ゴールデン*ラビットガールズ!   作:ルヴァンシュ

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 注意事項

・長いです。いつもの分量プラス四千字くらい。
・深夜テンションで書いたので支離滅裂な可能性があります。

 以上を留意して、お読みください。


ホグワーツからの招待状 その1

【第8話】

知らない人からの手紙

 

 

[021]

 

「……ふう」

 

 ホグワーツ魔法魔術学校職員室。妙齢の女性――副校長、ミネルバ・マクゴナガルが羽ペンを羊皮紙にすらすらと走らせ、一つ一つ折り畳み、洋封筒に入れていく。

 毎年恒例の新入生への招待状。今年もいつも通り作業を済ませた。後は、梟に持たせて終了である。

 マクゴナガルは席を立つ。

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 マクゴナガルは席に座る。

 羊皮紙と洋封筒を新たに14枚用意し、先程までと同じ内容を書き連ねていく。

 

 一枚目はシノブ・オオミヤへ。

 二枚目はアリス・カータレットへ。

 三枚目はアヤ・コミチへ。

 四枚目はヨウコ・イノクマへ。

 五枚目はカレン・クジョウへ。

 六枚目はホノカ・マツバラへ。

 七枚目はココア・ホトへ。

 八枚目はリゼ・テデザへ。

 九枚目はチヤ・ウジマツへ。

 十枚目はシャロ・キリマへ。

 十一枚目はワカバ・コハシへ。

 十二枚目はモエコ・トキタへ。

 十三枚目はマオ・クロカワへ。

 十四枚目はナオ・マシバへ。

 

 書き終えたマクゴナガルは席を立つ。

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 梟小屋には、沢山の梟が止まり木に止まっている。マクゴナガルは、梟一匹一匹に手紙を咥えさせると、窓を解き放った。

 すると、一斉に窓から梟が飛び出した。手紙を届けるメッセンジャーとしての役割を果たさんとするために。

 最後の一匹が彼方に飛び立つのを見届けると、マクゴナガルは小屋から出て行った。

 

 

[022]

 

 『マグル』とは、非魔法族の事である。つまりはどういうことかというと、魔法を使うことが出来ない人種をいう。

 

 魔法族と非魔法族はかつて争っていた。否、争いというよりは、それは一方的な蹂躙であった。非魔法族は魔法族の力を恐れ、怖れ、畏れて魔法族をとことんまで迫害した。

 魔法族はあくまで非魔法族の突然変異に他ならず、『出る杭は打たれる』理論である。非魔法族、魔法の使えないマグルにとっては魔法を使うことが出来る魔法族は忌むべき存在。読者のみなさんも知っていると思うが、かの魔女裁判こそ、それの最たるものだろう(尤も、あれが魔法族を苦しめることが出来ていた訳では無いが)。

 その後『魔法省』が出来、魔法族はマグルの目から姿を隠して生きるようになった。

 こういった経緯からマグルを嫌う魔法使いは少なくない。特にそういった傾向が強いのは『純血主義者』と呼ばれる連中で、マグルの血をその家系に組み込まないために近親相姦するというのが専らである。

 まあ、突然変異であるが故に、どう足掻いたところで、彼等の始祖はマグルの両親を持ち、マグルの血が多少なりとも入っているのだが。

 

「……という訳だ」

 

 アーサーが語り終える。

 

「……いや、それ話してまお達に何させたいんすか」

「私達をどうするつもりなんです!? ま、まさか、私達ベーコンとかそういうのに変えられて食べられちゃうってことなの!?」

「魔法……非魔法族……やっぱり二次元じゃないか」

「柴さんちょっと黙ろう、二次元から離れて」

 

 真魚は何だかんだ落ち着いている。萌子は混乱、直は通常運転である。

 

「つまり、どういうことだってばよ? つまりは、あんた達は魔法族とやらで、魔法を使えて、まお達非魔法族……マグルだっけ? を根嫌いしていると。そういう話だよね?」

 

 真魚は話を進める。

 

