Fate/eternal rising [another saga]   作:Gヘッド

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はい!Gヘッドです!

今回は少し長いかもです。まぁ、バトルもありますよ。


狂戦士との対峙

 赤日(せきひ)山。海の近くにあるこの山は日が暮れる時に太陽の光が海に反射して赤く照らされることからこの名がついた。高さ50メートルくらいの小さな山。というより、もう見た感じ、山というよりも大きな森のような感じ。

 

 昨日、セイギはこの山に用があると言っていた。なら、セイギはこの山で何かあったのではないのか?そうとしか今の俺は思えなかった。夜中にあんな危ない目に()っている俺はそういうことしか考えらないのである。

 

 急いでペダルを()いで赤日山まで着くが、俺はどこらへんにセイギがいるか全然わからない。一応、自転車を止めてカバンを持って山の中に入る。山の中に通ってる道沿いに歩くが、セイギをどうやって見つければいいのかわからない。道はコンクリートで固められているが、左右はふかふかの土の上に葉が寒さで落ちた禿()げた木が連なっている。鳥のさえずる声しか聞こえない。

 

 さっきからセイギに電話をかけているが、セイギは電話に出ない。その現実が俺を(あせ)らせる。

 

 俺はただ歩いているだけなのかと思っているとセイバーが俺にこう告げた。

 

「ヨウ‼︎この山の裏側で火災が発生しているようです!」

 

「え?反対側で火災⁉︎」

 

「はい。どうやら木造の家が燃えているみたいです」

 

 俺はセイバーが言ったことを信じた。彼女はどうやら鼻がきくらしく、燃えている臭いを嗅ぎとったらしい。

 

 俺はセイバーと一緒に全力で小さな山を駆ける。禿げた木が流れるように俺の視界から出て行く。そして、先にまた禿げた木が現れる。

 

 今、俺はただ大切な友人を失いたくないの一心で走っている。セイバーはそんな俺を見て話しかけた。

 

「意外ですね。あなたはそっけない人だと思っていました。けど、ちゃんと人への思いはあるのですね」

 

「それはまるで『俺が最低野郎だと思ってました』って言いたげな言葉だな」

 

「まぁ、そうですね。私、あまり人のこと信用したくないので……でも、あなたなら信用できそうです」

 

 セイバーの過去を俺は知らない。けど、俺はこう聞いた時、知りたくないと思った。彼女はとても悲しい過去がある。そう俺は直感的に感じ取ってしまった。俺はそんな彼女のマスターとして知る義務がある。そして、そんな彼女を受け止めなければならない。俺は受け止められるほどの男であるだろうか?それほどの人であるだろうか?

 

 俺はセイバーにこう言い返した。

 

「俺は自分勝手な奴だよ。助けたいわけじゃない。俺のそばから離れられたくないからの一心で動いている。俺はお前が思っているほど優しい奴じゃないさ」

 

 俺とセイバーは確かに極度の『めんどくさがりや』と『真面目バカ』の相性の悪いコンビである。けど、俺たち二人にはどこか似たところを感じた。それが、二人の歩調を合わせた。

 

 俺たちは山の反対側まで来た。黒い煙がもくもくと空に上がり、山小屋らしきものが燃えている。俺はその時、もしかしたらと思ってしまった。

 

 俺は炎たちめくる山小屋に向かって俺は叫んだ。

 

「おい‼︎セイギ‼︎いるのか⁉︎」

 

 しかし、返事は聞こえてこない。聞こえてくるのは炎がメラメラと音を立てて、木を燃やす音のみ。そして、鳥がまたさえずる。

 

 俺はこの時、あるミスを犯した。この時、俺は声を出さなければよかったのだ。けど、俺は声を出してしまった。

 

「一般人か……。まぁ、見られちゃったかもしんない。殺してよ。バーサーカー」

 

 その声は背後から聞こえた。背後を振り返るとそこには小さな少年と黒い大男が立っている。大男の手には巨大な剣があった。大男が持っていても、剣の先は地面についている。それほどまでに大きい剣であった。

 

「ヨウ‼︎」

 

 セイバーは俺の前に立った。いや、俺を守ろうとした。それは、マスターとしてなのか、人としてなのか。

 

 少年の手には令呪が刻まれていた。俺はその時、少しだけ後ずさりしてしまった。こんな子供でさえも聖杯戦争に参加するのかと。そして、そんな少年が連れているのはサーヴァントであると。

 

「おい、セイバー。今、朝なんだけど‼︎」

 

「いや、別に朝なら来ないというわけではありません。一般人に見られればいいのです。それか、見られても消せばいいのです。外にこの聖杯戦争のことを漏らさなければ」

 

 山の中。俺たちは今、そこにいる。外からじゃ認識されもしない。山の中に登らないかぎり見られることは一切ない。それに、この山に登る人はまず少ない。こんな小さな山は観光名所というわけでもないし、地元の人だって全然来ないのである。

 

 それが(あだ)となってしまった。人が来なけりゃ闘いは起こるのだ。朝でも闘いが起きないってわけじゃない。

 

 少年が連れている肌の黒いサーヴァント。巨大な図体(ずうたい)から湯気が出ている。熱気が少し離れた俺にも伝わった。

 

「バーサーカー、あいつらは敵だ。殺せ」

 

 少年はバーサーカーに命令した。バーサーカーは剣を振り回しながら物凄い勢いで俺たちに突進してくる。最初、バーサーカーはセイバーに攻撃を仕掛けた。セイバーは光るレイピアを手にし、バーサーカーの前に立ちはだかる。

