ゴールデン*ラビットガールズ!   作:ルヴァンシュ

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 非常に短い回です。適当なタイミングにどうぞ。


※告知事項※

・何かあれば書きます。


ハグリッドと竜の子 その1

【第42話】

竜の生誕

 

 

[125]

 

 ――ドラゴン。

 攻撃的な生物で、隠すのが最も難しい生物の一体。それ故かマグルにとってもメジャーな魔法生物として知られている。その認識が正しいかどうかは別として。

 

 

[126]

 

「珍しいわね、貴女達が付いてくるなんて」

「はい。ちょっとハグリッドに用がありまして」

 

 冬季休暇は終わり、時は2月。雪は相も変わらず降り積もり、凍える風が吹く。

 

 バックビークに会うためにハグリッドの小屋へ向かう琉姫と翼。そして彼女達に付いて行くのは忍、アリス、穂乃花の三人。クリスマスの際に得た三頭犬・フラッフィーの情報。ハグリッドが飼っているというあの怪物について聞き出すため付いてきたのだ。

 

 温室の向こうの丘。そのてっぺんにある小さな小屋――ハグリッドの小屋である。その近くには雪に埋もれたカボチャ畑がある。

 

「こんにちは、ハグリッド」

 

 琉姫は扉を開けた。

 

「おお、お前らか。悪いな、ちっと今日は取り込んじょるんだ。また今度にして――」

「フラッフィーについて教えて欲しいんです!」

 

 アリスが言う。

 

「……フラッフィーの事なんぞ知って何になるんだ。いいから帰れ――」

「躾の足りない犬の所為で傷を負わされた生徒が居るんですが、どう責任を取るおつもりですか?」

「何!?」

 

 忍が言う。

 

「傷を負わされた、って……まさか、あの部屋に入ったのか!? 一体誰が!?」

「えっと……その、私、です」

 

 穂乃花は小さく手を挙げた。

 

(忍ちゃん言い過ぎだよ〜! 何もそこまで言う必要無かったよね……)

(仕方ありません、これもフラッフィーについて知るため)

(忍ちゃん、直接脳内に……!?)

 

 金髪同盟特有の以心伝心であった。

 

「な、何で中に入った――おっと、いけねえ!」

 

 突然ハグリッドが小屋の中へと戻った。隙を突いて一行は中に入る。

 小屋の中はいつも以上に暖かかった。暑いといっても過言ではないだろう。ハグリッドは暖炉の近くで何やらやっている。

 

「……何してるのハグリッド」

 

 翼が言う。

 

「入っちまったのか……しゃあない――あちちちっ! おおう、あちっ――おい、ちょっとそこ退いてくれ!」

 

 ハグリッドは暖炉から何か丸い物体を持ってきた。焦げ茶色の丸い何か。ハグリッドはそれをテーブルの上に置くと、熱そうに厚手の手袋を外した。

 

「ハグリッド、これ何?」

 

 琉姫が言う。近くに居たバックビークも興味深そうに見に来た。

 

「へへ……まあ見てな。あっと驚くぞ」

 

 丸い何かを取り囲む六人と一匹(ファングは怯えて隅の方で座っている)。

 

 ――パリッ。

 

「お、おお!!」

「何? 私たち何見てるの?」

「さあ……?」

 

 ――パリパリッ。

 

 丸い何かにヒビが入った。

 

 ――バリッ。

 

「おおう!!」

 

 ハグリッドは感嘆の声を上げた。丸い何かの表面が殻のように崩れ落ちた。

 

 ――バリリバリッ。

 

「ほほぅ! もうすぐだぞ、よく見ちょれ!!」

「何々? 何なの?」

 

 ――ババリバリッバリバリッ!

 

「――qqqqqqqqqrrrrrrqrrrr……!」

 

「「「「「!!」」」」」

「キュイ!?」

「おっほぉぉーぅ!!!」

 

 丸い何かの表面が大きく剥がれ――中から何かの腕のようなものが飛び出した……腕? 翼?