「そんなこと私達に教えていいの? まあ、そりゃあまお達は既にあんた達のテリトリーに入っていて、脱出するにはもう遅いんだけれど――何がしたいんすか、あんた達」

「ふむ、どうやら誤解があるようだ――えっと?」

「名前っすか? まおは真魚っすよー」

「マオ、君は誤解している。私達は決して君達を迫害しようという訳では無いのだ。まずこれだけは分かってほしい」

「ふん、そんなことを信じれると思っているのか? 貴方達はマグルを嫌っているんだろ? だったらそんな嘘くらい平気で吐いて油断させることくらいしてきそうなものだがな」

「柴さん急にまともな意見言うのやめて反応し辛い」

 

「では、もう一つ誤解を解こうか――確かに、魔法族はマグルを嫌っている連中が多い――それは否定しない。だが、知っておいてほしいのが、そんな中においても、マグルを好む奴もいるということだ」

「……つまり、貴方達は、マグルを嫌いじゃ無いってことなの?」

「信じてほしい」

「うーん……この状況で信じれる奴ってどれくらい居るんすかねえ……ん、まあいいや、変に疑っても話進まないし――取り敢えず信じるよ」

「それは良かった! という訳で、君達に一つ頼みたいことがあってだな!」

 

 アーサーがぐいと体を乗り出す。

 

「君達マグルの暮らしっぷりを、是非私に教えてほしいんだ!!」

 

 アーサーは興奮して叫ぶ。

 

 3人は、そんなアーサーを奇異なものを見るような目で見る。

 

「……そ、それを知ってどうするんですか……?」

 

 萌子が聴く。

 

「よくぞ聞いてくれたね!!」

「何だこのテンションの差」

 

「知ってどうするか? 別にどうもしないさ! ただ私は知りたいのだ! 君達マグルが魔法を使わずにどのように生活しているのか! どのような技術を生み出しているのか! マグルの考えることは常に我々の考えの斜め上を行く、そしてそれは非常にユニークで面白いものなのだよ! 君達は面白いものを知ろうとは思わないのかね? 面白いことをみすみす逃したりするのかね? それと同じこと! ただ純粋に、私はマグルの生活が知りたいのだ! 疚しい事など、決して無い!!」

「あなた! もう夜中よ! 静かにして!!」

「はい、すいません」

 

 モリーがアーサーを鎮める。謝罪合戦がようやく終わったらしい。

 

「この人のことはともかく――貴方達、行く場所が無いでしょう? なら、うちに暫く泊まっていきなさいな」

 

 モリーが優しげな口調で言う。先程の迫力がまるで嘘であるかのような切り替えよう、全く恐ろしいものである。

 

「ワカバとも話したのだけれど、貴方達がマグルというのなら尚更だわ。アーサーが言った通り、マグルを嫌う魔法使いは少なくない――貴方達をまともに出迎えてくれるとは思わないわ」

「幸い、ここはそこまでマグル嫌いでない家らしいので――みなさん、ここはお言葉に甘えさせて頂きませんか?」

 

 モリーと若葉が言う。

 

「は、はあ……若葉ちゃんがそう言うなら……うん、私は賛成」

「まあ、本当か嘘か、どっちにせよ、どうしようもないもんな」

「そうっすねー……部屋とかどうするの?」

「部屋は、最上階に使ってない部屋が幾つかあるわ。ちょっと狭いでしょうけど――そこを使ってくれればいいわよ」

「ふうん、じゃあまおも賛成ー」

「じゃあ、決まりですね!」

 

 若葉が手をぱちんと叩いて言う。

 

「色々ご迷惑をかけますが、暫くの間、みなさん、よろしくお願い致します」

 

 若葉が礼儀正しく言う。

 

「あ、ああ! こちらこそ! ようこそマグルのみなさん、魔法使いの家へ! 我々は全力で君達を歓迎しよう――君達を戻すのにどれくらいかかるか分からないが、その間、異文化を心ゆくまで満喫したまえ! あと、気が向いたらマグルの生活について教えてね」

 

 こうして、若葉、萌子、真魚、直はウィーズリー家に居候することとなったのであった。

 

 

[023]

 

