Fate/eternal rising [another saga] 作:Gヘッド
今回はボリューム満点です。伏線回、能力説明、ヨウくんがグラムにやられてからのその後、物語の進行のこの4つを詰め込んでおりますのでいつもより少しだけ長い?
後書きにはセイバーちゃんの人物紹介です。
目を覚ますと、そこには天井があった。匂い、散らばった学校で使う教科書、無駄にキレイに整理されたマンガから見慣れた場所に自分はいるのだと理解した。
俺の部屋だ。俺が住んでいる家の二階にある自分の部屋。
俺はさっき見ていたものを思い出す。……夢か?『
……いや、あれは全部夢だ。そう夢でしかない。そう思って、夢のことを考えることはやめにした。
俺は布団の上で横たわっていた。起き上がろうとすると、腹部の方に痛みが走る。
「痛ッて……」
俺は服をめくって腹部を確認する。見てみると、腹部には新しい包帯がしてある。その包帯を見て、俺はグラムにやられた傷だとわかった。グラムにあの時、セイバーを守る時やられた傷だと……。
「……セイバーは⁉︎」
俺は声を上げた。その時、声が聞こえた。
「うるさいぞ。起きたと思えば、大声を出しおって」
俺は声の方を振り返る。そこにいたのはアーチャーであった。白装束を着ていたアーチャー。彼は俺の椅子に座って、俺の部屋に置いてある本を読んでいた。足を組み、机の上にはコーヒーがある。コーヒーの存在に気づくと、なんかコーヒーの匂いが強く感じられる。
「何で、お前がここに?」
「ん?今日はお前たちに協力の返答を聞きに来る日だっただろう?何だ?記憶を失くしたのか?痛みでぶっ飛んだか?」
そういえばそうだった。なんか、色々とあって忘れていた。確かに、今日はアーチャーが俺たちに返答を聞きに来る日だった。
アーチャーはため息をつきながら、コーヒーを口に含む。コーヒーの独特な匂いが俺の鼻をつく。あまり、俺はコーヒーが好きじゃないし、匂い自体があまり好きではない。俺が少し嫌そうな顔をしていると、アーチャーはまたため息を吐いて、コーヒーをごくんと飲み干した。
「お前の知りたいことだけ話しておこう。セイバーは元気だ。傷ひとつない。同じく雪方というライダーのマスターもだ」
「ライダーは?」
「
アーチャーは声を顔色も何も変えずにそのことを言った。荒ぶる様子はない。コーヒーの匂いがまだ部屋の中に残っている。新月の今日は、町の街灯だけが光を灯す。
「おい、セイバーのマスター。あのアサシンの少年にはあまり近づかない方がいい」
「は?何で?ってか、何で俺がアサシンのマスターと関わりあるって知ってんの?」
「まぁ、こちらの事情的に知ることができる」
アーチャーは本を1ページめくる。足を組み、椅子の背もたれに寄りかかって、実にくつろいでいる。他人の部屋なんだから少しは遠慮してほしい。
「この前、ランサーがやられた」
「ランサーがやられた……って言われても俺、ランサー知らねぇし」
「まぁ、それはしょうがない。それは巡り逢わなかったという運命に文句を言ってくれ。……あの少年はな、ランサーを倒し、ランサーのマスターを負傷させた」
「それが?何だって言うんだよ」
アーチャーはさっきまで本にずっと目がいっていたが、その時初めて俺の目を見た。アーチャーの青い目は誰かに似ているように感じた。誰だろうか。
「お前、怖くないのか?」
「……いや、怖くないってわけじゃねぇよ。確かに、お前の言う通り、セイギがランサーを倒したのかもしれないし、ランサーのマスターを負傷させたのかもしれない。それに、その理由が聖杯戦争だからってだけで終わらせられるのが一番怖い。そしたら、何でも許されちまうからさ」
「親友に裏切られるのが怖いのか?」
「まぁ、それもある。セイギに裏切られたら、俺、多分俺じゃなくなるかもしんない。怖い。怖い。怖い……けど、それでも俺には見てみたいもんがあんだよ」
俺は届かぬ天井に思いっきり手を伸ばした。届かない、けどそれでも俺の見ている世界の中ではもうすぐで届きそうな手。
「昔の俺が、今の俺が叶えたい望み。それをセイバーが見せてくれそうなんだ。俺が諦めた望みを、セイバーはまだ心の中に抱いてる。俺はその望みが成就した時、俺もそこに居合わせたい。嬉しそうなセイバーの顔を見たら、俺の諦めた望みも成就されそうなんだ。俺の望みはセイバーを望みを叶えてやること。だから、俺は今、聖杯戦争をやってるんだ。今の俺には目的がある」
