べる筈があろうか。

 

「三番目は〈magic〉ミス・ホノカ・マツバラ〈magic〉」

 

「ほら来た」

 

 部屋中が凍てついたようにしんとなった。

 

 

「……その完璧な精神力と、並はずれた勇気を称え、グリフィンドールに六〇点を与える」

 

 

「なんでぇぇぇぇぇぇ!!?!?」

 

 穂乃花は叫んだ。だが、他の寮からのブーイングの嵐によって、近くの人以外には聞こえない。

 

「なんで!? なんでよりによって私だけ60点なの!? 50点で良いじゃない!! っていうか追加しなくていいよね!!? やめて!! 私に何の恨みがあるの!? 訳のわからない欠片を押し付けた挙句に60点って、ちょっ、ぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」

「ホ、ホノカ! 落ち着いて下サイ!」

「これで落ち着いてなんて居られないよっ!! あーもうあーもうあーもう!! あの人嫌い!!」

「それには私も同感ですが冷静になって下さい! この場で何を訴えても多分無駄です!」

「うぅ……もう……あんなことやらなきゃ良かったよ……」

「……ダンブルドア先生、何を考えているんだろう?」

「知らないよもう……嫌い、嫌い」

 

 穂乃花はテーブルに突っ伏した。ホグワーツを救ったにも関わらずこの仕打ち。誰だってそうなる。

 

 ダンブルドアは微笑んだ。こんな状況で笑えるなんて、とアリスは訝しんだ。

 

「したがって、飾りつけをちょいと変えねばならんのう」

「は?」

 

 ついにマクゴナガルが、ダンブルドアの異様とも呼ぶべき行動に異を唱えた。

 

「ダンブルドア。一体どういうおつもりですか? これは――」

 

 ダンブルドアがマクゴナガルを無視し、手を叩いた。次の瞬間、真紅の垂れ幕がさらに深い真紅に、金色がさらに輝く金色に変わった。また、グリフィンドールのライオンの鬣が、金髪に変わる。

 

「何ですかあれ喧嘩売ってるんですか金髪同盟舐めてるんですかすいませんちょっと用事が出来ました」

「シノも落ち着いて!」

「……私呼ばれて無いんデスけど」

「羨ましいよカレンちゃん……」

「なんか私だけ仲間はずれにされたみたいで、これはこれで嫌デス」

 

 ダンブルドアはその場から立ち去った。

 

「ダンブルドア!? お待ちになって下さい、ダンブルドア!! ダンブルドア!!」

 

 マクゴナガルも、ダンブルドアを追い掛けるようにして大広間から出て行った。

 

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 今起こった出来事は、ダンブルドアの老化によって起こったことだろう、と、その場の全員が結論付けた。ダンブルドアの信用は、堕ちゆくばかりである。

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[187]

 

 

《Gryffindor Table》

 

「やってられないよ〜!!」

「嫌になるよね。嫌になる気持ちは凄く分かるけどホノカ、そんなにジュース飲んだらお腹冷やすよ」

 

 手当たり次第にジュースを一気飲みする穂乃花にアリスが言う。

 

「うう……私の心はお腹なんかよりも冷え切っているよ……」

「上手いのかなあそれ」

「右手はちょっと前まで熱かったのに!」

「それは上手くない」

「もうこれは肝に銘じなきゃいけないね……『ホグワーツを救ってはいけない、救うと災いが訪れるであろう』って」

「そうそう救う状況なんてないと思うけど……」

 

 穂乃花はオレンジジュースの蓋を開け、また飲む。

 

「んっ、んっ、んっ、ぷはっ……別に見返りを求めてやったわけじゃないんだから、余計なご褒美なんて要らないんだよね……くれるならくれるでもっと良いものが欲しかったよ」

「例えば?」

「カレンちゃんのブロマイド」

「直接貰いなよ……っていうかクリスマスパーティの時に貰ってなかったっけ」

「あれこっちに無いんだよ……」

「あー……」

 

 穂乃花はリンゴジュースの蓋も開け、また飲む。

 

「んっ、んっ、んっ……」

「せめて一瓶ずつ飲もうよ……」

 

 

「……向こうでなんか凄いことやってるね」

「そ、そうですね」

 

 心愛と薫子。

 

「ようし、ここはココアお姉ちゃんが一気飲みのお手本を見せてあげよう!」

「えっ」

「かおすちゃん、お姉ちゃんの勇姿をとくとごーらーんーあーれー!」

「や、やめたほうが」

 

