Fate/eternal rising [another saga] 作:Gヘッド
魔剣グラムが禍々しい力でセイバーと
セイバーはその様子には全然気づいていないようで、俺は驚いたが、セイバーは俺の発言を理解していない。
「セイバー、お前の髪って何色だ?」
「えっ⁉︎何でそんなこと……」
彼女はそう言いながらも何かに気づいたようで、自分の結んでいた髪を
「戻っている……」
俺にとってはあまりにも謎の光景だった。グラムが人として現れた瞬間から彼女の黒い髪は色素が抜けていくように白くなっていくのだから。その上、彼女の言った『戻っている』という言葉。つまり、元々白い髪だったということ。……だとすると、なぜ黒い髪になっていたのか。
なんか、今、謎が一気に波のように押し寄せてきている。グラムが人の形になったこと、セイバーの髪が戻ったこと。この二つがあまりにも大きすぎて、でもって理解不能すぎて何が何だかわからない。
とにかく、髪のことはもういい。それは後になっても話せる。それより今はグラムのことについてである。なぜグラムが人の、しかもセイバーと瓜二つの形をしているのか。しかもそのセイバーはさっきまで俺の隣にいた黒髪のセイバーである。
でも、似ていたのは見た目だけであった。
グラムは現界してすぐにしたことは八つ当たりであった。グラムはライダーをジロリと見てにたりと笑った。
「
そうグラムは天に向かって叫んだ。すると、空に幾つもの光が現れて、そこから剣が降ってきた。何十、何百、いや何千もの剣が空から一気にライダーに向かって降り注ぐ。
金属と金属がぶつかる音が聞こえ、骨を潰し、身を断つ音が聞こえた。残酷な旋律である。
動けないライダーの体が何千もの剣に串刺しにされているのが目に見えた。悲惨な光景がそこに存在していた。血が池のように溜まり、ライダーはピクリとも動かない。
俺もセイバーも雪方もその光景に物怖じをしてしまう。ライダーが、サーヴァントがいとも容易くやられるという事実、そして
ただ、目の前に起きていることが恐怖。そうとしか言いようがないのである。
グラムはライダーの流れ出た血を見た。そして、その血をぺちゃぺちゃと手につけた。その血を空へとかざしてまた高揚に笑った。
「あははは!ライダーが死んだぁ!」
グラムはイかれていた。ガチで頭がイかれている野郎である。見た目はセイバーと瓜二つだが、中身はまるで別人のような感じだった。セイバーとだったら俺は理解し合うことができるが、グラムとは無理だ。そう直感的に感じた。
少しばかりの間、グラムはただ高らかに笑っていたが、ふとその笑いをピタリと止めて、俺たち3人の方を振り向いた。
「何だ?シグルド、どうした?そんなおっかない顔をして。お前は私の担い手だろう?何故、人を殺すことを怖がる?」
「私は、あなたのことなんか知らない。あなたは、誰だ?」
「……それは本当に言っているのか?」
グラムはパチンと指を鳴らした。すると、彼女の周りにまた光が現れて、そこから剣が何本も飛び出る。その剣は彼女の周りで宙をふわふわと浮く。よく見てみると、その剣は全て同じものであり、全部
「私の名前はグラム。赫怒の剣であり、神の剣。そして、平行世界の全ての
……何を言っているんだ?俺にはわからない。アイキャントアンダスターンド。
「あなたがグラムだと言うのですか?でも、剣の形をしていないじゃないですか」
「それはしょうがないことだ。元々は剣だったが、今は違う。あのクソ男が私を人殺しの道具として使ったから。それに、お前が私に龍の生き血を吸わせたから、命持たないはずの私が命を持つことになった」
グラムは剣であった。命を持たない無機質の鋼の塊であった。でも、
セイバーは未だに父のことを人から聞いたことがなかった。まず、父の名さえ知らなかった。知っていたとすれば父が王であったという事実だけ。
つまり、目の前にいる黒髪のもう一人の自分は父のことを知っているのである。セイバーは知りたいと思ってしまったのだ。自分の父親がどのような人であったのかを。