 場所と時間は変わり、ダイアゴン横町。その奥にあるアイスクリーム店、フローリアン・フォーテスキュー・アイスクリームパーラー。そこで、未だ嘗てないほどの賑わいが起こっていた。

 

「いらっしゃいませ! ようこそ、フローリアン・フォーテスキュー・アイスクリームパーラーへ!」

 

 何時もと違うのは、店員が一人ではないということ。普段は店主のフォーテスキューだけだが、今日は何故か4人店員が増えていた。しかも、全員可愛らしい少女である。

 フォーテスキューが、普段愛想が無いという訳では断じて無い。そんじょそこらの店は比べるまでもなく、愛想が良いのは自明の理である。

 とはいえ、男一人にプラス女四人となれば、あからさまに華やかさが違う。彼女達も愛想が悪い訳では無く、これ以上なく明るい少々達。店員事情では、この時点で幾つかの同業店を軽く超えたであろうことは議論の余地は無い。

 そして、店員が増えたことによる、注文の回転速度の変化である。そういった事情があって来客数が凄いことになっているが、それを見事捌き切るだけの力量が彼女達にはあった。少なくとも、接客初心者で無い事は確かだろう。接客を彼女達に任せ、フォーテスキューはアイス作りに専念する。完璧な布陣である。注文の回転速度においても、他の店を幾つか抜かした筈だ。

 

 そんな訳で、FFIは大繁盛、客足はいつもの数倍であり、閉店するまで店内の活気が失われることは一瞬たりとも無かった。

 

 閉店後。

 

「いやあ、本当にありがとう! 助かったよ! まさかあんなにお客さんが来るだなんてね! 実に素晴らしい働きだった!」

 

 少女達に賛辞を贈るフォーテスキュー。

 

「えへへー、それ程でも……あるね! ふふん、私達のお陰だよ、もっともっと感謝して!」

 

 ココアが言う。多少調子に乗っているが、それに見合う動きをしたので責められない。なんと歯痒いことか。

 

「お役に立てたようで、何よりです。取り敢えず、今日のところは埋め合わせが出来ましたかね」

 

 リゼが言う。

 

「埋め合わせだなんてとんでもない――それ以上だ! 素晴らしかったよ君達!」

「そう言ってもらえると嬉しいわ。それに、楽しかったわよね、シャロちゃん?」

 

 千夜が言う。

 

「うぇ!? ま、まあね、ちょっとだけね? ちょっとだけなんだから……」

 

 シャロが言う。

 

「本当にありがたかったよ……! そうだ! お礼と言っては何だが――君達、行く場所が無いんだろ? だったら、うちに住むといい!」

「えぇ!? いいの!?」

「そ、そんな! お礼だなんて――そんなご迷惑を掛けること」

「いいんだいいんだ! 心ばかりの感謝の気持ちだよ! 受け取っておくれ!」

「でも、そんな、悪いわ」

「で、でもっ! じゃあ私達どうするのよ! このまま飢え死にしろっていうの!? ここは申し出に乗っておいたほうが絶対良いわよ!」

「そうだよ千夜ちゃん、リゼちゃん! ここであったも何かの縁って奴だよ! 偶然を通り越した運命なんだよ!」

 

 シャロとココアが千夜とリゼを説得する。

 

「それに、迷惑がかかるっていうなら、これからもこのお店を手伝えば良いんだよ!」

「そ、そうよ! それが良いわよ、それが――え? 今なんて言ったのココア?」

「だから――ここに住まわせてもらう以上! 私達がこの店を手伝うのは、当然の流れだと私は思うんだよ!」

 

 ココアが言う。

 

「そうね――そう、それがベストね、ココアちゃん。私達は滞在する場所を確保出来るし、フォーテスキューさんは店を手伝ってもらえるし――そうね、ウィンウィンだわ!」

 

 千夜が言う。

 

「成る程な――確かに、住まわせて貰うんなら、何か手伝うのは当然の事だしな。よし、じゃあそれでいこう!」

 

 リゼが言う。

 

「リ、リゼ先輩がそう言うなら……ま、まあ、私も手伝う事に多少吝かではないけれど……」

 