 ココアはコーヒー瓶の蓋を開け、一気に飲む。

 

「んっ、んっ、ん……んぐっ、うぐ、う、ごぼっ、ご、ごご、ががぎぐごごっ」

「ココアさんー!?」

「ごっこごっ、ごっ、ごごぇごんごっ、ごっがっ」

「もういいです無理しないで下さい!!」

「っ……ぐはぁっ!! はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 心愛は勢いよく瓶から口を話した。瓶の中身は空である。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

「……だ、大丈夫ですか」

「一瞬……コーヒーの川が見えた……」

 

 テーブルに突っ伏した。その所為で大皿にとっていたスクランブルエッグに顔から突っ込むこととなった。

 

「しんどいよ……すごい疲れた……」

「べ、ベッドで休んできたら如何でしょうか?」

「目が冴えて眠れそうにないよ!」

「…………」

 

 起き上がった心愛の目は禍々しくギラギラとしていた。顔中に付いたケチャップも相まって、殺人鬼か何かにしか見えなかったという。

 

 

「ツバサー!」

「……ん、カレンか」

 

 カレンと翼。

 

「紅茶淹れるデス!」

「ん? ありがとう」

 

 カレンは真紅のティーポットを手に取り、翼のカップに紅茶を淹れた。

 

「ソーセージお取りしマショウか?」

「何が目的なの?」

「見抜かれてたデス!?」

「見え見えだよ」

「むう……流石ウィング・Vデス。やりマスね」

「どーも。で、何して欲しいの」

「ちょっとお待ちをー」

 

 カレンは自分の皿を翼に差し出した。皿の上には収まるか収まらないか程の大きさのコテージパイがのっている。

 

「ここに絵を描いて欲しいデス!」

「絵を?」

「Yes !!! あ、カラーソースは青色のを確保してあるノデ、これ使って下サイ」

「んー……あんまり上手く描けないかも」

「それでもいいデス!」

「そう? じゃあ、お安い御用」

 

 翼はカラーソース(その名の通り、色のついたソース。後から模様を描いたりするためのものであり、チューブ状の容器に入っている場合が殆ど。その性質上、どの料理にも使えるように、このソースには味がない。言わば、後付けの着色料のようなものである。お値段は平均5クヌート。カラーソース大会とかいうイベントもやっているらしいので、魔法使い諸氏は是非参加してみよう)を受け取った。そして!

 

「……はぁっ!!」

 

 翼は掛け声を放つと、カラーソースで一気に絵を描く――おお、なんたるチューブ捌き! 例え画材が変わろうともまるで劣らぬクオリティ! 本気を出せばペン三刀流とか出来る翼の前では些細なものである。問題でさえない。

 

「はい、出来た」

 

 5秒後、コテージパイの上には青い輪郭のキャラクターが浮かび上がっていた。暗黒勇者の主人公。

 

「How great you are !!!!! 凄いデス!! 速い!! まるで加速装置がついてるみたいデス!!」

「ふっ……神速の魔剣士と呼ぶがいい」

「神速の魔剣士ー!!」

 

 

「…………」

「…………」

 

「……ほ、ほらほら〜! 二人とも食べて食べて〜! 早く食べないと、私が全部食べちゃうぞー!」

「……あっ、あー、ズルいです由紀先輩〜! あー、由紀先輩に全部取られる〜! ほ、ほら、理世も胡桃先輩も早くとらないと!」

 

「…………」

「…………」

 

「「…………」」

 

 理世と胡桃は不仲である。始まりはただの勘違いであった。というか今もただの勘違いである。互いにもともと居た世界のことを話していないが故の弊害――彼女たちは、自分たちが同じ世界から来たと思っている。

 理世は軍人の娘である――そして、胡桃は軍が嫌い。自分たちを助けてくれなかった連中である、好きになれるはずもない。

 

「…………」

「…………」

 

「……みーくんちょっと」

「はい」

 

 腕を組み、そっぽを向き続ける二人から由紀と美紀が離れた。

 

「……どうすればいいか分かんないよ!!」

「私もですよ!! ……なんであんな殺伐とした空間が出来るのかまるで分かりません……」

「うぅ〜……めぐねえならこんな時すぐに解決してくれると思うんだけどな〜……でも今は職員席に居るからお話し辛いし」

「はぁ……」(そういう設定だったんだ……)