「教えてく……」
「イヤに決まっているだろう。お前に教えることなど何もない。だって、お前はもう私の担い手ではないからな」
「担い手ではない?」
「そうだ!私がお前を担い手として選んだのだから、私から担い手として解雇することもできるに決まっている。だって私は意思を持つ剣なんだから」
「なぜ?なぜ、私が担い手ではないのですか?」
「そりゃぁ、あれだ。お前といるとつまらないからな。まぁ、言ってしまえば怒りが足りないってことだ」
グラムは怒りを糧として、その怒りの量で強くもなれば弱くもなる。怒りとは無尽蔵の感情であり、その感情に限りはない。グラムは最初、セイバーの底知れない怒りに惚れて彼女の担い手となった。が、しかし今、彼女に怒りの感情はない。
俺と日々を過ごした。そのことが強く影響しているからだろうか。
だから、グラムは彼女を担い手として認識しなくなってしまったのだ。
「あれ?分からないか?まぁ、とにかく『死ね』ってことだ」
グラムはそう言うと、手で宙に何かを描くような動きをした。黒い髪がゆらりと揺れる。彼女の周りにある
「シグルドよ。壊れてしまえ」
放たれる眩い光。その光が瞬時に俺の頭にあることを想像させた。
その時、俺は何を思ったのだろうか。さっきまで立ちすくんでいた足が、自然と動いた。セイバーの肩を強く押して、彼女を押し倒す。だが、時は止まらず、眩い光は俺に目掛けて飛んできた。
「ヨウ‼︎」
ドスッ‼︎
熱い、自分の腹部が熱い。しかし、目の前にいるセイバーに傷はない。涙を流しながら叫んでいるけれど、俺にその声は聞こえなかった。何と言っているのか聞きたかったが、それでも別に良いかと思えてきた。
彼女を守れたらそれでいいかな。
ドスッ‼︎
また、強い衝撃が俺にきた。
まぶたが重い。熱いし、もう何が何だか分かんない。でも、目の前に守れたという現実がある。その現実に安堵した、
—————疲れたから、少しだけ眠ろうか。
そして、俺は静かに目を閉じた。
目を覚ましたら、目の前は一面、花畑だった。色とりどりの花が咲き乱れ、そよ風が吹くと吹く方向に向かって花は揺れて花びらが散る。太陽はないのに、それでも明るいのだ。だからだろうか、少しだけ寒い気もする。
「寂しい場所だ……」
そこは道なき花畑で、どこへ行っても地平線まで永遠に花畑が咲き続けている。逆に言ってしまえばそれ以外は何もない。海も、山も、建物も、木も何もない。それどころか、誰もいない。花畑なのに虫が一匹もいない。
不思議な空間である。
ここがどこなのかもわからない。もしかしたら、俺は死んだのかもしれない。いや、つーか死んでいるわ。多分、俺は輪廻転生の中で次の命を得るまで、ここで待っているんだろう。俺はそう感じた。
風が吹いた。花が
すると、目の前に人影が現れた。俺はその人影を見た時、
その人影は俺にこう言った。
「ここは
その人影は俺の名前を知っていた。俺はその人影の声を聞いたことがあるような気がする。けれど、やっぱり誰だかわからない。夢幻神言ノ世というこの場所にいる俺の知っている誰か。
誰なんだ?
俺はその人影にこう聞いた。
「あなたは誰ですか?」
人影は優しい笑顔を見せた。その笑顔を見た俺は、直感的に俺は誰だかわかった。
「あんた……まさか……。いや、そんなわけない。嘘だ……」
涙がこぼれた。涙は花に落ちる。目の前の景色、それは夢幻のものだと思った。でも、目の前にある。
人影は俺の涙を見て、そっと俺を抱擁した。抱きしめた。
「ごめんなさいね。悲しい思いをさせて」
温かい、前にもこのぬくもりを感じたことがある。
その人影は俺を優しく抱きしめて、俺にあることを耳元で聞いた。
「空はまだ青い?海はしょっぱい?大地はまだある?地球は丸い?世界は広い?」
そう言うと、その人影は俺を突き離した。
「あなたはまだここに来るべきではないのよ。さぁ、お戻りなさい。ヨウ」
そう人影は言う。人影が背中を俺に向けると、その花畑の世界が俺から遠のいていく。
—————一瞬だけ聖杯戦争の裏を俺は