美月転生。~お兄様からは逃げられない~   作:カボチャ自動販売機

22 / 81
疲れたよ……。
冬コミ、一日目でダウン。残りは友人に託し、冬コミ分のエネルギーをここに回しました。




第二十一話 四葉家

ぼくは今、深雪と達也の実家に来ている。

 

達也たちの名字は司波だけど、実家の姓は四葉らしく、魔法業界ではかなり有名な家らしい。

 

 

旧長野県との境に近い旧山梨県の山々に囲まれた狭隘な盆地に存在していて、地図にすら載っておらず宅配システムが利用できないという、インドア派にとっては辛すぎるとんでもない田舎だから、長距離の移動となり、ぼくはもうお疲れだ。

 

これから、ここの当主だという達也たちの叔母さんに会うことになっているのだけど、正直眠たくてそれどころではない。

 

第一、まだ両親にもあったことがないというのになんで最初に叔母さんからなのか。

 

お父さん、娘さんをぼくにください!を言うタイミングが中々ないので困っている。

叔母さんが四葉家では一番権力を持っているらしいから、叔母さんに頼めばくれるのだろうか。

 

うん、そう考えると少しやる気が出てきた。でも眠い。

 

 

 

「美月、しっかりしなさい」

 

「んー、大丈夫さー、ぼくはしっかりしてるなうー」

 

 

 

なんだかここ最近ずっと眠い。

先週の日曜日、達也たちとショッピングタワーに行った時も途中で寝てしまったらしいしね。

深雪に着替えさせられて、とても恥ずかしかったというのは覚えているんだけど……その後の記憶がないから、たぶん恥ずかし寝したのだろう。

気がついたらキャビネットに乗っていた。

 

思えば集合も朝早かったし、運動もして疲れていたのかもしれない。

 

今日だって朝の五時に起きて、すごく眠いのに無理矢理引っ張れるようにして、家まで迎えに来ていた車に乗せられて……そこからはほとんど記憶がない。

なんか深雪が礼儀作法についてとか語っていた気がするけど全然聞いてなかった。

 

とりあえず、ペコペコしておけば大丈夫かな?

 

 

「本当に大丈夫なのかしら……」

 

「……美月のことは叔母上も分かってくださっている。強い眠気が症状の一つであることもな」

 

 

謁見室と言うらしい部屋でぼくは達也と深雪と叔母さんが来るのを待っているんだけど、もう眠さが限界に近い。

流石にこんなにずっと眠いのはまずいのではないかと自分でも思うけど、達也のすすめで、何日も学校を休んで検査してみた結果、特に異常はなかったという。

達也の話では、魔法師が魔法を覚えたてに、このような現象が起きるらしい。

 

 

「美月、眠っていていいぞ。まだ叔母上がいらっしゃるまで時間がかかるだろうからな」

 

 

なんだか最近妙に優しい達也が良いというので、眠気に身を任せることにする。

 

ふかふかなソファーは、ぼくを簡単に眠りの世界へと誘った。

 

 

 

 

 

四葉家当主、四葉真夜が部屋にやって来ても、達也は美月を起こすことはしなかった。

そしてそれを、真夜も咎めることはなく、今日の本題へと入っていく。

 

 

「『魔神』のことは四葉の外部には漏れていません……今のところは、という注釈がつきますが」

 

 

「その辺は抜かりなく。『魔神』の発動条件が正確に把握できるまで美月には魔法を使わせません」

 

 

 

真夜の言葉は存外に今後も外部に情報を漏らすな、ということに他ならず、達也もそれを理解している。

 

 

 

「三日程美月を検査して分かったのは、美月の瞳は『霊視放射光過敏症』などではないということです」

 

 

 

本人の自己申告によって美月が霊視放射光過敏症であることを知っていた達也は美月から聞いていた症状を常々疑問に思っていた。

 

定期的に症状が強くなる、つまり普段より強く見えるようになることがある、と美月はいうが、特に体調が悪いわけでもないのならそれはおかしい。

そのような症状は霊視放射光過敏症では報告されていない症例だ。

 

そしてもっともおかしいのが美月の能力。

 

霊視放射光過敏症の状態だと、人の心が読める。

見える光の揺らぎや色で何となく分かるというのだ。

実際に真偽は確認しており力が本物であることは理解しているがそれでも信じられない程に破格の力だ。

 

勿論これも通常の霊視放射光過敏症ではありえない。

 

 

 

「霊視放射光過敏症にはない症状が見られますし、美月の眼としての機能は常人のそれを越えています。今の美月には飛んでくる銃弾さえも捉えることができるでしょう」

 

