ゴールデン*ラビットガールズ!   作:ルヴァンシュ

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 久々のナンバリング回の更新です。


※告知事項※

・何かあればここに書きます。


こはくいろスカイハイ

【第38話】

 

 

こはくいろスカイハイ

  -獅子vs蛇-

 

 

[182]

 

 ――クィディッチ。魔法界において知らぬ者は無いとまで言われる、箒を用いたスポーツ競技。

 

 その歴史は11世紀にまで遡る。正式にルールが定められたのは1938年であるが、11世紀のイギリス・クィアディッチ湿原では、既にその原型となる遊びが行われていた。

 

 余談だが、クィディッチの原型となるその遊びを観測したガーティ・ケトルの日記はロンドンのクィディッチ博物館に所蔵されている。また、そのサクソン語を翻訳したものの一部が、皆さんご存知『クィディッチ今昔』と言う本に載ってある。この本に限ってはマグルの皆様も購入出来るので、一読してみてはいかがだろうか。

 

 

[183]

 

 ついにその日がやって来た。

 

「穂乃花ちゃん! ファイトですよ! 緊張したら観客席を見て下さい! アリスとカレンの金髪が輝いていますからね!!」

「さあホノカ! 力を付けるために、一杯食べないとデス! ハイ!」

「ま、まって、カレンちゃん、多い、多いよ!!」

「カレン! そんなに食べたら逆効果に決まってるよ〜!」

「穂乃花ちゃん! 場合によってはお金の力で」

「それは結構だよ!!」

 

 穂乃花を取り巻く忍、カレン、アリス、若葉。要は金髪同盟いつものメンバー。

 

 そう、今日は松原穂乃花のクィディッチ選手としての初陣なのである。

 

 松原穂乃花というグリフィンドールの隠し玉の情報は、今日この試合までは超極秘事項として扱われていた。が、極秘事項と言えば漏れるのが定説、お決まりのパターン。いつの間にやら何処からか(容疑者に挙がっているのは双子とカレン)情報が漏れていたのだ。

 情報が漏れたということは極秘事項で無くなったということ、即ち、大っぴらに動けるという訳である。そこでこの朝の騒ぎ。

 

「頑張ってね、応援してる」

「わ、私もっ!」

 

 翼と薫子。

 

「穂乃花の為にフラッグを描いた。かおすとディーンと私の三人で」

「そ、そんな〜! 私なんかの為に……感激しかないよ〜!!」

「Oh !!! 流石ウイング・V、太っ腹デース!!」

「それ程でもない」

「いよっ大統領!!」

「大統領? ふっ、大首領と呼べ」

「ツバサ大首領ー!!」

 

 ノリノリの翼とカレン。

 

「わ、私なんかが応援するなんて身の程知らずもいいとこですが……怪我しないように、お気をつけて」

「身の程知らずなんてそんな事ないよ〜! うん、空から落っこちないようにする!!」

「大丈夫です! 金髪好きに不可能はありませんよ!!」

「そうだよね!!」

 

「きん!」

「ぱつ!」

 

「…………」

 

 相変わらずの二人。薫子は少し混ざりたそうにしている。

 因みに、翼と薫子、ディーンがフラッグを作ったのは若葉の依頼である。作らないと金を払うと脅し(無自覚)、完成させた。

 

「こんなに皆から応援されるだなんて……まるで夢のようだよ〜! お姫様にでもなった気分……」

「ホノカは最初からプリンセスデス! 私もプリンセスなんデスからね!!」

「カレンちゃん……うう、本物のプリンセスは後光が違うっ」

「what ?」

 

 穂乃花は立ち上がった。

 

「私、頑張るよ! 金髪同盟サブリーダーとしての威厳、ここで皆に見せてやる!!」

 

「その意気です穂乃花ちゃん!!」

「ファイトー!!」

「えへへ……」

 

「あ、動かないで。そのポーズ良い、スケッチするから」

「え? あっはい」

 

 握った片手を天に掲げたポーズのまま静止する穂乃花。広間中の視線が刃の如く突き刺さる。

 

(羞恥プレイ過ぎるよ〜!!)

