ゴールデン*ラビットガールズ!   作:ルヴァンシュ

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 次回への繋ぎの回です。割と短めなので気軽にどうぞ。


※告知事項※

・8/21 一部台詞変更。

・何かあれば書きます。


衝撃のハロウィーン その1

【第35話】

魅惑のハロウィンナイト

 

 

[166]

 

「今日はハロウィンデース!」

 

 談話室で騒ぐカレン。

 

 ――そう、今日はハロウィン。穂乃花の背中の傷が癒えてきた頃の話。

 あの一件以来、穂乃花は軽く犬恐怖症になっていた。事情を知るのは、金髪同盟としの部の4人(穂乃花含めず)のみ。

 

「カ、カレンちゃん……お、お菓子あげないよ! はぁ……はぁ……い、悪戯……トリックしていいよ!」

「近寄り難い気迫デス……」

「ばっちこーい!!」

 

 しかし、今はこの通り。背中の傷が癒えるとともに、穂乃花のトラウマというもう一つの傷も薄れ、元のテンションに戻っていた。

 

「ハロウィンと言えば仮装です! 衣装作りなら私にお任せ下さい! 衣装を作って欲しい方は、是非金髪同盟までご一報を! まだ一、二着程度なら作れますよ!」

 

 忍もまたハイテンション。数日前から衣装作りのビラをばら撒いたり勧誘活動をしてみたりしていたのだ。

 

 忍の裁縫能力は途方も無く高い。文化祭の時は衣装関係及び脚本作りのリーダーを任されたりしている。意外にもハイスペックなのだ。

 裁縫能力の方であるが、先程も述べた通り凄まじい。人形の傷を一瞬(文字通り)で縫い合わせたり、犬のぬいぐるみを一晩で作ったり、西洋風コスプレ(忍の普段着)を一から自分で作ったりと枚挙に暇がない。また、織物や編物も得意分野。凄い。これを才能と言わずして何と言おうか。

 それ故将来の夢はデザイナー……という訳ではなく、通訳者。だが、英語の成績は悪かったのであった。

 

 閑話休題。

 

「西洋風東洋風なんでもござれです! どんな依頼でも受けますよ!」

「どんな依頼でも!? でも、流石に着ぐるみは無理だよね……」

「心配ご無用! 一日あれば問題なんて何もありません!」

「流石シノ!」

「でも、お高いのでしょう?」

「いえ、お金なんて取りません! これは飽くまで趣味の延長線ですから!」

「まあ! じゃあ衣装を買うよりお得ですわ!」

 

 サクラ役(彼女たちは無意識だ)、アリスと若葉。

 

 しかし、流石に当日となると依頼者は少ない。そもそも、忍の腕をまだ知らない人が多いのだ。忍がホグワーツに来てから明日で2ヶ月といったところ。同級生内ではある程度名を馳せているが(変人的な意味で)、しかし全体で見れば、まだまだ知名度は低いのだ。

 

「来ないね……」

「来ませんわね……」

「ここで諦めてはいけません! もっと! もっと宣伝するのです! これを果たせばきんぱ……グリフィンドールの評価はうなぎ上り! そうだ! いっそのこと先生からも依頼を募りましょうかね!?」

「そう! それがいいよ!」

「では、早速大広間に向かいましょう!」

「「おー!」」

 

 忍、アリス、若葉は談話室から出て行った。

 

 

[167]

 

 その日の城内はハロウィン仕様だった。あちこちにカボチャが置かれ、城内を蝙蝠が闊歩している。壁には髑髏で装飾がなされ、たまに天井から雨の如く飴が降ってくる(フリットウィックの魔法)。

 

 中でも装飾が派手なのは大広間だった。先程述べた全ての装飾に加え、宙に浮いている大量の蝋燭がカボチャ型のランタンに変更され、床、椅子、テーブルもハロウィン仕様のものとなっている。

 

 ハロウィン仕様な授業も幾つかあった。フリットウィックは『カボチャ頭の呪い』を披露し、スプラウトは『骸骨草(骨の様な姿をした『笑草種』の亜種)』を紹介し、クィレルは『ジャック・オ・ランタン』の伝説を紹介したりした(マクゴナガル、スネイプ、ビンスは通常運転)。

 

 休み時間ではトリックオアトリートの嵐。そんなにお菓子があるのかという話だが、殆ど全員がこうなることを予想していた為お菓子を持参したりしていた。故に、トリックが殆ど起こらない。

 

