Fate/eternal rising [another saga] 作:Gヘッド
今回は途中、セイバーちゃんが一人称になるところがありますね。まぁ、わかりやすくしているんで、大丈夫だと思います。
アサシンの熱いディープキスのおかげで傷口は塞がった。俺は体を起こし、セイバーに話しかける。
「なぁ、セイバー。俺が倒れた後のことを教えてくれねぇか?」
「ええ、分かりました。どこから話せばよいでしょうか。そうですね。まぁ、ヨウが私を守ってくれたところから……」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
目の前にはヨウがいた。彼の腹部には赤く、血まみれの剣の先が覗いていた。彼の目の焦点はぶれ始め、段々と力なくなったように下を見る。その時、もう一つの
私はその時、過去のことを思い出した。龍を殺した時のことを。血を流し、目の前に倒れたあの龍を。それでもその龍は笑っていたのだ。この
ヨウも、ヨウも笑っていた。私の目の前で、笑顔で私を見た。刺されたのに、それでも笑顔だった。その笑顔は、私から離れていってしまうように思わせた。それがすごく怖かった。
今まで、悲しみに明け暮れていた。本当は今までずっと一人で、これからも一人だと。この聖杯戦争でも私は一人で戦わないといけないし、誰も信用しない。使えるものは使っておいて、使えなくなったらすぐに捨てようと思っていた。ヨウもその一人だった。私からしてみれば、魔力の供給源というだけのものであり、私がいるための道具として見ていた。確かに親類の匂いはした。それでも信用したわけじゃなかった。
一人でいい。そう思っていた。
けど、彼は私を一人にさせようとはしなかった。私とは最初、ぶつかってばっかりだったけれど、私のことを心配してくれた、私はあなたに強く当たっていたけれど、それでもあなたはそんな私を認めようと努力していた。道具であるはずのあなたが、なぜそう私に優しくするのかがわからない。私は嫌われていたいのに、彼は私に同情しようとする。
邪魔なのに。邪魔なのに。邪魔なのに、なのに私は彼を突き放すことができなかった。
彼は私を一人にしようとしない、それが、本当は嬉しくて嬉しくて仕方がない。一人ぼっちだった私に手を差し伸べてくれたのだ。信用しないと決めていた私を、信用させた。
そんな彼が、私の大事な人が、目の前から消えようとしている。また私を一人ぼっちにしようとしている。ヨウの手をとって、アサシンともセイギとも知り合えた。一人ぼっちじゃないのに、また一人ぼっちになるかもしれない。
大事な人であるヨウが私の目の前で笑いながら消えていくのがどれほど辛いことか。
怖かった。怖かった。その恐怖が怒りへと変わった。
「ウァァァァァァッ‼︎グラムゥ‼︎」
怒りに任せてただ
怨み、苦しみ、悲しみ、怒り。
グラムは笑いながらその剣を軽々と交わしていく。まるで歴戦の戦士のように軽やかで無駄のない動き。私の父親が
そして、色々な感情が簡単にいとも
最初はグラムも面白半分に笑いながら交わしていた。が、段々とつまらなくなってきたみたいで、笑顔が消えてきた。そして、もう私を殺そうと思ったのか、攻撃の隙に私を蹴り飛ばした。
「もう、邪魔だからさ、消えろ。私の
グラムはまた
また、私は一人ぼっちのまま死んでしまうのか。もう、嫌だ。怖いよ。嫌だよ。
—————一人ぼっちは悲しいよ……。
無数の剣が私めがけて飛んでくる。私は目をつぶった。
その時、声が聞こえた。
「遅れた、すまない。セイバーよ」
私は目を開けた。そこに立っていたのはアーチャーである。アーチャーは腰のベルトに刺した折れた剣で、グラムの放った剣勢を全て
アーチャーは無傷だった。涼しげな顔をして彼はそこに立っている。グラムはそんな彼を見てこう言い放つ。
「貴様、なぜ私に嫌な思いばかりさせるッ⁉︎」
アーチャーは剣を腰のベルトに刺し、クロスボウに持ち変える。
「はて、何のことか?私にはお前に嫌な思いをさせた記憶など一切ないのだが」
「貴様ァッ‼︎」
「おしゃべりが過ぎるぞ。黙っていろ。剣
アーチャーはそう言うとクロスボウの矢を放つ。その時の彼はとても悲しそうな顔をしていた。それでも放たれた矢はグラムの心臓を確実に狙っていた。
二人には何か因縁のようなものがあるように感じられた。遠く、無惨で、涙に駆られた何かがある。
クロスボウの矢がグラムの間合いに入る。グラムはその矢を振り払うが、その時にはもう何本もの矢が降り注がれていた。グラムはその矢すらも無限に出現させることができる剣で振り払う。グラムは上から私を殺そうと剣を落とすが、アーチャーはそれを折れた剣で防ぐ。
両者とも攻撃を放ちつつ、放たれた敵の攻撃を剣で振り払う。しかし、それでは雌雄は決することはない。グラムは短気であるから、段々とこの変わりない二人の攻防に嫌気がさし、さらに剣を増やした。
