ゴールデン*ラビットガールズ!   作:ルヴァンシュ

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 お待たせしました! 第39話です!


※告知事項※

・何かあったら書きます。


聖夜の奇跡 その1

【第39話】

聖なる日

 

 

[188]

 

 

 ――クリスマス。

 

 言わずと知れたイエス・キリストの降誕日。人々はこの聖なる夜(性なる夜ではない、分かったか)を祝い、大切な人と共に過ごすという。

 

 

[189]

 

 ハロウィンに続き、ホグワーツの本気が見れるのはこのクリスマスの日。ハロウィンはイギリス人にとってはそこまで重要なものでは無いにも関わらずあの盛況。だが、クリスマスは万国共通で重要なものである。

 

 凡ゆる廊下という廊下に煌びやかな光が灯り、全教室に禁じられた森で採れた植物で作られた、レプリカでは無い天然もののリースが付けられている。無論、あの三頭犬が守護する部屋も例外では無い。

 

 大広間には巨大なクリスマスツリーが鎮座し、その他諸々の飾りが彼方此方に散りばめられている。それらは全て魔法によって絶えず金色に輝いている(忍がマクゴナガルに頼んだ結果。気に入られているという状況を非常に有効活用していると言えよう)。

 

 ハロウィンの際は飴の雨が降っていたが、クリスマスではシンプルに雪が降っている。この雪がまた不思議な雪で、決して積もる事のない魔法の雪なのだ。地面に着くや否や、すぐに気化して再び凍結、新たな雪として舞い降りる。魔力という非永続的なエネルギー源を使っているとはいえ、擬似的な永久機関を完成させている。流石はフリットウィックである。

 

 さて、ホグワーツの飾り付けが盛り上がる中、生徒は果たしてどの位の盛り上がりかと言えば――盛り上がってるのは極少数である。

 否、語弊がある――正確に言えば、極少数しか残っていないので必然的に盛り上がっているのは極少数しかいない、というのが正しい。

 

 どういうことだろうか。別に勿体振る事でも無いので言ってしまうと、要は冬季休暇である。ホグワーツの冬休み。

 ホグワーツ魔法魔術学校において、冬季休暇の間は自宅に帰ることが許されている。そして殆どの者が帰宅している。

 

 実際、今のホグワーツには先生方と何人かの生徒しか居ない。いつもの23名でさえ、全員揃っていない。心愛、理世、千夜、紗路が不在である。FFIの手伝いをする為らしい。

 という訳で今学校に残っている生徒は、ウィーズリー三兄弟、いつもの19名、レイブンクロー生が何人かくらい。

 

 例えそれだけしか居なくても、ホグワーツが手を抜くことはない。それを楽しみにしている者が一人でもいれば、その期待に応えるのは当たり前の事であり義務である。

 

 これは、そんなクリスマスに纏わる幾つかのお話。

 

 

[190]

 

「やっほー、ハグリッド! 遊びに来たよー!」

「私のバックビークは元気?」

「お邪魔します」

「し、失礼します」

 

 雪が降りしきる今日は12/23。丘の上のカボチャ畑は雪に埋もれ、橙色から純白へと姿を変えている。石や煉瓦を積み上げて作られた強固なる小屋の屋根には雪がどっさりと積もっている。

 ここは森番・ハグリッドの小屋。小屋を訪れたのは小夢、琉姫、翼、薫子の四人。

 

「おお、お前らか。ちょっと待ってろ、何か飲みもん淹れてやる」

 

 中に居たのは髭もじゃの巨体を持つ巨人めいた男、ハグリッドである。

 

「私甘いのがいいー!」

「紅茶でいいわ」

「わ、私も琉姫さんと同じで」

「同じく」

 

 ハグリッドは大きなテーブルの上に縁の欠けたティーカップを置き、琉姫、薫子、翼のカップには紅茶を。小夢のカップにはホットチョコレート蜂蜜入りを、それぞれ淹れた。

 

「クゥー」

「バックビーク!」

 

 小屋の床をよたよたと歩いてきたのは、まだ幼鳥のヒッポグリフ・バックビーク。ハグリッドに救出された彼(彼女?)はみるみる内に回復し、ついに歩けるまでに成長したのだ。琉姫はバックビークを抱き上げた。

 

「へえ、こいつが……」

 