「……どうしよう、みーくん」

「みーくんじゃありません、美紀です。……もうあれはあれでいいんじゃないですか? ああなってるのも互いがすれ違ってるだけですし、ほとぼりが冷めれば、多分仲良くなりますって」

「そうかなあ……」

「そういうもんですよ」

「……うん」

 

 二人は席に戻った。理世と胡桃はそっぽを向いているものの、食べ始めてはいた。

 

「……はーい二人ともー! もっとスピードあげないと、帰って来た由紀ちゃんぜーんぶ食べちゃうぞー!!」

「あっ、それまだ続けるんですね」

 

 

《Ravenclaw Table》

 

「今回はちゃんと飴あげる!」

「ん、ありがとう」

 

 萌子がマンディに手渡したのはカラフルな紙袋。中に入っているのは色とりどりのキャンディ。

 

「うん、今回はちゃんと飴だね」

「えへへ〜」

「また飴味で済ませられるのかと思ったよ」

 

 マンディは飴を一つ口に入れた。

 

「んぐっ!? んっ・€2<々×〆+4441::!!?!?」

 

 そしてすぐに手のひらの上に吐き出した。

 

「マ、マンディちゃんどうしたの!?」

「うえっ……ど、どうしたのじゃないわよ!! な、何これ!? な、なんか変な味したんだけど……なんだろう、こう、苦味のある味というか」

「苦味? ……あっ、それ青汁味じゃないかな」

「青汁味ィ!!?」

 

 吐き出した飴を見るマンディ……だが、見る限りはなんの変哲もない飴。桃色の美味しそうな飴。

 

「な、なんでそんなもん入れたの!?」

「それは私の提案よ!!」

「誰!?」

 

 萌子の背後から現れたのは、濡烏の如き黒髪をもった大和撫子――宇治松千夜。

 

「いや本当誰!?」

「宇治松千夜よ。よろしく」

「え、ええ……マンディ・ブロックルハーストよ。よろしく――何を目的としてこんなことやったの……」

「ただの飴だと面白くないでしょう? だからスリルを足してみたの」

「足さなくてよろしい!!」

「えー? 私もそれ面白そうと思ったんだけど……あ、あとその味を付けたの私だよ」

「でしょうねそうでしょうねぇ!! 何よこれ……こんな百味ビーンズの紛い物みたいなの作っちゃって……どうしろと」

 

「「お食べ!!」」

「やかましいわ鬼畜共!!」

 

 満面の笑みを浮かべる二人――ただ、どちらも別に悪意があった訳ではないということを付け加えておこう。ただ純粋に、楽しんでもらいたかっただけなのだと。

 

 

《Hufflepuff Table》

 

「おい、アヤヤ」

「はい? ……あー、ミーガンさん」

「ん? 誰? 綾の知り合い?」

 

 綾、陽子、ミーガン。

 

「知り合いっていうか、なんていうか……きょ、今日はどうしたの?」

「ハッフルパフ生にしては頭良いらしいが、それで調子に乗るなよ?」

「それ昨日も聞いたわ」

「今回の試験、勝ったのは私だアヤヤ……ふふ、夏季休暇の間、私に負けた時の負け惜しみを考えておくといい!」

「まだ試験の結果出てないし、そもそも勝負してないし……あとそのアヤヤっていうのやめて」

「さらばだ!! ふふふ、ふふ、ふふふふはは!!」

 

「「…………」」

 

 言いたいことだけ言って、ミーガンはレイブンクローのテーブルへと帰って行った。

 

「……綾、あんなのに目ぇ付られてんの? なんで?」

「正直どこで間違ったのか皆目見当がついてないの」

「っていうかアヤヤって呼ばれてたよな」

「ホグワーツ全体に流行した渾名みたい」

「どっから流行ったんだよ……」

「まあカレンでしょう」

「だろうな」

 

 

「シャロちゃ〜ん!」

「何よ? ……あんたか」

 

 トマトスープを飲む紗路に若葉が近付いた。紗路の顔が曇る。

 

「何? 私になんか用なの?」

「はい! これを渡しに参りましたの!」

 

 若葉が取り出したのは如何にも高級そうなネックレス。エメラルド、ルビー、サファイア、オパール、ダイヤモンドが一定間隔で配置され、キラキラと輝いている。

 

「……何これ」

「ふくろう通信販売で購入したのですわ! 届くのに時間が掛かってしまいましたけど……これで仲直りしてくれますか?」

「……仲直り?」

「はい! あの、杖選びの時の……」

「……あんたまだ気にしてたの? ……だから別に気にしてないって……」

「本当ですか!?」

 