 シャロが言う。

 

「よーし! 決まりだね! フォーテスキューさん! そう言う訳なので、これから、お世話になります!」

「ああ、こちらこそよろしく! 君達が来てくれて、本当に助かるよ!」

「ふふふ、私達が来たからには客足が途絶えることはまず無いよ! 多忙の極みを知るが良いよ!!」

「やだ……!素敵な言い回しだわココアちゃん……!!」

「え、そうか?」

「千夜のセンスに突っ込むだけ無駄ですよリゼ先輩」

 

 という訳で――そんなかんじで。

 ココア、リゼ、千夜、シャロは、ダイアゴン横町の小さな店、FFIで、住み込みで働くことになったのであった。

 

 後に、彼女達が出てくるのは期間限定となるのだが――それはこの後の話にて。

 

 

[024]

 

 朝日が縦長の窓から差し込み、6人の少女を明るく照らす。ラブグッド家に忍たちが住むことになってから、始めての朝を迎えた。

 

「やあ、どうだったね? うちのベッドの寝心地は?」

 

 朝食。ゼノフィリウスが話し掛ける。

 

「とても良く眠れました――周りにあった、あの、白いオブジェは何ですか?」

 

 綾が答える。

 

 彼女達が寝ていたベッドの周囲には、なんだかよく分からない奇妙な白いオブジェがあった。例えるなら、マグルの読者であれば誰でも知っているであろう某殺虫剤のような形状をしていて、内部には少し黒ずみかけた液体が入っていた。

 

「ああ、あれは悪夢吸引機だ。あれを枕元に置いて眠ると、その日に見た悪夢があれに吸引される。すると、もう二度とその系列の悪夢を見なくなるという優れものだ――まあ偶に誤作動を起こして、中の悪夢が漏れてしまうこともあるが、それはご愛嬌」

「それ意味無いんじゃ……」

「へえ、そんな物もあるんデスか」

「不思議なものが一杯ありますねえ」

「魔法の力ってすげー!」

 

 あのキンパツエナジー云々の後、彼女達は魔法についての説明を受けた。彼女達の常識を容易に打ち砕くそれらは、当然受け入れ難いものだったが――しかし、金色の粒子という形で既に見てしまっているのだから、信じざるを得なかった。

 

「あれ、パパの発明品なんだよ。パパは色んなものを作れるんだ。後で色々見せてあげる」

「本当ですか!? ありがとうございますルーナ! 金髪万歳! 金髪万歳!」

「落ち着いてよシノ!」

「流石忍ちゃん……金髪への愛が半端じゃないよ〜!」(それに比べて私は……ううん、圧倒されちゃ駄目、穂乃花! 私の方が、金髪を愛しているんだから!)

「ははは、シノにとっては、発明品よりも金髪の方が気になるみたいだな」

「そうね。……それにしたって限度ってものがあると思うけれど」

「今更それ言うのか」

「出来たぞ、君達。こんな物しか無いが」

 

 ゼノフィリウスが運んできた朝食は、食パンのトースト――だけならまだ良かったのだが、その上に何か余計なものが塗られているのに綾は気付いた。

 

「ゼ、ゼノフィリウスさん? あの、トーストの上に塗ってるのって、その、何ですか?」

 

 それは、白濁した液体で、シロップというよりジャムと言った方が近い程度の粘り気を持っていた。

 

「これかい? これは、食用角ナメクジを磨り潰して作ったジャムだ。美味しいぞ?」

 

「――っ!!!?!?、!?」

「Oh……」

「ナ、ナメクジ……」

「ナメクジ!? 食べたことない!」

「な、なんとも異国情緒溢れる食事であることですね! ね! アリス!」

「えぇ!? う、うん! ソウダネ!」

 

 カルチャーショックここに極まれり。

 

 ここで読者に誤解して頂きたく無いのは、これはイギリスにおいて一般的な食事では決して無い、ということである。飽くまでもこのラブグッド特有の朝食であり、料理の評判があまり芳しく無いイギリスにおいても、どうしようもないレベルの珍妙な珍味であることを、知っておいて頂きたい。とはいえ、マグルのみなさんが角ナメクジを入手することはまず無いので、イギリスへ行った時に出てくる可能性を考慮する必要性は、一切無い。故に、安心してほしい。

