Fate/eternal rising [another saga]   作:Gヘッド

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はい!Gヘッドです!

色々な謎に包まれた聖杯戦争。その聖杯戦争を彼らは読み解いてゆく⁉︎


正直なところ、キャスターって生きてるんっすか?
遊びに来た


「よし、遊びに来たぜ!」

 

「……はぁ。で、ここはどこなんですか?」

 

 目の前にあるのはTHE NIPPONみたいな日本家屋。そのルックスは俺たちみたいな庶民を拒むようで、年中ほぼユニ◯ロの服だけで満足できるような格好の俺たちにはあまりにも不釣り合いでしかない。玄関の門は俺の家の玄関のドアよりも遥かに大きく、金銭的面ではこの俺でさえも負けたと言わせしめるほど。

 

 大っきな門に小さなインターホンが付いていて、そのインターホンを特に怖気つくことなく、ポチッと押した。

 

「月城です。月城陽香です」

 

 すると、大きな門がゆっくりと開いた。その門の隙間から女の子の顔がひょっこりと出てきた。

 

 雪方である。前髪をピンで留め、いかにも品の良さそうな姿。その姿を見たセイバーは決まり悪い顔をした。セイバーは俺の肩を小突く。

 

「ちょっと、ヨウ⁉︎これって、どういうことですか⁉︎こ、この人って、ライダーの……」

 

「うるさい。チィと黙ってろ」

 

 俺はセイバーのおでこに貼ってデコピンをした。若干指の先に強化の魔術を付けて。セイバーはおでこを手で押さえ、悶絶している。その間に、面倒くさいことは済ませよう。

 

「なぁ、雪方。そのさ、話があるんだけどさ……」

 

 俺が話しかけると、彼女は俺に背を向けた。そのまま、彼女は家の中へと入って行く。どうやら家の中に入れと指示されているらしい。確かに門前で聖杯戦争のことなんて話すことも出来ないし、中に入るしかないようだ。

 

「おい、行くぞ。セイバー」

 

 道路で転げ回っているセイバーに声をかけた俺は家の中へと入って行く。セイバーはそもそも雪方の家に来たことがないので、俺と一緒にいないと不安なのだろうか、俺にくっ付いていた。

 

 門の中に入ってすぐ庭園が目の前に飛び込んできた。松の木や、鯉がいる池に石灯籠まである。俺の目が日本漬けにされているようで、こんな風景を見させる庭を持っているなんて、雪方家の金持ちさには敬服する。

 

 セイバーはその庭をジロジロと見ていた。

 

「どうした?」

 

「いや、ライダーのマスターですよ?もしかしたら、罠とかあるかもしれないじゃないですか」

 

「あるわけねーだろ。雪方は罠とかそういうの仕掛けたりしねーよ」

 

「何で分かるんですか?」

 

「ん?ああ、だって、強化の魔術しか使ってこねーような魔術師だぞ?かすっちぃ魔術師なんだから、罠なんか仕掛ける余裕もないだろうな」

 

 そう言った時、玄関の近くにあった小さな鹿威しが水の重さに耐えられず、石に当たり、コツンと音を鳴らした。

 

「ギャァァ‼︎罠だ!」

 

「ちっげぇーよ!鹿威し!家にもあるだろ?」

 

「ありませんよ!」

 

「あれ?なかったっけ?……、ああ、水道代の無駄だから外したんだわ」

 

 そんなこんなで家の中に入った。家の中に入って、まず驚くのは大きな絵画。俺の身長二人分くらいの長さの絵画が玄関に飾られており、お金持ち感がスゴい。

 

「家の入り口、広いですねぇ〜。ヨウの家の二倍くらい」

 

「俺の家、そこそこの価値はあると思うけど?中の上くらいだよ?」

 

 俺が自分の家の自慢話を軽く口にしていたら、雪方が出てきた。彼女の手にはお茶と和菓子が乗ったお盆があった。

 

「そんな所で何してんの?」

 

 ぶっきらぼうに冷たく言いながらも、その手に握られているお盆は優しさの塊。本当、雪方って良く出来た子だわ。成績優秀な子はこういうことも出来るのか。俺とは大違い。

 

 お言葉に甘えて、俺は靴を脱いで、彼女の後について行く。広い屋敷の階段を上り、雪方は俺たちをある部屋へと招き入れた。そこは雪方の自室である。

 

