《注意事項》
・長いです。
・寝惚け目で書いた故、いつも以上の駄文です。
【第12話】
まほうの国でおかいもの
[054] チーム2の道程
なし。目についたところから向かう。
[055] ギャンボル・アンド・ジェイプスいたずら専門店
「ほらよ、ここだぜ」
「ここが、僕達の聖地さ」
2班に分かれた後、チーム2は早速ギャンボル・アンド・ジェイプスいたずら専門店へ来た。
「イッエーイ! 記念すべき最初の店デース!!」
「っしゃあ! 買いまくるぞー!」
「二人とも、ここへは買いに来たんじゃなくて、見に来ただけなんだよ!」
「そんな固いコト言いっこ無しっすよー! 折角来たんだから、目一杯楽しまないと損だよ!」
「そうだとも! お姉ちゃんがしっかり見てるからね!」
「ここ来るの私初めて! あははー、ありがとう、連れて来てくれて! ははは!」
「あんたそんなキャラだったっけ?」
ここまでの会話で分かる方もいらっしゃるであろうが、一応敢えて言っておくと、何とこのチーム、暴走を止められるような人が穂乃花くらいしかいないのだ。しかもその穂乃花も、大抵の場合無効化される。暴走しないといえばルーナもだが、彼女もこの状況を楽しんでいる節があるので、まず積極的に暴走を止める方向には動かないだろう。
という訳でこのチーム、一旦道が逸れればまず修正不能なチームなのだ。チームリーダーがなんとかするのが当然であるが、そもそもそのチームリーダーである双子が暴走を促す役だということで、どうなるか察するに余りあることだろう。
「よーし、じゃあお前ら、制限時間を決めるぞ」
「制限時間は、僕らの買い物が終わるまでだ。それまではこの店で、魔法使いの何たるかを学ぶといい」
「ジニー、お前もだぜ。折角ママとパパから離れたんだから、こんな時しか出来ないことを目一杯やるんだ」
「買い物がおわるまでって、何分くらいかかるの?」
真魚が聞く。
「場合によっては訴訟も辞さない」
「そうだな、5分もあれば事足りるぜ」
「いや、5分さえもいらないんじゃないか?」
「訴えてやるデース!!」
「訴訟っすよ訴訟ー!」
「なんでそんな短いんだよー!」
「こんな時しか出来ないことって……そんなに短かったら何にも出来ないよ!」
「分かった、分かったよ! 案ずるな、我が妹達よ」
「10分だ、延長。ただ、2時間っていう制限時間内に色々やるには、それなりに要領って奴が求められるのさ」
「要領の悪い奴は負ける、これ大切だぜ、メモっとけ」
「あははー、私達メモ持ってないよー」
「「…………」」
流石のココア。どこまでもマイペース。
「よし、そうと決まればぐずぐずしてらんねえぞ!」
「さあ、入るといい」
ジョージが扉を開ける。その先には――別世界が広がっていた。
店内には人が溢れ、あちらこちらの商品棚には、色とりどりの商品が並んでいる。魔法を使っているのか、空中に浮遊する商品も少なくはないし、自分から客に近付き売られに行くものもあった。店のあらゆる場所がカラフルで、売ってるものにさえ目を瞑れば、夢の国と言っても差し支えないだろう。
「よっしゃあ! 買うぞー!」
「ま、待ってよ陽子ちゃん! 買うだけのお金なんてないよ!」
「割り勘すればいいんすよー! それ位の余裕はあるはず!」
「そんなに何個も買えないんじゃない? 他のもの買えなくなるもン」
「一個くらいなら、全然大丈夫なはずデース!」
「こら! 見るだけって言ってたでしょ? 衝動買いは良くないよ!」
ココアが注意する。
「えー……そんな固いこと言わないでよ、ココア『お姉ちゃん』」
「〜〜〜〜〜!!! もう〜! しょうがないな〜! 一個だけだよ!」
速攻で轟沈。
「ココアちゃん……こっち側だと思ってたのに……!」
「なんで思ってたの……?」
買おうとする者と止めようとする者の割合は7:2。目に見えて分かる、穂乃花とルーナの劣勢である。
以下、会話パート。
