朝食を食べ終えて一旦解散した後、僕は言われた通り、第一格納庫――その名の通り、艤装やらが格納されている倉庫らしい――にやって来た。昨日皐月に案内して貰ったおかげだろう、特に迷うことも無かった。
「来たね。さ、入って」
入り口の前で待っていたヴェールヌイに案内されて、僕は部屋の中へと足を踏み入れる。ヴェールヌイは、既に艤装を装着していた。
「――広いな」
皐月と来た時は、中には入らなかったので分からなかったが、内部はかなり広い。内装は、いかにも倉庫ですといった風で、大量のコンテナが置かれていた。
「ええと、三十五番、三十五番――ああ、これだ」
――歩きながら、整列されたコンテナをきょろきょろと見ていたヴェールヌイが、不意に一つのコンテナを指差した。
「この中に、君の艤装が入っている。開けてみてくれ」
「分かった」
言われた通りに、二メートル程度の高さで、ちょうど
「――これが、私の」
コンテナの中には、『艦これ』でも見慣れた、長月の艤装が収められていた。正確に言えば、『艦これ』では長月が付けていない、背中の艤装や装甲板も入っていたけれど。
「今朝東京から届いたばかりの、『長月』用の艤装だ。さあ、付けてみて」
「付け……って、どうすれば良いんだ?」
「ああ、そっか……ええとね、これが、こうで――」
ヴェールヌイに手伝って貰いながら、艤装を装着していく。重そうな見た目の割に、背負ってもあまり重量を感じなかった。そもそも軽量なのか、艦娘の身体能力のおかげか、あるいは、艤装を装着した状態こそが、艦娘として自然だからなのか。
「――はい、できたよ」
「おお――」
――背中には機関部。腕には装甲と単装砲。腰には爆雷、足首には魚雷。
「――こいつはいいな!」
思わずテンションが上がり、くるりと一回転した。すげえ、艦娘じゃん! 僕、艦娘じゃん!
「問題は――無さそうだね、良かった。じゃあ、付いてきて」
ヴェールヌイは再び歩き出し、僕もその後ろに続く。かちゃかちゃという、艤装の擦れる音が、辺りに響く。ヴェールヌイはほぼ無音で歩いているけど、慣れの問題だろうか。
「この隣に、艦娘用の桟橋があるんだ。基本的に、艦娘はそこから出撃することになる」
言いながら、ヴェールヌイは重そうな鉄扉を開く。潮の香りと強い日差しが、倉庫の中へと入り込んだ。
「――来たわね、二人とも」
桟橋では、艤装を身に付けた暁が待っていた。
「さあ、訓練開始だ。――マトモに動けるようになるまで、徹底的に叩き込んであげるよ」
「……お、お手柔らかに、な?」
若干目つきが怖いヴェールヌイと、苦笑いする暁。そして、二人の指導の下――僕こと長月(偽)の訓練が、開始された。