 

そして、ショッピングタワーの一件から美月の瞳は完全に常識を逸したものとなった。

本人はまだ気がついていないが、それは無意識に本人がコントロールしているからだろう。

 

 

 

「美月の瞳の異常性は美月の魔法の副作用……というより俺の『精霊の眼』のような魔法の副産物である可能性が高いです。

 

美月の魔法、推測では『眼で見たあらゆる魔法を解析し、理解する』能力『魔神の眼』、そのおまけが美月の異常な視力でしょう。

 

美月の異常な眠気はこの視力の急激な上昇による一時的なもののようです」

 

 

 

達也のとんでもない報告は一度、説明を受けているとはいえ信じがたいものだった。

何も聞かされておらず、全く話についていけてなかった深雪が、思わず声を上げてしまいそうになったのも仕方がない。

 

 

 

「……現に達也さんの魔法を美月さんは『理解』したのよね?」

 

「ええ、実際に使用したところを見ましたから。

それもビル一つを丸々消し去るという大規模な形で、です。……あの時、俺は美月を庇いながら咄嗟に『雲散霧消(ミスト・ディスパージョン)』をスナイパーに放ちましたから、その時、『理解』したのだと思います」

 

 

 

あの日、四葉からの襲撃を受け、達也は被弾しながらも、銃弾の軌道から精霊の眼で捉えたスナイパーを『雲散霧消(ミスト・ディスパージョン)』で消し去った。

しかしその直後、そのスナイパーのいたビルが丸々消え去ったのだ。

 

達也は何もしていない。

 

 

そして達也の精霊の眼は魔法を使った人物を正確に捉える。

そこには、虚ろな目で涙を流しながら、右手をどこか遠くに伸ばした美月がいた。

 

 

 

雲散霧消(ミスト・ディスパージョン)』は、とてつもない殺傷性を誇る分解魔法で、軍事機密指定されているほど強力な魔法だ。

 

物質の構造情報に干渉することにより、物質を元素レベルの分子に分解する魔法であり、現代魔法において最高難度の魔法に属するだろう。

 

 

つまり美月はそれをほんの一瞬目にしただけで、即座に使用したのだ。

 

 

 

「眼で見たあらゆる魔法を解析し、理解する……そんなことができたのなら、それは神にも等しい力よ……魔法の神……『魔神』」

 

 

『魔神』。

四葉真夜によって命名された美月の二つ名。

それは美月の魔法であるとされている『魔神の眼』と意味を同じくする、正に神の力の体現者。

 

 

「四葉が最初に発見できたのは最高の幸運だったわ」

 

 

真夜は戦慄する。

 

もし、この力が他家に渡っていたのなら……それだけでこの国の魔法師の勢力図は大きく覆ることになる。

それほどの力だ。

何せ、如何なる魔法でさえ、自分のものとし、理解できるのだから。

 

 

達也に悪い影響(・・・・)を与えるからと処分することにしていたが、こうなってくれば話は変わってくる。

 

 

 

「彼女は四葉が手に入れます……そのために……」

 

 

 

真夜の中で美月を手にいれることは決定事項だった。そのためなら如何なる犠牲、如何なる手札をも切る覚悟。

 

 

 

「柴田美月さんを達也さんの婚約者とします。これは四葉家当主としての決定です」

 

 

 

つまり、達也さん大勝利というわけだった。

 

 

 

美月のあずかり知らぬところで、事態は急展開を迎える。

 

 

それはつまり、娘さんを下さい!の前に、自分が貰われるかもしれないということだ。

 

 

 

美月を落とすためならば、本気の四葉のバックアップを受けられる達也……。

 

 

 

美月はもう、逃げられそうにない。

 




─そのころの深雪さん─


(・_・?)深雪「(えっ、美月を起こさないのですか?)」

“□ヽ(・_・。)フキフキ 深雪「(魔神……?二人は何の話を……あっ美月が涎を……拭いてあげないと……)」


(´・ω・`)深雪「(魔神の眼!?……私、何も聞いてない……)」


(゚ロ゚; 三 ;゚ロ゚)深雪「(ここここ婚約……!?いえ、きっとこんにゃく……!?こんにゃ、にゃ、にゃにゃ!)」




(゚ー゚?)達也「叔母上、そういえば何故深雪には今日まで秘密だったのですか?」

(*゚∀゚)ハァハァ 真夜「この反応を見るためよ」




今年最後の投稿。
後数話で原作突入!原作キャラもガンガン出していきます!

さて、明日も0時に投稿します。
それでは皆さん、良いお年を!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。