Fate/eternal rising [another saga]   作:Gヘッド

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余談:今回のルートでは、もうほぼヨウくんのカッコイイシーンはほぼ出ない。ヨウくんが輝くのは第2ルートと第3ルート。第1ルートはセイバーちゃんにお任せ。


しがない英雄の背中はあまりにも
俺とセイバー


 学校の屋上に俺はいた。風が吹き抜け、冬にあまり外に出る気は無いのに、なんか今日は空を仰いでいたかった。曇り空だけど、灰色の雲だけじゃなく青い空も見える。そんな屋上に仰向けで寝ていた。

 

「寒くないんですか?」

 

 セイバーは実体化をしながら俺に問いかけてきた。何処か彼女は俺を心配するような優しい目で俺を見る。

 

「別に」

 

 そんなセイバーに俺が返すのは素っ気ない返事。セイバーは俺の返事を聞いて不満だったのか、俺の隣に正座で座る。そして、上から俺の顔を覆い被さるようにして目をじっと見てきた。

 

「なんだよ」

 

「いや、少しヨウらしくないなと思っただけです」

 

「……そうか?」

 

 そう言われた俺はセイバーの方に寝返りをうつ。

 

「あっ、セイバーのパンツ見えてる。ピンクゥ〜」

 

「えっ⁉︎ど、何処見てるんですかッ‼︎」

 

 いつものようにセイバーにちょっかいを出しながら、今度はセイバーに背を向けた。セイバーはそんな俺にまた懸念する。

 

 いつものように平静を装っているのもバレているのは俺もなんとなく実感してた。セイバーは人の感情の揺らぎにはすごく敏感であり、俺の心がまだ揺らいでいるのを彼女は悟っていた。

 

「おい、ピンク。気遣うほどのことじゃねぇーよ。ほれ、お前はもっとエロいのを履いてこい」

 

「んなッ⁉︎よ、余計なお世話です‼︎エロくなくったっていいんです‼︎女の子は可愛さでいいんです‼︎それと、ピンクじゃありません‼︎」

 

「いや、エロは必要だよ。エロがあるから、世界があるんだよ。エロがないと、異性への興奮もないし、お前なんか生まれて来なかったんだよ?お前がいるのはエロのおかげだよ。それに、可愛いなんてものも、どうせ性的な意味を込めてんだよ。だから……」

「ああぁぁ‼︎もう、もう、いいです‼︎そ、そうですね!エロは必要ですね!」

 

「おう、そうだ。だから、エロいランジェリーでも履いてこい。ピンク!」

 

「ピンクじゃありません!」

 

 いつものたわいない会話が今日は新鮮に感じる。嫌なことが少しだけ忘れるような感じもするが、それはどうせ幻想にすぎない。

 

 人と話すという行為は人にとって麻薬のようなものなのかもしれない。人と話すと、心の隙間を埋めることができる。だから、人は隙間ができると人と話してその隙間を埋めようとする。だから、その人に(すが)り、その人がいなくなると虚無感が自らを襲う。

 

 セイバーはサーヴァントである。幽霊であっても、俺の目の前にいても、心があったとしても、どうせ聖杯戦争が終われば彼女はこの世から儚く消えてしまう。

 

 鈴鹿のように消えてしまうのだろう。

 

 悲しみを大きくしてまでも仲良くなりたいと思わない。

 

「何で、俺が辛い思いをしないといけないんだ」

 

 泣き言を吐いた。それはセイバーにも聞こえるように言っていた。セイバーもそのことを痛切に感じていた。彼女だって俺と似たような経験をしたことがあるのだから、彼女は俺の気持ちを痛いほど分かる。

 

 親を殺した。そんな変な繋がりが俺とセイバーにはあった。そんな繋がりは負の中で得た産物であり、嬉しくもなんともないけれど、いないよりかはマシ。というより、少しだけいてほしい存在である。同じという立場であるから、俺にとって心強くて頼りになる。そんでもって、心の支えともなっている。

 

 前までこいつと口喧嘩ばっかりしてたけど、俺にとってこいつは側にいて当然の存在となってしまった。

 

 それがどこか怖い。いつか来る別れに恐怖を抱いた。

 

「ヨウは鈴鹿さんを殺した時、どんな感触でした?どんな感覚でした?目の前はどのように映りました?心の中に何を思いましたか?」

 

 セイバーはふと俺にこう質問をした。普通、悲しみに明け暮れている俺にかける言葉ではない。だけれど、それがセイバーだから少しだけ許せた。彼女も自分と同じ経験をしたのだから、彼女は興味本位だけではないということが分かっていた。

 

 まぁ、それでも話す気にはなれるわけがなく、俺は彼女に背中を向けて質問を一蹴した。

 

「何で、俺がお前にそんなこと話さなくちゃいけねぇんだよ。ヤダ。メンドイ。嫌なことは思い出したくな〜い」

 