「おい、なんだこれ! 呪いの羽ペンだってさ! 文字を書こうとしたらインクが大量にペン先から出てくる……ははは! すげー面白そう!」
「インクの色が黒から白に変色する羽ペンもありマス! この辺、アヤヤに試してみたいデスネー」
「こっちは空飛ぶ羽ペンだって。羽ペン系統多いっすねー」
早速店内を物色する3人。羽ペン系のアイテムが多いのは、そもそも羽ペンというものが既に完成された形でありながら、簡単に弄りやすい最上の素材であるからだろう。実際、どこの悪戯用品会社も、始めは羽ペン系アイテムから始まったのだ。
「ココアー! 私これ欲しいー!」
陽子が後ろから来たココアに言う。
「もう! 一個だけなんだから、もっと慎重に選ばないとダメだよ!」
年上ぶるココア。実際には別に年上でもないし、ついでに言えば威厳などこれっぽっちもない。
「ねえ……どうしても一個だけ? 『お姉ちゃん』」
「〜〜〜〜〜!!! も、もう! 仕方ないから二個に増やすよ! こ、これ以上は駄目だからね! 絶対だから!」
ジニーに再び丸め込まれるココア。姉らしさなどまるで無い。
「ココアちゃん……」
「ホノカ、お姉ちゃんって呼ばれたい?」
ルーナが言う。
「え!? う、ううん、私は別に……お姉ちゃんって性格でも無いし……」
「ふーん」
「お、お姉ちゃんって呼んでくれるくらいなら、き、金髪をくれた方が、私は嬉しいな……!!」
「理性を保ってるシノ……」
忍と穂乃花は金髪同盟の一員。金髪好きには変わりないのだ。しかしそれ以上に、カレンフェチな訳だが。
「お菓子だ! お菓子があるぞ! バーティ・ボッツの百味ビーンズだって!」
「美味しそうデス!」
「……こんな店で売ってる時点で、なんとなーくお察しのような気がするけど……ジニー、なんか知ってるっすか?」
「うふふ、知ってるけど、教えないわよ! ネタばらししても面白くないでしょ?」
「ほら、やっぱりなんかある」
悪戯っぽく笑うジニー。なんだかんだと言いつつ、あの双子の妹である。
「アヤヤに食べさせまショウ!」
「綾ばっかり実験台になってんな……ま、面白そうだしな!」
「実行犯がヨーコなら、アヤヤもきっと許してくれるデース!」
「自分は加担しないつもりか!?」
着々と綾が犠牲になる時が近付いていた。そして、綾に逆襲される時もまた、近い。
「百味……百味……ああ、そういう……ふふ、柴さんに食べさせたくなってきたっすよ、これは」
「貴女達フレッドとジョージみたいなやつらね」
「ここ面白いね! ……チノちゃんも連れて来たかったなあ」
ココアが呟く。
「チノ? 誰それ」
「私の自慢の妹だよ! 凄くモフりたくなるんだよ!」
「ふうん……」
「チノちゃんのもふもふ具合ときたら、まず誰も敵わないね! 問答無用でもっふもふだよ! モフりたおすよ!」
「妹好きなのね」
「好き? 違うよ、愛してるんだよ! 私のチノちゃんへの愛は、好きなんてレベルじゃあ収まらないよ!!」
「ああ、そう……」
「チノちゃんへの愛は宇宙レベル! 愛が膨らみまくってビッグバンだよ!!」
「そう……」
ココアが妹について延々語っていると、
「よう、my lovely angel、ジニー。そろそろ10分だ、行くぜ」
らしくもない台詞を吐きつつ、双子が帰ってきた。
「欲しいものはもう買っちまったからな、取り敢えずは、ここにもう用は無い」
「えー!? もっといようぜー!!」
「そうデース! まだ一時間も経ってないデース!」
「そうは言ってもさ、このリストのやつ全部買わなきゃいけないからねえ……まあ、一時間以上かかるのは堅いっすよ」
「むう……まあ、真魚がそういうなら……」
「仕方ないデスネ……」
「おっと、年上を無視するか、おい」
「年上を敬う気持ちがなっとらんね」
「あんたらを敬う年下なんて居ないっての」
「じゃあ、私はこれー!」
一品目、陽子が選んだのは、マグルの読者の皆様にも最早お馴染み、『パーティ・ボッツの百味ビーンズ』。
「ロシアンルーレットしよー!」
