※注意事項※
・短いです。そしていつも以上に、雑です。
・更新情報はこの欄に書きます。
【第16話】
ショッピング・エンド……side 2
[077] マダム・マルキンの洋装店 side 2
マダム・マルキンの洋装店。ここは、この歴史あるダイアゴン横丁においてそれなりの――
「やっべーよ! あと時間30分も無い!!」
「遊び過ぎたデース!」
「おい! 金よこせ! 仕立ててもらってる間、薬問屋行ってきてやる!」
「嫌っすよ! なんかあんたらお金貰ったらそのまま逃げそうなイメージしかない!」
「しねーよ! そんなことしたらパパとかママに何言われるか分からん!」
「怒られなければ盗るってことじゃないのそれ!?」
「「ちっ!!」」
「もう悪戯でもなんでもないじゃない」
「悪戯……盗む……ああ、成る程。きっと二人にはラパンアジールが取り憑いてるんだ、盗人はみんなそれに取り憑かれてるって、パパ言ってたもン」
「ル、ルーナちゃん! 今だけでいいから、話反らすのやめて!」
……冒頭から、嘗てない程の焦り具合。チーム2も流石に危機感を感じてきたのだ。
そもそも何故ここまで時間が無いのか? 理由は明白、寄り道しすぎたことだ。ギャンボル・アンド・ジェイプスいたずら専門店へ行ったこと、ワイズエーカー魔法用品店で色々買ったこと、そして予想外の日暮香奈登場によって、再び魔法用品店に戻り、そこで色々やったこと――。要は全てだ。計画性の無さが、ここにきて仇となった。
「ああもう、分かった! じゃあこうだ! ルーナとジニーを僕たちに付かせろ! こいつらならお前らも信用出来るだろう!?」
「おい、マジで早くしろって! 時間ねえんだよ!」
双子が急かす。実際時間が無い。双子が時間で焦るというのは、相当の事なのだ。
そもそも彼等は圧倒的な要領の良さを持っており、限りなく無計画でも、なんだかんだで成功するという以外な奴等なのだ。しかしそれは2人だけの話。今回はそれにプラスして8人だ。要領の良さも、このカオス勢の中ではロクに発揮する事も出来ない。
「そうデスね……それなら」
「ああ、私もそれでいいよ」
「オッケーっす」
「お姉ちゃんに任せてくれればいいのに……」
「あんたはお姉ちゃんじゃない、いいね?」
「うえぇぇぇ!? 香奈ちゃん酷いよー!」
「何でもいいから早くしろ!」
「やべえんだよ分かれ!」
「私行きたくないわ」
「私もー」
「ジニーちゃん、ルーナちゃん、お願い!」
こんな調子である。この緊急事態でも各々マイペース。要領など知った事ではない。本来時間にルーズな筈のイギリス人が一番時間を気にしているとは、なんという皮肉であろうか。
「ドーゾ、デス!」
「頼んだぞ、フレッド、ジョージ!」
「絶対盗るなよ! 絶対っすよ!」
「よろしくお願いー!」
「お願いします!」
「お願いします〜!」
ようやくお金を渡した6人。
「よし、行くぞ!」
「ああ、行くぜ!」
双子は一気に走り出した。結局ルーナとジニーはこの場に残ったのだった。
「じゃあ、ぐずぐずしている暇は無いわ! 入るわよ!」
香奈が言う。流石はこの物語随一の常識人である、もうリーダーシップを発揮しだした。そして7人もまた、大人しくそれに従っているのだ。奇跡のような状況である。
8人は、洋装店に入った。
《残り26分》
[078] 薬問屋 side 2
薬問屋へ向かったのはジョージ。さらに二手に分かれて購入する作戦だ。
リスト内容を思い出し、ジョージは直ぐさま魔法薬基本セットを購入。9 G 9 S支払った。速い。速すぎる。圧倒的なスピードだ。
今までを見た方ならお解りになられるだろう。基本的にどの店においても必ず時間がかかっていたのだ。それが魔法用具店だろうがいたずら専門店だろうが、だ。それなのにこのこれ以上無い程のスピードは、偏に『見慣れている』ということに尽きる。彼女たちは慣れていない。魔法の誘惑に打ち勝つには、彼女たちは余りにもこの世界を知らなさ過ぎたのだ。
と言うわけで、薬問屋終了。
《残り19分》
[079] スクリブルス筆記道具店 side 2
フレッドが向かったのはスクリブルス筆記道具店。こちらは最早言うまでもないだろうし、別に言うこともない。普通(魔法界基準)の筆記道具店である。
そしてそれ故に、フレッドに対しては一切の感想をも与えない。普通で真面目な店など、フレッドには関係ないし、興味もない。
凄まじいスピードで羽ペン×2、インク瓶×2、羊皮紙を購入、さらにクリップボード、魔法のテープ『スペロテープ』も、余分な金で購入した。素早い行動をしつつも、細かいところにまで配慮の行き届いたフレッドの行為は、彼等の要領の良さの一端でしかないのだ。
早々と店を出る。ここまでの行動、なんと驚愕の6分。何故彼等に全てを任せなかったのか、後に陽子たちは後悔したという。
と言うわけで、筆記道具店終了。
《残り19分》
[080] ポタージュの鍋屋 side 2
2人が再び合流したのは、ポタージュの鍋屋。入る。
ポタージュの鍋屋は、庶民層に人気の鍋屋だ。即ち、基本的に来客が多いのだ。故に今この瞬間も例外ではなく、来客で溢れていた。リゼ達がこの場に居た時の倍くらいであろう。
棚から鍋が落ち、落下した鍋を目敏く拾って、カウンターへ向かう人々。余りにも多い。果たして彼等はどうやってここを攻略するつもりなのだろうか?
