美月転生。~お兄様からは逃げられない~   作:カボチャ自動販売機

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区切りの良いところで切ったら短めに……。
も、文字数より内容ですよね!(汗)



第五十七話 最強VS最強

車に乗せられた瞬間、耳栓とアイマスクで、視覚と聴覚を奪われ、そのままどこかへ運び込まれ、椅子に拘束された未亜は焦っていた。

 

――途中、エレベーターに乗ったのは間違いない……でも、何度も上がったり、下がったりして、何階なのかは分からない……そもそも、ここがどこか分かっていないのだけど。

……明らかにお寺ではないわ……二人の会話を聞いている限り、そこに向かうような口振りだったのに……。

 

 

思考を巡らせるも、答えが分かるはずもない。

精々分かるのは、ここから自力での脱出は不可能だと言うことだけだ。

魔法師としては二流、日本の高校生にすら劣る自分が、近接戦闘に優れ、魔法を無効化する術を持っている達也を含む数人を相手にそんなことは天地がひっくり返っても無理だ。

 

そうなれば、このまま捕虜になってしまうことは避けられない。

なら、考えるべきはその後。

 

 

――どこまでの情報を、どのタイミングで話すか。

 

 

持っている限りの情報を整理し、どこまで言っていいのかを考える。

達也は戦いに慣れている印象だった。どこかの家の関係者かとも思っていたが、実際は、特殊な訓練を受けた軍人なのかもしれない。

高校生として日常を送るセレネ・ゴールド=柴田美月の護衛として軍から派遣された者、そう考えれば、彼の優秀さと、歳の割に戦闘経験が豊富なのも頷ける。

相変わらず、当たらずも遠からず、しかしどこかずれている推理をしながら思考を巡らせ、未亜は一つの結論を出した。

 

 

――本当に重要な情報を言わずに、大した価値もない情報で相手を満足させる。

 

 

これから、されるであろう尋問、それにある程度まで耐え、もう限界であるかのように見せかけて、最も重要なことは言わずに、ここを乗り切る。

嘘の情報を下手に言わずに、本当の事を、本当に隠したいことを黙ったまま、話す。

 

未亜がするべきは、時間稼ぎ。

USNA軍のサポートチームが、この場所を割り出し、準備を整えるまでの。

 

 

 

「さて未亜、これから尋問を始めるわけだが、その前に話すべき事を話してくれれば、俺は何もしない。どうだろう、ここは穏便に済ませてみないか?」

 

 

耳栓が外され、達也の声が聞こえてくる。

感情の読めない声。その声から、何かを感じ取れる程、未亜は達也と親しくはない。

 

 

「頷くとでも?」

 

「まあ、それはそうだろうな」

 

 

ぽんっと、頭に手を置かれたのが分かる。

これから、どのような尋問が始まるのか。どんな尋問であっても、重要な情報は漏らさない。

 

 

 

――そのくらいの覚悟とプライドは私にもあるっ!

 

 

未亜が迫り来る尋問に、覚悟を決めた、その瞬間――

 

 

「なら、これで尋問は終了だ」

 

 

「はっ?」

 

 

―――それは勝手に終わりを迎えた。

 

 

「残念ながら未亜、君の耳栓を取った時点で、既に尋問は終了している。いや、尋問をして聞き出すべき情報(・・・・・・・・・・・・・)は全て引き出し終わっているというべきか」

 

 

達也の言葉の意味が分からなかった。

未亜は一言も、情報について話していない。まさか無意識の内に話していたのか、と一瞬考えたが、今、視界の端に写っている時計を見るに、自分が捕まってから、今に至るまで、自分の時間感覚とズレはない。つまり、自分は何らかの方法で自白をさせられてはいないということ。

ならば、一体どうやって――。

 

 

 

「――魔法兵器トリシューラ」

 

 

 

思考は、達也の一言で全て吹き飛んだ。

それは、一番言ってはいけなかったこと(・・・・・・・・・・・・・・)。未亜が一番隠そうとしていたこと(・・・・・・・・・・)だったのだから。

 

 

「USNA軍が開発中の魔法兵器、『トリシューラ』。衛星軌道上まで上昇し、世界中のあらゆる場所にヘビィ・メタルバーストを放つことができる。全くUSNAは未だに魔法師を兵器としてしか評価できない様だな。……まあ、それはこの国も同じことか」

 

「な、何故そこまでの情報を!?私ですら知ったのは今日だと言うのに!」

 