お値段“1 S”。
「二つ目は、これデース!」
二品目、カレンが選んだのは、謎のシール。パッケージには、『クーピー・グリートのペースト・シール』と書かれてある。
「面白そうデース!」
お値段“2 S 15 K”。
「三つ目はー」
三品目、真魚が選ぶ。
「だめ! 2個までって言ったでしょ!? ちゃんと言いつけ守って!」
「お姉ちゃんぶってるっすねえ……」
「お、お姉ちゃんって言われても、もう、惑わされないんだからね!!」
「はーい」
二つの商品をカウンターに持っていく。代金は割り勘と言っていたが、ココアが「お姉ちゃんらしいことさせて!」と、全額払ってしまった。後先考えない奴である。
「ルーナちゃんは、欲しいものとか、本当に無いの? 買ってあげるよ」
金髪少女を甘やかす穂乃花。
「別にいいよ、ホノカは無いの?」
「私は無いよ〜。強いて言うなら……ル、ルーナちゃんの金髪を……」
「あげない」
「だよね」
「二人ともー! そろそろ行くよー!」
ココアが呼ぶ。
「うん! 今行くよ〜! じゃあ行こっか、ルーナちゃん」
「うん」
9人は店を後にした。
次に向かうのは、目の前にあった『ワイズエーカー魔法用品店』。
[056] ワイズエーカー魔法用品店 side 2
ワイズエーカー魔法用品店は、ダイアゴン横町において比較的新しい店舗である。先程のいたずら専門店や、マダム・マルキンの洋装店よりも歴史は浅い。オリバンダー杖店とは、もはや比べるまでもないだろう(これについては他の店にも言えるが)。
さて、この店は所謂『雑貨屋』であり、何かの専門店という訳ではない。しかしながら基本的な魔法用品の品揃えは豊富であり、購入リストに載っている望遠鏡を買えるのは、ダイアゴン横町においてはここだけである。それだけに、客足が途絶えることは殆ど無く、期待の新星とも呼ばれている。新星と呼ばれるほど若い訳では無いが。他が老舗すぎるだけなのだ。
説明パート終了。
「さっきとは違うベクトルで色々売ってるっすねー」
「よーし! ここでも買うぞー!」
「イェーイ!」
「じゃあ私も買うわよ! フレッド、ジョージ! 金を出して!」
いつもの三人衆にジニーが加わった。
「おい、僕たちの妹が毒されちまったじゃねえか、どうしてくれるんだ」
「もともとああだったんじゃないかな? 人ってそんなに変われるものじゃないもン」
「真っ当なこと言うなよな」
「事実は人を時に傷つける」
「こ、今度こそ、一個だけだからね! もう惑わされないからね! もう誘惑は通じないからねっ!!」
「ふふん、本当に最後までその姿勢、貫けるかしらね? 『お姉ちゃん』」
「〜〜〜〜〜!!」
「ココアちゃん……」
「駄目っぽいね」
ジニーの誘惑に、簡単に折れてしまいそうなココアであった。
買い物タイムスタート。
「さ、さあ! まずは望遠鏡だよ! 一個だけなら好きなもの買ってあげるから、まずは必要なものを買おう!」
「はーい」
「お姉ちゃんみたいデスネー」
「お姉ちゃんっすねー」
「ココアお姉ちゃんー!」
「〜〜〜〜〜!!!! と、とにかく! お姉ちゃんについておいで! これ以上煽てたって、な、何にも出ないんだからねー!」
「ココアちゃん……」
「駄目っぽいね」
「やれやれ、年上としてのあり方が分かってねえなあ、あいつ」
「ここは僕たちがレクチャーしてやった方がいいんじゃねえか?」
「意味のないことは止めた方がいいよ……ってホノカが」
「ルーナちゃん!?」
「おい、お前らいい度胸してんな」
「年上を舐めるとどうなるか、教えてやろうか……」
「す、すいませんー!」
「はいはい、そこの4人もこっち来る! 迷子になっても知らないよー!」
「……だってさ、行こうぜ」
「ははっ、すっかり乗せられてるぜ」
「う、うん……行こうか、ルーナちゃん」
「うん」
「へー、望遠鏡かー。買うの初めてだなー」
「そうっすねー。まお、星を見る趣味なんて無いからね」