 

 セイバーのレイピアじゃ、バーサーカーの大剣を受け止めることはできない。剣が折れてしまう。セイバーは絶妙なタイミングと力加減で敵の攻撃を流していく。けれど、バーサーカーの身体能力は異常とも言えた。セイバーがバーサーカーの攻撃を流しても、次の攻撃までの隙がなく、攻撃の連撃である。その早さはセイバーの体力を削っていく。

 

 しかし、早さの差だけではセイバーはバテたりなんかしない。けど、セイバーは息を切らしていた。物凄い汗の量である。

 

「ぐっ、熱い!この熱気、何者?」

 

 セイバーは熱いと言った。そう言われれば辺りの気温が少し暖かいようにも思える。……おかしい。今の季節は秋の終わり頃。または冬の初めくらい。それなのに、この熱気は異常である。

 

 セイバーの目に汗が入る。セイバーは眼を閉じた。その隙をバーサーカーは見逃さない。バーサーカーはセイバーを一気にねじ伏せ、蹴り飛ばした。セイバーは英雄である。が、一人の女の子でもあるのだ。体は軽く、力は少し弱い。バーサーカーに蹴られたセイバーは遠くまで吹っ飛ばされる。

 

 しかし、バーサーカーの狙いはセイバーを倒すことじゃない。マスターを倒すこと、つまり俺を殺すことだ。英霊であるサーヴァントを殺すより、マスターを殺したほうが絶対に効率的だし、手っ取り早い。

 

 バーサーカーは剣を背の後ろまで持っていく。そして、全力で俺に向かって振り下ろした。俺はとっさにカバンの中に手を突っ込む。そして、あるものを取り出した。

 

 キンッ‼︎

 

 金属と金属がぶつかり合う音が響く。俺はバーサーカーの振り下ろした時の爆風で吹き飛ばされる。けれども、体に傷はない。俺の右手には短剣があった。これはこの山に来る前にセイバーがもしものためにと、カバンの中に隠せる短剣を俺に与えていたものである。

 

 俺は剣術を少しだが、かじった事がある。俺が使ってたのは短剣ではないが、毎日夕食を作っているため、包丁(さば)きには少しだけ自信があるつもり。

 

「あっぶねぇ!セイバーが剣くれなかったら確実に死んでたわ‼︎」

 

「ええ、そのようです。我ながらいい選択であったと思います」

 

 俺とセイバーは立ち上がった。バーサーカーの後ろにいる少年は自分のシャツをめくる。すると、シャツの中から大量の紙が出きた。よく見てみると一枚一枚が同じ形である。あれは確か、陰陽師とかが使ってそうな人の形をした形代(かたしろ)という名の式神であっただろうか。

 

 その量は何となくヤバイ感じがした。まず、陰陽師で使う形代は俺も知っている。マジでやっかい!

 

 少年はその形代に魔力を込める。すると、形代が命をもらったかのように動き出した。宙に浮かび、ビームを発射する。そいつらが俺たちに向かってきた。

 

 さすがに、数も数である。

 

「おい、セイバー‼︎逃げるぞ!無理、勝てない!」

 

 俺は敵に背を向けたが、セイバーは敵に背を向けなかった。バーサーカーと大量の形代。それを一人で相手にしようとしている。

 

 俺はその時、ふと心の中で疑問を抱いた。なぜ逃げないの?勝ち目がないのになぜ逃げないのかが不思議だった。俺を守るため?いや、違う。あくまで俺はマスターであるが、それだけの関係である。

 

 俺はその時、セイバーの後ろ姿が少しかっこよく思えたのである。俺はいつでも流れに逆らおうとしなかった。嫌でも、流れに身を任せた。その結果、今でも後悔していることがある。でも、流れに逆らおうとすることが怖いからできないのだ。

 

 後悔するとわかっていても。

 

 でも、俺が恐れていたことをセイバーは俺の目の前で平然とやっている。そんな女の子に俺は守られているのだ。

 

 俺はなんてみすぼらしい男なんだろう。

 

 心の中で俺はこのままでいいのか?と思った。また、誰かが俺を守ろうとしている。けど、それで守ろうとしている人は不幸になるんだ。あの時は俺の手は小さいし、腕も長くない。届かなかった。引き止めることができなかった。でも、今ならできそうな気がする。守ることはできないかもしれない。でも、一緒に立つことならできるんじゃないか?

 

 俺の足は自然と動いていた。

 

「ヨウ?なぜ、私の隣にいるのですか?逃げてください。邪魔です」

 

「うるさいな。いいだろ、俺はあんたのマスターだ、離れていたら力を出せないんだろ?」

 

 俺はセイバーから借りた短剣を右手で持ち、左側にそえる。それをシャツで包んだ。自分のシャツを鞘の代わりとしての居合い切り。バーサーカーは俺に向かって剣を振るい、形代はセイバーに向かう。

 

 絶対絶命、勝てるはずのない無謀な闘い。普通なら諦めてる。けど、死にたくないから頑張るのである。それだけ。

 

 その時であった。木の陰から黒い影が現れたのである。その影はバーサーカーのマスターである少年に向かっていた。

 

 聞き慣れた声が聞こえた。

 

「僕の友達に手を出すなぁぁッ‼︎アサシン‼︎あいつを狩れ‼︎」

 

 それはセイギの声であった。そして、彼の手の甲にも赤い三画の令呪が刻まれていた。


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