 

 尚、絶対無いと思いますが、万が一出てきた場合、当作者は一切の責任を負いません、ご注意を。

 

「さあ、食べようか」

「あ……あ……」

「い、いただきます……」

「イタダキマス……」

「…………」(I wouldn't like this……)

「で、では! いただきますっ!」

「いっただっきまーす!」

 

 トーストを食べる。

 

「〜〜〜〜っ!!?!?!?」

「!!!!!」

「ぐっ――く――」

「Oh――N――!!!」

 

 悶絶する4人。

 

「な、なんだ、この、何!? 何かすっげー形容し辛い味なんだけど!?」

 

 悶絶はしないが、ダメージはしっかりと受けている様子の陽子。

 

「どうしたの? 美味しいよ、これ」

「はっはっは! 美味すぎて声も出ないか!」

 

 ゲテモノを美味しそうに食べるラブグッド父娘。これが本心から美味しいと思っているのだから凄まじい。

 

 さて、忍はというと。

 

「――っ!! 美味しい! 美味しいですよこれ!! ジャム単体だとそれほどですが、トーストと一緒に食べる事で、トーストの美味しさの引き立て役となり、より一層美味しさが際立っています! 例えるなら――そう! 腐った卵と納豆の匂いを比べると、納豆の匂いがマシに感じるかのように!! 素晴らしいですよ、ゼノフィリウスさん!!」

「はっはっは! そうだろう、そうだろう!!」

 

 流石波長が合うもの同士というべきか、両方狂人というべきか、どうやら忍のお気に召したらしい。

 しかし、忍は決して角ナメクジジャムを褒めていない。例えから分かるように、壊滅的に酷いジャムのお陰でいつも以上にトーストが美味しくなるということを忍が気付いただけであって、別に忍が味覚音痴という訳では無い。変人であることは疑いようがないが。

 

 うふふあははと3人が楽しく笑い合う食卓(残りの5人は死にそうな顔)。そんな朝食風景に、一匹の梟が乱入してきた。

 その嘴には、丸まった六枚の手紙が咥えられていた。

 

 

[025]

 

 ウィーズリー家の朝は早い。基本彼等は家族揃って朝食を食べるからである。

 

「おはよう、ワカバ、モエコ、マオ、ナオ。今朝ご飯作ってるわ。先に座って待ってて」

 

 二つの手と魔法を駆使した並行作業を行いながらモリーは言う。

 4人がテーブルに向かうと、そこにはアーサーと、双子のフレッドとジョージ、そして見慣れ無いのが、眼鏡を掛けた少年と燃えるような赤毛の少女。

 

「やっほー、おはようっす」

「おはようございます」

「おはよう」

「おはようございます皆様、ご機嫌麗しゅう」

 

 4人が挨拶する。

 

「ああ、おはよう」

「よお、ご機嫌麗しゅう」

「やあ、ご機嫌麗しゅう」

「部屋はどうだったね?」

 

 アーサーが尋ねる。

 

「狭かったっすね!」

「中々狭かった」

 

 物事をはっきり言える2人である。

 

「ははは! だろうな、あそこはちょいと前まで物置き部屋代わりになってたからな!」

「でもこの前お袋が整理しろって五月蝿いから整理したんだ。多少はマシになってただろ?」

「そんなこと言われても元がどんなだったのか知らないので評価しようにも出来ないっすよ!」

「お前! 僕達がどれほど酷い目にあいながら掃除したと思ってるんだよ!?」

「いいじゃねーかちょっとくらい賛辞の言葉の一つや二つあっても!」

 

「やれやれ、君達は実に馬鹿だな」

 

「何だと!?」

「何だって!?」

 

 心底から軽蔑しているような、気難しそうな声が乱入してくる。その声を放った主は、角縁メガネを掛けた少年。パーシー・イグネイシャス・ウィーズリー。

 