「買わなくても、屋上に行けばいつでもおっきい望遠鏡がありまシタから、私も買ったことないデスネー」
「えっ……? お、おっきい望遠鏡?」
「流石カレンちゃん……持ってるものでさえも異次元レベルだよ〜!」
「そんなもん実家にあんのかよ……」
「イギリスの実家にもありマスが、ハワイの別荘にもありマスし、日本のマンションにもありマス!」
「なんでだよ!? どんだけ星見るの好きなんだ!?」
「私は外国に来てまで見マセンが、場所が違っても出来るだけ同じ環境になるようにって、パパが」
「そんな理由で!? いや、でもさあ、でかい望遠鏡っていっても……どんなの?」
「えっと、天文台にあるような奴の、ちっちゃい版デス」
「天文台にある奴の小さい版ってなんだよ!? 全然想像つかねえ!!」
「反射望遠鏡って奴らしいデス」
「反射望遠鏡って何!? ごめん、全然何言ってるか分かんない!! でもスケールが違うのはなんとなく分かった!!」
「流石カレンちゃん……スターダストエンジェル……!」
「え? え? あれ、もしかしてもしかしてー、カレンちゃん、もしかするとー……いいトコのお嬢様……?」
「お嬢様!? どこ!? どこデス!?」
「いや、あの……」
「カレンは……まあ、性格はともかく、お嬢様らしいよ。この間カレンの家でクリスマスパーティしたんだけどさ、すげー広かったんだ! 料理が美味かったなあ……パーティ会場にビュッフェがあったんだよ!」
「天井にぶら下がるシャンデリアがきらきら光ってて、まるで別世界の様だったよ〜!」
「しのやアリス、穂乃花とか、みんなパーティドレス着てて、普通の服で行ったからすげー場違い感があったよ」
「大きな亀も放し飼いされてたよね! 亀にさえ気品があるだなんて、流石カレンちゃんの亀だよ〜!」
「お、お嬢様……カレン……」
「みんな何の話してるの?」
「さあな、知らなくてもいい話じゃないか?」
「少なくとも、僕たちが体験したことあるような話じゃないのは確かだ」
「カレンちゃん……そんな正体を隠してたんすか……? 凄い……若葉ちゃんと同族だったんすか……」
「そうデース! 同族デース! ハハハ!」
「まあ、喋り方とか全然お嬢様感無いけどな」
「でも、気品は何もしなくても、常に溢れてるよ〜!」
「カレン……お金持ちなの?」
「知らね」
「嫉妬に駆られそうになるな、全く」
「ジョークさえ浮かばねえ」
「ああ、今言うとジョークじゃなく本心になっちまいそうだな」
「あ、お金持ちと言えば、リゼちゃんもお嬢様なんだよ! リゼちゃん家は凄いよ! お城みたいなお家でね、家の中に銃が一杯コレクションされてるの! で、メイドさん達とか、黒服のおじさん達とかが一杯いるの! お父さんも超ダンディ!」
「マジで!? リゼそんななの!? っていうか、え? 銃?」
「そう言われてみれば、立ち振る舞いにどこかお嬢様めいた余裕があったような気がするよ……!」
「待って待って、何で私達身近にお嬢様いるの? もうちょっとレアなかんじじゃないの? お嬢様ってそんなどこにでもいるもんなんすか?」
「若葉にカレン、リゼ……すげー、私達三人のお嬢様と友達なんだ……全然実感沸かねーぞ……」
「カレンちゃんもリゼちゃんも、全然そんなかんじしないのにねー」
「どういう意味デス?」
「今度三人でお嬢様談義とかやってほしいよね〜!」
「Oh 面白そうデスね! でも何話すデス?」
「お嬢様で大変なこと、とか……かな?」
「あー……それ話すとなんか重くなりそうっすよー。若葉ちゃんはある意味苦労してたっすからねえ……」
「お嬢様も大変なんだな」
「私達蚊帳の外ね」
「混じらなくて良いんじゃないか? 余計な嫉妬が産まれずに済む」
「嫉妬は身体に毒だからな」
「ああ、ジョークとかそんなんじゃなくな」
「実際蝕んでいく」
「「HAHAHA」」
「乾いた笑い……」
「お金持ちっていっても、あんまり実感沸かないデスよ! それに、ここだとそんな変わらないデス!」