 紗路はトマトスープを一口飲んだ。

 

「……私が気に食わないのは」

 

「え?」

「そうやって物に頼るところが気に食わないのよ――金に物を言わせて解決しようとするところが気に食わないって言ってんのよ」

「っ……そ、そんなつもりは」

「ええそうね、悪気は無いでしょうね、知ってるわよそれくらい。……ただ、それをやる相手を間違えないことね、世間知らずのお嬢様」

「っ……」

「悪いけど、それは受け取らないわ。仲直りの証って言うなら……受け取らない」

「そ、そんな!」

「……自覚無しに他人の逆鱗に触れかねないその言動を、どうにかしてから来なさい」

「…………」

 

 紗路はトマトスープを飲み干した。

 

 

「……ねえ、なんかあそこ殺伐としてるんだけど」

 

 琉姫が言う。

 

「うーん……あれは若葉ちゃんが悪いわ。ちょっと無神経な行動だったわね」

「うん……でもさ、シャロちゃんもあんなに言わなくても良くない? 若葉ちゃんが可愛そうだよ」

 

 琉姫と小夢が言う。

 

「……え? 何? 私たちもアレな空気の傘下に入るの? 嫌よ! 絶対嫌よ!」

「じゃあ久し振りに琉姫ちゃんの持ちネタやる?」

「私の持ちネタ?」

「琉姫ちゃん、はいミルク!」

「え?」

 

 小夢はミルクの入った瓶を琉姫に手渡した。標準的な牛乳瓶よりも一回り大きい。

 

「な、何? 何なの?」

「それを飲んで頂戴」

「え? ……まあ飲むけど」

「一気飲みねー!」

「一気飲み!?」

 

 琉姫はボトルを唇に付けた。桃色の唇にボトルの縁に付着した白い雫が付着する。

 

「……んっ……」

 

 琉姫はミルクを飲んだ。白い液体が琉姫の中に入り込み、その喉を潤す。喉を鳴らし、彼女は飲み続ける。

 

「んっ……ん……んふっ……んんっ……んっ……んんっ……!」

 

 ごくごくと彼女の喉が鳴る。ミルクの一気飲み――普通の牛乳瓶より一回り大きなそれに入った液を飲み干さなければならない。苦しくなってきたのか、頬は上気し、その声はまるで、大海のど真ん中という絶望的な状況で掴まるものもなく、体力の限界を迎え、溺れ苦しんでいるが如き艶声であった。

 

「……んっ……んんっ、んぐぅっ……んん……っ……ふあぁ……っ!!」

 

 苦しみながらも、彼女は瓶の中身を飲み干した。瓶をテーブルの上に置いた。

 

「はぁっ……はぁ……んっ……はぁ……はぁ……はぁっ…………はぁっ……けほっ、けほっ、けほっ! はぁ……はぁ……」

 

 目に小粒の涙を貯め、潤ませながら、琉姫は肩で息をする。苦しみから解放されたその息遣いはまさに、首を絞められ失神寸前にまで追いやられたが、ギリギリのところで解放され、肺の中に飛び込んで来た大量の酸素に苦しみつつも、生の歓びを噛み締めるが如きものであった。

 

「「いやらしい……」」

 

「それやりたかっただけでしょうが!! 薄々勘付いてはいたけども!! はぁっ、はぁっ……!」

 

 琉姫は唇に付着した白い雫を舌で舐めた。その舌はミルクの影響で白く染まっており、それはまるで「いつまで続くのよそれ!!!」

 

 

「なんか私たち影薄くないか?」

「出し抜けにメタ的なこと言うの止めてよ」

 

 直と香奈。

 

「っていうか私を一緒にしないで。来年度では私普通に出演するから。登場率うなぎ上りだから」

「は? 何でだよ……っていうかお前狡くないか? 私と違ってたまに地の文に触れられるしさ、おかしくないか? 忘れられがちだが、一応私もツッコミキャラなんだぞ?」

「あんたはボケの比率が多いでしょうが」

「…………」

 

 反論出来ない直。

 

「……登場率うなぎ上りって何だよ。賄賂でも払ったのか?」

「いや誰に払うのよ!? ……ふふ、まあ見てなさい。あんたと同類だなんて言わせないわ」

 

 香奈はスコーンを挑発的に齧った。

 

「なんかムカつく」

 

 

《Slytherin Table》

 

「「キンパツ・オア・トリート!!」」

 