剣が増え、グラムの視界はたちまち剣だらけになる。
アーチャーはそれを狙っていた。
「どうやら目で認識できないと剣を振れないようだな。グラムよ」
アーチャーは勝ち誇ったように笑う。アーチャーは何本も矢を放っていたが、その内の数本をグラムの後ろに忍ばせておいた。グラムはその存在に気づいたが、もうその時には矢はグラムの心臓向けて飛んでいる。グラムは矢をどうにか周りの剣で振り払って防いだが、アーチャーには背を向けていた。
「敵に背を向けるとは言語道断だな!」
アーチャーはグラムとの間合いを一気に詰める。
「今だ!ライダー‼︎」
その時である。ライダーはさっきまで死人のようにピクリとも動かなかったのに、アーチャーのその言葉を聞いた瞬間、起き上がった。グラムは完全にライダーを仕留めていたと思っていたが、それは誤算であった。
サーヴァントとは霊体であり、本当にリタイアの時は姿が見えなくなる。しかし、まだライダーは剣の串刺しになっていたままであった。アーチャーはそれを知っていて、ライダーがまだ生きているとも分かっていた。
ライダーはとても物分りが良く、彼は自分の非を認めることができる人だ。さっき、もし私がグラムを振り下ろしていればライダーは負けていた。だから、ライダーはもう降伏しているのである。
「すまないね、僕はもう負けたんだ。あの時、本当なら僕はセイバーに負けていた。セイバーは僕を倒していた。なら、僕に勝った人にはさ、僕の思いも背負って勝ち続けて欲しいと思わないかい?」
負けを認めた。私とヨウが勝ちだと彼は言う。だから、私とヨウが死ぬよりも、自分が死ぬといっているのである。その心構えはまさに英雄として素晴らしいものである。
ライダーは時を見ていた。いつ、どのような時であれば、みんなを無事に逃がすことができるかを。しかし、そのみんなの中にライダー自身は入っていない。
アーチャーがグラムを遠くへ蹴り飛ばしたこの時こそ、みんなを逃がすには絶好のチャンスである。ライダーは叫んだ。雨水を操るための言葉を。
「我が主の
ライダーは最後の魔力を振り絞って、空から降り注いだ雨水を津波のようにして、ヨウ・ライダーのマスター・アーチャー・私をグラムから引き離したのである。流されてゆく私たち。ライダーはもうすぐ死ぬ。それでも、ライダーは手に武器を握り、グラムに抵抗している。少しでも私たちを逃がす事ができるように。
流されてゆく濁流の中、ライダーのマスターは自らの英霊にこう言う。弱々しい声で、何かを求めるように。
「嘘を……つくのッ⁉︎」
ライダーはマスターに微笑みかけながらこう言っていたのが聞こえた。
「目の前に死にそうな人たちを見て助けられないのはもう嫌なんだ。目の前の人を助けられずして、何が聖人だろうか?」
水が街を流れる音が聞こえる。人通りの少ない道を水が流れる。グラムとライダーの戦闘の音も段々と聞こえなくなっていく。そのまま濁流はライダーが見えないところまで私たちを流す。しかし、いつかその濁流の勢いはなくなってきた。それはライダーの
私たちはヨウの家に逃げ込んだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「それからはヨウが知っている通りです。私たちが流されている時、アサシンとセイギにも会いました。二人とも戦闘を見ていたそうです」
「ああ、それは知ってる。それで、ついでに俺の家に来て俺の傷を治したってことか?」
セイバーはこくんと首を縦に振る。
今のセイバーの話には少しだけ疑問に思う点がある。別に、決してセイバーが信用できないというわけではない。ただ、アーチャーの行動が俺にはどうにも理解できない点がある。
なんで、アーチャーはいきなり俺たちのことを助けようと思ったのだろうか。たまたま通り過ぎたから?いや、そんなわけがない。たまたま通り過ぎたとしても、俺たちをアーチャーが助ける義務は一切ない。むしろ、危険になるかもしれないのだ。つまり、その危険を承知でグラムと戦ったということである。俺たちとアーチャーに繋がりはないように見える。
俺とセイバーが話していると、セイバーがあることに気づいた。
「そう言えば、アーチャーは?」
「ん?ああ、さっき出て行ったよ。なんか、めっちゃカッケェこと言ってたわ」
「カッコイイこと?」
「そう。まぁ、そこは同じ男として、あんまり人には言えないけどさ。とにかくカッコイイこと」
俺がそう言うと、セイバーは何やら全然違うことを考えているようである。
「俺はお前のことが好きだぜッ‼︎みたいなことですか?」
「いやいや、そしたらヤバイだろ。アーチャーが俺に好きって言ったら、アーチャーが同じ男の俺に気があるみたいになるだろ」