「「…………」」
なんと、双子はカウンターの列を無視、一気に最前列にまで躍り出た。緊急事態とは言え、列を無視するとは、なんという者共なのであろうか!
だが、激昂するのは待って頂きたい。彼等が抜かしたのは、あくまで『その場で鍋を買う客』たちなのだ。つまり、どういうことか?
カウンター最前列――客が並んでいるレジの右隣にあるレジへ双子は行った。そして、こう言った。
「「錫製、標準2型の大鍋を6個、注文します」」
――そう、注文。
このポタージュの鍋屋は、鍋の注文も受け付けている。諸事情によりその場で買えないお客様のために、住所を伝えれば家まで購入した鍋を持って来てくれるというサービスも行っているのだ。勿論、料金は多少増すが、今はそんなことを言っていられない。緊急事態だ。
注文を終え、店の入り口にあったカートを拾い、店を出た。驚愕である。ただ普通に並ぶだけでは最短でも10分近くの足止めを食らうこの鍋屋で、なんと彼等はその半分、5分で全てを片付けたのだ。筆記道具店、薬問屋より速いとはいったいどういうことだ!?
2人はカートを押して歩く。早歩きだ。次の目的地は、いよいよ最終地点『フローリシュ・アンド・ブロッツ書店』。
《残り13分》
[081] フローリシュ & ブロッツ書店 side 2
制限時間が刻一刻と迫る。カートを押したまま、双子は書店に突入した。そのままカウンターへ向かい――途中で、本の山を掻っさらう。
F&B書店は、ホグワーツ新学期が近付くと特設コーナーを開き、その年、各学年に必要な本を纏めてそこに配置しているのだ。しかもその場所は入り口近くであり、忙しなく入学準備、新学期準備をするホグワーツ生にとっては、時間を短縮出来るありがたいシステムなのだ。
次から次へと本をカートに詰め込む。フレッドは3人分、ジョージも3人分だ。レジはそこまで混んでいなかった。
会計を終えた。先の3箇所と比べて、随分時間を食ってしまった。しかし仕方のないことであった。買うものも3箇所と比べても大分多いし、何分重い。カウンターの上へ乗せるのにも一苦労である。本の重さを舐めてはいけない。
双子は店を出る、そして、再びマダム・マルキンの洋装店へ向かったのだった。
《残り2分》
[082] 再びマダム・マルキンの洋装店
所変わってマダム・マルキンの洋装店。既に陽子、カレン、真魚、ココア、香奈の仕立てが終わり、現在穂乃花が採寸中。魔法作業ではなく手作業なので、必然的に、少々遅くなるのだ。
「すげー! 見てよこの服! 着るとひとりでにあったかくなんのな! ポカポカしてるー!」
「色んな服あるデスねー。あ、陽子見てクダサイ! 漢字! 漢字が描かれてマス! This is cool !!」
「うえ……なんかその漢字、動いてない? 見てたら酔ってくる……」
「なんでもかんでも動かしゃいいってもんじゃないっすよねー。止まってる写真が一つも無いっす、どんだけ動いてるの好きなんだよ」
「逆に止まってる写真なんて何が良いの? マグルの文化ってのは良く分からないわ」
その間暇なので、店内を物色する7人。魔法使いの服を売っている店だけあって、まとも(マグル基準)な服が一着も無い。
「勝手にフィットしてくれるローブだって! これならチノちゃんやアリスちゃんも着れるかな!?」
「いや、普通に子供用の奴買えばいいから! っていうかまたチノかよ! 誰だよチノって!」
「私の可愛い可愛い妹! もう本当可愛くてね! もふもふしたら止まらないんだあ! あーあ、チノちゃんもこっちこないかなあ」
「その、もふもふしたら止まらない、ってとこは何なんすかね? おかげでチノって子をイメージすると、抱き枕をイメージしてしまって……」
「それで大体合ってるよ! チノちゃんは何処へ出しても恥ずかしくない、もふもふの妹!! あ、でもメグちゃんも捨てがたいなあ……いやマヤちゃんも……ねえ、誰が一番もふもふしてると思う!?」
「知らねーよ!」
「メグとマヤって誰よ!?」
「会ったこと無いデス!」
「妹をもふもふする感覚っていうのが、もう我々には分からないので……」
「うえぇぇ!?」
妹談義に花を咲かそうとするココア。しかし現物が居ないので、いまいち乗れない。忍のようにはいかないのだ。
「採寸終わったよ〜!」
「お疲れ様デス!」
「お疲れ様」
穂乃花の採寸が終了。暫く待てば、出来上がる。
「何の話?」