 興味深そうにバックビークを見つめる翼。彼女とバックビークは初対面だ。翼が今回三人に付いてきたのはバックビークの取材のため。漫画家として、こういった不思議生物は放っておけないのだろう。

 

「甘みだあ〜おいしー」

 

 ホットチョコレートを美味しそうに飲む小夢。尚、このホットチョコレートは蜂蜜の相乗効果で普通以上、必要以上に甘いということをここに記しておこう。

 

「ハグリッドさん、この間のツリー運びお疲れ様でした」

 

 紅茶を冷ましながら薫子が言う。

 

「おお、ありがとさん。生徒に労ってもらったのは何年ぶりだろうな」

「年単位なんですか?」

「ま、そもそも俺はあんまり表に出ねえからな」

 

 大広間に鎮座するクリスマスツリー。あの巨大なモミの木は禁じられた森原産のもの。冬季休暇の間は人が少なくなるため、大掛かりな仕掛けを用意することが出来るのだ。

 そして、それを運んだのはハグリッド。力仕事に特化した彼は、まさに裏方の鑑と言えよう。

 

「もっと評価されるべきと思うけどねー」

 

 小夢が言う。

 

「良いんだよ。俺は注目されるのは好きじゃねえ」

「えー? でもさ、誰からも評価されないって辛くない? 私はやだな」

「そうですよね……どうやってモチベーションを保ってるんですか?」

「俺はダンブルドア先生を心から尊敬している。だからダンブルドア先生が校長をやってるホグワーツでの仕事なんざ、これっぽっちも苦じゃねえ。寧ろ喜んでやってるんだ」

 

 ハグリッドは胸を張って言う。誇張も何もない、ただそこには誇りだけがある。

 

「マゾヒストって奴かしら?」

「るっきーMっぽいよね、いやらしい」

「もうそのネタ止めてくれない!? いや如何にも言われそうなこと言った私が悪かったけどお!!」

 

「うーん、分かんないな」

「…………」

 

 今一ピンと来ていない二人。ほぼ必ずダイレクトに評価される職業に就いている故か。

 

「……ま、ここに居て悪いことばっかじゃねえことは確かだ。お前さんらにも会えたし、何より面白え生き物が沢山飼える」

「何!? 他にも居るの!?」

 

 目を輝かせて翼が言う。突然の豹変にハグリッドは少し狼狽える。

 

「あ、ああ。ヒッポグリフなんてそうそう飼えるもんじゃねえし、それにフラッフィーだって居るからな」

「フラッフィー!? 何それ!? どんなの!? 会いたい!!」

「だ、駄目だ駄目だ! あいつは凶暴で、暴れると手が付けられん! だが、そこんとこが可愛いんだよなぁ……音楽を聞くとすぐ気持ち良さそうに眠っちまうんだ。三つとも」

「三つとも?」

「ああ。フラッフィーは三頭犬だからな」

「三頭犬!? ケ、ケルベロス!!?」

「ケルベロスだと? ありゃあ空想上の生き物だ。大方、三頭犬を初めて見た奴が恐怖のあまり噂を流したんだろう。地獄を守護してるってな」

「何処に居るの!? 会いたい!」

「んにゃ、ここには居ない。今あいつは大事なもんを守っとるからな。あの部屋……おっと!」

 

 ハグリッドは慌てて口に手を当てた。

 

「危ねえ危ねえ、もうちっとで言うところだった……とにかく、あいつは今秘密の任務についている。会うことはできねえ」

「えー……」

「じゃあじゃあ、その秘密の任務って何!?」

 

 小夢が聞いた。

 

「お前さん、秘密の意味を知っちょるか?」

「流石に知ってるよ、やだなー……ダメ?」

「駄目だ。これはダンブルドアが俺に与えて下さった大切な任務。口が裂けても言えねえ」

「むー」

 

 小夢は不満そうに引き下がると、カップの中身を一気飲みした。……この甘い飲み物を一気飲み出来るのは、ホグワーツ広しと言えど、彼女だけであろう。

 

 

[191]

 

 12/24。クリスマスイブ。

 

 クリスマス前日であり、クリスマスを心待ちにする子供達にとってはフラストレーションが溜まりに溜まる日である。そして、恐らく子供達が最も早寝早起きする確率が高い日であろう。

 

「…………」

「あ、ミキ」

「……あぁ、アリスか」

 

