※告知事項※
・何かあれば書きます。
【第40話】
クリスマスパラダイス
[194]
ERISED STRA EHRU OYT UBE CAFRU OYT ON WOHSI
[195]
――12/25。言うまでもなく、クリスマス。
その日の大広間はいつもと一味も二味も違った。
「ヒャーハハハハハハハ!!! Jeeeeeeeeesus Birrrrrrrrrrthdaaaaaaay !!!! ヒャーハハハハハハハ!!!」
「朝から絶好調だなあいつ」
「わざわざJesusなんて使いやがって、あれで上手いこと言ってクリスマスを侮辱してるつもりなんだぜ」
「誕生日なんて糞食らえってか」
「「HAHAHAHAHA!!!」」
「喧しいガキ共が!!」
普段なら大広間に姿を見せない筈のポルターガイスト・ピーブズが姿を見せていた。ウィーズリー兄弟と黒川真魚もいる。
「そんなこと言って、何気に楽しみなんだろ」
「ああ、普段なら大広間に出てこないのにな」
「日本で言うツンデレって奴っすねえ」
「五月蝿え!! F◯ck you !!!!」
「まあ、乙女になんて言葉使いするんすか! 怖いっすー!」
「お前が乙女? 冗談キツイぜ」
「いや、案外
「ああ。一生
「「HAHAHAHAHA!!!」」
「失礼っす!!」
大広間には四人しかいないと言うのにこの喧騒。"まだ"四人しか居ないというのに。
「Jingle bells , Jingle bells , Jingle all the waaaaaay !!!!」
大広間の扉が開き、楽しそうにジングルベルを歌いながら入って来たのは九条カレン。
「Hi !!! Everyone !!! Happy Christmaaaas !!!!」
「ハーイ! ハッピークリスマース!!」
「うーん、発音が甘いデスねマオ」
「そりゃネイティヴじゃないっすし……あれ? カレンちゃん一人っすか?」
「そうデス! ……ふふふ、丁度良い三人が居マスね」
真魚、ウィーズリー兄弟を見回し言う。
「三人にお願いしたいことがありマス! ホグワーツ悪戯三人組に、是非協力して欲しいんデス!」
「あれ、まおそんな風に言われてたんすか!?」
「へえ、協力か」
「さぞ面白いことなんだろうな」
「ふふふ、勿論デース……ただ口裏を合わせてくれれば良いだけデス……ふふふ」
[196]
「カレンちゃん、凄く張り切ってたね」
「面白い事があると言っていましたが、何でしょう」
「ロクな事じゃ無いような気がするんだけどなー」
「でも楽しみですわ!」
大広間へ向かう穂乃花、忍、アリス、若葉。因みに若葉はモリー作のセーターを着ている。
数分前、カレンは「面白い事を用意する」と言って先に大広間へと向かってしまった。
「面白い事……はっ! もしや、カレンは金髪の雨を降らせるつもりでは!?」
「シ、シノ。それ面白いの?」
「きっとそれだよ! カレンちゃんの金髪が入ったポタージュ……何にも変えられない素晴らしさ……!」
「ホ、ホノカ。ちょっと自分の言ってる事見直さない?」
「流石お二方ですわ! 金髪への愛に溢れている……私も見習わなくては!!」
「ワ、ワカバ。冷静になろうね」
ドン引きしながらも一応ツッコむアリス。ツッコミの鑑。
「あ、シノブ様! おはようございまーす!!」
その時である。突如四人の背後から聞き慣れない声がした。
振り向く四人――手を振りながらこちらへ向かってくるのは、金髪巻き毛の可愛らしい少女。レイブンクローの『モラグ・マクドゥガル』である。
「ひゃははあ⤴︎ひゃはあ⤴︎ひゃああああ⤴︎!!! モラグ!! おはようございます!! 今日も綺麗な金髪ですね!!」
「シノブ様!! お褒めに預かり光栄です!!」
「モラグ……? 誰なの忍ちゃん?」
「あ、そうでした! 皆さんに紹介します! 昨日金髪同盟にスカウトした、モラグ・マクドゥガルちゃんです!!」
「まだ未熟だけど、よろしく!!」
何が未熟で何が成熟なのかまるで意味が分からないが、自己紹介するモラグ。彼女は何者なのか? 時は昨日に遡る。
それはアリスが図書館に行っている間に起こった出来事。忍がホグワーツ城内を散策していると、一人中庭のど真ん中で雪に埋もれながら黄昏ている金髪少女がいた。
「金髪!! 金髪少女!!」
それを見た忍は迷わず突撃。そして彼女と接触したのだ。モラグ・マクドゥガルと。