 俺が撥ねつけると、彼女はそんな俺に微笑みかけた。まるで俺がそんな彼女の質問を拒絶するのを知っているかのようであった。何でも見透かされているのが少し嬉しかった。そんなに俺は考えなくてもいい。それが過去を見る必要がないと思わせた。

 

 過去を見たくはない。その思いが段々と顕著になりつつある。その事態に俺は目を伏せた。

 

「私は……」

 

「別に気にしないほうがいいって言いたいんだろ?」

 

 俺に先を越されたセイバーは決まり悪い表情を浮かべた。緑色の屋上のフェンスを通って吹く風を遮るように、彼女はフェンスに寄りかかる。

 

「私の場合、憎しみで親を殺しました。それは全て私の独断であり殺意があった。けれど、あなたの場合は違う。しょうがなかったんです。事の成り行きですから、あなたは何も悪くない」

 

「……どうせそんなこと言うんだろうと思ってた」

 

 嘘を吐き並べる。どうでもいい嘘を吐いたのは己の見栄のためなのか、虚弱な心のためなのかは分からない。ただ、心から出た言葉が嘘だった。

 

 嘘を平然と言って、彼女の言葉から目をそらしているのだろう。目をそらして受け流して、それで彼女の言葉をちゃんと聞かない。そうすれば、自分はそのことに関して考えることはない。

 

 今はまだそのことについて考えたくないのだ。

 

 嘘とは便利だからこそ怖い。嘘に縋りそうになる自分の弱さが怖い。

 

 嘘に縋りたくないから、俺はセイバーと本心で話す。すると、俺の心の弱さを見つめてしまうし、慇懃を重ねると彼女が俺の目の前から離れて行くのが辛くなってしまう。

 

 彼女も空を見上げた。晴天じゃない。曇り空である。なのに、彼女は嬉々としているのが視界の端に見えた。

 

「今、私とヨウの見ている空はほぼ同じです。たった数歩の距離しか違わない。……私たちはここまで近づいたんです」

 

 彼女はそう思いを言葉にしながら俺の方を振り向いた。俺はそんな彼女とは反対の方に目を向ける。例え、見ている空が同じでも、やっぱり心の距離は遠いのではないのだろうか。

 

 そう思いながらも、俺はそれを言葉にしない。なぜだか、俺はその言葉をセイバーに向かって堂々と言うことができなかった。

 

 セイバーは何か言いたげな俺を見て、唇を少し緩めた。

 

「空には暗き場所もあり、光も現れる。それは時とともに揺れ動く。人の心もそんなものだと思うのです。私もヨウも心は空であり、曇天であったとしても、いつかは輝く太陽が雲の隙間から顔を出す」

 

「俺とセイバーの空は違うけどな」

 

「そうです。でも、似た空を見ている。エヘヘ」

 

 何故彼女は嬉しそうに笑うのだろうか。疑問が俺の頭の中から離れない。

 

 前まで、俺とセイバーは喧嘩ばかりしていたのに、今の俺たちは前とは何処か違う。まるで二人の尖ったところが互いにぶつかり合いながら、馴染んできたようである。

 

 前までとは違う彼女の対応に俺は少し戸惑いを覚える。

 

「ヨウは悪くないですよ」

 

 彼女はそうボソッと呟きながら俯いた。暗鬱な心が俺にも伝わった。それが自然に起きてしまったのだから怖い。馴染んできた証拠でもある。

 

 彼女の言った言葉は自虐的である。まるで自分を責めるかのような言葉を発し、自分の価値を貶めている。

 

 鈴鹿が俺の手によって殺される原因となったのはグラムとセイバーにかかっていた呪いのせいであり、それがこの世に生まれてきたのはセイバーのせいである。そう彼女は考えていた。自分がこの世にいるから鈴鹿は死んだのだと。

 

 いや、まぁ、否定はしない。確かに俺の下心はそんなことも考えていた。それは今でもそうである。正直言って、セイバーが現界しなければ、鈴鹿は死ななかったのではないのか?俺は聖杯戦争に参加してはいないのではないのか?

 

 何回考えたことだろうか。今でも考えているほどである。

 

 セイバーがいるから俺は不幸になるといってもいいかもしれない。だけど、それを俺は否定する。セイバーがいるから俺は成長できた。

 

 そう考えている。いや、俺はそう考えるようにしている。

 

 そうでないと、俺もセイバーのことを責めてしまいそうである。けれど、俺はそんなセイバーを責めたくはない。彼女は俺であり、俺は彼女である。自分に似ている相手を自分として見てしまっている以上、そんなことは嫌だ。

 

 そう矛盾してそうな俺の自論を理にかなっているかのようにこじつけている。

 

 俺とセイバーの関係は実に脆い。そうでもしていないとやっていけない。それは俺だけではなくセイバーも実感していることである。別に性格とか、そういう相性は別に悪くはないんだけれど、やっぱり起きてしまったという過去の出来事からしてみれば相性が悪いのである。

 

 だから、俺は彼女にこう言うのだ。

 

「お前だって悪くねぇよ」

 