 女の子の部屋にしてみれば極めて質素。だが、非常に清潔で女性らしい部屋。そんな部屋が雪方の自室であった。セイバーは初めて見る他の人の部屋に興奮を隠せないでいる。

 

 が、それと対照的に俺は頭を悩ませた。

 

「なぁ、雪方。お前、何の躊躇もなく、俺をこの部屋に入れたな」

 

「何で?別に躊躇うことなんてないでしょう?」

 

「いやいやいやいや、普通躊躇うだろ!俺、男だよ?普通、女の子が自分の部屋に男の子を入れるときなんて、理由は一つぐらいしかないよ?セックスぐらいだよ?」

 

 いや、まぁ、もしかしたらセックス以外にもあるのかもしれないけれど、それでも相当親しげな関係でないと普通女の子は男を自分の部屋に連れて行かない。それこそ、恋人とか、そういう類ではないと。

 

「大丈夫よ。ヨウだからよ。だって、ヨウ、襲ったりしないだろうし」

 

 まるで俺がチキンな男だからと言っているようである。確かに俺はチキンな野郎だが、それを本人の前で堂々と言うのはどうかと思いですが……。前言撤回、全然優しくない。一体どんな風な教育方針なのか、親の顔が知りたいわ。知ってるけど……。

 

「つーか、そういう色々な要因が全部重なって、あんなことが起きたんだろ⁉︎」

 

 俺がそう言うと、雪方は目を俺から逸らした。頬を赤らめて恥ずかしそうにする一方、何処か憂いにも似た雰囲気が彼女にあった。まるでNGワードを口にしてしまったかのようで、俺はその後の言葉が続かなかった。

 

 完ッ璧に地雷を踏んだわ。ああ、どうしよう。やらかした。次の話のネタが全然思いつかない。

 

 ……うん。

 

 言葉が出てこないため、もう話すのは諦めた。盆に乗っている和菓子とお茶をテーブルに置いた。

 

「おい、(セイバー)、お菓子があるぞ」

 

 セイバーはその言葉に反応した。さっきまで興味の対象が部屋のみで、俺たちのことなんて身もしなかったのに、餌付けの時間となると、彼女は目の色を変えて俺を見た。

 

「お菓子ッ⁉︎」

 

 実に嬉しそうな表情である。彼女が犬であったのならば、きっと大きく尻尾を振っているだろう。煌めくその目は馬鹿なセイバーらしい。街中で、家にお菓子があるからおじさんについてきなって言われたら絶対について行っちゃうパターンだよ。毎度毎度思うけど、やはりこいつには餌付けが一番効果的に手慣らす方法なのかもしれない。

 

 部屋の中央に置かれた小さな丸いテーブル。その上に置かれたお菓子を食べようと、座布団の上に正座をした。そして、さて食べようかとなった時、セイバーはある事に気がついた。

 

「……あれ?これってどうやって食べるんです?」

 

 セイバーは分からなかった。それもそのはず、その和菓子、結構高級なやつ(多分)。例えコンビニで買えるような値段のやつでも、雪方が出すのだから、ちゃんとした漆塗りの黒いお皿に載っていて、黒文字がお皿に添えてある。

 

「ヨウ、箸とかないんですか?」

 

 あるわけねぇぇぇぇだろぉぉぉ‼︎うひゃひゃひゃひゃッ!和菓子に箸なんて出さねぇよ!

 

 今にでも腹を抱えて笑いたかったが、さすがに雪方の目の前でセイバーを弄り倒したら、ある意味でまた変な空気になってしまう。ここは一旦、湧き出る笑いを抑えて冷静に対応しよう。

 

「なぁ、雪方。フォークをこの馬鹿のために持って来てくれ」

 

「う、うん……」

 

 雪方は頷くと、フォークを取るためだけに部屋から出た。そして、彼女が部屋から出た瞬間、俺とセイバーは顔を合わせた。

 

「ふぅ〜、息が詰まりそうでしたぁ。何なんですか?ヨウ、色々とあの人とあったみたいですね?」

 

「うるせぇよ。確かに結構なことがあったけど、お前にそれは関係ない。つーかさ、お前」

 

「何です?」

 

「盗み聞きとか趣味悪いぞ」

 

「なっ⁉︎盗み聞きじゃありません!た、ただ、その、私がどう見たってお話に入ってはならないような殺伐とした雰囲気が二人の間に流れていて、私、どうしたらよいか分からず……」