「ココアの妹の中で誰が一番もふもふしてるかって話デス」
「穂乃花は誰と思う? 私はメグって子と思うな」
「えー? なんとなくマヤな感じがするデス!」
「メグだもン」
「マーヤー!」
「うん……私は傍観することにするよ」
説明から狂気めいた何かを感じ、逃亡を謀る。
「逃げるな……あんたも会話に参加しなさい」
「最近の香奈ちゃんキツいよ……」
逃げられなかった。ああ、穂乃花もまた自称姉の狂気に苛まれてしまうのだろうか? え? 穂乃花自身も狂人? 何を仰るやら……。
と、その時である。
バーンと音を立てて扉を開けた者あり――そう、フレッドとジョージ。ウィーズリーブラザーズの帰還である。
「よお、待たせたな!」
「Mission Completeだ!」
二人が持つカートには沢山のアイテムが載っている。この短時間で残り全部の箇所をクリアしたのだ。最初から彼等が動いていれば、もっと余裕はあっただろうに……。
とは言うものの、余裕がない原因の一端を彼等が担っていたのもまた事実。そりゃあ、動くはずもない。
「早え!?」
「さっすがWeasly brothersデス!!」
「信じてたっすよ!!」
「あんたら凄いわね!!」
「流石兄貴!!」
「わーすごーい」
「わ、私だってこれくらい出来るしー!」
「ココアちゃん無理しないで……」
「てめえらの掌は360度も回転するのか」
「何度まで回転できるか見ものだな」
こぞって掌を返す少女たちであった。
「取り敢えず私たちのとこは、服受け取れば終わり。……時間に間に合うかな」
「無理じゃないかしら?」
ジニーは言う。
「大丈夫! 余裕余裕……時計ないから分かんないや。後どれくらい?」
陽子が言う。
「誰か時計持ってない?」
「Time's up」
カレンは言う。
「「「「「「「「「えっ」」」」」」」」」
「Time's up 時間切れデスネ」
その直後、マダム・マルキンが服を持ってやってきた。もう急いでもどうにもならないので、試着したりしてから店を出た。
《残り0分――時間切れ》
[083] グリンゴッツへ走れ
「よし、もう歩こうぜ」
「走って足が痛いんだ」
「そんな足してない癖によく言うわ」
「どうせもう時間切れデスし、ゆっくり行きまショー」
「イギリス人は時間にルーズって言うっすからね」
「もう、駄目だよそんなんじゃ! ほら、行こう! みんな待ってたらどうするの?」
「ゆっくりでいいじゃない、お姉ちゃん」
「そうそうーもうマイペースで行こうよーお姉ちゃん」
「陽子ちゃん、同年代だよ……」
ダイアゴン横丁を歩く10人。周囲を見回しながらゆったりと歩く。
次なる目的地はグリンゴッツ。もうどうせ今から急いだ所で時間切れは時間切れ故にどうしようもないので、歩いて向かう事にした。無駄に走って体力を消費すれば、いざという時に走って逃げる事も出来ない。疲れるから、というのもあるが、そんなのは二の次だ。確実性が大切なのだ。必ずグリンゴッツに辿り着くという確実性――歩行という移動手段には、それがある。
「いやいや無いから。どう考えても疲れるからっていうのが主な理由でしょ」
日暮香奈は言う。
「大体、ちょっとでも急いだ意思を見せる方が、怒られるにしても大分マシになるでしょ? 歩いてなんかいたらわざとと思われちゃうよ」
「他人事みたいに言ってるな」
「お前も怒られるんだぜ」
「私はあんた達のご両親に会ったことないもの。初対面の人にいきなり怒るなんてことはないでしょ」
「っていうか多分、怒られるとしたら兄貴達だけでしょ。お守り頼まれてたんだから」
ジニーは言う。
「じゃあそこまで言うなら走るか? どうせ歩いても3分くらいの場所まで走るのか? 無駄に疲れるだけだぜ」
フレッドが言う。
「見せかけが大事なら、グリンゴッツが見えてきたら走ればいいさ。何の問題もない」
ジョージが言う。
「はあ……駄目だこりゃ」
負けた香奈。というか、もうどうでもいいの領域である。これ以上議論するだけ無駄と思ったのだろう。不毛なだけだ。
10人は、ダイアゴン横丁をゆったりと歩く。この後落ちるであろう雷を想定しながら、人混みの中へ消えていった。
《side 2 shoping end》
《買い物篇 終了》
申し訳ない……でも駄目だ、これ以上買い物篇を膨らませられないんだ……。
駄目だなー、やっぱあんまり長編向いてないわ私。最後の方になるにつれて、なんかこう、雑になってしまうのだよなあ……。