その後、なんやかんやあって(忍の金髪講義)、モラグはすっかり忍色に染まってしまった。人はそれを洗脳と呼ぶ。
結果、モラグは金髪少女でありながら金髪を愛する特異的な金髪少女と化し、金髪同盟に入盟。忍をこけし様と崇めるようになったのであった。
以上。閑話休題。
「アリス!!」
「はい!?」
突然手を握られ、驚くアリス。
「シノブ様から聞きました!! 私も、しの部に入部させて頂けないでしょうか!?」
「はい!!?」
「何でも、シノブ様を愛する者達が集うクラブだとか……是非!!」
「ワ、ワオ……じゃあ……にゅ、入部テストでもする?」
「はい!! ありがとうございます!!」
無理矢理しの部入部テスト、開始。
「シノの生理周期は?」
「せい、ぶっ!!?」
撃沈。
「ア、アリス! 止めて下さい恥ずかしいです!!」
「いきなりとばすねアリスちゃん!?」
「え? いやだって、しの部ならこれくらい知っとかないと駄目だし……」
「さも当然の様な顔で何を言ってらっしゃるのですかアリスちゃん……」
「これは必須知識!! シノの機嫌が悪くなる日はちゃんと把握しておかないと、シノとの会話に気を遣えないの!! そしたらシノが不愉快になるでしょ!? しの部に入るなら、これくらい知っとかないと駄目だよモラグ!!」
「っ!!!」
雷が直撃したかの如き衝撃を受けた顔をするモラグ。膝から崩れ落ちた。
「っ……言われてみれば全くその通り……私、まだまだ未熟だったっ……!」
「……またいつでも挑戦しに来てよ。全100問、全てを乗り越えれば、名誉あるしの部の一員だよ」
「はいっ!! 精進しますっ!!」
アリスとモラグは、固い握手を交わした。
「良い話ですね……!」
「感動したよ……!」
「私、感銘を受けましたわ……!」
涙を流す三人。ツッコミ不在の恐怖。
「じゃあ、大広間に行こうか」
「そうですわね」
「行きましょうモラグ」
「うん、シノブ様」
「サプライズ楽しみだよー」
終わりは割とあっさりであった。まあ、このテンションがずっと続いたら本当に狂気の世界になってしまうので、有難いところ。
モラグを加えた五人は、大広間までやって来た。
「ふふ、それじゃあ開けますよー」
「楽しみだね、サプライズ!」
「はい! 楽しみ過ぎて心臓が止まりそうですわ!」
「でね、カレンちゃんの長い金髪は最高なんだよ〜!」
「わあ、長い金髪……そういうのもあるのかあ!!」
大広間の扉が開いた。
「Hello !!! ようこそ、大広間へ!!」
「「!!!!!!!!!!!」」
「カ、カレンちゃん!!?」
「こ、この人がカレン!?」
「どうしたのカレン、そ、その髪!?」
大広間にいたカレン。彼女の髪は流れる様な長髪でも、輝く金髪でも無く――黒髪短髪と化していた。
「いやー、私たちも驚いたんすよ」
「大広間に来るなり、急に髪を切り出したからなあ」
「全くビビったぜ」
「俺でさえビビったよ……その上、髪の色まで魔法で変えちまったからな」
真魚、フレッド、ジョージ、ピーブズが言う。彼女彼等も何とも言えない顔をしていた。金髪好きでは無いにせよ、突然の行動に驚いたのだろうか。
「ふっふっふ……そう! これが私の surprise present デス!! びっくりしたデスか、みんな……シノ? ホノカ?」
「「」」
忍と穂乃花は、まるで石になったかの如く、微動だにしない。
彼女たちの心臓は、止まっていた。
大宮忍、松原穂乃花――死亡。
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「シノー!!! ホノカー!!!」
「し、しし、心臓が止まってますわー!!!」
「シノブ様ァァァァァァァ!!!」
「こ、これ程とは……ちょ、ちょっとしたジョークのつもりだったんデス!!!」
カレンはカツラを脱ぎ捨てた。
そう、カツラ。カレンのクリスマスプレゼントの正体は、黒髪のカツラだったのだ。
再びカレンの美しいゴールデンロングヘアーが露わとなった。すると――。
「「――――はっ!!?」」
何ということだろうか。呪縛から解き放たれたが如く、心臓が止まり、死んだ筈の忍と穂乃花が蘇ったではないか! 死者蘇生――これぞまさにクリスマスが聖なる日であったからこそ出来た神の御技、クリスマスの奇跡である!!