 ホグワーツ図書館。ホグワーツの名に恥じぬ大量の蔵書が所狭しと並んでいる。暖房がかかっており、暖まるには最適な場所である。それ故冬には利用者が増える……という訳ではない。何故ならば、この図書館の支配者である司書『マダム・ビンス』が理由である。

 彼女は異常と言っていいほどの潔癖症であり、本が少しでも折れ曲がっていたり汚れていたりすることを許さない。もしもそんな事を仕出かしてしまった暁には、容赦ない呪いが飛んでくる。また、図書館の静寂を愛しており、それを乱す者もまた許さない。

 そんな訳で、図書館の利用には細心の注意を払わなければならないのだ――それ故、最もリラックス出来ない場所と言っても過言ではない。

 だがそれ故、読書家にとっては最高の場所。絶対に破られない静寂の中で集中して本を読む事が出来る――完璧な読書空間なのだ。

 

 閑話休題。

 

 アリス・カータレットは数多くの本の中から四苦八苦してある本を取ると、直樹美紀の前に座った。

 

「ここ、暖かくて過ごしやすいよね」

「そうだね……何取ってきたの?」

「チェスの指南書だよ」

「へえ、チェスするんだ」

「そんなに上手じゃないけどね。シノが教えて欲しいって言うから、私もちょっとは上達した方がいいかなーって」

「忍が? なんでまた」

「シノ、この間マクゴナガル先生にチェスでこっ酷く負けたらしくてね……リベンジしたいんだって」

「マクゴナガル先生? また意外な」

「意外だよね〜」

「うん」

 

「ミキは何読んでるの?」

「『二十世紀の著名な魔法使い』っていう本。読んでみる?」

「いいの? じゃあちょっとだけ……」

 

 アリスは本を受け取った。

 

 開かれていたページは『錬金術』関連の項。その中でも『賢者の石』という物質を作ったとされる錬金術師『ニコラス・フラメル』について書かれていた。

 

「生命の石かあ……永遠の命を手に入れることができる……へえ」

「正直眉唾ものだけど――でも、こっちでは何があっても不思議じゃないから、案外本当にあるのかもね」

「ロマンだね〜……永遠の命かあ……それがあれば、シノと永遠を過ごせるかも?」

「えぇ……でも嫌じゃない? 永遠の命って……要は不老不死になる訳だし、死にたくても死ねないよ」

「シノと二人なら、どんなに辛くても私は乗り越えられるよ」

「本当に忍の事が好きなんだね」

「大好きだよ。それこそ、likeじゃなくてloveにさえ等しいよ」

「ははは……」

 

「ミキには、そういう人は居ないの?」

「っ…………」

 

 美紀は一瞬、嫌な事でも思い出したかのように顔を歪めた。

 

「え……どうしたの?」

「……何でもない……うん、まあ……居ないことは、無いかな。ラブじゃなくて、普通にライクだけど」

「へぇ、どんな子なの?」

「…………調子の良い奴だった。音楽と読書が好きで――私の読書好きも、その子に影響されたんだ」

「ふうん」

「いつも楽しそうで、よく振り回されたりして…………凄く、勇気のある子だった。私なんかより、よっぽどグリフィンドールに相応しいくらいに」

「……こっちには来てないんだね」

「…………」

「……ご、ごめん。何か、悪いこと聞いちゃったかな」

「そんなことないよ」

 

「…………」

「…………」

 

「……いつか元の世界に戻ったら、その子にまた会えるよ。だから気を落とさないで、ね?」

「……戻っても…………そうだね、うん」

 

 美紀は目を伏せ、再び本を読み始めた。アリスも同じく、読み耽る。

 

 その後、図書館にいる間、二人の会話は無かったという。

 

 

[192]

 

「今日はクリスマスデース!!」

「カレンちゃん元気だね〜」

 

 左様、本日は12/25。キリストの生誕日にして聖誕祭、冬における子供達最大のイベント――クリスマスである。

 

「クリスマスといえばpresent!! きっとホグワーツが何か用意してくれてる筈デース!!」

「あれ、カレンちゃんサンタクロース信じてないの? 意外だよ」

「ホノカ、私を何歳と思ってるんデス……?」

 

 ここはグリフィンドール談話室。暖炉の火がごうごうと燃えており、部屋の赤さと相まって宛らコタツのように部屋全体が暖かい。暖かいを通り越して暑い。

 