「金髪をくれなきゃ!」

「悪戯しちゃいますよ! ひゃははぁ⤴︎!!」

 

「帰れ!!!」

 

 ドラコの金髪を狙う忍とモラグ。ドラコにとってはこれ以上ないほどにいい迷惑である。

 

「なんなんだよお前らはぁ!! っていうか誰だよそいつ!! なんで増えてんだよ!!」

「レイブンクローのモラグ・マクドゥガルよ」

「おいレイブンクロー生がこんな知性の欠片もないことやっていいのか」

「金髪は世界の真理!! これを知性的な行動と呼ばずしてなんと呼ぶのかしら!?」

「ダメだこいつ」

 

 ドラコは頭を抱えた。

 

「くっそ、こいつに関わった奴にまともなの居ないのかよ……おいクロカワァ!!」

「あー? 何すかー? 私も関わりたくないんすけどー。主にあんたに」

「こっちだって好き好んでお前と関わりたくねえよ穢れた血!! こいつらなんとかしてくれ!!」

「なんとかって言われても……大人しく髪の毛一本あげたら退散するんじゃないんすか?」

「ふっ、甘いですね真魚ちゃん……」

「ほら絡んできたよ」

 

 忍は真魚の隣へ向かうと、メルジーナの銀髪に顔を埋めた。

 

「ふふふ、銀髪もなかなか……」

「ねえマオ、この子なんとかして」

「ドラコもジーナちゃんもなんで私に頼るんすかねえ」

「私が髪の毛一本で満足するとお思いですか?」

 

 メルジーナの髪に埋もれながら忍が言う。

 

「髪の毛一本でカツラが作れますか? 作れると思いますか? 思わないでしょう? 私は沢山の金髪が欲しいのです」

「まともじゃないこと喋る時はまともな状態で喋って欲しいっすね」

「全部抜くとは言いませんよ? ただ毎月何本か提供してくれるだけで私は心がきん! ぱつ! するのです」

「パクってんじゃねーっすよ……ぴょんぴょん以上に意味不明っす」

「流石こけし様!! やはり常人の枠には収まらない言語力をお持ちで!!」

「常人どころか人間の枠に収まってるかさえ疑問なんすけどねえ」

 

 真魚はドラコを見た。ドラコはその視線に気付くと目を逸らす。

 

「おい目を逸らすなドラコ」

「……パンジー」

「ちょっとあんた!! ドラコ様にタメ口とはいい度胸ね!!」

「うわ出たパグ犬」

「誰がパグ犬ってぇ!!? 魚め、掻っ捌かれてgo to hellしなさいよ!!」

「忍ちゃん、ドラコの髪の毛全部抜いちゃって」

「パンジー今すぐ謝れ馬鹿!!」

 

「……はぁ」

 

 忍は溜息を吐く。呆れた顔で言った。

 

「皆さん分かってませんねー……ドラコから金髪を取ったら何が残るのですか? そう、何も残りません」

「おいこらコケシてめえ僕を何だと思ってるんだ」

「ドラコは金髪が本体なのですよ! 金髪から下は金髪を生成する機械にすぎません」

「僕はそろそろお前に恐怖を覚えてきたぞ」

「今更だよねえ」

 

「なので私が欲するのは少量の金髪!! さあ、ドラコ!! 金髪を私に!!」

「ついでに私にも!!」

「ひぃっ……!!」

 

 再びドラコに近付く忍とモラグ。因みに、メルジーナの髪から離脱する際、既に抜けていた髪を一本入手した。良かったね!

 

「ク、クラッブ! ゴイル!」

 

 危険を感じたドラコはいつもの腰巾着二人を呼んだ。だが、

 

「「はははははは」」

 

 これである。

 

「おいこらお前らァ!! いいのか!? 久し振りの出番と台詞がそんなんでいいのか!? 良いわけ無いよな!? 分かったらこの狂人を僕に近付けるな!!」

「「…………」」

「お前らァァァァァァァ!!!」

 

「ドラコ、ご覚悟!!」

「覚悟ー!!」

「パ、パンジー!!」

「ドラコ様の金髪を奪うなら、私から奪いなさいよ!!」

「すいません、私が欲しいのは人間の金髪なので、パグ犬の体毛はノーセンキューです」

「あぁぁぁパンジーちゃん怒っちゃったぞ★!! その穢れた血ィ抜いてやろうかf*** 東洋人!!」

「何です? 売られた喧嘩は今日だけ買いますよ? 今の私は割と不機嫌なんです。邪魔するなら本気で怒りますよ? ごーとぅーへるさせちゃいますよ?」

「こけし様! そいつやっちゃえー!」

 