「トリックオアストリートです! お菓子をくれれば金髪をその分頂きます!! お菓子をくれなければ金髪を一杯頂きますよ!!」

 

 が、このように英語を間違っている上に理不尽なことを言う奴(忍)もいるので油断できない。

 

「トリックオアトリート! お菓子を貰う! お菓子を寄越せ! 特に飴を寄越せ! 寄越さなきゃ呪いだ! Triiiiick Oooor Currrrrrrrrssse !!!!!」

 

 また、悪戯を悪戯と呼べるレベル外の呪いで代用しようとする奴(マンディ)もいる。しかも有言実行する(出来る)ので恐ろしい。

 

 ここまででも全員が全員暴走気味だ――だが、これらは飽くまで昼の騒ぎよう。ハロウィンの本番は、夜だ。

 これから始まるのは悪夢のハロウィンナイト。悪魔めいた仮装が闊歩する闇の時間である。

 

 

[168]

 

 夜の大広間、ディナータイム。ハロウィンナイトの舞台はこの場所。宙に浮くカボチャは穏やかな橙色の光を放つ。蝙蝠達は彼方此方を飛び回り闇の気配を募らせるが、雰囲気は兎も角、正直食事中には邪魔以外の何者でもないので、たまに撃ち落とされて呪いを掛けられたりしている。

 

「ま、こいつのお陰で呪いの試し撃ちが出来るんだから感謝しないとな」

「大量に居るから何匹実験台にしても問題ないしな」

 

 ウィーズリー兄弟談。

 

「コウモリさんを撃ち落とすなんてとんでもないわ! こんな可愛い子を攻撃するなんて、幾ら何でも酷すぎる! 何色の血が流れているのよ!」

 

 色川琉姫談。

 

「蝙蝠には親近感が湧くから撃ち落とされるところはあんまり見たくないなあ」

 

 メルジーナ・グリース談。

 

「暗闇の象徴たる蝙蝠はまさにニンジャ……はっ、もしやニンジャにとっての梟は蝙蝠だったのでは!?」

 

 トレイシー・デイビス談。

 

 暴れるのは蝙蝠たちだけではない。生徒たちも暴走する。

 

 ホグワーツにおいて昼に仮装するのはほぼ不可能に近い。授業があるからである。仮装して授業を受ければ罰則まっしぐらなのは言うまでもないだろう(カレンが証明済み)。休憩時間があるとはいえ、仮装して歩き回る時間の余裕はない。

 が、夜の宴は別である。このフリーダムな時間であれば、一切の制限が掛からない。故に生徒にとってのハロウィーン本番はこの時間帯なのである。ある程度の暴走が許される、この時間。

 

「見て見て、この格好可愛いでしょ?」「トリックオアトリート!」「お菓子を寄越せ!」「悪魔のお通りだ」「僕の右手が疼く……早くお菓子を……!」「トリックオアトリート!」「トリックオアトリート!」「トリックオアカース!」「トリックオアデッド!」「トリックオアトリート!」「トリックオアトリート!」「トリックオアトリート!」「トリックオアトリート!」

 

 彼方此方からトリックオアトリートの声が聞こえる。仮装している者も少なくない。一年生のうち何人か(忍、カレン、アリス、若葉、穂乃花、翼、ラベンダー、由紀、陽子、綾、小夢、真魚)はシノメイドの服を着ている。

 

「どうですか、アリス? 似合ってますか?」

「可愛すぎてビッグバンが起こりそう!!」

 

 当の忍が着るのはいつもの服……のように見える仮装。ゴスロリめいた服を着て、美しい銀色のマントを羽織っている。人によってはいつも通りの忍にしか見えない。彼女の私服が私服ゆえ……。

 

「シノ、マントなんて珍しいね」

「ふっふっふ……アリス、これはただのマントではありません」

「え?」

「このマントは、私達金髪同盟が、実質ホグワーツを征した証なのです!」

「?」

 

 興奮したように言う忍と対照的に、首を傾げるアリス。因みに彼女の服装は狼をイメージした服。犬耳と狼の手を象った大きな手袋を着け、ファーコートを身に纏っている。

 

「どういうことなの忍ちゃん?」

 

 話を聞きつけた穂乃花もやって来る。彼女の服装もまたシノメイド。カボチャ色のシンデレラめいた服で、スカートにはカボチャのランタンの如く表情を模した穴がいくつか開けられている。

 

「ふっふっふ……」

 

 忍はマントを翻しながら言う。

 

「なんと、これはダンブルドア校長から直々に頂いた素材で作ったマントなのです!!」

 