 ハグリッドが設置したクリスマスツリーは大広間の物だけではない。大きさはあれよりも遥かに小さいが、各寮の談話室内に一つずつ設置されている。そして、その下にあるのは――。

 

「Oh my God !!! That's presents !!! Yeahhh !!!」

「カレンちゃん素が出てるよ! 素のカレンちゃん素敵仕えたい!! ……でも本当だ、誰からだろう……」

 

 ツリーの下にあったのは色とりどりのプレゼントボックス。各々誰一人心当たりが無いが、しかしプレゼントが届いたというのは紛れもない事実。

 

「私、みんなを呼んでくるデス! みんなで開けマショウ! 勝手に開けちゃダメデスよー!」

「分かってるよ〜!」

 

 どたどたと、カレンは螺旋階段を登っていった。

 

 

 〜数分後〜

 

 

「プレゼント! プレゼント! クリスマース!!」

「Hey !!! こっちデース!!」

「おい、あんまりはしゃぐなー」

「プレゼントだなんて、誰からでしょう?」

「わ、私なんかにプ、プレゼント……はわわわわ」

「三頭犬だといいな……」

「え? 三頭犬? 今三頭犬って言った?」

「クリスマスプレゼントと言えば、あのパーティーを思い出しますね〜」

「こうして皆さんと一緒にクリスマスを迎えられるだなんて、夢のようでしゅわぁぁ!!」

 

 ぞろぞろと降りてきたグリフィンドールメンバー。由紀、カレン、胡桃、美紀、薫子、翼、アリス、忍、若葉。

 

「さあ、みんな揃ったところで、ボックスを開けるデース!!」

 

 プレゼント開封タイム。

 

 

《present of Yuki》

 

「へへ〜一番乗り〜!」

 

 由紀は自分の名前が書かれたカードのついた袋を手に取った。桃色の袋。

 

「何かな何かな〜」

 

 由紀は袋を開けた。

 中に入っていたのは――見覚えのある、真っ白いリボンだった。

 

「っっ!!!!!」

 

 由紀は咄嗟に袋から手を放した。幸い、その不審な動きは誰にも気付かれていない。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ――」

 

 由紀は額に手を当てた。汗が滲んでいる。混乱のあまり、思わず小さく呟いた。

 

「――めぐねえ――」

 

 

《present of Wakaba》

 

「私のプレゼントは……これですわね!」

 

 若葉は自分の名前が書かれたカードのついた箱を手に取った。栗色の箱。

 

「何でしょう……」

 

 若葉は箱を開けた。

 中に入っていたのは――箱と同じく栗色をした手編みのセーターだった。

 

「ひゃあ⤴︎ひゃあ⤴︎ひゃあ⤴︎あああ!!!」

 

 奇声をあげる若葉。

 

「な、ななな、何という庶民感!! 女子高生っぽいですわ!! 差出人は……モリーさんですわ!! ということはこれ、モリーさんの手作り……ひゃあ⤴︎ひゃあ⤴︎ひゃあ⤴︎ああああ!!! お母様の手作り!! ギャルっぽい!! ああ、これは家宝にせざるを得ませんわ!! クリスマスばんざーい!!!」

 

 

《present of Kurumi》

 

「クリスマスプレゼントか……久し振りだなあ」

 

 胡桃は自分の名前が書かれたカードのついた箱を手に取った。真っ白い箱。

 

「何だろ……」

 

 胡桃は箱を開けた。

 中に入っていたのは――白いパッケージの研磨剤だった。『魔法の磨き粉――新品みたいにピカピカに』と書かれてある。

 

「これは……ショベルの手入れをしてやれってことか?」

 

 胡桃は手元のショベルを見た。

 

「へへ……ようし、ピカピカに磨き上げてやるぜ!!」

 

 

《present of Kaoruko》

 

「漫画の感想だったら嬉しいな……」

 

 薫子は自分の名前が書かれたカードのついた箱を手に取った。赤い箱だ。

 

「何でしょう……」

 

 薫子は箱を開けた。

 中に入っていたのは――彼女が元の世界に居た時に使っていた、ペンタブレットだった。

 

「こ、これは……!!」

 

 薫子は目を丸くした。何故これがここに? 一体誰が? 数々の疑問が頭の中を駆け巡る。だが――。

 

「っ〜〜〜〜! お、お帰りなさい、ペンタブさん〜!!」

 

 疑問より感動が勝ったのであった。

 

 

《present of Karen》

 

「えーっと私のはー……これデスね!」

 

 カレンは自分の名前が書かれたカードのついた箱を手に取った。ユニオンジャック模様の箱。

 

「何デスかねー」

 

 カレンは箱を開けた。

 中に入っていたのは――。

 

「こ、これは……!!」

 

 カレンは驚愕した。まさかこれをまた見ることになるとは思わなかった。だが――これは天啓だ!