 

「つ、翼が付いてる……何これ!?」

「まさか、ドラゴン!?」

 

 琉姫と翼。

 

「ほっほー! 察しが良いなツバサ! そうだ! こいつはドラゴンだ! 俺が前から欲しかった、ドラゴンだよ!!」

 

 ――バリリッ!!

 

 

「gggggggqqqqqqqqrrrrrrrrr !!!!」

 

 

 殻が剥がれ落ち切った。中から現れたのは蜥蜴のような生物。背中には焦げ目のような模様がある。特徴的な前足には巨大な翼があり、口からは舌をちろちろと覗かせている。俗に言う、ワイバーンと呼ばれる体型。

 ――そう、これぞ伝説の魔法生物。強大なるドラゴン、その幼竜である!!

 

 

[127]

 

「ドラゴン!! ドラゴンだ!! 凄い!!」

 

 間近で見る伝説の生物に興奮する翼。

 

「ドラゴン!? ドラゴンですって!? バックビーク食べちゃわないかしら……」

 

 バックビークを抱き抱えて遠くに避難する琉姫。

 

「ドラゴンっちゅうのはすンばらしい生き物だろ? へへ……ドラゴンを飼うのは子供の頃からの夢だったんだ……」

「ククク……ギュギュウウゥゥ……」

 

 恍惚とするハグリッドに産まれたての幼竜はよたよたと近付く。それを見てハグリッドは感極まったのか、コガネムシのように小さな目から玉のような大粒の涙が零れおちる。

 

「おぉぉっ……見ろ、ママがちゃんと分かっとるんだ!! おほぉぅ!! ほーら、ノーバート、ママでちゅよー」

「マミーっていうかパピーだよね」

「正直今ドン引きしてます」

「好きな物に全力なんだね〜」

 

 酷評の忍。ただ、よりによってそれをこいつが言うか……。

 

「あら、名前もう決めちゃってたのね。バックビークみたいに付けたかったわ」

「ノーバート……ふうん……あ、そうだ。スケッチしないと」

 

 翼はスケッチブックを取り出した。するとノーバートは翼の方を向き、小さな炎を吐いた。

 

「!!?!?!?」

 

 スケッチブックに焦げ穴がついた。

 

「あああああああぁぁ……わ、私のスケッチブック……くっ……」

「最近思うんだけど、ツバサって実は寡黙キャラでも冷静系キャラでも何でもないよね」

「ぐっ……ま、まあいい……うん。まあいい……ドラゴンという伝説に付けられた聖痕と考えれば、どうということは無い……寧ろ名誉なことっ……!」

「無理しなくていいのよつーちゃん」

 

 ノーバート誕生に沸くハグリッド。アリスはそこを突いた。

 

「……ハグリッド、ノーバート可愛いねー」

「だろ!? この可愛さが分かるか!」

「うん! きっとフラッフィーも同じくらい可愛いんだろうなあ」

 

「おうとも! フラッフィーも可愛いぞ! 頭が三つあるっちゅうだけで恐れられちょるが、音楽を聴くとすぐに眠っちまうような赤ん坊なんだ! フラッフィーは俺の誇りだ……なんてったって、あの部屋の門番をやっちょるんだからな! 他の先生方の魔法とフラッフィー! 万全の体制だ!」

「「「…………」」」

 

 あっさりと、ほぼ全部吐いた。割と極秘事項っぽいことを濁しながらも大体吐いた。ハグリッドは心優しく純粋、悪い人間ではないのだが、如何せん単純で、隠し事には向いていないのだ。

 

「……へー。あ、ノーバート可愛いね」

「ほっほぅ! だろう! そうだろう! ママでちゅよー♫」

「グググググ」

「ほら、欠伸をしちょる! かぁわええなあ!!」

「ええ、凄く可愛いです! ひーいずそーびゅーてぃほー!」

「可愛いねー! あ、そうだ! そんな可愛い可愛いフラッフィーは何を守ってるのー? 教えて教えて」

 