「えっ?そうなんですか?」
「いや、ちげぇよ!お前がめんどくさいこと言ったんだろ。つーか、多分俺にもあいつにもそう言う考えはないわ」
俺はこう言った後、セイバーの方を見た。もしかしたら、セイバーは腐女子なのか⁉︎俺の知らぬ間に腐女子になっていたのか⁉︎
「えっ?セイバー、まさかそう言う男の人のラブラブを見て、胸の方がキュンキュンとかする?」
「はい?何を言っているんですか?そんなのするわけないじゃないですか。そんなの見て、何の得がありますか?少なくとも、私は得をしませんよ」
よかったぁぁぁぁぁぁ。セイバーは腐女子じゃなくてよかったぁ。セイバーが腐女子だったら、俺はどう責任を取ればいいのかと、不安だった。
「そう言えば、セイバー。お前、アーチャーに用か?」
「えっ?ああ、何となく、聞いてみたいことがあったのです。それに、協力の件に関してです」
「ああ、そういや、協力の件の答えをアーチャーは聞かずに出て行ったな」
セイバーは俺の目の前で、少しかしこまって俺にお願いをした。
「協力しませんか?」
俺はそのセイバーの答えを聞いた時、少し驚いた。誰も信用しないような人だったセイバーが、誰かを信用した。それは言ってしまえば、彼女としては大きな一歩であり、大きく変わっている。
「それは何でだ?」
「……その、気になるんです。何で、私をあの時助けたのか。あの時、私たちを見捨ててもよかったのに、何で彼は私たちを助けたのかが……」
「ああ、それは俺も気になってた。確かに、俺たちは敵同士だし、助ける道理はない。……が、それだけじゃ理由にはならないな。もっとちゃんとした理由を教えろ」
気になる。その一言だけで、この聖杯戦争で生き残れるかどうかが変わる。絶対にそんな簡単な一言だけで決めたくはない。それはセイバーも同じである。
「あのアーチャーの背中が私のまぶたの裏にまだいるんです。あの時、私はアーチャーに守ってもらった。その背中は、まるで私に何か大切なことを語りかけているような気がするんです。それに少しあの背中が大きく感じた」
俺はそのセイバーの言葉に、何となく茶化してみる。
「それ、恋じゃね?」
「いや、流石にそれは違いますよ。それぐらいはわかります」
と、セイバーから意外とちゃんとした返答をもらう。真顔でセイバーに言われたものだから、何となくイラッとくる。
まぁ、それはいいとして、俺もアーチャーに協力しようと思っていたところである。アーチャーは色々な情報を知っている。仲間にすれば、その情報を教えてくれるだろう。それに、アーチャーは俺も少し気になっていた。
けど、それだけじゃない。一番の理由は、セイバーが人を信用したということ。疑り深いセイバーが信用した人を、俺が信用しないと、彼女が裏切られた時にまた一人になってしまう。一人にしないように、彼女を守らないと。だから、どんな選択もセイバーが信じた道を俺も行かねばならない。
いや、それは言い過ぎか。もし、セイバーが自分の破滅を選ぶ道をとろうとした場合、俺はどうすればいいのか。本人の意思を尊重するのか、侮辱するのか。
……俺はどうするんであろうか。
俺はセイバーにアーチャーと協力することを教えた。けれど、次にアーチャーが来る日はわからない。
俺はセイバーに早く寝ろ。そう伝えた。まだまだ俺たちには明日がある。明日がある限り、戦わなければならないのだ。
……あっ、そう言えば期末試験前ももうすぐあるわ。
……憂鬱でしかないわ。
じゃぁ、今回はライダーを。パラメーターなどは真名が出た時に明かします。
ライダー
年齢:不詳
体重:75キロ
身長:183センチ
属性:秩序・中庸
ライダーのサーヴァント。
ギルガメッシュみたいな見た目の人で、金髪の若いお兄さん。服は特に決まりなく着る。
優しい人。とにかく優しい人。あまり人のことを傷つけることを好まず、人を欺くようなことを良しとしない。誠実な人であり、誰かを守ることを自分の使命のように思っている。
戦いの際、主人公と戦っていた時も相手の心配ばかりしていたし、令呪の力がなければ人を傷つけることができない。しかし、それには彼の過去と信念に深く関わりが……。
聖杯戦争の望みは、世の中が誰もが救われる世の中になること。
本名は???。???に出てくるあの人。
宝具は二つ。
『
大きくて、図太い丸太みたいなトンファー。第一ルートではセイバーに壊されたけれど、それはセイバーが木材に対しての熟練の技であり、本当はそんなことできない。
『
ライダーの存在そのものが宝具である。雨を降らして、その雨水や、その雨水が混じった水を操ることができる。また、使用者であるライダーは自分の操る水を液体ではなく、個体として触れることができる。つまり、水を持てる。しかし、この宝具の発動には条件があり、「我が主の