 

「そういう事デスね!? 送り主サン! 分かったデース!!」

 

 

《present of Miki》

 

「クリスマスプレゼント……か」

 

 美紀は自分の名前が書かれたカードのついた包みを手に取った。クリーム色の箱

 

「これは……ちょっと重い?」

 

 美紀は箱を開けた。

 中に入っていたのは――見覚えのある持ち運び式CDプレイヤーだった。

 

「っっ!!!!!」

 

 箱から手を離しそうになった――が、辛うじて止まった。

 

「な、なんで……?」

 

 何故? 何でこれがここに? どうしてこれが? 誰が? 何のために? 疑問が次々と浮かぶ。そして思わず、小さく呟いた。

 

「――圭――」

 

 

《present of Tsubasa》

 

「最新の画材とか……だといいな」

 

 翼は自分の名前が書かれたカードのついた箱を手に取った。空色の箱。

 

「…………」

 

 翼は箱を開けた。

 中に入っていたのは――沢山の漫画用トーン。しかも、ただのトーンでは無い。

 

「こいつ……動いてる……!!」

 

 そう、動くトーン。魔法界では絵が動くのは当たり前ではあるが、色の変わるトーンはそうそう無い。そして、それを使っている漫画も。

 

「これは……ふっ、我が暗黒の力が世界を覆い尽くすのも、時間の問題よ……ふはははははは!!」

 

 

《present of Alice》

 

「私のは……これだ!」

 

 アリスは自分の名前が書かれたカードのついた箱を手に取った。深緑色の箱。

 

「何かな〜楽しみ!」

 

 アリスは箱を開けた。

 中に入っていたのは――石だった。

 

「――――」

 

 アリスは石めいて硬直。一瞬意識が吹き飛び、そして、思い出した。

 そう、これはかつて忍に貰った石。イギリスで拾ったという彼女の一番の宝物である。

 

「…………イラナイ……」

 

 

《present of Honoka》

 

「えーっと私のはー……あった!」

 

 穂乃花は自分の名前が書かれたカードのついた箱を手に取った。茶色いストライプ模様の箱。

 

「ふふふ、楽しみ〜」

 

 穂乃花は箱を開けた。

 中に入っていたのは――テニスボールだった。

 

「――――」

 

 穂乃花は硬球めいて硬直。一瞬意識が吹き飛んだが、別に何も思い出さない。特に何か思い出のあるボールという訳でもないようだ。

 

「…………凄くいらない……」

 

 

《present of Shinobu》

 

「私のは……あれですね!? 間違いありません!!」

 

 忍は自分の名前が書かれたカードのついた箱を手に取った。金色の箱。

 

「金色の箱とは、分かってますね!」

 

 忍は箱を開けた。

 中に入っていたのは――見覚えのある銀色のマント。

 

「……これ……あれですよね」

 

 そのすべすべとした感触から察した忍。そう、これぞあのデミガイズの毛皮から作られた希少なるマント――その名も、透明マント!

 

「あの、もう持ってるんですが……どうしましょう、これ……」

 

 

《present END》

 

 

 

[193]

 

 ――その鏡は望みを映す。

 

 静かに眠る不思議な鏡。

 

 ――叶わぬ望みかどうかは分からない。

 

 謎の鏡は図書館にある。

 

 ――それは見る者にしか分からない。

 

 図書館の奥――『禁書の棚』近くの隠し部屋。

 

 ――全てを魅了する鏡。

 

 そこに鏡は、君臨していた。

 

 




 遅れて申し訳ございませんでしたッ!! せめて……せめて9月中には何とか辿り着きたい……。

 それは兎も角、クリスマス前編です。そして貯め回です。
 ハッフルパフ勢と真魚のプレゼントについてはまた後編で。

 次回更新予定……いつになるのやら。出来るだけ早く投稿したいものです。

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