美月転生。~お兄様からは逃げられない~   作:カボチャ自動販売機

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第二十五話 進路

ぼくはどうやら特殊な魔法を使えるらしい。

 

達也から教えてもらったぼくの魔法、『魔神の眼』はあらゆる魔法を見ただけで解析し、理解することができるのだとか。

 

魔法って見たら大体理解できるのかと思ってたけど、実際は見えもしないらしい。

達也のように特異な能力を持っている人間しかぼくの見えているように魔法を見ることは出来ず、見ただけで理解なんてことは達也にも出来ないんだとか。

 

 

ふっ、ぼくはなんて天才っ娘だったんだ。自分の才能が恐ろしいぜ。

 

とか言ってみるけど、本当に恐ろしいことが起きてしまうんだとか。

ぼくの魔法を手に入れるためならどんなことでもする、という連中が世の中には沢山いるらしい。万が一国外にでもぼくのことが漏れれば、国を越えて暗躍する奴等も現れるだろうとのこと。

 

 

達也はどうにも話を盛るから困る。

魔法を習いはじめて数ヶ月のぼくがそんなことになるわけがないじゃない。

 

 

ぼくはそう思うけど、達也と達也の実家は本気でそうなると思っているようで、ぼくにある程度の自衛が出来るようになって欲しいらしいのだ。

ぼくとしても、多少はヤバそうだと思っているので、自衛の手段は欲しい。

というわけで、この夏から九重八雲先生の元で武術を習ったり、実践的な魔法の運用方法を習ったりしているのだけど、そもそもぼくの『魔神の瞳』には、暴走の危険が伴うらしくかなり危ない代物のようなのだ。

 

以前、深雪も才能がありすぎるがゆえに普通の魔法師では到底起こり得ない魔法の暴走というのが起こっていた。

幼少の頃から魔法を学んでいたらしい深雪ですらそうなってしまうというのに、つい数ヶ月前から魔法を学びはじめたぼくでは魔法の暴走とやらもかなり危ういのかもしれない。

 

 

 

「だから美月さんには、もっときちんとした場で魔法を学んで欲しいのよ」

 

 

 

目の前でそうぼくを説得するのは、司波兄妹の叔母である妖艶な女性、四葉真夜さん。

年上の魅力というか魔力をぷんぷん感じさせる垂涎ものの美女で、ただ紅茶を口にしているだけで妖艶にぼくを誘惑してくる。

 

 

「美月さん、達也さんと一緒に国立魔法大学付属第一高校に進学してみない?」

 

 

そしてぼくは、そんな真夜さんによって、重要な選択を迫られていた。

 

 

時は二日前にまで遡る。

 

 

 

 

 

全国魔法科高校親善魔法競技大会。通称、九校戦。

 

 

日本魔法協会主催で行われる日本国内に9つある国立魔法大学付属高校の生徒がスポーツ系魔法競技で競い合う全国大会だ。

 

例年、富士演習場南東エリアの会場で10日間開催され、観客は10日間で述べ10万人ほどで、映像媒体による中継が行われている程人気のある大会なのだ。

 

 

その大会に、真由美さんは出場するようなのだ。

真由美さんは二年生ながら競技の代表に選ばれており、六つある競技の中からスピードシューティングとクラウドボールに出場するようだ。

他にもバトルボード、アイス・ピラーズ・ブレイク、ミラージ・バット、モノリス・コードなる競技があるらしい。

 

 

「というわけで、ぼくは応援に行きたいのですが……」

 

「無理だな、仕事がある」

 

「……ですよねー」

 

 

 

達也に、友人が九校戦に出場するから応援に行きたい!と同行をお願いしたのだが、当然とばかりに仕事があった。

達也はフォア・リーブス・テクノロジーで社員ばりに働いており、夏休みを社畜のごとく過ごしているため、休みなんてほとんどない。

まあ、達也がこうして働いているからこそ、フォア・リーブス・テクノロジーの設備を私的に使えるのであって、ぼくはその恩恵に与っているというわけだ。

仕事の合間にぼくに魔法を教える達也の熱意はどこからくるのかと言いたい。

夏休みだけで凄まじい程魔法の知識が増えました。受験生並みに勉強しているからね。

もう推薦決まってるのに、一体ぼくは何をしているんだろ……。

 