セイギが裏切ろうと、俺には叶えたい望みがある。親友を傷つけることは俺にはできないけれど、でも望みがある。身勝手かもしれない。最低な男と言われるかもしれない。でも、俺の剣を振るこの手は、もうすぐで天井に届きそうだから。目的を得た手が求めるのは掴むもの。掴むものを求めて、俺は聖杯戦争に今、立つんだ。
俺は立ち上がろうとしたけれど、やっぱり腹部が痛い。俺が腹部を抱えると、アーチャーはそれを見てこんなことを話した。
「よかったな。刺されたのが
「ん?それはどういうことだ?」
アーチャーは俺の部屋の窓を開けた。風が部屋に舞い込んでくる。彼が羽織っていたマントがなびき、腰につけていた一つの剣に目が止まった。折れた剣。それはグラムに似ていた。けど、別物である。
「グラムは人を殺すことが下手くそなんだ。あの剣は初めて人の形をとった。だから、殺すのが上手くない。ただ、ライダーはお前たちを守るために死んだよ」
「えっ?ライダーが俺たちを守るために?」
「おおっと、話はそこまでだ。これ以上、話していたらマスターにまた叱られてしまうからな」
アーチャーはそう言うと、持っていた小説を俺の机に置く。彼はその時、俺にふっと笑いかけたような気がした。気のせいだろうか。ただ、彼はある一筋の希望を見つけたような顔をしていた。晴れ晴れとした顔。
「じゃぁ、さよならだ」
「えっ?ああ、うん」
アーチャーは彼らしくないような、重い言葉でこう俺に告げる。重苦しい言葉。何かあったのか?
「ああ、最後に一つ。一つだけ願いを聞いてほしい」
「えっ⁉︎なんで、俺なんかに?」
「いや、お前にしかできないことなんだ」
「……まぁ、いいけど。めんどくさいのは嫌だよ」
アーチャーは俺に頭を下げた。白装束を見た俺は少し嫌な気がした。
「—————セイバーを、守ってやってはくれないか?」
「……えっ?」
アーチャーはそう言うと、俺の目の前から姿を消した。俺の部屋の窓から外へ出て行った。俺にはその時、何が何だか分からなかったけど、アーチャーが少しだけおかしいことに俺は気づいていた。白いカーテンが部屋になびく。
「あれ?そういえばなんでグラムのことなんかアーチャーが知ってんだろ?聞いてたのかな?それに、俺は敵なのに……まぁ、いっか」
アーチャーが出て行ってすぐに、白い髪をしたセイバーが入ってきた。包帯を持って、暗い顔をしながら入ってきたが、起きていた俺を見て、彼女の暗い顔が崩れた。
「ヨウ‼︎」
セイバーは俺の元気そうな姿を見て、涙をこぼした。多分、今さっきまで寝たきりだったのだろう。で、嬉しすぎるあまり俺に抱きついてきやがった。
「痛い!痛いから!」
「えっ?ああ、す、すいません……」
セイバーはそう謝るけれども、やっぱりどこか嬉しそうな顔をする。笑顔をやめようとしても、顔がちょっとにやけている。
セイバーは英雄と謳われようとも、本当はただの女の子なんだ。そう実感させられる。確かに、身体能力は他のサーヴァントと変わりはないけれど、心は女の子。
俺はアーチャーが言った言葉を守ろうと思った。戦えないサーヴァント。そんなの、最弱の英霊だ。でも、俺はそれでも最弱の英霊のちっぽけで壮大な夢を見てみたい。だから、俺はセイバーを守ろうと思った。
今、俺の目の前で、っていうか
「なぁ、セイバー。傷はないか?」
「えっ?いや、特にありませんけど……、でもヨウが……」
「大丈夫だよ。こんなの」
セイバーは守れた。それを知れただけで今の俺は満足である。
俺がそう言うと、ドアがバーンと開いた。
「そうよ!大丈夫。私が治療してあげたんだもの!」
そこにいたのはアサシンとセイギである。もう少し丁寧にドアを開けてほしいものだ。壊れてしまいそうなほど強く開けていた。よく見てみると、アサシンの顔の皮が少し剥がれているのがわかった。また皮が剥がれていて、土のような茶色い何かがその隙間から
「治療した?お前が?アサシンだろ?」
「アサシンでも治療はできるんですー」
アサシンは俺の首の後ろを手で持って、顔を近づける。彼女の吐息が
えっ?まさか?