「まあ、そうっすね」
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カレン「みんなの金庫の中も、金貨山積みだったデショウ?」
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「「「「「「「!!!?!?」」」」」」」
「へ?」
そう。グリンゴッツの部分をばっさりとカットしたので読者の方はその辺りの詳細をご存知ない筈である。カレンの言葉に色々な反応が返ってきて、望遠鏡とその他一つを買っている間に、グリンゴッツの話を説明せねばなるまい。
数刻前の話。
グリンゴッツではその家ごとに金庫が与えられ、当然、その金庫にはその一族の者しか入れない。必然、その金庫の中身を知ることは出来ない。
さて、その家ごとに金庫が与えられるということは、勿論、保登、天々座、宇治松、桐間、大宮、カータレット、小路、猪熊、九条、松原、小橋、時田、黒川、真柴、以上14名の
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保登、香風、天々座、宇治松、桐間、大宮、カータレット、小路、猪熊、九条、松原、日暮、小橋、時田、黒川、真柴、以上16名の金庫も、しっかりとあるということなのだ。
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そういう訳で……ちょっと待って頂きたい。何故16名の金庫があるのだ? 彼女達は口座を作ってな
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グリンゴッツに訪れた際、彼女達は口座を作り、今までの資産分の全金額が全てこちら側に転送されている。暗黒の兎が頑張ったのだ。
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そんな訳で、彼女達はそれぞれに別れてグリンゴッツでお小遣いを集めてきた訳である。資産分がダイレクトに来るということは、もともとお金持ちの三名の金庫の中身がとんでもないことになっているということなのだ。尚、彼女達は必要分しか持ってきていないので、今手元には他の12名と同じ程度の金額しか持っていない。
つまり、彼女達本来の世界におけるマネーバランスは、見事そのまま続投されているのだ。尤も、他の何名かは、色々な要因があって水増しされているものが多い。香風智乃の金庫なんかがその好例だろう。彼女の場合、ラビットハウスは祖父の代から続いている訳で、過去に消費された分の金額やら何やらは全てチノの所持金として換算され、グリンゴッツに転送されている。
まあ要は、彼女達が金貨不足に陥ることはまず無いと思って頂ければ、それで十分であり、その中でも例の3名は次元が違うレベルで金庫が充実している、というだけの話である。
説明終了。そして、彼女達も買い物を終えた。
説明中に彼女達が購入したのは、望遠鏡セット(1 G 15 K。望遠鏡単体より高いが、交換用レンズなどが充実している)×5と、魔法の指輪(なんらかの魔法が込められているらしい不思議な指輪。お値段は 10 S 16 K。)×18。全員で割り勘したとは言え、結構馬鹿にできない支出である。これ以上余計なものを買うのは、困難を極めることとなった。
「ちょっと買いすぎじゃねえか?」
「ち、力及ばずだったよ〜! もう! 絶対! 次は惑わされない!」
ココア、惨敗。
「なんで18個なんだ? 16個は分かるけどよ、残りの2個は誰の分だよ」
「そりゃ、二人の分っすよ! フレッジョの分っす!」
「へえ、僕たちの分か。そいつあ嬉しいぜ」
「ああ。だが受け取れない。そういうのは男を混ぜちゃあいけないぜ」
「えー? そんなの気にしないデス!」
「女子は女子、男子は男子ってやつだよ」
「僕たちはあくまでお目付役、そういうのはお前らだけでやりな」