「俺も知ったのは、ついさっきだよ」

 

 

分からない。

ついさっき、とはつまり、未亜が拘束されている間に、ということだ。

いくら耳栓とアイマスクを付けられていても、何かされれば気がつくだろう。

未亜は精神干渉系魔法を疑ったが、それでも記憶を残さずに、何の違和感も与えず、情報を自白される。

そんなことが出来るとは思わない。

それこそ、有名な『忘却の川の支配者(レテ・ミストレス)』だって不可能だったはず。

 

 

「戦略級魔法『ヘビィ・メタルバースト』、密かにUSNAで開発されていた『FAE理論』、そして、黄金の錬金術師『セレネ・ゴールド』。

これら3つが揃うことで完成する超兵器か。確かにFAE理論が実現しているなら、可能だろうな」

 

 

情報は正確だ。

もう何もかもバレてしまっている。

 

 

――これで、後戻りは出来なくなった。

 

 

自分が不甲斐なかったばかりに、将来のある高校生の命はきっと口封じのために奪われてしまうだろう。

USNAは、日本に最高戦力(・・・・)を投入している。セレネ・ゴールドの確保は、今後のUSNAの発展に大きく関わってくるのだから当然だろう。

いくら達也が戦い慣れた達人であっても、相手はUSNA最強の魔法師。

 

これから起きるであろう悲劇に、未亜は声も出さずに項垂れた。

 

 

「優しいんだな」

 

 

優しさではなかった。

だってきっと、達也たちと話したこともなくて、日本の高校生を抹殺した、と聞いてもこんな気持ちにはならない。

自分が、人の命を奪う、そのトリガーになってしまったことが、嫌なだけなのかもしれない。

 

 

「だから教えておこう。いや、逆に謝らせてくれ。――USNAにトラウマを刻んでしまうことを」

 

 

自信。

アイマスクをされている未亜には、達也の表情は分からなかったが、それでもその声からはそうなることを信じて疑わない自信が溢れている。それはもう確信、と言える域の様ですらあった。

 

 

 

「……無理ですよ。こうして、今回の作戦が漏れてしまった以上USNAは本気になります。迅速に事態を終わらせようとするでしょう。いよいよ投入されるんですよ。

USNA最高戦力……スターズの総隊長にして、戦略級魔法師――」

 

 

そうだ。

既に日本へ入国し、準備を整えている。

正規軍人になって二年、歴代最年少でスターズ総隊長の座に就いた天才。

 

 

「――アンジー・シリウスが」

 

「それが?」

 

 

尚、揺らがない。

最強の名を前にして、それでも自信に揺らぎはない。

何が彼をこうまで信じさせるのか。

 

 

「USNA最強、確かに脅威だ。だがな、こちらは――」

 

 

 

――瞬間、窓ガラスが割れた。

そして、転がるように部屋の中に侵入したのは、怪人。深紅の赤い髪と、黄金の瞳、そこに黒ずくめの衣装、黒い仮面とくれば、そう称する他ない。

背格好から性別が分かる程ではないが、男性にしては小さく、華奢に見えるその怪人は、油断なく周囲を見渡す。その怪人こそがUSNA最強の魔法師、アンジー・シリウス。

 

 

迎え撃つは――

 

 

「動かないで頂戴ね、もう貴女は私の射程範囲内なのだから」

 

 

――四葉真夜。

 

 

 

「世界最強だ」

 

 

夜が訪れる。

闇が全てを覆い隠し、無数に輝く星々は一つ一つが防御不可能の流星となる。

 

 

流星群(ミーティア・ライン)

 

 

『夜の女王』、四葉真夜の代名詞たる魔法は、その深い闇と煌めく光の粒で、完全にアンジー・シリウスを捉えていた。

 




(`・ω・´)キリッ 水波「……もう貴女は私の射程範囲内なのだから」

Σ( ̄ロ ̄lll)真夜「私そんな顔していないわよ!?」



(ノ∀≦。)ノ プッ 水波「……も、もう貴女は、わた、私の射程範囲内なのだから……ぷふっ」

(*`Д´*) 真夜「笑いながら繰り返すの止めてくれるかしら!?///」



(゜-゜)テッテレー 水波「ちなみに尋問用にずっと録音していたみたいで、ここに音源が……カチッ……『もう貴女は私の射――」

(((`□´/)/¥ 真夜「い、いくらなの!?お金ならいくらでも出すから売って頂戴!」






(" ̄∀ ̄")ニヤリ 水波「チョロいですね」

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