「今……何が起こったのでしょう」
「一瞬心臓が止まってたよ……」
「もう、カレン!! サプライズが過ぎるよ!」
「スミマセン、まさかここまでとは思わなかったんデス……」
「ああ、俺たちも思わなかったぜ」
「こんなん予想出来るわけねえよな」
「ルナティック過ぎるっすね」
ドン引きする真魚とウィーズリー兄弟。ピーブズは笑い死んだ。
「ふう……落ち着きました」
「カレンちゃんってば〜……髪切る時はちゃんと言ってからにしてね……心臓に悪過ぎるよ」
「Oh, ソーリーデス……」
「急にスキンヘッドにして刺し墨を入れたら驚くじゃないですか、全く!」
「そこまでのレベルだったのデスか!!?」
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カレンのサプライズが終わり、忍と穂乃花は九死に一生を得た。
大広間に続々と集まる生徒達。最初に来たのは由紀、胡桃、美紀。
「おっはよーゆきっちー! ……あれ? なんか、その……雰囲気変えた?」
「え? 雰囲気なんて変えてないよー。おはよう、真魚ちゃん」
「いやでも……あ、そのリボンか! どうしたんすかそれ?」
「これ? ……これはね、めぐねえから貰ったクリスマスプレゼントだよ」
「めぐねえ?」
「うん! ……これでめぐねえはいつも私の側に居てくれる……あはははははは!!」
「へ、へえ」
次に現れたのは薫子と翼。
「はぁ……」
「ど、どうしたんですの?」
「かおすのプレゼント、ちゃんと動かなかったんだって」
「えっと、ペンタブレットでしたっけ?」
「どうもホグワーツで電気製品を使う事は出来ないみたい。不便だね」
「私の……ペンタブ……」
「……こうなったら……私の権力で、何とかしてみせますわー!!!」
「お願いします!!」
「いやダメでしょ」
三番目に現れたのは香奈、萌子、直。
「香奈ちゃん、おはよ〜」
「ん、おはよう穂乃花」
「ねえねえ、クリスマスプレゼント貰った?」
「あ、やっぱあれ全員分あったんだ……プレゼントねえ……」
「私、テニスボールだったよ〜。なんでテニスボールなんだろうね?」
「私これだった」
香奈は持っていた袋からそれを取り出した。
「……箒磨きセット?」
「凄まじくいらない……穂乃花、これあげる」
「え? いいの?」
「あげる……持ってても不愉快なだけだし」
「不愉快?」
「……んにゃ、別に。こっちの話よ」
「?」
四番目に現れたのは陽子と綾……綾?。
「ア、アヤ? それは一体……」
綾と思しき人物――顔の書かれたダンボールを被っている人物にアリスが言う。
「……ツリーの下に置いてあったわ。私宛のカードも付いてた」
「へ、へぇ〜」
「…………」
「…………」
「いらないわよ何なのよこれ!!!」
綾はダンボールを床に叩きつけた。
最後に現れたのは悠里、琉姫、小夢。
「おはようるきちゃん! るきちゃん何持ってるの? その箱何?」
「おはよう由紀ちゃん。うふふ、じゃーん! 首輪型のチョーカーよ!」
「っ!!!!」
由紀は青ざめた。
「ちょうどいい感じだし、バックビークに付けてあげようと思うの! だから箱に入れてプレゼント風に〜……由紀ちゃん?」
「っ…………」
蘇るのは偽りの記憶。教室の中、楽しく漫談していたあの少女。だが、それは幻影、今はもうそこにはいない――
「由紀ちゃん? ど、どうかした?」
「……う、ううん。何でもない……可愛いチョーカーだね! うん! バックビークもきっと気にいるよ!」
「そうよね!」
「あはははは!」
これを以って、全員が広間に集結した。それを見計らってか偶然か、大広間の長机に大量のご馳走が出現したのであった!