「マオ、どうするのこのカオス」

「どうもしないっすよ、放置放置」

「クロカワァァァ!! 他人事と思うなよ!! 次に僕はお前を盾にするからな!!」

「うっさいっすね巻き込むな!!」

 

 ドラコ、パンジー、忍、モラグ、真魚が織り成すカオスの極み。いつからスリザリンはこうなってしまったのだろうか。

 

 

「……平和ね」

 

 カオスを眺めながら、スーパーロングヘアーの茶髪少女――スー・リーは呟いた。

 

「本当にここスリザリンなのかしら。あんなに明るいなんて……ふふっ、なんだかおかしい」

「ふん、平和なんて闇の世界には似合わねえ」

 

 横槍を入れたのは、まるで夜の闇の如く真っ黒(に染めた)髪を持ち、前髪を左目が隠れるように垂らした少年――ザビニ・ブレーズ。

 

「邪悪なる蛇王に魅入られたのが俺たちスリザリン生じゃなかったのか? 全くヘラヘラしやがって。俺に宿る蛇王の力が怒り狂って暴れようとするのを抑えるのに精一杯だぜ全く。こっちの苦労も考えて欲しいもんだぜ」

「あんたも混じってきたら? 混じりたいんでしょ?」

「俺がいつそんな事言った? 冗談じゃねえぜ、あんなのに混じっちまえば、蛇王が何をしでかすか……」

「照れないで混じっちゃえばいいのに。私は混じろうかなー」

 

 スーはポテトを口に放り込みながら言う。

 

「ふん、好きにするがいい。全く、愚者というのはどこまでも頭がおめでたいものだな」

「だって私そんな変な言葉ほいほい浮かばないもん」

「変な言葉じゃねえ! これは俺の蛇王が語る言霊であり、大いなる魔力を秘めた神託――」

「はいはい、分かった分かった――おーい、そこのマグルー! こっちに黒髪に染めた金髪少年が居るわよー!」

 

 忍がザビニを見た。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!? 染めてねーよ!! これは蛇王の毒が俺の髪に侵食したもんであって、俺が〈スリザリンの後継者〉に相応しい証で――」

 

「許 せ ま せ ん」

 

「!!?!?」

 

 忍はドラコの髪にかけた手を引っ込めると、ザビニの元へと向かった。

 

「よしナイス!! よくやったぞザビニ!! 流石だ!!」

「あぁ!? やめろ褒めるな、俺の闇の力が――ぎゃぁっ!?」

 

 忍がザビニの肩をまるで万力の如き力(ザビニ主観)で掴んだ。

 

「金 髪 を 染 め る な ん て と ん で も な い 真 似 を ……ザビニ……でしたっけ? ……新学期からは、ち ゃ ん と 金 髪 で登校して下さい」

 

「――」

 

「感謝するぞザビニ……僕のために犠牲になってくれて」

「ドラコ、今日は見逃しますから、あなたも 絶 対 に 染めないで下さいね」

「はい」

 

 スリザリンは、今日も平和でした。

 

「どこが平和なんだよ!!!」

 

 

[188]

 

 あれやこれやで時は過ぎ、宴はついに幕を閉じた。最初にサプライズ(ハプニング)があったものの、宴が終わる頃には、みんなすっかりそれを忘れていたという。

 

 その後、皆が部屋へと戻り、帰省の準備をした。ここでは特に特筆すべきことはなかったので、ばっさりカット。

 

 準備を終えた生徒たちは荘厳なるホグワーツ城を後にし、ホグズミード駅へと向かった。その道中、ネビルが池に転落するという事故があったが、それは省略。

 

 ホグズミード駅にホグワーツ特急が到着するのに、そう時間はかからなかった。生徒たちはホグワーツ特急へと乗り込み、ホグワーツを去って行ったのであった。

 

 ホグワーツ特急の中では、行きのような喧騒は見られなかった。各コンパートメントに入った生徒たちは、時間が夜なのも相まって、すっかり眠ってしまっていた。ウィーズリー兄弟とリーが寝起きドッキリをビルに仕掛け、ビルのメガネが割れたが、それくらいであった。

 

 そして――日付は変わり、次の朝。ホグワーツ特急は、9と3/4線に到着した。

 

 

[189]

 