 

 

[184]

 

 クィディッチ更衣室。深紅の壁で周囲は覆われ、炎に包まれているかの如き様相である。

 

「こほん――いいか野郎共ォ!!!」

「あら、女も居るのよ」

「――そして女性諸君ッ!!!」

 

 ウッドが叫ぶ。出鼻を挫かれても叫ぶ。熱血なるチームリーダーは、この程度の事を位に解さない。

 

「いよいよだッ!!」

 

「大試合だぞッ」

「待ち望んでいた試合だッ」

「今日この時を待っていたッ」

「勝たなければならないッ」

 

「黙れそこの二人!! 俺の台詞を取るな!! 取るなら取るでもっと声を張りあげろゴルァ!!」

「「へーい」」

 

 今度はフレッドとジョージに邪魔されたウッド。流石にキレた。

 

「いいか!! 今年はここ何年ぶりかの最高のグリフィンドール・チームだ!! 最強の布陣!! この試合、間違いなく我々が頂きだぜ!!!」

 

 ウッドは声を張り上げ、チームを鼓舞する。その声は部屋中に反響し、全員の耳が麻痺した。

 

「……さあ、時間だ――やるぞてめえらァァ!!! きん!!」

「「「ぱつ!!」」」

 

「あ、それ本当にやるんだ」

「やれやれ、とんでもないのを入れちまった」

「内側から侵食されていくな」

 

 穂乃花の侵入を許した時点でこうなる運命だったのだ。仕方ない。

 

「負けたら、承知しねぇ――全員、頑張れよ」

 

 七人の選手は更衣室を後にした。

 

 

[185]

 

 選手紹介。

 

 

 ――グリフィンドール・チーム。

 

《キーパー》

 

 オリバー・ウッド

 

《チェイサー》

 

 アンジェリーナ・ジョンソン

 アリシア・スピネット

 ケイティ・ベル

 

《ビーター》

 

 フレッド・ウィーズリー

 ジョージ・ウィーズリー

 

《シーカー》

 

 ホノカ・マツバラ

 

 

 ――スリザリン・チーム。

 

《キーパー》

 

 マイルズ・ブレッチリー

 

《チェイサー》

 

 マーカス・フリント

 エイドリアン・ピュシー

 オーガスト・モンタギュー

 

《ビーター》

 

 グローリア・デリック

 スマッシュ・ボール

 

《シーカー》

 

 テレンス・ヒッグス

 

 

 選手が入場すると周囲から歓声が轟いた。グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリンの全生徒、そして全教員が、今このピッチに集結している。穂乃花は未だ嘗て無い程の緊張を感じた。

 ピッチの真ん中に立つのはマダム・フーチ。クィディッチ・カップの審判である。箒を手に両チームを待つ彼女の鷹めいた目は興奮を隠せないかのように、白銀に煌めいている。

 

「さあ、皆さん、正々堂々戦いましょう!」

 

 フーチが宣言した。向かい合う、獅子と蛇の代表達。

 

「では、箒に乗って! さあ、早く!!」

 

 穂乃花はニンバス2000に跨った。手入れの行き届いた、完璧な箒。

 

 フーチの銀の笛が、高らかに鳴り響いた。そして、十五本の箒が空へと一斉に舞い上がる。高く、高く――!

 

「――試合開始!!」

 

 笛の音が、再び響いた。

 

 

[186]

 

《Broadcaster Lee》

 

 さあ、始まりましたクィディッチ・カップ注目の一戦、グリフィンドール対スリザリン!! 獅子vs蛇の決戦であります!! 今日この日を心待ちにしていた方も多いのではないでしょうか!? 世紀の一戦、実況は私、リー・ジョーダンがお送り致します!! 隣で怖い人が睨んでおりますが、臆することなく、偶に不公平に実況していきたいと思います!!

 

「ジョーダン、怖い人とはどういうことでしょうかね?」

 

 マクゴナガル先生すいません!!

 

 さて、クアッフルは忽ちグリフィンドールのアンジェリーナ・ジョンソンが取りました! なんと素晴らしいチェイサーなのでしょうか!? 技量、魅力、全てが素晴らしい!! great !!! 控えめに言って結あ、やめて、睨まないでください先生本当すいません!!