[199]
いつもの朝食とは趣を異にしていた。皿はクリスマス的なデコレーションが施されたものに変更され、白と赤の調味料がどっさりと並んでいる。
例を挙げると白ではマヨネーズ、塩、砂糖などの割と平和なもの。赤ではケチャップ、七味、各種唐辛子など割とデンジャラスなもの。この各種唐辛子にはかの悪名高き最狂唐辛子・キャロライナ・リーパーも含まれており、陽子と綾のトラウマを著しく刺激したのであった。
以下、会話パート。
悠里と胡桃。
「りーさん、プレゼント何貰ったんだ?」
胡桃が言う。
因みに、冬季休暇中は生徒の数が少ないため、全員が一つのテーブルを使って食べる。
「プレゼント……なんだかよく分からないものを貰ったわ」
「よく分からないもの?」
「よく分からない物というか、ここにある意味が分からないというか……『ぐーまちゃん』って覚えてる?」
「ぐーまちゃん? えっと……ああ、あの熊のぬいぐるみ?」
「ええ。……あれだったわ」
「謎すぎるなおい」
「どういう事なのかしらね……胡桃は何貰ったの?」
「あー……ショベルの研磨剤。……もしかして、まともなもん貰ったのって私だけ?」
「由紀ちゃんと美紀ちゃんは?」
「さあ……由紀も美紀も、何貰ったか全然教えてくれねー。……由紀の方は想像つくけどな」
二人は由紀を見た。楽しそうに笑っているが……何か違和感を感じる。
「……あのリボンね」
「ああ。……あれ、もしかして」
「どうでしょうね……もしそうだとすれば、このプレゼントの送り主の事が少し分かるわ」
「へえ? どんなこと?」
「腸が煮えくり返る程度には悪趣味ってことよ」
「……ふん、違いない」
直、萌子、若葉、真魚。
「四人ともお揃いっすね」
「そうだね〜」
「浮いてるけどな……」
「お揃い……ギャルっぽいですわー!」
四人とも、モリーが作った栗色セーターを着ている。それぞれのセーターには、彼女達のイニシャルが編まれている。
「でもさ、ウィーズリーおばさんから貰ったはいいけど、他の奴らにプレゼント送ってきた正体不明の誰かさんからのプレゼント、私たちには無いんだな」
「あー、そう考えると何かハブられたみたいでイラっと来るっすねー」
「で、でもさ! みんながみんな良いものって訳じゃないみたいだし、それに、よく分からない人からよりは、知ってる人からのプレゼントの方が安全だよ!」
「そうですわね。知らない人からの贈り物は受け取るべからず、ですわ」
「格言っぽく言ってるが、何の捻りも無いな」
「やれやれ、ハブられたと言えばまおもっすよー! スリザリンの生徒、他に誰も居ないし、ジーナちゃんも居ないし……談話室独り占めっすけどー、つーまーんーなーい!!」
「あはは……大変だね」
「他人事みたいに……」
「だって他人事だもん……」
小夢とマンディ。
マンディ・ブロックルハースト。飴好きのレイブンクロー生である。
「はい、飴あげる!」
「は? ……いきなりどうしたの? まあ有難く頂くけど……」
「は? とは何さ……いやあ、同じあまみ好きとしてお近付きになりたいなーって」
「私が好きなのは飴よ。甘いのだったら何でも良い訳じゃ無いの」
「まあまあそう言わず、はい」
「ありがと」
「プレゼントでいっぱい貰ったから食べ切れなくてねー。助かったよ〜」
「……私を良いように使ったわね」
「まあまあそう言わず、はい」
「ありがと」
陽子と綾。
「幾ら何でもあんなプレゼント、酷すぎるわ!!」
ヤケ食いする綾。
「酷い、酷すぎる……過去最悪のクリスマスプレゼントと言っても過言じゃないわよ!!」
「まあまあ……落ち着きなよ綾」
「全く! このサンタ頭おかしいんじゃないかしら!?」
「いやまあそれは思うけど……私のなんて、食品サンプルだったしな……よりにもよって唐辛子の」
「あれに噛り付いた時は正気を疑ったわ」
「リベンジしたかったんだ」
「リベンジするなら百味ビーンズにでしょ……それは兎も角、話を戻しましょう――このサンタ最悪!! 何にも分かってないわ!!」
「ただ愚痴りたいだけじゃねーか!!」
アリスと翼。
「……ねえ、ツバサ」
「……ん? アリスじゃん。珍しいね、私に話しかけてくるなんて」
「あはは……ちょっと聞きたいことがあってね」