 生徒たちは荷物を提げ、特急から降りた。そして、迎えに来た家族の元へ、友人に別れを告げて走っていく。

 

「さて、俺たちのご両親も来たみたいだな」

 

 双子の片方(フレッドかジョージ)が呟く。近付いてきたのはモリーとアーサー。そして――。

 

「ジニーちゃーんっ!! お姉ちゃんって呼んでーっ!!」

 

 ジニーに向かってルパンダイブする心愛。

 

「呼ばないわよ」

 

 それを避けるジニー。

 

「ヴェアアアアア!!?」

 

 心愛はその勢いで大理石の地面に激突した。鈍い音が響く。

 

「なにやってるんだお前は……」

 

 理世が苦笑する。

 

「いたた……えへへ、元気なジニーちゃんを見たらうれしくなっちゃって、つい」

「つい、じゃないわよ。全く……」

 

 紗路が手を差し出した。その手を掴み、起き上がる心愛。

 

「ありがとうシャロちゃん」

「あんまり無茶しちゃダメよ」

 

 千夜が言う。

 

「ココアちゃん、妹のことになるとすぐ周りが見えなくなっちゃうんだから」

「えへへ〜。つい無意識で……」

 

「久し振りね、フレッド、ジョージ、ビル、ワカバ、モエコ、マオ、ナオ! 元気にしてたかしら?」

 

 モリーが言う。

 

「ああ、勿論元気だぜ。なあ?」

「そうだぜ。特にビルなんて元気過ぎてメガネを割っちまった」

「お前らの所為だろうが!!」

「壊れやすいのが悪いんだ」

「ガラスのハートとか言うっすし」

「broken glass」

「壊れたメガネはただのガラスだぜ」

 

「「「HAHAHAHAHA !!!!」」」

 

「やかましい!!!」

 

 いつものようにビルを弄る三人。すっかり馴染んだ真魚。

 

「……なんで真魚ちゃんスリザリンなんだろう」

「皆目見当がつきませんわ」

「多分あの性格が原因……なのか?」

 

 楽しそうに笑う真魚を見ながら、若葉、萌子、直が言った。

 

「……お、こっちも来たみたいだぞ」

 

 陽子が言った。

 

 向こうから歩いてきたのはゼノフィリウスとルーナ。忍は駆け出した。

 

「シノ!? もう、走ると危ないよ!」

 

 アリスは後を追う。

 

「ちょ、ちょっと二人とも! もう……」

「綾」

「何?」

「私たちも走るぞー!!」

「えっ、え、ええええ!?」

 

 陽子は綾の手を握り、アリスについて走り出す。

 

「Oh !!! foot raceデスね! 負けマセンよ! ホノカ、カナ、行くデース!!」

「あっ、待ってよカレンちゃん!」

「結局こうなるんだ……」

 

 カレン、穂乃花、香奈も走る。

 

「ルーナちゃーんっ!! ひゃははぁ⤴︎ひゃはぁ⤴︎ひゃはぁぁぁ⤴︎!!!」

 

 忍はルーナに抱き着いた。

 

「わっ」

「なんて可愛らしい金髪少女……! ああ、モラグにも見せてあげたい……!」

「もう、シノってば! すぐ他の金髪少女に目移りしちゃうんだから!」

「す、すいませんアリス……でも、私が一番愛しているのは、なんだかんだでいつもアリスですよ」

「なんだかんだって……本当に?」

「嘘偽りはありません」

 

「……シノ!」

「……アリス!」

「シノ!!」

「アリス!!」

「シノー!!!」

「アリスー!!!」

 

「何が何だか」

 

「忍ちゃんとアリスちゃん……可愛いです……」

 

 薫子は笑みを浮かべながら言う。

 

「見てるとほにゃ〜ってなってくるよね〜」

「分かるわ!」

 

 小夢と琉姫。

 

「私もかおすちゃんを見てると、いつも頬が緩んじゃうの……可愛いって罪よね〜」

「……るっきーってばロリコン」

「違うわよ!!」

 

 翼の指摘にツッコむ琉姫。

 

「ロ、ロリコン!?」

「あわわわわ……」

「いやらしい……」

「そのネタさっきやったでしょう!!?」

 

 だが、琉姫は自分自身でも気付いていた。薫子を見るたびに鼓動が高鳴り、身体が火照ってしまう……それはまる「もういいわよ!!」

 

「……あっ、そうだ」

 

 唐突に小夢が呟いた。

 