 その言葉を彼女に、そして自分の心に言い聞かせる。そうすれば俺の気持ちは収まる。セイバーは悪くない。運命が悪かったんだ。運命のせいにして、彼女のせいにしない。

 

 けど、彼女はそれでも納得できていないようであった。スカートを握り締めて、自分自身の遣る瀬無い気持ちを何処にぶつけてよいのかも分からずに悔やんでいた。スカートが少し上がり、彼女の白い肌が少し見えた。

 

「ごめんなさい……」

 

 引け目に感じている。彼女は自分のことをもうずっと罵っている。自分が事全てを起こしたと思っている。

 

 鈴鹿が消えてからだ。彼女は自分の価値を考え出した。価値を考えて、いつもその価値は低い。生きてはならないとまで言わしめんばかりの価値の低さ。

 

「そんな風に言うなよ。お前だって悪くねぇよ」

 

「……」

 

 彼女は黙り込んでしまった。黙らせるつもりも責めるつもりもないのだけれど、器用じゃないからそこら辺の調節ができない。何て言えばいいのか分からないし、彼女の心も何もわからない。どう思うのか分からないから、危険を回避しようとして俺も言葉が出なくなる。

 

 クールに行こう。その言葉は臆病者の言葉である。別に俺は自分自身が臆病者でもいいと思っているけれど、何が起こるのか分からないからってだけで面倒くさいことに足を突っ込まない自分が少し嫌い。嫌いだけれど、直そうにも直せないから諦めている。

 

 今だって、何にも声をかけてあげられない自分は心の中で諦めているんだ。彼女に声をかければいいのかもしれないけれど、俺は怖いから足を一歩踏み出す勇気が湧かない。

 

 ああ、俺、カッコ悪りぃ。

 

 俺とセイバーが黙り込んでいたら、屋上のドアが勢いよく大きな音を立てて開いた。俺とセイバーは驚いてドアの方を見る。すると、そこにいたのはアサシンとセイギあった。二人は俺たちの会話を聞いていたようで、ニタニタといやらしい笑みを浮かべている。

 

「あれ?お二人とも、もう倦怠期⁉︎体の相性が合わないの⁉︎」

 

 アサシンは相変わらずの変態トークをかましてくる。まったく、少しは場の雰囲気を考慮するということぐらい出来ないものだろうか?

 

 いや、出来るわけがないか……。

 

 俺はセイギの方を見る。セイギは俺と目を合わせると何かを謀っているような目で俺を見る。

 

「おい、何処から聞いてた?」

 

「ん〜、セイバーのパンツがピンクっていうのは聞いてた」

 

 随分と最初の方からじゃねぇか‼︎

 

「わ、私のパンツはピンクじゃ、ありません‼︎」

 




ということで、今回は前回のランサーを。(パラメーター、スキルはまだ作ってない)

前田慶次

クラスはランサー。マスターは高校生時代の白葉ちゃん。二人揃って前回の聖杯戦争の主役みたいなもの。(別にセイバー陣営が主役だなんて言ってない。あと、主役の陣営はもう一つある)

モデルは『戦国無双』の前田慶次

聖杯への望みは特になく、ただ戦いをしたいだけ。

宝具『天地傾乱堂々の華』ランクA+・結界または対界宝具・レンジー
前田慶次の傾者としての数々の逸話が宝具となったもの。言っちゃえば、何にも囚われない男の生き様の集大成。
能力は『この世の理から傾く』。彼から半径10メートルの間は彼の世界である。
例えば、アーチャーが遠くから彼に向かって矢を放ち、彼の心臓を射抜くはずなのに、その間合いに入った時、彼の意思で触れずともその矢の方向を傾ける。傾ける方向は自由自在であり、また重力・浮力・質量・電力・密度・速度などの数値を正常の値から傾けることも可能。物体を傾けることも可能。
まぁ、その空間内はランサーの無双地帯。

性格は戦バカで、戦いのことに目がない。魔術協会の言いなりであった白葉を独り立ちさせる原因となった人であり、白葉にとっては人生の転換期にいる人。今の彼女がいるのも彼のおかげであり、彼は前回のサーヴァントの中で一番いい奴かもしれない。と言うより、コンビとしては一番いい凹凸コンビ。

太くて大きな槍を扱う。通常の槍の二倍の太さで、とても重い。そんな槍を片手で持ったりして戦っている。セイバー(鈴鹿御前)との共闘の時は、セイバーの三本の刀の内から一本を勝手に借りて、一刀一槍で戦うというように、戦い方においても傾いている。ランサーなのに、刀使っちゃってるし……。

非常に大柄であり、声のトーンが常にデカイ。

男としては、素晴らしい。文句のつけようがなく、女子供を守るためなら、命も捨てるくらい。

戦いが好きで、誰かの戦いの邪魔をする者を嫌う。因みに、1対6でも、彼は嬉しいらしく、彼曰く「血が滾る」らしい。

彼が言いそうな発言『戦じゃ、戦‼︎戦を始めるぞ、我が主よ‼︎面白そうだぁ‼︎』

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