「馬鹿みたいにかっこつけちゃって」
「馬鹿みたいだって? そりゃあいい。僕たちは馬鹿馬鹿しいジョーカーだぜ」
「気持ちだけで十分だ。僕たちへのプレゼントは、僕たちのレベルを超える悪戯にするんだな」
「じゃあ……これどうする? 買っちゃったけど」
「あ、それじゃあ、一個貰っていい? 友達にプレゼントするよ!」
「友達なんていたんだね、ホノカ」
「酷いっ!? ……日本にいる友達にね。帰ったら、魔法界のお土産に……」
「それなら、私も一個貰う! チノちゃんにあげるんだー!」
「おいおい、あんまり僕らの世界を広めるなよ? 別に僕たちはマグルを嫌っちゃあいないが、マグルが魔法を知っちまうと、色々面倒だからな」
「魔法製品であることを、悟られるなよ」
「う、うん」
「あはは、厳しいなー」
9人は店を出る。
空から、闇の塊が降りてきた。
[057] ひぐれいろワイルドカード
「――――っ!!」
「これ――これって――!」
「うちに出てきたやつ……?」
「ホ、ホノカ! ルーナ! 隠れるデス!」
「ひっ……!?」
「な、なんすか? みんな、知ってるんすか?」
「悪い冗談だぜ……?」
「ブラックジョークなんてもんじゃないな」
「ブラックどころか、ダークなんだけど……なにこれ?」
危険性をある程度理解している5人と、事態をあまり飲み込めていない4人。脅威を知っていようと知っていまいと、突然の急展開にすぐに対応することが出来ないのは当然。ある種の訓練を受けていなければ、そこまでの反射神経を発揮することは非常に困難である。
闇の中に兎めいた赤い双眸が光る。光を見た9人の目もまた、兎の如く赤く染まる。9人は、その場に縫い付けられたかのように、動けなかった。
すると、光は消え、闇が縦横無尽に走り始めた。通行人はそれに気付かない。否、通行人は、何故か居なかった。全員たまたま、店に入っている。奇跡的で、どうしようもなく、作為的なタイミングである。
闇が空中で静止する。ラブグッド家に現れた時とは比べるまでもなく、かなり短い時間しか動き回っていない。彼女達は知る由も無いが、この暗黒門を使役する者は極力この物語に関わることを避けている。物語の脚本を司る者のように、積極的に動くことはない。故に早く終わらせたいのだ。余計なことをしている程、彼女は暇ではない。
闇から一つ、人型の影が放出された。影は9人の目の前に、ゴン、という痛そうな音を立て、落ちた。
役目を終えた暗闇は雲散霧消。人々が店から現れ、通りはいつも通りの賑わいを取り戻した。
「……おい、なんだったんだよ、今の……」
「知るかよ……訳分かんねえ……」
暫くしてから最初に正気に戻ったのはフレッドとジョージ。次いで、ジニー、真魚。
「ちょ、なんか落ちたんすけど……誰?」
落下物から影が引き、段々人型の姿が露わになる。
それは少女であった。少し茶色掛かったショートヘアーの少女。
その姿が完全に現れると、陽子、カレン、穂乃花は正気に戻った。あまりの衝撃故に。
「か、香奈!?」
「香奈ちゃん!?」
「カナ!? 大丈夫デス!?」
3人は少女を揺さぶり、叩き、思い思いの方法で目覚めさせようとする。落下ダメージ加え、更にダメージが蓄積される。ダメージの蓄積が功を奏したか、目覚めるのには然程時間は掛からなかった。
「……ん……あれ? 穂乃花? どこ行ってたの? あんた今日の学校……え? 陽子ちゃんに……カレンちゃん? あとは……誰!? ていうか、ここ何処なの!?」
「話すと長すぎるよ〜!!」
――日暮香奈。穂乃花が話していた先の友人であり、この空間における、唯一無二の常識人である。
さあ、前々から予告していた倦怠期がついにやってきたぞ!(爆
まさか一週間も不投稿とは……愛想をつかされている可能性がありますね、これは。とか、そんなネガティブなこと言ってんじゃねえよ、って話っすよねー。
こっから投稿頻度は穏やかになると思うので、適当に支援お願いします。