 忍がマントで身を包みながら言う。

 

「「!!?!?」」

 

「先生方から依頼は来ませんでしたが……しかし校長先生からの支援! これはつまり、金髪同盟はホグワーツから認められているということに等しい……!」

「シ、シノ」

「これで金髪同盟、さらに一歩前進です! どうせなら金色のマントが良かったですが……」

「し、忍ちゃん」

「それにしても良い手触りです……頂いたのは『デミガイズ』という生物の毛なのですが、すべすべした言い手触り……ああ、金色だったら本当に言うこと無かったのに!」

 

「「…………」」

 

「……さっきからどうしたんですか二人とも?」

 

 忍の首が傾く。二人は驚愕したように口をぽかんと開けている。

 

「シ、シノ……下見て」

「はい?」

 

 忍の首が下を向いた。

 

「!!?!?」

 

 忍の首が驚いたように目を剥く――それを見ていたのが運良くアリスと穂乃花だけだったのは本当に幸運だっただろう。アリスと穂乃花で忍の姿は丁度周りからは隠れていた。いや、隠れているというのなら、真に隠しているのはこの二人では無いのだが――。

 

「こ、これは一体!? ア、アリス! どういうことですか!? まさか、銀髪パワー!?」

「落ち着いてシノ! 銀髪にパワーなんてないよ!! 金髪にしかパワーないよ!!」

「知ってます!!」

「凄い……こんなマントが……」

「デミガイズだっけ? どんな生き物なんだろ……」

「とんでもない生き物に違いないよ〜!」

「と、取り敢えずこのマントは羽織るだけにしましょう、はい」

「そうだね、それがいいよ……」

 

 忍はマントから手を離した。マントが元に戻り、忍の身体が再び露出した。

 

「凄いマントだね……なんでこんなのくれたんだろ」

「分かりません……理解が追い付きません……」

「魔法界って凄いね」

「凄いなんてレベルじゃないよねこれ」

「魔法界というか、デミガイズ凄いですね」

「それを織れるシノも凄いよね!!」

「アリスにそう言って頂けると嬉しいです!!」

「カレンちゃん見たらびっくりするよ〜! ……って、私達がトリックしてどうするの!? カレンちゃんにトリックして欲しいのに〜!」

「私はシノにトリックされたからもう満足だよ! ハロウィンじゃなくてもトリックされたいしトリートするからね!」

 

「そういえば、カレンは? 穂乃花ちゃんと一緒だったのでは?」

「カレンちゃんはお手洗いに」

「そうですか」

 

 ハロウィンの喧騒は鳴り止まない。彼方此方でクラッカーや花火が鳴り響き、カボチャが破裂する。ゴースト達はいつも以上に活発に動き回り、ピーブスがカボチャを叩き落とす。……一応注釈しておくが、これでもここはイギリスである。ハロウィンをそこまで祝わないと言われるあのイギリスである。

 

 ハロウィーン真の由来には魔法使いが絡んでいたらしいが、如何せん昔のことなので真相は解らない。が、魔法界のハロウィーンは国境関係なく盛大な祝い事の一つである。こうなると魔法界とハロウィーンは何か大きな関係があると見るのも不自然では無く、一説ではヨーロッパで強大な悪霊が出現した際に当時の魔法使いが撃退したことに由来するとか由来しないとか。

 

 閑話休題。

 

「た、たたたたたた、たた、大変ででで、でです!!!」

 

 突如大広間のドアが開き、いつも以上に慌てふためいた様子のクィレルが入ってきた。ローブが彼方此方破れており、顔には擦り傷があった。喧騒が鳴り止む。

 

「ト、トトト、トト、ト――『トロール』が、し、しし、侵入し、しましたぁぁ!!! ち、ちち、地下か、か、室、にに、にぃぃ――!!」

 

 そう叫ぶと、クィレルは糸が切れたように床に倒れ伏した。気絶したのだ。

 

 魅惑のハロウィンナイトが、悪夢のハロウィンナイトに変貌を遂げた瞬間である。

 

 




 遅れてすみませんでした!!!!(コンクリートに頭を擦り付ける真似をしつつ)
 1.サボってた 2.夏休み 3.盆休み 4.その他 遅れた理由はこの中から適当にお選び下さい。

 それはそれとして、ハロウィーン回です。別に引っ張るほどの内容ではないのですがね。特にマントとか。多分もうお分かりの方多いでしょうし……。

※おまけ※

【挿絵表示】

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