 

 ジョンソン選手、突っ走っております! アリシア・スピネットに綺麗なパス! あ、綺麗というのはボール捌きのことで、別に外見の事では無く――すいません! 魅力的です! だからこっち睨むのやめて下さいアリシア選手!! いやあ、オリバー・ウッドは良い選手を見つけたものですね! 彼女、去年はまだ補欠でした……良い選手と言えば、今回のグリフィンドール・チームの隠し玉、ホノカ・マツバラ選手にも期待したいところです! なんと最年少のシーカー!! っしゃグリフィンドール勝ったなこれ!! ざまみろ蛇め!!

 

「公平に実況しなさい!! というかそもそも実況しなさい!!」

 

 はい、すいません!!

 

 おっと!?ジョンソンに返ってきたクアッフルが奪われました! あのトロールめいた見た目は、スリザリン・チームのキャプテンであるところのマーカス・フリントだ!! 鷲のように舞い上がっていきます――ゴールをきめてしまうのかッ――いや、グリフィンドールのキーパー、ウッドが素晴らしい動きで防ぎましたぁぁぁ!!! 流石はウッド!! グリフィンドール一の熱血漢と呼ばれるだけあります!! キャプテンの威厳を見せ付けるッ!!

 

 クアッフルは再びグリフィンドールへ! 受け取ったのはケイティ・ベル!! そのまま急降下し、フリントを撒いたああ!! そのままゴールへ向かって一直線――あいたっ!!――これは痛い!! ブラッジャーが後頭部にぶつかりました!! おい! 何やってんだフレッジョ! 当たってんぞ!!

 

「実況の癖に野次るのを止めなさい!!」

 

 はい!! すいません!!

 

 クアッフルはスリザリンに取られました――今度はエイドリアン・ピュシーがゴールへ向かってBダッシュ!! おっと、ここでグリフィンドールのビーターが阻む!! フレッドなのかジョージなのか見分けがこれっぽっちも付かないが、取り敢えずそのどっちかが狙い撃ちをかけました!!

 

「あれはフレッドですね」

 

 分かるんですか!? 流石マクゴナガル教授!! 伊達に眼鏡掛けてませんね!! あ、ごめんなさい、睨まないで!!

 

 らしいです――フレッドのファインプレーで、クアッフルは再びジョンソン選手の手に!! 前方には誰も居ない!! チャンスだァーッ!! おっとここでブラッジャーが横槍を入れる!! 空気読めよ!! しかしながら避ける!! 流石だ!! ゴールは目の前!! 行け!! 頑張れ!! いまだ!! アンジェリーナ!!!

 

 キーパーのブレッチリーが飛びつく――が、ミスりました!! クアッフルがゴールを潜り抜けたァ――グリフィンドール、先取点!!!

 

 

《side Honoka》

 

「やったあ!!」

 

 グリフィンドールの大歓声が寒空いっぱいに広がった。勿論私もその歓声に加わる。

 

 みんな凄いなあ……とてもついて行けそうにない。何というか、凄いね。

 いやいや、感心してる場合じゃないよ! スニッチを探さないと!!

 

「スニッチ……スニ――ひいっ!?」

 

 あ、危なっ……!! ブラッジャーがすぐ真横を通り過ぎた。まるで大砲の玉のようで――ひぃっ!? また横通り過ぎた!?

 

「あ、悪いホノカ!」

「危なすぎますよ!?」

 

 ブラッジャーをジョージ――いやフレッド――どっちでもいいや――が打ち返し、それがまた私に向かって来た。怖いよ!!

 

 早く、早くスニッチ見つけないと――スニッチを見つけたらこっちのもの! 黄金の玉なんて、この玉キャラたる私が逃す訳がない!! まずは、まずは冷静になろう!

 観客席の方を見る――ここはイギリス、沢山の金髪が輝き、それはまるで黄金色の絨毯のよう――中世のお城みたいな荘厳ささえ感じるよ〜!