あっ、ちなみに達也を誘う前に薫と深雪を誘ったのだけど、薫には「人混みに行きたくない、興味ない、だるい」とばっさり断られ、深雪には「習い事が忙しいから」とやんわり断られた。

 

最後の頼みの綱が達也だったのだけど……駄目だったのだ。

 

うん……ぼく友達少ないね……。

 

 

 

「一人で富士演習場までいける自信ないし……あっ、そもそも泊まりじゃなきゃ無理なんじゃ……」

 

 

ぼくはちょっとだけ(・・・・・)方向音痴なので、今まで電車やバスで一人で目的地まで辿り着けたことがない。

謎の力が働いて、ぼくを目的地から遠ざけるのだ。

 

 

 

「……今からでは、もうホテルは取れないと思うぞ?九校戦は人気があるからな」

 

 

 

ごめんよ真由美さん……応援はテレビの前でするよ……。

そんな風にぼくが落ち込んでいると、達也が何やら考えてぼくに言う。

 

 

 

「少し待っていろ、当てがあるんだ」

 

 

 

この『当て』というのが四葉真夜さんだったわけだ。

そうしてぼくは九校戦一日前に四葉から派遣されてきた車に乗り込み、四葉本家に一泊することとなった。

四葉本家に一泊した後、真由美さんが出場する競技が行われる間、真夜さんが権力のゴリ押しで取ってくれたらしい会場近くのホテルに泊まる。

ぼくも達也同様仕事があるので、十日間全部、というわけにはいかないのだ。そんなことしたらまた水波ちゃんに泣かれてしまう。

 

 

 

「どう?一校に通うことによって発生する資金は全部出すし、入学までの勉強もしっかり優秀な先生をお呼びするから、貴女ならきっと合格できる。

遠慮はいらないのよ?貴女は達也さんの婚約者なのだから」

 

 

そんなわけでぼくはこうして四葉家にて、真夜さんと対面しているわけだ。

正直、芸術科高校へ進学したところで、どれだけ得るものがあるのだろうかと思っていたところはある。

一高に進学すれば、達也や深雪とまた学校生活を送れるわけで、そもそもぼくが絵を描いているのは、深雪の美しさに感動したからなのであって……。

 

 

 

 

「……すいません、すぐには答えを出せません」

 

「そう、急かすようなことをしてごめんなさい。進学先は良く考えて選ばなくては駄目よね。

お返事はまた今度でいいわよ?自分の意思でしっかり考えなさいな」

 

 

 

真夜さんはそう言ってくれたけど、実際、あまり時間はないだろう。

国立魔法大学付属第一高校は超難関校だ。

実技はともかく、筆記は達也に習っているとはいえ、ほとんど一からのスタートになる。

 

 

このまま推薦で楽々芸術科コースか。

魔法科高校を選んで一般入試の地獄の受験勉強コースか。

 

 

まずは明日の九校戦。

真由美さんの応援だけじゃなく、魔法科高校というのがどんなものなのか、その雰囲気だけでも掴めるようにしよう。

 

 

 

柴田美月、中学三年生。

進路で絶賛迷走中です。

 

 

 

 




─その夜の二人─


( ̄^ ̄)エッヘン 真夜「美月さんに進学の話はしておいたわ。達也さんの言うとおり、自分の意思で選ぶように、ともね」

(・`ω・)達也「美月は周りの環境に影響されやすいですから、その話をした後に九校戦を観戦すれば……一高を選ぶ可能性は高くなるでしょう」


|゚д゚)マサカ…真夜「……達也さん、まさかストーカーはしていないわよね?」


(・∀・)達也「する必要がありませんよ、最近では四六時中一緒にいるので」


(ノ_-;)ハア…真夜「……美月さんが少し可哀想ね……達也さんに協力するけど」


(゜ε ゜*)♪達也「ありがとうございます」





*後書き追加いたしました。



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