Fate/eternal rising [another saga] 作:Gヘッド
今回は特に言うことありません。
俺の目の前に
女は剣を構えた。その女を見て、男は少しため息をつく。
「はぁ、失敗してしまった。これでは俺のマスターに怒られてしまう」
男はやれやれと言いながらクロスボウを俺から女へと向けた。
「まぁ、その首を持っていけば別の話だが。すまないが私のために死んでくれ。俺はあまり犠牲が好きではないんだ。だから、その男を殺したくはない。死んではくれぬか?セイバーよ」
アーチャーは女のことをセイバーと言った。女の名はセイバーと言うのだろうか。
女は男に剣を向けた。
「すいませんが、私にそれはできません。私にはどうしても叶えたい願いがあります。それはサーヴァントであるあなたも同じでしょう?」
「いや、私は特に願いはないさ。私はなんとなく参加したのだ。面白そうだったからな」
しかしどうしたことか、アーチャーはセイバーにクロスボウを向けていたが、彼はセイバーの目を見た。そして、青く透き通るような目、そして彼女から感じられるオーラを見て、何かを悟ったようにクロスボウを地面へと向ける。
「今、俺はお前と戦ってもいいが、そうしたら面白くないだろうな」
「面白くない?」
「ああ、そうだ。お前のマスターは今、戦闘不能状態だし、まず聖杯戦争を理解していない」
聖杯戦争。その言葉が俺を震わせた。母さんと父さんが身を投げた聖杯戦争。なぜその名が今出てきたのかが俺には理解できなかった。
「だから、俺は今、お前らとは戦わない。お前のマスターが大変な目に巻き込まれたと自覚してなお俺の目の前に来た時、俺はお前の相手をしよう。それに、お前もその方がいいだろう?マスターが何にもわかっちゃいないんだからな」
アーチャーはそう言うとセイバーに背中を見せた。
「私に背中を見せる事は
「どうぞご勝手に」
アーチャーは怖気づいている俺を見る。そして、彼は俺の首に当たらないギリギリのところに矢を放った。
「—————おい、セイバーのマスターよ。今度、お前と会った時はその矢がお前の首に当たると思え。そして、お前はそれほどのことをされようとも動じてはならぬ。お前は今さっき聖杯戦争という地獄に足を踏み入れてしまった。それは偶然かもしれないが、それも運命だと思ってくれ。後、気になることがあればセイバーにでも聞くといい。今日からそのセイバーという女はお前の使い魔だ。生きるために使うといい」
アーチャーはそう言い残して、どこかへ消えていった。満月の夜、月に照らされずに彼は俺たちの目の前から消えてしまったのである。
アーチャーが消えるとセイバーが俺の体を起こした。
「大丈夫ですか?マスター」
全然大丈夫じゃねぇよと思いながらも俺は「大丈夫だ」と返事をした。
「大した怪我ではないようです。立てますか?」
セイバーは俺に手を差し伸べる。俺はその手を掴んだ。女の子に立たせられるのは少し男として恥ずかしく思えてしまう。そんな俺が下を向いていると彼女は俺の顔を覗き込んできた。
「どうしたのですか?」
白い顔と綺麗な黒い髪が俺の顔の目の前にいきなり現れた。ビー玉みたいに青い目が俺を見つめてくる。
が、別に俺が惚れたというわけではない。ただ、腹の一番キツイみぞおちを蹴られて痛かっただけ。断じて、可愛くて目をそらしたとかじゃない!
「ちょっと、腹がヤバイ‼︎マジで、息が苦しいわ」
「ええっ⁉︎そ、それは!ど、どうすればッ⁉︎」
セイバーは俺の背中を優しくさする。吐き気を
そして数分後、俺はなんとか回復した。回復すると、今までシャットアウトしていた疑問がドバァッと勢いよく出てきた。
「君は誰?あいつは誰?君たちは何でここにいるの?何でいきなり目の前に君が現れたの?何で聖杯戦争の名があるの?何で命狙われたの?剣とか銃刀法違反じゃないの?」
俺の頭の中に返り咲くクエスチョン。クエスチョンの曲がりのところが他のクエスチョンと
俺のいきなりの問いにセイバーも戸惑う。俺が本当に何にも知らないポンクラ野郎だから、セイバーは何から話していいのかわからない。
セイバーは剣を
「—————私の名前はセイバー。剣士のサーヴァントです」
「サーヴァント?何それ?」
「えっ?それも知らないんですか?……はぁ、参りました。まさか、私のマスターがここまでこの聖杯戦争に無知だったとは」
そりゃ、どうもすいませんね‼︎
俺はそれから朝までずっとセイバーに聖杯戦争の事を教え込まれた。セイバーがなぜここにいるのか。なぜ俺はアーチャーに命を狙われたのか。聖杯とはどのようなものなのか。
ただ、セイバーが答えられなかった質問が二つあった。一つはセイバーとは仮の名前だと言う。俺が名を聞こうとするとセイバーは口を割らなかった。そして、もう一つはなぜ俺が聖杯戦争に参加しなければならなかったのか。まだ俺は魔術なんか全然使えないし、魔術師としては半人前以下の存在。なのになぜ俺が聖杯戦争に参加してしまったのか。それが俺にはわからなかった。
朝、日が昇りはじめる。すると、セイバーはすうっと俺の目の前から消えた。どうやら霊体になっているらしい。
「ヨウ、あなたには何か願いはないのですか?」
俺は少し考えてみる。そしたらふっと頭の中に浮かんできた俺の願いがあった。
父さんと母さんに逢いたい—————
けど、俺はその答えを心の奥底にそっとしまった。
「まぁ、世の中ハーレムにすることとかかな?」
セイバーは深いため息をついてこう言った。
「はぁ、心外です。なぜ私のマスターはこのような人なのか」
「いや、もう決まったことなんだし」
「まぁ……そうですね」
俺は後ろを振り向いた。倒壊した蔵。俺がこの蔵の近くにいると責任を取るのは俺になるだろう。
俺は爺ちゃんが起きる前にさっさと自分の部屋へと戻った。そして、俺は自分に自己暗示をする。俺は何も知らない。俺は何も関係ない。蔵のことなんて知らないと。
そして、俺はベットに寝っ転がり、それから俺はなんだか、うとうとと眠くなったから目を閉じた。それからのことは覚えてない。
じゃぁ、人物紹介でも
身長:171センチ
体重:62キロ
座右の銘:一度手放したらもう二度と手に入れられない
一応本作の主人公であり、セイバーのマスター。今は父方の祖父と二人で暮らしている。
現在高校二年生。成績は中の上くらいで運動神経は結構いい。顔もなかなかなのだが、作中ナンバーワンのひねくれ者。そのため聖杯戦争に参加しているのにもかかわらず肝心のやる気は皆無。
人から物を盗むことが非常に上手く、『盗み』というスキルだけだったらサーヴァントでさえも
彼の父親の家系は『月城流剣術』を編み出した武士の家系らしい。その剣術は折り紙つきで時代の変わり目にはいつも関わりがあったとか。主人公はその中でも天才と言われていたのだが、あることをきっかけに剣術をきっぱりとやめてしまった。
母の家系は代々神に仕える巫女など。それは魔術師となんら変わりはない儀式などを行う。しかし、母の家系の巫女は少し特別なんだとか。