 

 その中で一際麗しい輝きを放つのは、最早言うまでもない、カレンちゃん!! そしてアリスちゃん!! 神の如き輝きの隣できらきらしているのは、翼ちゃん、ディーン君、薫子ちゃんの合作・キンパツフラッグ!! グリフィンドールのイメージカラーである金色に光る"金髪最高"の文字!! ああ、まるで点滅しているように見える――って、点滅!?

 

 

※解説※

 

 黄金色に輝くキンパツフラッグ。先程は三人の合作と言ったが、しかしその裏でもう一人、影の立役者が存在していた。その名はアリス・カータレット。

 

 それは多少複雑な呪文であった――だが、それを可能にしたのは偏に彼女の真面目さにある。影の立役者、それのさらなる影にいたのは同じくグリフィンドール、直樹美紀。読書好き故図書館に入り浸る彼女に依頼し、『ブック・オブ・スペルズ』という本の入手にアリスは成功した。これが三週間ほど前の話である。

 

 アリスは幾度となく隠れて練習を繰り返し――そして満を持して今日、その成果を発揮したのであった。

 

※解説終わり※

 

 

 点滅……そんなギミックがあったなんて!!

 

 黄金色の旗に目を奪われた――が、そこでリーさんの声が聞こえた。

 

「スリザリン、ゴー ――おや? ちょっと待ってください、あれは――スニッチか?」

「っ!!?」

 

 グリフィンドール側のゴールを見る――そして、遂に"それ"が見えた。

 

 スリザリンのチェイサーの耳を掠めた金色の閃光――間違いない、見間違うはずが無い、あれだ、あれこそ、金のスニッチ――!!

 

 絶対に逃さない!!!

 

 そう思うと、箒は既に動いていた。飛び回る金の光めがけ、急降下していく。身を切るような風を感じる――だが、構うものか!!

 

「っ!!」

 

 しかし、やはりそう簡単にはいかない――スリザリンのシーカーも来た!

 

 どんどん近付いてくる――でも、私の方が――圧倒的に速い!!

 

 ふふん、スニッチに対する執着が違うんだ!! 私に追いつける筈が――がっっ!!?

 

 

《Broadcaster Lee》

 

 あの野郎、フリントの野郎、やりやがった!! 反則だぜ!! 故意にマツバラの邪魔しやがった!! ルール違反だ!! ブラッチングだあの野郎!!

 

 

※解説※

 

 ――ブラッチング。

 

 ブラッチングとはクィディッチにおける最も一般的な十大反則の一つである。

 該当ポジションは全選手で、わざと相手に衝突するつもりで飛び、故意に事故を起こそうとする悪辣極まりない行為。

 

※解説終わり※

 

 畜生あんにゃろめ――おっと、フリントが厳重注意だ! 退場制度があれば退場していただろうなざまみろ!!

 

「ジョーダン、一応中立を保ちなさい」

 

 いや、一応って何すか!? 地味にマクゴナガル先生、怒ってますね? 怒ってますね!? じゃあ二人で野次りましょうよ!!

 

「減点しますよ」

 

 ある意味自分の首を絞める行為!?

 

 さて、それは兎も角――グリフィンドールにフリーシュートだ!! さあ、入るか入るか――入ったァーッ!! 流石だぜウッド!! ありがとう! ありがとうフリント!! さあ会場の皆様、スタンディングオベーション!! みんなでフリントを讃えましょう!! ――ってんなことする訳ないだろうがこんにゃろめぇぇ!!!

 

 

《side Honoka》

 

 あ、危ない危ない危な過ぎるよ!? ブラッジャーなんかよりよっぽど怖いよ!!

 だって想像してみて! 自分の五倍はありそうな体格の男の人が全力で突っ込んで来たんだよ!? 怖いよ!! クィディッチ怖いよ!! なにこれ本当……なにこれ!?

 

 ま、まあ愚痴っていても始まらない! スニッチ――スニッチを探さないと――駄目だ、冷静さを失っている!

 

 金髪! 金髪見ないと! 目の保養を!!

 

 カレンちゃん、アリスちゃん、フラッグを注視する――見る、見る、見る。なんだかスリザリンにリードされているみたいだけれど、それを気にしている余裕はない!!

