美月転生。~お兄様からは逃げられない~   作:カボチャ自動販売機

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間話3 守護者とデート②

「どうしても駄目?」

 

「駄目。ほら、着替えてきて」

 

 

結局、リーナに押しきられる形でメイド服を着ることになってしまった。

だって、『ふーん、ミヅキはワタシのために、着替えてもくれないのね……悲しいわ』なんて言われたら、じゃあやるよ!としか言えないじゃん!ぼくのリーナたんが反抗期だよ!

 

 

「ご主人様、そんなに短いスカートに抵抗があるようでしたら、ヴィクトリアンのメイド服もありますよ。これならスカートも長いですし、肌の露出もほとんどありません」

 

 

メイドさんが出してきてくれたのは、水波ちゃんが着ている様なロングスカートのメイド服で、そりゃ、今着ようとしているフリッフリな上にスカートの短いメイド服よりはマシなのだけど、それにしたって結局はメイド服だし。そんなことを考えながら、ぼくがぐだくだしていたからだろう。痺れを切らしたリーナが――

 

 

「もう!面倒ね!メイドさん、脱がせちゃうわよ!強制執行!」

 

 

強制執行、の言葉と共にワラワラと現れたメイドさん達が、ぼくを拘束し、更衣室に押し込むと、次々と服を剥がれる。女の子相手じゃ、無理矢理引き剥がすこともできないし、ぼくはあっという間に下着だけにされてしまった。そして、鬼畜なことに、リーナがぼくから剥ぎ取った服を更衣室から投げ捨てたのである。鬼だよ!鬼がいるよ!ぼくだって一応女の子なのに!

ちなみに、リーナが投げ捨てた服はメイドさんが、床に落ちる前に回収して畳んでくれたけどね!無駄なアフターケアをありがとう!

 

 

「さあ、これで後は着るだけね」

 

「こ、ここまでしてぼくにメイド服着せたいの!?別に面白くも何ともないよ!?」

 

「ふふん、こうやってミヅキが困っているのが面白いんじゃない」

 

 

水波ちゃんだ!絶対水波ちゃんの影響だよ!だって、水波ちゃんが、超言いそうだもん!というか、同じようなこと、言われたことあるよ!

なんでこんなにギリギリまで仕事入れちゃうのさ!って訊いたら、「追い込まれている美月様を見ているのが楽しいからですよ」って最悪の答え返ってきたからね!まあ、そのせいで水波ちゃんも追い込まれて、涙目になるところまでがセットだから許すけども!

 

 

「メイドさん、再び強制執行!メイド服を着せちゃいなさい!」

 

 

とりあえず一言。

ここのメイドさん達、なんでリーナに忠実なの!?

 

 

 

 

 

「うぅ、恥ずか死ぬ……」

 

無残。

数人のメイドさんに取り押さえられ、ガッチガチにメイド服を着せられたぼくは、カツアゲされる中学生のように、メイドさんとリーナに囲まれた輪の中で、羞恥に震えていた。

このメイドさん達、無駄に仕事が出来るらしく、化粧直しまでさせられた上、どこからか持ってきた眼鏡も装備させられた。

顔を赤くして、モジモジしている姿は全くもってぼくのキャラではなく、ニヤニヤと見ているリーナを恨めしそうに睨むも、涙目になってしまう。

 

 

「ミヅキ、可愛いわよ」

 

「なんでもいいから、もう脱いで良いよね!着たもんね!」

 

 

一秒でも早くメイド服を脱ぎたいぼくに、リーナはトントン、と更衣室の横の看板を軽く叩いた。

そこには、可愛らしくカラフルな文字でこう書かれていた。

 

メイド体験実施中!プロ並みのカメラ技術を持つメイドさんが張り切って撮っちゃいます♡

 

 

「写真撮影がまだよ」

 

「どうか許してくれませんでしょうか!?」

 

「ダ・メ。メイドさん、またまた強制執行!」

 

 

三度目の強制執行発動により、更衣室から写真撮影用の部屋へと連れ込まれると、そこには、明らかにメイド喫茶にあるには不釣り合いなガチガチの撮影器具が置いてあり、本格的な撮影スタジオの様だった。

 

もう既にどうしたってここから逃げ出せないと悟ったぼくは、メイドさんに言われるがままに写真撮影に応じ、リーナからオーケーが出るまで写真を撮られ続けた。もう一生分の恥を使い果たしたよ……というか、そうでないと困る!