「何?」
「……さっき、"三頭犬"って言ってなかった?」
「三頭犬? ……言ったような、言わなかったような」
「三頭犬について、何か知ってるの?」
「え?」
アリスのいつになく真剣な顔を見て、少し面食らう翼。
「……フラッフィーが、どうかしたの?」
「フラッフィー?」
「うん。三頭犬の名前……多分そいつの事言ってるんだよね?」
「そんな名前あったんだ……うん、多分そいつかも」
「それなら、ハグリッドに聞けばいいよ。フラッフィーって、ハグリッドのペットらしいし」
「ペット……うん、分かった。ありがとうツバサ」
「どういたしまして――何でそれについて知りたいかは、聞かないほうが良いの?」
「聞かないでくれた方が有難いかな」
「ん、了解」
「……Thank you Tsubasa」
忍と美紀。
「ねえ、忍」
「はい? どうしたんですか美紀ちゃん」
「……少し、貸して欲しいものがあるんだ」
「貸して欲しいもの?」
「はい。――透明マント、なんだけど」
「いいですよー」
「えっ」
美紀は意外そうな声を上げた。
「え? 貸して欲しいんじゃないんですか?」
「え、いや、その……そんなあっさり貸してもらえるとは思わなくて」
「別にいいですよー。どうせ二つありますし」
「え? ふ、二つ?」
「はい。……何故かは分かりませんが、私のクリスマスプレゼント、透明マントだったんです……後で返してくれるなら、別にいいですよ」
「えっ――あ、はい! ありがとうございます!」
「いえいえー。……そういえば美紀ちゃんって、由紀ちゃん、胡桃ちゃん、悠里ちゃんには敬語を使っていますよね。何でなんですか?」
「え? そ、そりゃ、あの三人は先輩だし……」
「先輩? 同年代じゃないですか」
「え? いや、そんな筈
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忍「何で敬語を使っているのですか?」
美紀「敬意を払っているからだよ」
忍「成る程、納得です!」
この話は終わった。
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クリスマスの宴は朝から晩まで続いた。人数は少ないながらも、未だ嘗てない程の賑わいを見せた大広間――聖なるクリスマスツリーは、その姿を静かに見守っていたのであった。
[120]
――喧騒が止み、何事も無かったかのような静寂に包まれたホグワーツ。草木も眠る、丑三つ時である。
「…………」
草木さえ眠る――だが、ある少女は眠っていない。静かな図書館内を、寒さに震えながら歩く。だが、その姿はまるで見えない。
「…………」
少女が目指すのは、禁書の棚。禁じられた書庫であり、教授の許可を貰った上級生しか本来は侵入できない。
「…………」
禁書の棚に近付いた。
――彼女は実に浅薄であった。あの箱の中身が助長したのだろうか。生命の石という禁断を求める彼女の欲求に――。
――キィィィィィィーーーッ!!!
「っ!!」
図書館中に甲高い音が鳴り響いた。警報だ。
迂闊であった。普段の彼女なら、この書庫に警備が施されているであろう事に気付いただろう。禁じられた書庫――たかが姿を消した程度で入れる程、ホグワーツの設備は甘くない。
「ニャアーオ」
「っ!!」
近付いてくる猫の声。どこからともなく現れる警備猫――ミセス・ノリスだ。
焦りが彼女を支配する。どこかに隠し扉は無いか? 手当たり次第に書庫を叩く。触れる。押す。
――本来なら、そんな都合のいい事など起こらない。運命は残酷なのだ。しかし。
「!!」
次の日とは言え、聖なる夜。キリストの加護が込められた聖なる日。運命は彼女に味方したのだ。
偶然彼女が触れた場所は、ある隠し部屋への入り口となっていた。静かに展開していく書庫。そして扉が現れた。
迷っている暇は無い。少女は部屋へと飛び込んだ。書庫は再び閉じ、何も無かったとでも言わんばかりに、元の姿に戻った。
「……ふう」
少女――直樹美紀は、気が抜けたようにへたり込み、そして――"それ"を見た。
「――鏡?」
部屋の中心に鎮座する巨大な鏡――その怪しい魅力に抗える者は居ない。そしてそれは彼女とて――例外では無かった。