 焦る訳にはいかない――それにまだ大した点差じゃない。スニッチを取れば、まだ勝利確定の状況――!!

 

 金髪による精神統一――すると、それが効いたのだろうか? 突如視界が、金色の一本線によって分断された。

 

 ――金のスニッチ――!!!

 

 今度こそ、逃すものか!!!

 

 

《Broadcaster Lee》

 

 スリザリン、またまた得点!! やべーよ!! ウッド何やってんだよ!! 何のためのキャプテンだ!! 本当にその名の如く木偶の坊になっちまったか!? 木みたいに突っ立ってるだけがキーパーじゃな――

 

「るっせェェェェ!!! 黙って実況しろォォォォォ!!!!」

 

 ひいぃっ!!? な、何という大声!! マイク無しでこの響き!? はい、すいません、キャプテンの威厳バッチリです、ハイ!!!

 

 ――おっと? あれは――マツバラ選手! マツバラ選手が動いている!! ただ逃げているだけではない――あれは――スニッチを見つけたのか!!? これは目が離せない!! すいません、マクゴナガル先生、僕マツバラの実況するんで、先生は試合全体の実況を――

 

「実況者たるもの、常に全体に気を配りなさい、ジョーダン! さもなくば、実況担当から下ろすのみですよ!!」

 

 じゃあなんであなたはそこにいるんですか!?

 

「実況が暴走しないようにするセーブ役です」

 

 実況にさえ見張りがつくこのご時世!! ああ嫌だ!! あ、はい、すいません、すいませんったら! マイク取らないでください!! 僕そこまで声デカくないんです!! ウッドじゃないんです!! すいませんでした!!

 

 クアッフルの方は、ジョンソン選手が確保している――おっと、あの陣形は!? ジョンソン選手、ベル選手、スピネット選手が三位一体となってゴール目掛けて突撃!! あれは!! あれはホークスヘッド攻撃フォーメーション!!!

 

 

※解説※

 

 ――ホークスヘッド攻撃フォーメーション。

 

 これは三人のチェイサーが矢じりの陣形を組み、ゴール目掛けて一斉突撃する作戦。その矢じりめいた形は敵に恐怖を与え、他の選手を蹴散らすのに極めて効果的な形状である。

 また、必然的に互いに近くで飛ぶため、キーパーを撹乱させるトリッキーなパス回しが可能となる。まさに攻防一体、進撃の嚆矢である!!

 

※解説終わり※

 

 

 いいぞいいぞ!! ――危ない!! ブラッジャーが迫ってやがる――ふう、ウィーズリーのどっちかが跳ね返したぜ!! いいぞー!! マクゴナガル先生、あれはどっちでしょう!?

 

「ジョージですね」

 

 だそうです!!

 

 クアッフルがベルへ渡る――いや、スピネット――またベル――ジョンソン――なんという目まぐるしいパス回し!! これぞこのフォーメーション最大の強みですね!! マクゴナガル先生!!

 

「ええ、ホークスヘッド攻撃フォーメーションを見事に使いこなしています」

 

 ゴールへと突撃する弓矢――そしてゴールを守るのはキーパーである、マイルズ・ブレッチリー!! 勝つのはどちらだ!? 次々に場所の変わるクアッフルを、その目でちゃんと捉えられるかブレッチリー!!?

 

 スコア・エリアに飛び込んだのは、先陣を切るジョンソン――と見せかけて、ここで逆パス!! ボールがベルに渡ったァーッ!! 渡ると同時にジョンソンが引き、ベルがスコア・エリアに突入!! 一瞬の出来事です、一瞬!! 二人同時に入ってはいませんので、スツージングではありません!!

 

「見事なコンビネーションですね」

 

 ベルがクアッフルを投げたァーッ!! 入るか!? 入るか!? ブレッチリーが手を伸ばす――やべえ!! クアッフルが、止められ――ん!? あれは、スニッチだ――っ!! クアッフル、ゴールイィィィン!!! グリフィンドールに得点です!! スニッチの存在が戦いを左右したァーッ!! ブレッチリーは気を取られてしまったのでしょうか!? それとも、カスって驚いたのでしょうか!? デカい図体の割には庭小人レベルのメンタルですね!! あっ、はい、すいません!! やめて!! もうしない!! もう言わないからマイク取り上げないで下さい!!!