そう、そのまさかである。俺の唇に柔らかいものが触る。ぷるっとした何か温かいものが押し付けられているようである。俺の舌に彼女の吐息が当たり、ぬるっとしたものが絡みつく。
これって
ディープキスだろぉぉぉ‼︎やばい‼︎このままいけば犯されるッ‼︎
そう俺の中で『〜であったらいいのになぁ』っていう妄想を考えていたら、俺の体に異変が起きた。
体の中から、力がみなぎってくるのである。体が熱く感じる。
精力的な意味じゃないけど。あくまで魔力的な意味で。
アサシンは十分、俺の口内を舐め回すと唇を離した。なんか、大人の階段を一歩上ったような気がする。
「どう?体、元気になったでしょう?」
下の方がビンビンです☆‼︎
まぁ、下ネタはいいとして、俺は腹部を見た。そしたら、何と血が完璧に止まり、傷口が接合しかけている。さっきまで、包帯がないと血を止めていられなかったのに。
「これはね、私の能力なの。溜めていた魔力を接吻した相手に注ぎ込むことができる」
「相手に注ぎ込む⁉︎」
魔力を注ぎ込む。それはそう簡単にはできない。なぜなら、魔術師の魔術回路は使う魔術によって異なり、またその同じ魔術同士の中でも少しずつ違うところがある。つまり、同じ魔術回路を持つものなど、基本的にまずいない。
相手の体に直接魔力を注ぎ込むということは、相手の体に負荷がかかり、相手の体がどうなるかもわからない。相手の魔術回路を無視して魔力を注ぎ込んだら魔術回路が壊れることもありえるし、最悪死に至ることも。
また魔力を誰かに注ぎ込むというのは自分にとってもリスクが高い。それは言ってしまえば自分の魔力を与えるということである。魔力とは生命力であり、その生命力を与えるということは死に近づくことを意味する。
つまり、やる人もやられる人もリスクが高い。それでも、アサシンはそれをやってのけることができる。それが彼女の体であり、宝具であるから。
「私の体自身が宝具なの。改造されたこの体は魔力を与えるということに特化しすぎている。まぁ、でもなんでなのかは私も知らない。私が改造したわけじゃないし」
「えっ?それって誰かに改造されたってことかよ」
「ええ。そうよ。無意識の内に改造されてたの。…………いや、無意識というより、無になっていた時にかな」
アサシンは俺たちに自分のことを説明した。それはもしかしたら敵であったかもしれない、そしてこれから敵になるかもしれない俺たちにである。
「……何で、そんなこと教えてくれるんだ?」
アサシンはその質問を愚問だと思ったのだろうか。少し鼻で笑った。
「それはセイギが決めたの。私、セイバーちゃんの真名聞いちゃったのよ。あの時」
あの時。それは俺がグラムにやられた時のことであろうか。確かに、セイバーがライダーを倒そうとして宝具の真名を解放していた。その時であろう。
「だから、おあいこみたいなもんよ。それだけ」
「そう……か」
少し何かが気になった。何かわからないけど、また俺に疑問ができたのがわかった。それでも、俺はそれを見ないようにした。
セイギは時計を見た。11時である。セイギたちはもう帰らないといけないと言う。
「そのさ、セイギ。今日、夜中、まだ起きててくんね?電話したい」
「何?話すことなら今言ってよ」
「いや、電話越しに話したい」
セイギは俺をじっと見る。俺は冷や汗が出た。セイギはしばらく俺をじっと見つめていたが、ふと何かを思い出したようにそれをやめて、笑顔になった。
「うん。オッケー」
セイギはそう言うとアサシンを連れて家から出て行く。そして、部屋の中には俺とセイバーの二人だけになった。セイバーは俺のことを睨むように見てくる。青い目が、俺を映す。
「なんだよ、睨んで」
「いや、嬉しそうでしたね」
「は?嬉しい?何が?」
「アサシンに接吻された時です……」
セイバーはふてくされている。というより、嫉妬している。まぁ、嫉妬される気持ちもわからなくはない。俺だってセイバーの立場だったら嫉妬してしまうだろう。
一人だけ勝手に浮かれやがってと思う。
セイバーは一人だけ浮かれていた俺に対して嫉妬しているんだ。そう思い込んで、俺はセイバーをなだめた。
「……」
「いや、だからそう睨むなって」
「睨みますよ。そりゃぁ、どうせ私なんか青臭い少女といるより、大人の気品溢れる女性の方がいいに決まってますよ」
セイバーは独り言ぐらいの声の小ささで文句を俺に言う。が、そんな小さな声では返答もできない。頬を膨らませて、俺に目を合わせようとしない。怒っている。
「悪かったって、そりゃ、しょうがねぇだろ。お前は女の子、俺は男。わかるか?これは性としてしょうがないの」
「……でも……」
「でもじゃない!ガキか!」
「……」
セイバーは黙ってしまう。あまり人のこう話したことがあまりないセイバーにとって人と話すことはど下手くそに等しい。相手の呼吸のリズムを計り、表情を知り、
ああ、もう本当に何でこういうところはお子様みたいな性格なんだよ!