「あそこを使っていたのは君達だけだろう? つまりはただの自業自得さ。自分達がやったことの後始末を自分達でやっただけで褒められるなんてこと、ある訳ないだろう?」

「流石、優等生様の言うことは一味違うね」

「ああ、味付けを間違いまくったレベルで一味違うぜ」

「三人とも止めなさい」

 

 アーサーが窘める。

 パーシーは、真魚達を向いて言う。

 

「どうも、おはようございます皆さん。僕はパーシー・ウィーズリー。ウィーズリー家三男です」

「完璧・パーフェクト・パーシー」

「黙ってろ」

「いよっ、未来の監督生!」

「黙れったら!」

 

 こほん、と咳払いをして、再び向き直る。

 

「君達の事情は父から聞いた。うちの馬鹿が迷惑を掛けたね。謝罪する」

「いえ、そんな、お気になさらず」

「この会話何回聞いたっすかね」

「5回位でいいんじゃないのか」

「……君達に二つだけ忠告しておく。一つ、あの双子にはあまり関わらないことだ。あいつらはいつも馬鹿みたいに馬鹿ばっかりして馬鹿馬鹿しいことこの上ない。一緒に居ると良くない影響を受けるだろう」

 

「……そこまで言わなくてもいいんじゃないの、お兄ちゃん」

 

 さっきから無言であった赤毛の少女が口を開く。ジネブラ・モリー・ウィーズリー。愛称はジニー。

 

「馬鹿馬鹿しいかもしれないけれど、それでも一緒に居ると楽しいわ。あんまり二人のことを悪く言わないで」

「……ジニー」

「ああジニー! 出来た妹を持って僕達は本当に嬉しいよ!」

「この家で僕達の味方をしてくれるのはジニーとパパだけだぜ!」

「おい、私がいつお前達の味方をしたというんだ!?」

「子供の味方をしない親なんて居ないぜ」

「まさか……パパ、あんた、そんな人だったのかい……?」

「なっ!? そ、それはだな……」

 

 どさくさに紛れて父親を巻き込む双子。見ている分には愉快だが、当事者となるとたまったものではない。

 

「……とにかく、あんまり関わらないように――二つ目は、あまり外を出歩かないようにすることだ。昨日父から聞いたと思うが、マグルを嫌っている魔法族は少ないとはいえない。法律で差別などは禁止されているが、それでもだ。魔法力が無い、マグルである君達が外を出歩くのは非常に危険なことなんだ――分かったね?」

「はい、ご忠告、感謝致しますわ」

「うん、ありがとう。分かったよ――ん? あれなに?」

「え?」

 

 萌子が指差す方向へ目を向けると、凄いスピードの何かが、開いた窓目掛けて飛んでくる。

 

「フクロウだ!」

「フクロウ便だぜ!」

「フクロウ便って何!?」

「マグルで言うところの郵便屋代わりだ――ああ、そうだ! 君達、ポストの仕組みを知っているかい!? 知ってたら教えてほしい――」

 

 アーサーが言い終わらないうちに、フクロウは窓から部屋へ飛び込み、パーシーの頭の上へ着地した。

 

「…………」

「やったなパーシー、監督生に相応しい帽子じゃないか」

「night owlならぬmorning owlってか?」

「夜だけに飽き足らず朝まで働くその姿、まさしく監督生なり!」

「「HAHAHAHAHA!!」」

「やかましい!!」

 

 パーシーは梟から何枚か手紙を受け取ると、テーブルに手紙を置き、止まり木に梟を止まらせた。

 

「……ふむ、これは私宛か……モリー……フレッド、ジョージ、パーシー、ホグワーツから新学期の手紙だ――っ!?」

 

 アーサーの顔に驚愕が浮かぶ。

 

「どうしました、父さん?」

「これはどういう――ワカバ、モエコ、マオ、ナオ、君達宛に手紙が来ている……ホグワーツからだ」

 

 

[026]

 

 時と場所は再び変わり、ダイアゴン横町・FFI。

 

「朝からアイスを食べる……まさしく特権だね!」

「そうね、朝っぱらからアイス食べる奴なんてあんたくらいだものね」

 