 

リーナが手にしている写真の束(という名の黒歴史)を前にして、ぼくはそう願った。

 

 

 

 

「あー、今日は楽しかったわ!」

 

「うん、ちょっと黒歴史を量産しちゃったけど、楽しかったね」

 

 

メイド喫茶で黒歴史を量産した後は、リーナに手を引かれるがままに秋葉原を観光し、アニメのディスクやら、フィギュアやら、ゲームやらを大量購入した。こういう買い物は、やっぱりインターネットで購入するよりも、店頭で購入した方がワクワクするし、見ているだけでも楽しい。

実際、リーナが目をキラキラさせながらあれこれ選ぶ姿は最高に可愛らしく、それだけでも秋葉原に行った甲斐はあるというものだ。

ただ、写真だけは何としても処分していただきたい!

 

 

「夕飯はどうしようか?今から作るとちょっと遅くなっちゃうし、どこかで食べていこうかと思うんだけど、何か食べたいものある?」

 

「うーん、これといって食べたい、というものもないのよね。これが食べたい!という欲望が無くなっちゃたのかもしれないわね。だってミヅキの料理は納豆以外、全部美味しいんだもの」

 

 

家のリーナたんが可愛すぎる件について!

どうしてこんなに可愛いことを言ってくれるのか。もうね、ぎゅーってしたい!なでなでしたい!今日メイド服着せられたこととか全部許せるね!

こりゃ、家事は全部ぼくがやりますわ、ぼくがメイドしますわ、というか一生養いますわ。

 

あえて言おう、結婚してください。

 

リーナの可愛すぎる発言に、若干頭がおかしくなっていたぼくだったが、携帯の音で現実に戻された。この音には何度も苦しめられているからね。

 

水波ちゃんには今日は仕事の電話はしない様に言ってあるし、入念にスケジュール調整をしたから、仕事の電話ではない、と確信し(希望的観測とも言う)携帯端末を確認してみると、電話をかけてきたのは達也だった。

 

達也も達也で仕事の電話をしてくることがあるため、無視したいところだけど、USNAの時の様に、緊急だとまずいので、一応出ることにした。ぼくだって、きちんと学ぶのである。

 

「もしもし、美月ちゃんです☆」

 

『……実は今日なんだが――』

 

「ごめん達也、謝るからスルーは止めて!ぼく今、激しく恥ずかしいから」

 

 

秋葉原の影響で、☆マークが付くような可愛い声を出してみたのだけど、スルーされると埋まりたくなる。

リーナが横で、ミヅキ耳まで赤くしてる、とか言いながら笑っているのが余計に刺さる。リーナ、明日の朝食は君が唯一口に合わなかった納豆に決定したよ。

 

 

『恥ずかしいなら、やらなければいいだろう』

 

「全くその通りなので、続けてください」

 

 

自分でもそう思うのだけど、こういうのって突発的な思い付きでやるから、考えるより早く口から出てたんだよね。まあ、それを思慮が浅いと言われるとそれまでなんだけど。

 

 

「なら続けるが……今日は四人で食事でもどうかと思ってな。深雪はまだリーナと顔を合わせていないし、そろそろ交流をしておくべきだろう」

 

「あ、丁度夕飯どうしよう?って話をしてたんだよね。こっちはおっけーだけど、場所は?」

 

 

ぼくにはリーナが付いているから、どこへだろうと迷うことなくいけるのだ。

 

 

「家でどうだ?深雪が張り切って料理を振る舞うそうだ」

 

「お、それは久しぶりだね!いーよ、じゃ今から向かうから」

 

「迎えにいくか?」

 

「リーナが一緒だから大丈夫だよ。リーナポンコツだけど、地図あれば目的地まで辿り着けるから」

 

「ちょっと、誰がポンコツよ!」

 

 

こうして、ぼくとリーナは司波家へと向かうことになったのだけど、ぼくたちはまだ知らなかったのだ。

 

 

「美月、私とリーナどっちを選ぶの!」

 

「勿論ワタシよね、ミヅキ!」

 

「いいえ、美月は私を選ぶわ、そうよね美月」

 

 

 

超絶美少女二人による戦争が行われることになるなんて。




――その後のメイドたち――


( ̄-  ̄ ) メイドA「何が『メイド体験実施中!プロ並みのカメラ技術を持つメイドさんが張り切って撮っちゃいます♡』よ。そんなキャンペーンやってなかったわよね?」

( ̄ω ̄;)メイドB「たしか、貴女の実家って写真館じゃなかった?」

( -`ω-)ドヤッ メイドD「うん、だからガチの機材を店に搬入させました」


(o >ω<)o メイドA「メイド服着せるためにそこまでしますか……でも」

(o >ω<)o メイドB「通報するか迷うレベルの気合だよね……でも」

(o >ω<)o メイドC「控えめに言って、犯罪級……でも」



( ー`дー´)キリッ メイドA・B・C「「「貴女は間違ってない」」」








Σ(゚д゚;)ヌオォ!? 店長「あれ!?帰ってきたら店が写真館みたいになってる!?」





次話から、また別のお話となるので、美少女戦争については書け次第番外編としてぶちこむか、回想として本編にぶちこもうと思っています。


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