まぁ、お子様みたいな性格だからわかりやすいというところもある。
俺は腕を広げる。
「ほれ」
俺が腕を広げると、セイバーは段々と俺に近づいてきて、抱きついてきた。そして、俺の胸の中で泣いた。俺の胸ぐらがセイバーの涙で濡れる。それでも、セイバーは俺の服のことなんか知らんぷりでまだまだ泣くのである。狭い俺の部屋に彼女の泣き声が響く。アーチャーが窓を開けっ放しにしており、そこから彼女の泣き声が街全体に聞こえた。それほどまでに色々な感情が詰まっていた。悲しみ、安堵、怒り、恐怖、嬉しみ。感情が混じりすぎて、彼女自身もどんな感情を抱いているのかわからないくらい泣いた。それに、少しプライドが高くて、アサシンやセイギの前では泣かまいと決めていたのだろう。だから、俺たち二人だけになった瞬間、子供のように泣くことしかできない。
いや、泣きたいのだろう。今まで全ての苦しみを全部吐き出したいのかもしれない。
その涙はとてもとても俺にとって重いものだった。それでも俺は受け止めようと思った。過去の俺と彼女を重ね合わせたこと、そしてアーチャーから頼まれたからである。
アーチャーの頼みごと。これは何かイヤな予感しか俺に印象を与えなかった。でも、なんでアーチャーがセイバーのことを気にするのかがわからない。けど、それはやろうと思う。
面倒くさいことはしない主義。でも、俺も相手も利益を得るのなら、俺は別にしてもいいと思う。で、今回、そのアーチャーの頼みごとはその基準に入った。そう俺は理由をつけている。
セイバーはまだ俺の胸のところに顔を押し付けている。俺はそんな彼女の頭をポンポンと撫でてやる。
「よしよし」
それが俺だったらと思うと、彼女の苦しさは嫌でもわかる。
「—————辛かったよな」
例え、優しさが彼女にとって毒であっても、俺はそれを彼女に言った。少しは気を休んでもいいんだと。肩の荷を下ろしたらどうだと。
辛いこと続きの彼女に俺は声をかけた。その声は泣き声で消されてしまった。
はい!ではセイバーちゃんの人物紹介です。ちなみに、ライダーは次くらいに人物紹介します。
セイバー
身長:161センチ
体重:47キロ
スリーサイズ:81・56・78(上から順に)
パラメーター(グラム不所持時):筋力C・耐久D・敏捷B・魔力E・幸運B・宝具C
パラメーター(グラム所持時):筋力B・耐久C・敏捷B・魔力D・幸運E・宝具A+
スキル:対魔力D・騎乗B・直感C・呪われし指輪-・鍛錬A・龍殺しC
呪われし指輪-このスキルを所持するサーヴァントは全て幸運がEとなる。
鍛錬-武具、宝具を新たに鍛え上げるスキル。また、形状変化させることも可能。
セイバーのサーヴァントで主人公に召喚された。しかし、召喚の際、何が触媒となっているかは謎。本編では『親への不信感・裏切りの被害』などが挙げられているが、本当かどうかは不明。
本当の彼女は白髪で目は少し青い。なぜ、黒かったかというと、グラムの持つ黒い瘴気のせいで髪が黒かった。戦闘服は鎧だが、いつもはドイツの民族衣装を着用。
義や誠を重んじるタイプの女性だが、どこか少し幼い一面も見せる。しかし、少しプライドが高いため、そこを見せようとしないが、主人公はそこを見抜いている。また生前、誰かと関わりを持ったことが極端に少ないためか、人と打ち解けるのがあまり得意ではらしい。
また、たった一人の親であり養父である男から裏切られたことにより、結構
それでも最初は、主人公を
聖杯で叶えたい望みは過去に戻って全てをやり直すこと。
宝具は5つもあり、アーチャーみたいだが、3つはランクC以下のカスみたいな宝具。理由は、彼女が戦う者としての戦闘経験不足、人を殺せないという事態を聖杯が知っていての特別措置である。弱い彼女だから5個も宝具がある。
短剣である『
レイピアである『
古びた剣である『
黄金の鎧(ランクDの対人宝具・レンジー)。ピカピカしている。
青銅の兜(ランクCの対人宝具・レンジー)。海神エーギルの兜。これをつけていると、雑魚は恐怖感を与え、雑魚は一切の攻撃をすることもできない。しかし、この聖杯戦争で雑魚はある一体しかいないためほぼお箱入り。
本人
本名はシグルド。『ヴォルスンガ・サガ』に出てくる龍殺しの英雄。しかし、これは本当は名ばかりであり、英雄としても剣士としても半人前以下。親に裏切られるという悲しき運命を辿った。このサーヴァントはライダー、バーサーカーとしても召喚可能。
生前に殺した人数は一人。しかし、見方を変えれば二人。