 

「いや、バリバリ楽しんでるだろ?女の子の部屋」

 

「ま、まぁ……」

 

 何故彼女が女の子の部屋に来て興奮しているのだろうか。何故男である俺が女の子の部屋に来ているのに興奮しないのだろうか。セイバーはワクワクとしているが、俺は相対的にどんよりとした暗い感情しかなかった。

 

 だが、しょうがない。これも全て、聖杯戦争のためである。

 

 雪方がフォーク一本を手にして帰ってきた。セイバーは雪方からフォークを受け取るとついに和菓子を食べられるという喜びがまんま顔に出ていた。ニタニタと笑みを浮かべて、気持ち悪い。

 

 俺と雪方も座布団を敷いて、その上に座った。お茶と和菓子を小さなテーブルの上に置く。目の前にある和菓子は山茶花の形をした上生菓子。桃色の薄っすらと白いぼかしが付いた花弁の中に黄色い蕊が飾られており、若干食べるのがもったいない。この綺麗な形のままにしておきたいと思うほど、上品で、かつ可愛らしい見た目。だが、出されたからには食べる。というより、どうせ高級なやつだし、食べとかないと損。

 

 黒文字で山茶花の上生菓子に切り口を入れる。そして、もう一度、黒文字で山茶花の花弁を切り取り、小さな桃色の花弁を口に運んだ。練り切りの餡が実に美味しい。小さな可愛らしい見た目からの予想とは違い、思ったよりも味が濃く、しかしまろやかで口当たりが実に良い。品のある味が舌に残る。その味の余韻はそれほど自己主張の強いわけではなく、仄かに香る甘みがこの静かな空気の季節にはぴったりだ。

 

 セイバーは頬を手に当てて、うっとりとした表情を浮かべる。

 

「美味しいです。はぁ〜、私、幸せぇ〜」

 

 セイバーはきっとこんな上品なお菓子を食べたことがないのだろう。生前は王の血を引き継いでいながらも、不幸の連続で本来の彼女のいるべき地位に立てなかったのだから。

 

 まぁ、彼女も普通の女の子のような一面があるということである。甘いものが好きなんて可愛らしい一面がある。

 

 いや、彼女は普通の女の子なのだろう。ただ、彼女は運命に見捨てられたせいで、剣を握り死地に立たねばならない。なんて憐れなのだろうか。

 

「ねぇ、ヨウ。で、私の家に来たわけって?」

 

「ん?ああ、忘れてたわ。本題」

 

「忘れちゃダメでしょ……」

 

 彼女はため息を吐く。だが、彼女がため息を吐いたところで、俺がこういう男であるというのは変わらないし、ましてや変える気もない。

 

「単刀直入に言うんだけどさ、お前、アーチャーと接触したか?」

 

 その時、セイバーと雪方はピクリと反応した。セイバーもさっきの楽しそうな雰囲気から、一瞬にして静かになっている。彼女も雪方の答えを聞きたいようだ。

 

「した」

 

 雪方はそう答えた。その答えを聞いた俺たちは動揺した。セイバーは彼女からアーチャーの話を聞こうと食いついており、少しだけ嬉しそうだが、俺は全然嬉しくなかった。出来れば、接触していないと答えてほしかったのだが。だが、そこは呑み込もう。呑み込んで、アーチャーとどのような話をしたのだろうか。

 

「その、アーチャーとはどのような会話をしたのですか?」

 

「え?アーチャーは、ヨウがセイバーのマスターだって……」

 

「だから、お前は俺がセイバーを召還したと知ってたのか」

 

 ん?ちょっと待てよ。待て待て待て。

 

 どういうことだ?アーチャーは雪方に俺がセイバーを召還したことをバラしたのか?それって、つまり、セイバーを戦わせるということじゃないのか?