「りーちゃんに由紀ちゃん、胡桃ちゃん、美紀ちゃんってどこに住むの?」

「そういえば知らないわね」

 

 琉姫も言う。

 

「うーん……私もよくは知らないんだけど……確か、ここまで迎えに来てくれるってことになってたと思うの」

 

 悠里が言う。

 

「え? そうなの? 私全然聞いてなかったよ」

「私もだぞ!?」

 

 由紀と胡桃が驚く。

 

「私は聞いてましたが――二人とも、忘れてただけじゃないんですか?」

 

 美紀が言う。

 

「なんで!?」

「んー……性格?」

「ちょっと待てい!! 由紀はともかく、私もか!? 私もそっちのジャンルに入るのか!?」

「ともかくって何!? 胡桃ちゃん酷いよ!?」

「もう、喧嘩は止めなさい」

 

 胡桃と由紀を嗜める悠里。その時である。

 

「随分と元気な子たちじゃないかい――え? ダンブルドアから聞いたのとはちょいと話が違うようだね」

 

「「「「!!」」」」

 

 突如聞こえた老婆の声。四人は声のした方へと振り返った。

 

 そこに居たのは、声に違わぬ老いた女性。灰色まだらの髪をヘアネットに収め、手には黒ブチの猫を抱いている。

 

「初めまして。あたしがあんたらの預かり人――《アラベラ・フィッグ》だよ」

 

 

 

【Part.1】

 

【フィソロフィアズ・ストーン】

 

【閉幕】

 

 

【Part.2へ続く】

 





[190] [000]

 ――そこは、真っ暗な屋敷だった。

 周囲を見回すと、ところどころ薄い光を放っている箇所があった。だが、"彼"はそこに近付かない。光の中にある悪趣味なオブジェを、"彼"は知っていた。


「……グリース」


 "彼"は屋敷の主の姓を呼んだ――《グリース》。

 反応は無い。だが、"彼女"がすぐに反応しないことを、"彼"はよく知っている。待つ。

「…………」

 悪趣味なオブジェが小さな泡音を立てる。暗闇の中怪しく光るそれは、恐ろしく、冒涜的なもの。

「…………」

 根気強く待つ。"彼女"が居ないということはないだろう。"彼女"はアウトドア派ではない。根っからのインドア派である。

「…………」

 "彼"は待った。

 そして――目の前にある階段を降りてくるような音が聞こえた。

 トン、トン、トン、トン、トン、トン……。


「……誰かと思えば――おじちゃんか」


 降りてきたのは、少女だった。"彼"の息子よりも一つ年下の少女。

「"お母様"に何か用だったの? 残念ね、お母様は今研究に夢中。おじちゃんなんて眼中にないのよ……きゃははは」

 少女は右手を口にやり、ケラケラと笑った。"彼"は眉をひそめる。

「きゃははは……それで? どうしたの、おじちゃん――用があるなら話してみてよ」

 何が楽しいのか、何が面白いのか――何を嘲っているのか、ケラケラと笑いながら、少女は言う。

「さぞ、面白いことなんでしょーね?」

 少女は笑いながら、挑発的に言った。

 "彼"は懐からボロボロの日記帳を取り出した。何の変哲もない、標準的な日記帳。それを見た少女からは、愉快そうな笑みが消え――そして、心底愉快そうな笑みが現れた。

「きゃははは……ふーん、へー」

 鋭い、牙と呼べるほど尖った歯を見せて、ニヤリと笑う。小悪魔めいた笑い声をあげながら、少女は言った。


「面白そうじゃん」


 少女――《アフルディーナ・グリース》は、またケラケラと嗤った。


――――――――――――――――――――――


「……あれ? ココアさん……? なんでここに」


【Part.2】


「ココアお姉ちゃんって、呼んでいい?」


【チェンバー・オブ・シークレッツ】


 ――秘密の部屋は 開かれたり――

 ――後継者の敵よ 気をつけよ――


【開幕】


「お姉ちゃんに、任せなさい!」


【2015/8/8】

――――――――――――――――――――――

 くぅ疲!(以下略) やりきった……何とか最終話まで漕ぎ着けたぜ! まだ序章も序章だけどな!

 まあそれはそれとして――ここまで読んで下さった読者の皆様には、感謝の言葉しかございません。まだまだゴルラビは続きますが、区切りもいいので、ここで一旦、御礼申し上げようと思います。
 ありがとうございました。
 そして今後とも、宜しくお願い致します。

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