 ココア達は例の如く朝食中。朝食はオーソドックスに目玉焼きをのてたトースト。決して某白濁ジャムを乗っけている訳では無い。そして、ココアの席にはもう一つ、カラフルなチョコレートチップで彩られたバニラアイスが置かれていた。フォーテスキューに作ってもらったのだ。

 

「美味しいものに時間なんて関係ないよ」

「美味しいのは認めるけれど、良く朝から冷たいものを食べられるなって話よ」

「食べられないの?」

「いや、別に食べれない訳じゃないけどさ……なんかこう、昼とかに食べる時よりも冷たさ増したように感じるというか……なんかそんなかんじ」

「いいじゃん! 冷たくて! もっとヒエヒエであるべきだよ!」

「お腹壊すわよ」

「あはは、壊さないよ、シャロちゃんじゃあるまいし」

「わ、私がしょっちゅうお腹壊してるって言いたい訳!? 喧嘩売ってんの!?」

「言ってきたのそっちじゃん!?」

「いいわよ! どうせ私なんて、腹壊すほど食べ物食べたことありませんよ! 食べられるほど裕福じゃありませんよーだ!」

「そこまで言ってないよ!?」

 

「騒がしい奴等だな」

「でも沈んでいるよりはよっぽどいいわ」

「違いないな」

 

 騒ぐココアとシャロ、見守る千夜とリゼ。ココアとシャロはともかく、千夜とリゼはまるで夫婦のように見え

「黙りなさいよ!!」

 

「シャロちゃんどうしたの!?」

「あ、えっと、なんか不愉快な幻聴が聞こえた様な気がしたからつい……」

「幻聴!? 大変! 病院行ったほうがいいよ!」

「いいわよ別に……気の所為よ気の所為」

「病は気からっていうよ?」

「いいって言ってるでしょ! もう!」

「シャロちゃん、病院行きましょう」

「あんたは絡んでくるな! ややこしくなるのよ!」

「本当に大丈夫か、シャロ?」

「だ、大丈夫ですよっ! 何でたかが幻聴如きでここまで……」

 

 シャロ弄り。ココアと千夜は冗談なのに対し、リゼは割と本気である。

 

「ピーッ!!」

 

 すると、突然二羽の梟が窓から入ってきた。片方は、フォーテスキューの飼い梟であるフレーバー。もう片方は、見知らぬ黒色の梟だった。

 

「フォーテスキューさーん! 梟が来たよ!」

 

 フォーテスキューを呼ぶココア。一切の違和感を感じていない辺り、本当に恐ろしい。

 

「うむ、分かった、今行く――おお、フレーバーか、帰って来たか、おかえり。ん? 何だこっちの梟――手紙を咥えている――!」

 

 フォーテスキューがココア達を振り向く。

 

「君達に手紙だぞ――全く信じられん、またこれを見ようとは! 確かにそんな年齢に見える――ホグワーツからの招待状が届いたぞ!」

 

「ホグワーツ? 何それ」

「ホグワーツを知らんのか!? ホグワーツと言えば、世界一有名な魔法学校だぞ!? 儂も子供の頃通っていた!」

「は? 魔法学校? 何ですかそれ?」

「魔法って――そうだ、千夜!」

「ええ、そうよ! 思い出したわ! 昨日聞きそびれた事があったわ!」

 

 千夜は尋ねる。

 

「魔法って何ですか!?」

 

 リゼは問う。

 

「私達が魔女って、どういうことだ!?」

 

「いや、どうもこうも……」

 

 フォーテスキューは、ただ戸惑うばかりであった。

 

 

[027]

 

 塔に封じ込められた、錯乱させられた羽ペンと名簿。この二つが彼女達の名を示す限り、彼女達の運命は、数奇な道を辿るばかり。




 一万字超えだと!? 訳が分からんぞ! 説明しろ苗木!(錯乱)
 いや、本当、更新意欲が落ちる前にどんどん投稿していこうと思ったら、切れるところが上手く見つからず、こんな羽目に……!
 皆さん、計画も計画的に立てましょう。

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