「おいおい、それは教える訳にはいかんなぁ。あれはお前らが関わっちゃいかんもんなんだぞ? あれに関わっていいのは、ダンブルドア先生とニコラス・フラメルだけなんだからな」

「「「「「…………」」」」」

「クゥー?」

 

 秘密などあったものではない。アリスはそれ以上の追求を止めたが、もう大体何が隠されているのか判明したも同然であった。

 

「グルルグググ……grrrrr……」

「おお、そろそろおねむの時間かい? 無理もねえ、さっき産まれたばっかだったからなあ」

 

 ハグリッドはバスケットを暖炉の近くに起き、布団代わりの布を詰め、眠そうなノーバートを布の上に置いた。

 

「さあ、おやすみノーバート……」

「rrrrrrr……」

「……琉姫ちゃん、私たち帰るね」

「あら、もう帰るの? 私はまだバックビークと居るけど」

「大体話は聞けましたしね……」

「秘密が筒抜け過ぎて罪悪感さえ芽生えたよ……」

「よーしよし…………ん?」

 

 ノーバートをあやすハグリッド。何かに気付いたように動きを止めた。

 

「……待て、なんか俺、とんでもねえ事口走ってなかったか?」

「口走ってません」

「気のせいです」

「お邪魔しました」

「お、おう――って待て!! ここで見た事は誰にも言っちゃいかんぞ!! 分かったな!!」

「「「はーい!!」」」

 

 忍、アリス、穂乃花は足早に小屋から出て行った。

 

「……何か凄く腑に落ちないよ」

「私も」

「まあ、快く教えてくれたということにしましょう」

「「「…………」」」

 

 何だかよく分からない感情を胸に抱き、三人は城へと戻って行くのであった。

 

 

[128]

 

「……で、どうすんのハグリッド。これ」

「……考え中だ」

 

 それから約三週間後。三月。雪はまだちらほらと降るものの、幾分かは暖かくなりつつある。カボチャは少し溶けた雪で濡れている。

 

「グググルルルルルァァァァァ!!!」

「よ、よーしよしノーバート! 可愛い可愛い俺の赤ちゃんドラゴン! よーしよし!」

「もうこれ絶対赤ちゃんじゃないと思うんだけど」

「これが赤ちゃんならこれからどうなるの、って話よね」

 

 ハグリッドの小屋を訪れた翼と琉姫。そこで彼女たちが見たのは、小屋を圧迫し窮屈そうにしているノーバートの姿であった。

 最早このドラゴンに幼竜だった頃の面影などない。いや、まだ生後三ヶ月なので十分幼竜と言えるのだが、産まれたての頃と比べて、その大きさは桁外れのものとなっていた。比較することが不毛と思える程度には。

 

「どうすればいいんだ……ダンブルドアにこんな事が知れたら、俺は退職処分を食らうかもしれん……」

 

 項垂れるハグリッド。

 

 ドラゴンを飼うには特別なライセンスが必要なのだが、ハグリッドはそれを持っていない。校則違反どころか、法律違反なのだ。

 

「嫌だぞ……俺はもうホグワーツを放り出されたくないんだ……」

「じゃあもうノーバートを野生に返せば?」

「そんなの駄目だ! こんなんでも、ノーバートはまだ赤ちゃんなんだぞ! 野生に返したら、すぐに他のドラゴンに虐められるに決まっちょる!」

「じゃあどうするの? このままだと、流石にバレちゃうわ」

「ク、クゥー」

「分かっちょる!! くそっ、どうすれば……どうすればいいんだ……!!」

「グググルルルルルァァァァァ!!!」

 

 ノーバートが勢いよく炎を吐いた。小屋の壁に焼け穴が開いた。

 

「「…………」」

「うぅ……うぅぅぅ……!!」

 

 続く。

 




 はい、まさかのクィディッチ二試合目カット!!(カットと言ってもナンバリング外に追いやっただけですけども)
 一応いつかは書く予定です。天文学回の事も忘れてませんよ。

 果たしてシルバーウィーク中にどこまで行けるか……上手く行けば10月でPart1終わるので、しばしお待ちを。

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