 

 あ、あれ? しかし、確かに先程マツバラがスニッチを追い掛けていた筈――ま、まさか!! マツバラ選手、まさか!! こんな事が!! こんな事があり得るというのか!? もしそうだとしたら、ヤベえぜ!!! 超クールだぜホノカ・マツバラ!! くっそ、後でインタビューだ!!!

 

 

《side Honoka》

 

 私の策は、どうやら成功したらしい。

 

 あのままいくとクアッフルはキーパーに取られていた――私はその時ちょうど近くに居たから、賭けたのだ。キーパーの小心さと、私の眼に――!!

 敢えて金のスニッチを捕まえず、追い掛けるだけに留めた――そうすることで、スニッチはキーパーの近くへと誘導され、あのキーパーの邪魔をすることになる!! そして、その作戦は見事成功したようだよ!!

 

 そして、これまた思わぬ事に――クアッフルと掌の狭間に飛び込んでしまった所為か、驚いてスニッチはこちらへと戻って来た――スニッチは逃げる事に特化したボール。でも、そこに脳は無い――混乱したボールを捉える事など、容易い!!!

 

 でも、ギリギリの所で私に気付いたのか? スニッチは急降下した――逃がしはしない。二度もこの私が――逃すと思うな!!

 

 スニッチを追い、急降下――地面が近付く――高度が下がる――怖がるな、怖がったら、それこそ地面に激突する!! 怪我なく終わらせる――必ず!! 怖がるな私!!!

 

「っ!!!」

 

 地面スレスレ――そこでスニッチが急上昇した!!

 

 ――それで私を撒けると――思わないでよね――!!!

 

 上から腕を思いっきり振り下ろす――空気を削り取るかのように、振り下ろす!!!

 

「ああああああ!!!!」

 

 後少しで地面――ギリギリで箒の大勢を立て直す――立て直って!!

 

「きんっ!!」

 

 箒の柄を思いっきり引き揚げる!!

 

「ぱつっ!!!」

 

 そして――地面スレスレの所で――静止した。足が着くか着かないかの瀬戸際。

 

 掌の中にあるのは、冷たい感触――小さな物体を握っているような、確かな感覚。

 

 掌の中にあったのは――黄金色に輝く、胡桃大の大きさの玉。

 

 ――金の――スニッチ――っ!!!!

 

『『『『『『『『うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』』』』』』』』

 

 会場全体に歓声が響き渡る――それはクアッフルがゴールした時の比では無い。会場が爆発したかと錯覚するくらいの歓声だった。

 

「やりました!! 金のスニッチです!! なんと!! 最年少の!! ホノカ・マツバラ選手!! 見事!! 金のスニッチを取りましたぁぁぁ!! グリフィンドールに150点!!! 試合終了ォォォォォ!!!! 170対60で、グリフィンドールの勝利だァァァーッ!!!! やったァーーーッ!!!!!」

 

 フーチ先生のホイッスルが鳴り響く。

 

 グリフィンドールの勝利の音色。

 

 思わず私は、スニッチを掴んだ手を、天高く掲げた。

 

 ――やったよ、忍ちゃん、アリスちゃん、若葉ちゃん――カレンちゃん!!!

 

 ――私――やり遂げたよ!!!

 

 

[187]

 

 勝利の鼓動は鳴り止まない。穂乃花の顔に不安は一切残っていない。ただそこにあるのは、やるべき事を成し遂げた喜びと誇りに満ちた、美しい少女の笑顔であった。

 




 やったよ、私、やり遂げたよ!!! ← 黙れ
 いやあ、久し振りの連日投稿は疲れますね……やっぱりある程度習慣化しないとダメですね、本当。

 と言うわけで、クィディッチ回です。クィディッチ回は基本こんな感じでやる予定です。

 次回も、出来るだけ早めに更新したいです。

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