 

 何故、彼はセイバーをライダーと戦わせようとしたのだ?だって、アーチャーはセイバーの願いを叶えるというのが彼の望みであり、それならば、セイバーを危ない目に遭わせる必要はない。

 

 俺とセイバーはその疑問に気付き、アーチャーの謎を解こうとした。だが、やはり彼の行動の意図が分からない。仕方がないので、ここは鵜呑みにして次の話を聞こう。

 

「他は何か話したのか?」

 

「他は……特に」

 

「キャスターの話とかは聞いたか?」

 

「キャスター?いや、何も……」

 

 そうか。うむ、これは可能性があるかもしれん。さっき、雪方はアーチャーに接触して、絶望的かと思ったが、その時アーチャーはキャスターのことについて触れていなかったという。

 

「じゃぁ、キャスターをお前は見たか?」

 

「……見た、のかもしれない」

 

 あやふやな彼女の言葉は核心を突こうとしていた俺を揺らす。

 

「かもしれない?それは、どういうことだ?」

 

「教えてもいいけど……。次の狙いはキャスター?」

 

「いいや、違う。別に狙ってるわけじゃねぇんだ。ただ、キャスターの存在が必要なんだ」

 

 キャスターが生きている。その確証を得ることができれば、まだ聖杯は現れることなどない。だって、聖杯に溜まるサーヴァントの魂は七つではないから。狙う必要など元々ない。

 

「キャスター、またはそのマスターの顔立ちとか覚えてるか?覚えてたら教えてくれ」

 

「いいよ、覚えてる。一応、鮮烈だったから……」

 

 鮮烈。それはつまり、彼女にとってその記憶がとても刺激的、または衝撃的であったからということ。ライダーが倒されてから数日も経っているから、それなりに記憶は薄れゆくが、それでも彼女は覚えているらしい。

 

 どのようなサーヴァントなのだろうか。

 

 俺とセイバーは彼女の話に耳を傾けた。

 

「どこから話そうか。じゃぁ、キャスターを見つけたところから……」




はい、ということで、久々の人物紹介。雪方ちゃんか、前回のサーヴァントのどちらかで迷ったんですけど、前回のサーヴァントの方を今回は紹介いたします。

スキールニル

パラメーター:筋力C・耐久B・敏捷A・魔力C・幸運D・宝具A+
スキル:対魔力A・騎乗B・神の加護B・単独行動D・召使いA+

前回の聖杯戦争のライダーのサーヴァント。マスターは(なぎ)信子(のぶこ)。敬虔なクリスチャン、もとい元聖堂教会の掃除屋である彼女と契約をしてしまったサーヴァントである。

非常にチャラく、綺麗なお姉さんが街中で歩いているのを見かけると声を変えるナンパ野郎。そんなスキールニルだが、マスターのことを契約の時に主人と認めたため、主人に尽くすといういい面も持っている。なんだかんだ言って、好かれやすいタイプ。

マスターは黒鍵を使ったりして闘い、戦闘面では頼れる存在だが、魔術師としては三流どころか、魔術師ということを名乗ることのできないくらい酷い。そのため色々と苦労をしたサーヴァント。

宝具:『邪炎を駆け抜ける神馬(ブローズグホーヴィ)』ランクA・対人宝具・レンジ0・最大補足1人
生前のご主人であるフレイより賜った馬。この馬で炎を飛び越えたという伝承から。
簡単に言っちゃえば、宝具が馬。その馬に乗るという宝具。時速は80キロとサーヴァントにしてはそこまで速くはないが、何と言ってもこの宝具の一番の能力は、この宝具の発動時はサーヴァントの対魔力がEXになるのである。ただでさえ高い対魔力が、さらに高くなるという、守りとしてはチート宝具。

魔は動けぬものと化す(グレイプニル)』ランクB・対魔獣宝具・レンジ2〜10・最大補足1人
フェンリルを縛ったものすげー縄。対魔獣宝具だが、人にも使える。この宝具で縛ったものは動けなくなるという代物。ちなみに、動けなくなるというのは心臓さえも止めてしまう。そもそも、縛られたものの時を永遠に止めるということ。

「おっ⁉︎これはこれは。俺っち召還されちゃった?ん?あんたがマスターってやつかな?つまり、俺っちのご主人様かよ。はぁ〜、召使いって案外大変なのよ、マジで。まぁ、意外とその仕事さ、俺っちの性に合ってるんだけどね〜。それより、あんた、美人なのにそんな服、ダッサ〜。あれだろぉ?シスターって言うんだろ?シスター服はさすがに興奮しないわ〜。他の服着てよ!俺っちの股間をウズウズさせるくらいの!え〜、ダメぇ〜?へいへい、分かりましたよ。禁欲生活致しま〜す。まったく、この時代に来ても禁欲生活しろってご主人様に言われちったよ。まぁ、そんなこと言われて3時間後に我慢出来ずにあんなことやこんなことしたんだけど……」

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